参加書店は前回の2倍超 玩具メーカー・海外からも参加 出版界のDX「書店向けWeb商談会2020秋」開催結果
有志の出版社24社からなる書店向けWeb商談会実行委員会は、2020年10月5日(月)~10月16日(金)の2週間、今回で2回目となる書店向けのオンライン商談会を開催いたしました。出版社を中心に玩具メーカーなど149社が出展、書店員など235名が参加し、著者や書店員によるZoomイベントも行われました。オンライン時代に必要な営業ノウハウとは何かを含め、今回得られた結果をご報告いたします。
- 結果概要
その結果、出展社数は149社と前回49社の約3倍。出展社の地域も北は宮城県仙台市(サンガ)から南は鹿児島県の屋久島(Kilty BOOKS)まで、日本各地からの出展となりました。参加者数は235名と前回104名の2倍超。北海道から沖縄まで全国からの参加に加え、海外からの参加(紀伊國屋書店クアラルンプール店)もあり、距離の壁を超えるオンライン時代ならではの出会いの場となりました。
開催後、出展社と参加者へアンケートを行い、出展社140社と参加者80人から回答を得、次のような結果となりました。
●商談金額は全体で20,432,238円(上代)。
●商談回数は、出展社と参加者が1対1で行う商談が全社合わせて779回行われた。
●商談数の多かった出展社の上位4社は、世界文化社(25回)、PHP研究所(23回)、亜紀書房(20回)、ニジノ絵本屋(20回)。一方で、商談数が0回という社が16社、出展社の1割以上。
●1対Nで行う商談(複数の書店が同時に参加可能な説明会)については、2社で計5回実施し、合計33名が参加。
N対Nで行う合同説明会(複数の出展社が1社ずつ順番に、複数の参加者に行う説明会)は児童書ジャンル(27社合同)と芸術書ジャンル(15社合同)で各1回行い、それぞれ36名、6名の書店員が参加。
●最も多くの書店員が参加したイベントは、「児童書担当書店員による棚談義 こうやって児童書棚つくってます」(49名の書店員が参加)。
●参加者の満足度に関して、「次回も参加したい」という声は、参加者が81%(前回92%)、出展社が75%(前回92%)と、満足度は前回よりも下がっており、特に出展社の満足度が社によって開きが出た。商談数が少なかった社が、次回の参加を「わからない」と回答する傾向にあり、なぜこのような違いが出展社間で生まれたのか、商談数や商談金額が多い出展社とそうでない出展社にヒアリングしたところ、それぞれに共通項があった(後述「オンライン商談におけるノウハウとは」)。
●次回は規模の拡大よりも出展社・参加者ともに満足度を高めることを念頭に、2021年春開催予定(開催月は検討中)。
- 開催概要
商談方法:参加者がCalendlyで出展社と商談時間を予約し、Zoomで商談実施
主催:書店向けWeb商談会実行委員会
協力:(50音順)トーハン、日本出版販売、ラクーンコマース、楽天ブックスネットワーク
特設ページURL:https://dms838.wixsite.com/web-shodankai
※関連リリース「出版界のDXが加速、出版社・玩具メーカー他138社が書店向けWeb商談会を開催」2020年9月7日配信
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000608.000012505.html
- 実行委員会構成(24社)
集客委員長:箱守剛(東京美術)、企画委員長:佐藤健二(ブロンズ新社)、システム委員長:小山雄平(パイ インターナショナル)
委員:朝日出版社、アシェット・ジャポン、アリス館、絵本館、学研プラス、カンゼン、Jリサーチ出版、視覚デザイン研究所、ジャムハウス、新星出版社、青幻舎、太郎次郎社エディタス、東京美術、とうこう・あい、西村書店、のら書店、パイ インターナショナル、フレーベル館、ブロンズ新社、ポプラ社、マール社、ミシマ社、光村図書、よはく舎
- 出展社一覧(149社 50音順)
明石書店、あかね書房、亜紀書房、秋田書店、朝日出版社、アシェット・ジャポン、梓書院、あすなろ書房、アリス館、池田書店、岩崎書店、岩波書店、インプレス、WAVE出版、潮出版社、枻出版社、英治出版、英明企画編集、絵本館、エムディエヌコーポレーション、おむすび舎、偕成社、化学同人、笠間書院、仮説社、学研プラス、かもがわ出版、河出書房新社、カンゼン、きじとら出版、きずな出版、キネマ旬報社、求龍堂、京都大学学術出版会、木楽舎、Kilty BOOKS、くもん出版、グラフィック社、クレヨンハウス、K&M企画室、慶應義塾大学出版会、芸術新聞社、玄光社、現代書館、現代書林、好学社、廣済堂あかつき、合同出版、合同フォレスト、国書刊行会、コトノハ、子どもの未来社、駒草出版、小峰書店、ころから、彩流社、朔北社、左右社、サンガ、三修社、303 BOOKS、三和書籍、G.B.、JMA・アソシエイツ、Jリサーチ出版、視覚デザイン研究所、自然食通信社、実業之日本社、信濃毎日新聞社、ジャムハウス、集英社インターナショナル、出版ワークス、春陽堂書店、祥伝社、書肆侃侃房、新星出版社、すみれ書房、青弓社、青幻舎、西東社、世界文化社、センジュ出版、創元社、大創出版、大日本絵画、大日本図書、食べもの通信社、太郎次郎社エディタス、淡交社、小さい書房、汐文社、月とコンパス、DU BOOKS、トゥーヴァージンズ、東京書籍、東京書店、東京創元社、東京大学出版会、東京美術、童心社、トーハン 洋書グループ、名古屋外国語大学出版会、ナナロク社、西日本出版社、ニジノ絵本屋、西村書店、日経BPマーケティング、日本文芸社、農文協、のら書店、白泉社、パイ インターナショナル、白水社、万来舎、PHP研究所、ビーナイス、ひかりのくに、ひさかたチャイルド、ひだまり舎、Book&Design、フレーベル館、ブロンズ新社、文溪堂、ベレ出版、便利堂、北樹出版、ポプラ社、マール社、まむかいブックスギャラリー、ミシマ社、みずき書林、光村図書出版、武蔵野美術大学出版局、メイツユニバーサルコンテンツ、山と溪谷社、羊土社、よはく舎、雷鳥社、ラボ教育センター、ロクリン社
玩具メーカー(5社)
コンセル(幼保向け玩具等)、すごろくや(ボードゲーム等)、ハナヤマ(パズル等)、ぼりゅうむわんプロダクツ(マグネット玩具等)、ワイズインテグレーション(小学生向けプログラミング教材)
サービスほか(4社)
一冊!取引所(出版受発注システム)、BookCellar(出版受発注システム)、カーリル(図書館蔵書検索システム)、ダイワハイテックス(コミックシュリンカー等)
- オンライン商談におけるノウハウとは
●商談数が0回となった出展社では、「業務多忙のため積極的な集客施策を行なえなかった」という声が複数あった。出展社が参加者へ自社との商談予約をメールで促す「プッシュ型営業」についても、「出展社が多いため書店へ商談を促す営業メールが殺到するのではないか」と懸念し、利用を敬遠した社もあった。
●実際に参加した書店からは、「出展社からの多数のメールが届いたためもっと絞り込んで欲しい」という声も聞かれたが、それ以上に「商談予約のきっかけとなるためどんどんメールして欲しい」という声があり、「BCCで一斉送信してくるようなメールは無視したが、店舗のことを調べた上で送られてくるメールには対応した」など、プッシュ型営業に肯定的な声が否定的な声の倍近くあった。
●商談数の多かった出展社ではプッシュ型営業を活用。参加者へメールを送る際はBCCではなく、参加者の担当する書籍ジャンルに合わせて、一人ひとりへ丁寧なお誘いのメールを送るようにしていた。また、「おすすめの書籍から好きな書籍をプレゼント」など、参加者特典を用意する社もあった。普段からSNS上の施策を活発に行いインスタグラムなどSNSのフォロワー数の多い出展社の場合、SNSを通じて商談会のことを知り、商談予約が多くなったケースもあった。出版社の社歴や規模だけではなく、オンライン上の知名度も商談数に影響することを示している。
●商談金額が多かった出展社で共通していたことは、一度の商談でまとまった数量を注文し、店頭の棚をまるごと作り上げられるような提案を参加者に対して行っていた。(複数の商品を組み合わせたフェア用のチラシを画面共有し、クリスマス向けギフトフェアや、出版社を紹介するための全商品陳列フェアなど)
※プッシュ型営業とは
各出展社が商談会の参加呼びかけを行い、参加者の登録情報を確認した上で、出展社から情報開示可能な参加者へ具体的な提案と共に「ぜひお会いしたい」とメールで声がけをする。各社の営業力をシェアすることで、参加者が各出展社との商談予約をしやすくした。
- 参加者例(「メディアに公開可」とした一部の参加者のみ掲載)
- 参加者の属性(参加者235名の参加申込時の情報)
● 出展社に参加情報を開示した参加者は189名(全参加者の80%)。参加情報はプッシュ型営業に利用された。
そのほか、「参加のきっかけ」(何を目的に参加したか)、「参加経路」(どこで商談会を知ったか)、参加者の書籍・商品の「担当ジャンル」を以下にまとめます。
- 参加者 参加後のアンケート結果(参加者235名中、80名が回答)
- 出展社 出展後のアンケート結果(出展社149社中、140社が回答)
今回の商談会で各社最も発注のあった商品を挙げてもらったところ、上位10タイトルは次のような内容でした。
- オンラインイベントの参加者数
イベントを企画したことで、商談数を増やす効果があったのかを検証したところ、イベントは少なくとも参加者数を21%純増させ、商談回数を15%純増させたことがわかりました。また商談、イベントを共に参加目的とした参加者の一人当たり商談回数(11.1回)は、商談のみを目的とした参加者(5.9回)よりも多く、商談会自体の活用意識が高いことを示しています(以下詳細)。
- 総括:実行委員長 三芳寛要(パイ インターナショナル代表)
しかし、リアルで行われている東京の大商談会が400名の書店様が参加することを考えると、全国で235名という参加者数は、オンラインで参加できる書店様がまだまだ少数派であることを示しています。大多数の書店様は、「業務時間中に商談時間を確保するのが難しい」「上長の理解を得る必要がある」「パソコンなど必要な機器が無い」といった理由で参加が難しく、この解決には時間がかかります。
今後、より多くの書店様が参加できる環境を整えていくためには、書店経営者や管理職の方々から理解を得るための地道な告知活動が必要と考えています。また商談会を継続開催することで口コミ等を通じ徐々に増えることも考えられますが、そのためには参加者に満足いただける会とする必要があります。参加者の満足度を高めるには出展社一人ひとりがこの会の有効な活用方法を理解した上で出展することが必須ですが、今回は商談数が0回だった出展社が全体の1割を超え、この点のフォローが委員会として手薄だったと反省しております。しかし幸いなことに今回、オンライン時代に必要な営業ノウハウが見えてきました。次回以降はこれを共有することで、出展社にとっても参加者にとっても実りの多いものにしていくことができると考えています。このほか、東京の書店大商談会や大阪のBOOK EXPOといった各地のリアル商談会との連携をする、あるいはお客様(読者)に喜んでいただけるような施策、書店様のBtoC支援につながるような提案をしていくなど、書店様が参加しやすい環境づくりを模索していきたいです。
また、今回から玩具メーカーなど出版以外の業種からもご出展いただきました。この狙いは、書店様にとってもバリエーション豊かな仕入れを実現すると同時に、書店以外の「本を扱う小売店」にも参加しやすい環境を作るためでした。幸いなことにカフェや、ボードゲームを扱う店舗など、多くはありませんが意図していた小売店の方々の参加も見受けられました。今後も「本」がより多くの方に手に渡るよう、様々な業態の小売店にも本商談会を知っていただくためにも、メディア等への告知活動が重要と考えています。
最後に、本商談会を通じて生まれたオンライン上のコミュニティについて紹介します。出展社149社がリアルに顔を合わせずとも商談会を滞りなく運営するためのツールとしてSlackの使用を全社に義務付けし、出展社と書店員との交流の場としてはLINEオープンチャットが設けられました。Slackでは日々リアルタイムに、システム運用のこと、集客のこと、イベントのことなど情報交換することにも使用しましたが、商談会以外のテーマ、例えば「図書館員向け販売サービス」、「20社合同の児童書共同ダイレクトメール」といったサービスにも利用されました。またLINE上で書店様から受ける提案や相談を、Slack上で議論するという流れも生まれ、その中から60社合同のWeb合同注文書「大人のクリスマスギフトフェア」という新しいサービスが生まれました。今後も続々と新しいサービスが誕生しそうです。こうした誰しもが活発な議論と迅速な対応ができる自由なコミュニティは、これまでに業界内でもなかったもので、ノウハウ共有、アイデアの実験場、人材育成の場となっており、今後も活かせる財産です。
コロナ禍をきっかけに始めた本商談会ですが、このように様々な人々の出会いとアイデアの創発の場となっていること、コロナ後にもリアルを補完できる様々なオンライン上のサービスを生みだす場ともなったことは予想外のことで、うれしいことでした。今、出版業界で働いている方々だけでなく、これから出版を目指す若い方々にとっても、あとで振り返ったときに、コロナ禍という未曽有の危機にもこうした試みをしてきた歴史は、きっと励みになると信じ、次回につなげていきたいと思います。
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