パーソル総合研究所、地方移住に関する調査結果を発表 移住者の53.4%が移住時に転職せず、58.6%が収入に変化なし
テレワークが可能な人ほど、近い将来の計画として移住を具体的に検討
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:渋谷和久)は、有職者の地方移住に関する調査結果を発表いたします。本調査は、コロナ禍によるテレワーク普及などを背景に地方圏への移住(※1)の関心が高まる中、地方移住の経験者および意向者の実態や、移住に対する意思決定の要因について定量的なデータ・知見を提供することにより、経営・人事、自治体、働く個人に資することを目的に実施しました。
※1 本調査における「移住」「地方圏」とは
・「移住」とは、自らが何らかの意思を持って、主たる生活拠点を別の地域に移すことと定義し、会社都合の転勤およびバカンスなどの行楽的滞在は除くこととした。一方で、2拠点居住やノマドワーカーなどについては、「多拠点居住」として統合し調査・分析の対象とした。
・「地方圏」とは、移住意向者・無関心者の移住検討先の地域より、東京23 区、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、大阪市、京都市、神戸市を除く、国内の市町村とした。
社会人になって以降、自身の意向で、都道府県をまたぐ地方圏への移住をしたことがある移住経験者(N=7,866)のうち、最も経験者の多い移住タイプ(※2)は、故郷とは別の地域に移住する「Iターン型」で38.6%であった。次いで、故郷の市町村に移住する「Uターン型」が20.2%、主たる生活拠点を持ちつつ他の地域にも拠点を設けて行き来する「多拠点居住型」が3番目に多く17.3%となった。
図表1.移住経験者が経験した移住タイプ
*分類は、一般社団法人 移住・交流推進機構の定義を一部援用した。https://www.iju-join.jp/feature_cont/guide/003/02.html
移住経験者に、移住後の地域における暮らしについて、「その地域に住むこと自体に幸せを感じているか」を5段階(※3)で評価してもらったところ、「Uターン型」や「配偶者地縁型」は評価が高く、「Jターン型」「Iターン型」「多拠点居住型」は評価が低い傾向が見られた。Uターン型や配偶者地縁型は、その他の移住タイプに比べ、移住後の地域における情報や人脈を持っている場合が多い。そのため、リアリティショックや孤立などのリスクが低いことが影響していると考えられる。
※3 5段階(とてもそう思う~全くそう思わない)で評価
図表4.移住後の地域生活における幸せ実感
今後の移住を検討中である移住意向者(N=2,998)のうち、最も多く検討されている移住タイプは、故郷とは別の地域に移住する「Iターン型」で56.7%。次いで、主たる生活拠点を持ちつつ他の地域にも拠点を設けて行き来する「多拠点居住型」が40.1%となった。
図表5.移住意向者が検討している移住タイプ
⑤ 移住意向者の検討段階とテレワークの関係
移住意向者(※4)のうち、現在働いている企業において、テレワーク等により「在宅勤務」や「遠隔地居住」の働き方が可能な状況にある人ほど、近い将来の計画として移住を具体的に検討している。
図表6.移住の検討段階と、テレワーク環境との関係
⑥ 移住意向者の検討状況
移住意向者のうち51.3%は、何らかの不安があり移住に踏み切れないでいる。
図表7.移住意向者の移住検討状況
⑦ 移住意向者の移住時減収の許容幅
移住意向者に、移住時の減収について許容できる減収幅を聞いたところ、20代では46.7%が「減収は考えられない」と回答した。また、年代を経るごとに減収を許容する傾向も確認された。
図表8.移住意向者が許容できる移住時の減収幅
移住意向者に対し、移住検討時に影響する項目を聞くと、1位は「地域での日常的な買い物などで不便がない」、2位は「地域の医療体制が整っている」となった。また、3位・4位には「街並みの雰囲気」や「穏やかな暮らしの実現」といった曖昧で主観的な項目が挙がった。移住に際しては、生活上必要な具体的条件(生活基盤の担保)だけでなく、移住候補地に対してポジティブな印象や期待感を抱けるといった情緒的な側面も重視されているようだ。
図表9.移住検討時に影響する項目(TOP10)
特に、仕事面に関しては、5つの移住タイプすべてにおいて、直接的な要因・媒介要因(※5)のどちらかに「在宅勤務ができる」「勤務先がテレワークを許容する」が含まれる結果となった。働き方の選択肢が増える中で、子育てや介護などさまざまな個人の事情や、働き方への価値観の変化により、働く場所に対する個人の要望も多様化している。企業として、こうした従業員の働く場所の要望に対応できることは、優秀な人材の獲得・リテンションにもつながるだろう。移住に際する意思決定に影響する要因のうち、「在宅勤務」や「テレワーク」を可能にする環境整備は、企業が優先的に検討すべき施策となっていることがうかがえる。
また本調査では、その地域に住んでいることに幸せを感じる度合い(地域生活の幸せ実感)には、住居の快適さや、家族・友人、職場の人間関係といった人的なつながりと共に、「その地域への愛着(地域愛着)」がより影響することが分かった(図表11)。従来さまざまな研究から、私生活と職業生活の充実は互いに影響し合い、人生全体の幸福感を高めることが知られている。今回の調査では、それら私生活(住・生活満足)と職業生活(職業生活満足)に加え、愛着が持てる地域に住むこと(地域愛着)が幸せな生活を送るためのひとつの要因であることが見えてきた。「愛着を抱ける地域に暮らし、働くこと」を自ら選んで決めることによって、働く一人ひとりの人生がより豊かなものになれば、働く上でのパフォーマンスも期待できるだろう。こうした観点からも、従業員の移住や地方との交流のための支援は、企業にとって重要なものと考える。
※5 「直接的な要因」=移住に際する意思決定に直接的に影響する要因
「間接要因」=直接要因ほどではないが移住に際する意思決定に影響する要因
図表10.移住タイプ別 「移住の意思決定に影響する要因」
(直接相関量の大小順)
図表11.地域生活の幸せ実感(ウェルビーイング)の要因
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。企業のほか、自治体・働く個人への提言も掲載しています。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/migration-to-rural-areas.pdf
※図版内の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計と内訳の計は必ずしも一致しない場合があります。
■【株式会社パーソル総合研究所】<http://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開しています。グループの経営理念・サステナビリティ方針に沿って事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも積極的に取り組み、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX組織構築支援を行う「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。
・「移住」とは、自らが何らかの意思を持って、主たる生活拠点を別の地域に移すことと定義し、会社都合の転勤およびバカンスなどの行楽的滞在は除くこととした。一方で、2拠点居住やノマドワーカーなどについては、「多拠点居住」として統合し調査・分析の対象とした。
・「地方圏」とは、移住意向者・無関心者の移住検討先の地域より、東京23 区、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、大阪市、京都市、神戸市を除く、国内の市町村とした。
- 調査結果概要
社会人になって以降、自身の意向で、都道府県をまたぐ地方圏への移住をしたことがある移住経験者(N=7,866)のうち、最も経験者の多い移住タイプ(※2)は、故郷とは別の地域に移住する「Iターン型」で38.6%であった。次いで、故郷の市町村に移住する「Uターン型」が20.2%、主たる生活拠点を持ちつつ他の地域にも拠点を設けて行き来する「多拠点居住型」が3番目に多く17.3%となった。
図表1.移住経験者が経験した移住タイプ
(※2)本調査における移住タイプ
*分類は、一般社団法人 移住・交流推進機構の定義を一部援用した。https://www.iju-join.jp/feature_cont/guide/003/02.html
② 移住に伴う転職と年収増減の状況
移住経験者のうち、移住に伴って転職をしなかった人は53.4%(図表2)。移住に伴う年収変化は、58.6%が「変化なし」と回答した(「わからない・答えたくない」を除いて集計)(図表3)。従来、移住には転職が伴うと考えられ、移住促進に際し、地方圏に適した仕事がない点が課題視される傾向にあったが、今回の調査では《転職なき移住》が半数を占めることが明らかとなった。
図表2.移住に伴う転職状況
*図版内の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計と内訳の計は必ずしも一致しない場合がある。
図表3.移住に伴う年収増減
③ 移住後の生活に対する幸せの評価
移住経験者に、移住後の地域における暮らしについて、「その地域に住むこと自体に幸せを感じているか」を5段階(※3)で評価してもらったところ、「Uターン型」や「配偶者地縁型」は評価が高く、「Jターン型」「Iターン型」「多拠点居住型」は評価が低い傾向が見られた。Uターン型や配偶者地縁型は、その他の移住タイプに比べ、移住後の地域における情報や人脈を持っている場合が多い。そのため、リアリティショックや孤立などのリスクが低いことが影響していると考えられる。
※3 5段階(とてもそう思う~全くそう思わない)で評価
図表4.移住後の地域生活における幸せ実感
④ 希望する人が多い移住タイプ
今後の移住を検討中である移住意向者(N=2,998)のうち、最も多く検討されている移住タイプは、故郷とは別の地域に移住する「Iターン型」で56.7%。次いで、主たる生活拠点を持ちつつ他の地域にも拠点を設けて行き来する「多拠点居住型」が40.1%となった。
図表5.移住意向者が検討している移住タイプ
⑤ 移住意向者の検討段階とテレワークの関係
移住意向者(※4)のうち、現在働いている企業において、テレワーク等により「在宅勤務」や「遠隔地居住」の働き方が可能な状況にある人ほど、近い将来の計画として移住を具体的に検討している。
図表6.移住の検討段階と、テレワーク環境との関係
※4 移住意向者=「5年以内で計画」「10年以内で計画」「時期未定」の3層。「無関心者」は比較参考。
⑥ 移住意向者の検討状況
移住意向者のうち51.3%は、何らかの不安があり移住に踏み切れないでいる。
図表7.移住意向者の移住検討状況
⑦ 移住意向者の移住時減収の許容幅
移住意向者に、移住時の減収について許容できる減収幅を聞いたところ、20代では46.7%が「減収は考えられない」と回答した。また、年代を経るごとに減収を許容する傾向も確認された。
図表8.移住意向者が許容できる移住時の減収幅
⑧ 移住意向者の移住検討に影響する項目
移住意向者に対し、移住検討時に影響する項目を聞くと、1位は「地域での日常的な買い物などで不便がない」、2位は「地域の医療体制が整っている」となった。また、3位・4位には「街並みの雰囲気」や「穏やかな暮らしの実現」といった曖昧で主観的な項目が挙がった。移住に際しては、生活上必要な具体的条件(生活基盤の担保)だけでなく、移住候補地に対してポジティブな印象や期待感を抱けるといった情緒的な側面も重視されているようだ。
図表9.移住検討時に影響する項目(TOP10)
- 分析コメント ~「愛着を抱ける地域に暮らし、働くこと」を自分で選ぶことで、より豊かな人生へ~(パーソル総合研究所 主任研究員 井上 亮太郎)
人はどのようなことに影響されて「移住」という選択を行うのだろうか。移住に際する意思決定に影響する多様な要因について、本調査では、移住のタイプ別に異なるもの、共通するものがそれぞれ明らかになった(図表10)。
特に、仕事面に関しては、5つの移住タイプすべてにおいて、直接的な要因・媒介要因(※5)のどちらかに「在宅勤務ができる」「勤務先がテレワークを許容する」が含まれる結果となった。働き方の選択肢が増える中で、子育てや介護などさまざまな個人の事情や、働き方への価値観の変化により、働く場所に対する個人の要望も多様化している。企業として、こうした従業員の働く場所の要望に対応できることは、優秀な人材の獲得・リテンションにもつながるだろう。移住に際する意思決定に影響する要因のうち、「在宅勤務」や「テレワーク」を可能にする環境整備は、企業が優先的に検討すべき施策となっていることがうかがえる。
また本調査では、その地域に住んでいることに幸せを感じる度合い(地域生活の幸せ実感)には、住居の快適さや、家族・友人、職場の人間関係といった人的なつながりと共に、「その地域への愛着(地域愛着)」がより影響することが分かった(図表11)。従来さまざまな研究から、私生活と職業生活の充実は互いに影響し合い、人生全体の幸福感を高めることが知られている。今回の調査では、それら私生活(住・生活満足)と職業生活(職業生活満足)に加え、愛着が持てる地域に住むこと(地域愛着)が幸せな生活を送るためのひとつの要因であることが見えてきた。「愛着を抱ける地域に暮らし、働くこと」を自ら選んで決めることによって、働く一人ひとりの人生がより豊かなものになれば、働く上でのパフォーマンスも期待できるだろう。こうした観点からも、従業員の移住や地方との交流のための支援は、企業にとって重要なものと考える。
※5 「直接的な要因」=移住に際する意思決定に直接的に影響する要因
「間接要因」=直接要因ほどではないが移住に際する意思決定に影響する要因
図表10.移住タイプ別 「移住の意思決定に影響する要因」
(直接相関量の大小順)
図表11.地域生活の幸せ実感(ウェルビーイング)の要因
※本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
※調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。企業のほか、自治体・働く個人への提言も掲載しています。
URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/migration-to-rural-areas.pdf
※図版内の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計と内訳の計は必ずしも一致しない場合があります。
- 調査概要
■【株式会社パーソル総合研究所】<http://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開しています。グループの経営理念・サステナビリティ方針に沿って事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも積極的に取り組み、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX組織構築支援を行う「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。
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