レーザー照射がダイヤモンドの変質状態と導電性に与える影響を明らかに
~高電圧用のダイヤモンド電子デバイスの開発へ前進~
千葉大学大学院工学研究院の比田井洋史教授、尾松孝茂教授らの研究チームは、レーザーの照射により絶縁体であるダイヤモンド内部の一部が変質して導電性を示す現象について研究しました。その結果、試料に照射されるエネルギーの総量が小さいほど変質領域の導電性が高くなる、すなわちエネルギーが小さいほど変質量が多くなるという特異な現象を発見し、その原因を解明しました。これまで明らかになっていなかったレーザー照射条件によるダイヤモンド変質領域の形状と導電性の違いを明らかにした本研究結果は、ダイヤモンド変質領域を利用した高電圧用微細配線のような電子デバイス開発への貢献が期待されます。
本研究成果は、2022年10月31日に学術誌Scientific Reportsで公開されました。
本研究成果は、2022年10月31日に学術誌Scientific Reportsで公開されました。
- 研究の背景
角柱のダイヤモンドの内部でレーザー焦点を移動することで、図2のようにダイヤモンドの裏面からレーザー照射面である表面にかけて、黒色の変質領域がワイヤー状に作製できます。この性質を利用し、ダイヤモンド内部に文字を書き込んだり、電気伝導路として利用できることが報告されています。しかし、レーザー照射条件が変質領域の形状と導電性の関係に与える影響は未解明であるため、それらの制御は困難でした。
- 研究の内容と成果
次に、導電性について調査しました。ダイヤモンドを移動し、この速度と変質領域の太さ、導電性の関係を調べたところ、図4のような結果を得ました。○が変質領域の直径、□が導電性を示します。図の矢印で示すような領域では、ダイヤモンドの移動速度が速いほど、導電性が上昇し、ある値で急激に減少することがわかります。
これにより、【焦点移動速度が速い=単位長さあたりの総エネルギーが少ない】ほど導電性が上昇するという特異な現象を示す焦点移動速度の領域を発見しました。この現象は焦点移動速度が速いほど1パルスあたりの変質領域がより長くなることが必要であり、これはレーザー強度が高い部分でのみ、より効率的に変質されるためであると明らかにしました。図3で示した通り、変質領域の直径は焦点で最小になり、また、図4の通り焦点移動速度が速いと直径が徐々に小さくなることから、焦点移動速度が速いほどよりレーザー焦点に近い(レーザー強度が高い)位置で線状の変質が作製されたことによります。
また、図4の青点線より焦点移動速度が速い場合は、変質領域がワイヤー状につながらず不連続になるため、導電性が著しく減少することも明らかにしました。
- 今後の展望
- 用語解説
(注2)アモルファスカーボン:ダイヤモンドは炭素の結晶であり、同素体(同一元素で構成されているが配列が異なるもの)として、黒鉛(グラファイト)が知られている。アモルファスカーボンはダイヤモンド結合とグラファイト結合の両方を有しており、その結合比によって、物性が変化する。
- 研究プロジェクトについて
- 論文情報
著者:Daijiro Tokunaga, Masataka Sato, Sho Itoh, Hirofumi Hidai, Takashige Omatsu, Souta Matsusaka
雑誌名:Scientific Reports
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-022-21432-9
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