【CCCマーケティング総研レポート・生活者意識調査】新たな生活者意識を探るPART2
~商品に関するジェンダー意識調査~
CCCマーケティング株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:北村和彦)が設立した7,000万人の思いを紡ぐ研究所「CCCマーケティング総合研究所」(以下「CCCマーケティング総研」)は、このたび、「生活者意識調査・新たな生活者意識を探る~商品に関するジェンダー意識調査~」(https://www.cccmk.co.jp/thinktanks/column-27)を実施し、その結果をまとめました。
前回の「新たな生活者意識を探るPART1」(https://www.cccmk.co.jp/thinktanks/column-25)では、世の中にある商品やサービスに対し生活者の「違和感」について掘り下げてみました。私たちが、何気なく過ごしている中でも、人によって既存のサービスや商品に「違和感」を感じている層が一定数存在していることが分りました。
またその中でも、特に象徴的であったのは「ジェンダーに対する違和感」を、若い層ほど他の世代と比較してより高く認識している事が判明した事は、世代による感受性の違いをあらわにしたと思います。
今回も、CCCマーケティング総合研究所(以下「CCCマーケティング総研」)が2021年7月14日(水)~20日(火)にかけて、2,061人のT会員の皆様を対象に実施した「男性向け」「女性向け」「性別に関係なく誰でも購入できる」商品についてのアンケート調査を元に、「商品のジェンダーイメージ」や「自身と異なるジェンダー商品の購入実績・購入意欲」ついて掘り下げていきたいと思います。
※ご注意点
本コラムは商品に対する性別の意識や利用状況、商品に対するご意見を伺い、調査結果を公表することで、今の生活者の思いを理解いただくことを目的としています。本調査では、回答者のみなさまに性別をお伺いしておりません。そのため本コラムのグラフ図には、性別表記が無い事をあらかじめお知らせいたします。
- 人目に触れやすいものほど、ジェンダー志向が強い
まず初めに、商品のカテゴリ毎に、生活者が商品を「男性向け商品」「女性向け商品」として受け止めているのかを4つの心象で聞いてみました。<図1>は、①「男性向けあるいは女性向けに分かれている商品が多い」の回答が多かった項目から降順に表示しています。
上位にきている商品から確認してみたいと思います。グラフ右部分カテゴリに注目してみましょう。赤字で表記した衣類(主に外出時に着るもの)、化粧品:メイクアップ商品、身の回り品:靴・アクセサリー類は、「身に付けるもの」であり、主に自宅外、外出時において人目に触れる商品であると言えそうです。
次に、衣類に対象を絞って見ていきたいと思います。衣類においても、着用する場所を意識して見てみますと、「主に家の中で着るもの」と「主に外出時に着るもの」で比較すると、「主に外出時に着るもの」のジェンダー意識が7ポイント高くなっており、興味深い結果となっています。
続いて、トイレタリー商品について見てみると、整髪料・シャンプー・コンディショナー・ボディシート・ボディソープ等のトイレタリー商品が、グラフ下部に並んでいることに目が留まります。これらトイレタリー商品について、利用する場所を考えてみると、自宅内もしくは、限りなくプライベートに近い場所で利用する機会が多い事に気が付きます。中でも、シャンプー・コンディショナー・ボディソープ類などは、浴室での利用になり同居家族内での共同利用をしているご家庭もあることでしょう。
そして、一部の商品を提供するメーカー企業では、キャッチコピーに「赤ちゃんから大人まで」と言った性別や世代を超えて使える商品のイメージ展開を図っている事も、家族内利用ひいてはジェンダーレスを促進させている要因のひとつかもしれません。
これらの自宅外利用と自宅内利用の「利用する場所」によって商品のジェンダー意識が異なる事象が見られることから、生活者は、周りの人の目に触れるであろう場所で利用する商品ほど、その商品自体が持つジェンダー的な要素を意識している生活者が多いと言えるのではないでしょうか。
続いて、<図1>の商品項目から、世代間でのギャップが大きく見受けられた商品を2つご紹介したいと思います。
1つ目は、靴<図2>を見てみましょう。10代・20代は、靴への「特定の性別向けということは感じない」と回答している層が2割近くになっています。若者層が、カジュアルに履く靴「スニーカー」は、性別でのデザイン差は多くなく、サイズ展開、機能、色での違いによって生活者は選んでいると推測できます。その中でも、前回の「新たな生活者意識を探るPART1」(https://www.cccmk.co.jp/thinktanks/column-25)でもご案内しましたが、色に対する若者層の意識は「男性向けと女性向けで色のバリエーションが異なる事に違和感を覚える層」が多くいました。つまり、若者層がスニーカーを選ぶ際のポイントは、より他の世代よりもジェンダーの垣根が低くなっているのではないでしょうか。
続いて<図3>化粧水・乳液について見てみましょう。化粧水・乳液については、10代・20代の約23%が「特定の性別向けということは感じない」と回答している部分が特徴的と言えるでしょう。
まず、化粧水・乳液を使い始めるシーンから想像してみたいと思います。小さい子どもが、お母さんの化粧水・乳液に興味を持つこともありますが、現実的には思春期になり吹き出物などでお肌の悩みが出てくると、男女共にケア用品として化粧水・乳液を使い始める人も一定数いるのではないでしょうか。また、時期を同じくして美意識に目覚めることもありますし、男性の場合は髭を剃ることでカミソリ負けした肌トラブルの悩みを持つ方も出てくるかもしれません。
自身の肌に対しての「悩み」を得たときに、現在はインターネットで「悩み」を検索し、商品に行きつくカスタマージャーニーが用意されています。自身の「悩み」を解決に導いてくれる商品であれば、「女性向け」「男性向け」は大切なポイントではなくなってくると推察されます。
このような背景から、化粧水・乳液も悩みを解決してくれるひとつの手段として捉えられると、特定の性別向けの商品であるという回答が少なくなっていくのは必然と言えるのかもしれません
- 約6割が、自身の身体的な性別とは異なる商品を購入している
しかし、「男性向け商品」だから女性は購入しないのでしょうか?また、もちろん逆のパターンもあるでしょう。
<図4>では、自身の身体的な性別とは異なる商品を購入したことがあるのか「経験」について、生活者の声を見ていきたいと思います。
まず、全体から見てみたいと思います。全体の2割を超える生活者が「あえて自身の身体的な性別とは異なる商品を購入したことがある」と回答しています。これは、「この商品は男性向けだから、男性に購入して欲しい」(もちろん、逆のケースもあります)という商品から発せられる無言のメッセージをあえて捉えずに、商品の持つ本質を見極め、捉え、自身の「好み」や自身に「似合う」もの、自身の「価値観と合致する」ものを、「ジェンダーニュートラル」な状態でとらえている行動と言えるかもしれません。
続いて「どちらの性別向けか意識せずに自身の身体的な性別とは異なる商品を購入したことがある」と回答した「無意識の購入者」は全体で3割を超えています。これらの「ジェンダーニュートラル」「無意識の購入者」で全体の約6割になり、半数以上が自身の身体的な性別とは異なる商品の購入経験がある事がわかります
- 商品のジェンダーレス化を65%が支持。受け入れられる鍵は、「良いもの」
驚く事に、「積極的に購入したい」と「良いものがあったら購入したい」と購入に前向きな回答は、全体65%となっており、これは、<図4>で購入実績がある総数58%を上回っています。つまり、この数字から商品のジェンダーレスに対して前向きな層が過半数を超えていると言えます。
次に、年代別の購入意向も確認したいと思います。「積極的に購入したい」は圧倒的に10代が多く、若い層ほど商品に対してのジェンダーレス化が進んでいると、ここでも言ってもよいでしょう。
しかし、注目すべきは、すべての年代で「良いものがあったら購入したい」と購入に前向きな回答が最多数を占めている事ではないでしょうか。
すべての年代で「良いものがあったら購入したい」この回答の多さからも、これからの生活者が本当に求める商品の本質は、男性向け・女性向けとして前提定義されるものではないようです。
生活者の課題解決や、生活者が必要としている価値が提供される商品の姿が、今後はより望まれていくのではないかと想像してしまいます。
今回は、「商品のジェンダーイメージ」や「自身と異なるジェンダー商品の購入実績・購入意欲」を掘り下げてきました。次回は、「自身と異なるジェンダー商品の購入実績・購入意欲」を更に深堀し、商品のジェンダーレス化により近しい商品について探っていきたいと思います。
【調査設計】
調査地域 :全国
調査対象者:男女16~79歳のT会員
サンプル数:2,061サンプル
調査期間 :2021年7月14日(水)~7月20日(火)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)
【CCCマーケティング総合研究所について】
消費データ、生活者のインサイトや心の変化、さらには社会環境や経済情勢などを踏まえ、生活者のみなさまの「ちょっといいな」を実現するために役立つ情報を発信することを目的に、活動しています。2020年より、オープンイノベーションプラットフォームとして「学生マーケティング研究会」を立ち上げ、学生の皆さまにとっては「より実務に近い形でマーケティングを経験する場」、企業の皆さまにとっては「若者の視点や声を知る場」としての活動を展開中です。
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