キヤノンの超高感度CMOSセンサーで高速かつ複数波長同時撮像を実現 京都大学岡山天文台の新観測システム「TriCCS」が本格稼働を開始
キヤノンの超高感度CMOSセンサーを採用した、京都大学岡山天文台(岡山県浅口市)のせいめい望遠鏡による新観測システム「TriCCS(トリックス)(※1)」が、2021年8月2日より本格稼働を開始します。
2018年に開設された京都大学岡山天文台は、可視光から近赤外領域を観測するせいめい望遠鏡の稼働を2019年2月から開始し、国内外の天文学者が同望遠鏡を研究活動に活用しています。新観測システム「TriCCS」は、高速で複数の波長の光を検出することが可能で、遠く離れた宇宙空間で発生した暗い天体や、光度が急激に変化する天体を観測することを目的としています。
「TriCCS」では、キヤノンの35mmフルサイズ超高感度CMOSセンサー「LI3030SAM」(2020年10月発売)などが採用されています。一辺19µm(マイクロメートル)の大きな画素により、0.0005lux(ルクス)(※2)の低照度環境下でも撮影可能な超高感度を実現しながら、画素が大型化すると増える傾向のあるノイズを低減しています。また、最大98fps(frames per second)の高速での撮影が可能です。このセンサーを搭載することで、遠くにあるために暗い超新星や、明るさの変化が速く撮影が難しい中性子星やブラックホールなどの天体が発する複数の波長の光を同時に観測することができます。また、キヤノンの超高感度CMOSセンサーを採用している東京大学木曽観測所の観測システム「トモエゴゼン」との連携により、発見された超新星に対して、数日以内に追究観測を行うこともできます。
キヤノンはこれからも、イメージングのリーディングカンパニーとして培ってきた技術力を生かして、科学技術の発展に寄与していきます。
■ 「TriCCS」に搭載されている超高感度CMOSセンサーに関するコメント
<京都大学大学院 理学研究科 附属天文台 岡山天文台 松林 和也 特定助教>
宇宙の天体は暗いものがほとんどで、観測には高感度で低ノイズのセンサーが必要です。キヤノンのセンサー「LI3030SAM」は高感度・低ノイズでありながら最大98 fpsでの撮影も可能なため、「TriCCS」の検出器として採用しました。一般的なCMOSセンサーでは感度が低くなる、波長800nm付近でも「LI3030SAM」は高い感度を有することも採用した理由の一つです。キヤノンのセンサーの特長を生かして新たな天体現象を捉え、人類にとって未知の多い宇宙の解明にまい進していきたいと考えています。キヤノンには、今後もセンサーのさらなる高感度化・多画素化を進めていただきたいです。
■ 「TriCCS」とは
「TriCCS」は可視光から近赤外領域の3色を同時に撮像することができる装置です。天体の発する光度(光の強さ)の検出器としてキヤノンの超高感度CMOSセンサー「LI3030SAM」と「35MMFHDXSMA」(2019年3月発売)が採用されました。
光度を検出する仕組みとしては、まず、gバンド、rバンド、iバンド/zバンドの波長の光(※3)を選択的に透過・反射できるダイクロイックミラーやフィルターを用いて分光し、3台のカメラに送ります。この際、3台のカメラに搭載された超高感度CMOSセンサーの特徴を生かし、それぞれ異なる3つの波長の光で見た画像を高速で同時に取得できるため、天体の微弱かつ短時間の光度変化の検出が可能となりました。
宇宙のさまざまな現象を高速かつ複数の波長で同時に動画撮影できる「TriCCS」で、恒星進化の最期の姿である超新星、中性子星やブラックホールなど、科学的に重要な天体の観測ができるようになることで、宇宙と生命の起源の解明に貢献することが期待されています。
※1 Tricolor CMOS Camera and Spectrographの略。
※2 三日月の月明りの明るさの目安が0.01lux。
※3 gバンド(波長:400~550nm)、rバンド(波長:550~690nm)、iバンド(波長:690~815nm)またはzバンド(波長:815~925nm)の三種類の波長データを取得できる。g/r/i/zバンドとは、天文学での波長域の呼び方。
*京都大学岡山天文台ホームページ
https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/general/facilities/okayama/
*京都大学広報紙『紅萠』大学院理学研究科 附属天文台 岡山天文台
https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/202003/shisetsu/
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