【岡山大学】岡山の古墳人は「炊いたお米」を食べていた? 歯石内残留デンプン粒の検出から得られた新たな知見

国立大学法人岡山大学

岡山大学は10学部・1プログラム、8研究科、4研究所、附属病院、附属学校を有する総合大学型の国立大学法人です。
今回、最新の研究成果をわかりやすく紹介する「FOCUS ON」を2022年6月30日に発行しました。ぜびご覧ください!
2022(令和4)年 7月 11日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 



<発表のポイント>
  • 古代人の歯石を分析し、当時の食物に由来するデンプンの粒を検出しました。
  • 粒の特徴から岡山県の古墳時代の人々が「炊いたコメ」を主食としていた可能性が示唆されました。


◆発表者
 岡山大学大学院社会文化科学研究科 岩本紗采 大学院生
 岡山大学文明動態学研究所 鈴木真太郎 教授


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:槇野博史)の大学院社会文化科学研究科の岩本紗采大学院生と岡山大学文明動態学研究所(RIDC)の鈴木真太郎教授は、古人骨の歯列に張り付いた歯石を特殊な顕微鏡で分析し、古代の人々の日々の食事に由来するデンプンの粒を見つけ出すことに成功しました。デンプン粒は植物の種類により特徴が異なり、また調理の方法によって様々な形態の変化を起こします。
 今回、古墳時代の人骨2体から、共通して多くの「コメ」と思われるデンプン粒が検出され、全てに「水のある状態で加熱された」特徴が見て取れました。これは、その他の様々な研究と比較検討すると、「炊き上げによる炊飯」に由来する可能性が最も高い特徴です。
 歯石内残存デンプン粒の研究は国内ではまだほとんど成功例のない画期的な研究です。今後も分析手法をさらに洗練させ、日本の古代の食の実態解明の一助となることが期待されています。
 

古墳人の歯石から検出された「炊いたコメ」と思われるデンプン粒の像。スケールは5マイクロメートル。古墳人の歯石から検出された「炊いたコメ」と思われるデンプン粒の像。スケールは5マイクロメートル。



◆導 入:古墳人は何を食べていたのか?
 古人骨の研究からは古代の社会のさまざまな様相をうかがい知ることができます。しかし、岡山の古墳人骨の、特に彼らの食べ物に関する詳細な研究は未だに限定的で、水田の遺構や遺跡で発見された植物遺体を根拠にする研究が主として行われてきました。
 こういった状況下、本研究では古人骨から直接彼らの食料事情を研究することで、岡山の『食の歴史』についてさらに理解を深めます。


◆背 景:歯石内残存デンプン粒の研究とは?
 デンプン粒の研究は、国内では主に調理に使われた土器に対して行われており、優れた成果をあげています。調理具の表面に残った植物由来のデンプン粒の大きさや形を検討することで、古代の人々が食べていたものを推定するのです。
 一方で古人骨の歯石内にも彼らが食べていた食物由来のデンプン粒が取り込まれることが知られています。しかし、これを直接分析する研究は国内にほとんど例がありませんでした。数少ない先行研究では、試料を事前に処理することなく、ただ破砕して観察する手法が取られていたため、歯石内に取り込まれたデンプン粒を検出しきれなかった可能性が考えられます。
 これに対し、本研究では試料を事前に薬品で処理し、歯石に取り込まれたデンプン粒を見つけやすくする工夫を施しました。近年海外で大きな成果をあげている手法です。


◆研究内容、業績: 歯石内デンプン粒研究の鍵は?
 今回新たに導入した歯石処理方法では、まず遠心機を使って試料から汚染物質を取り除く作業を繰り返し行います。その後はヘキサメタリン酸ナトリウムという試薬を用いて、凝集しているデンプン粒を分散させ、試料を希釈塩酸に溶かすことでデンプン粒を見つけやすい状態にします。これによって国内資料ではほとんど成功例のなかった「古代のデンプン粒を直接古代人の口の中から検出すること」が可能になりました。今回検出されたデンプン粒の特徴からは「古墳時代における炊飯」の可能性が示唆されています。


◆展 望:古代の食べ物事情の時代を追った変遷
 本研究では古墳時代の人骨と合わせて縄文時代とされる人骨も1体分析しています。その結果それぞれの時代に明白に異なる植物および調理法のパターンが存在していたことが分かりました。古墳時代の「炊いたお米」という所見に対し、縄文時代の試料では「堅果類を中心とした複数の種類の植物が食べられており、またその種類に応じて多様な調理法を駆使していた」という様相が見て取ることができたのです。
 今後は分析資料を増やして、その他の多様な先行研究と合わせてよく吟味することで、地域の、そして日本の『食の歴史』のさらなる解明を目指します。


・補足・用語説明
 今回分析対象としたのは、津山市桑山南5号墳出土人骨、岡山市飯盛山東1号墳出土人骨、倉敷市冨田村貝塚/月の木貝塚出土人骨です。現在、総社市狩谷5号墳、6号墳から出土した古墳人骨、岡山市津寺遺跡出土の中世人骨へ、順次分析対象を拡大して研究を継続しています。より詳細な研究成果がまとまり次第、専門誌へ論文を発表する予定です。調査の機会を与えてくださった岡山大学清家章教授、岡山県古代吉備文化財センター、倉敷考古館、岡山理科大学、総社市に感謝申し上げます。

 

◆参考情報
・岡山大学文明動態学研究所(RIDC)
 https://ridc.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学大学院 社会文化科学研究科
 http://shabun.ccsv.okayama-u.ac.jp/


◆参考情報:FOCUS ON
・【岡山大学】全身性エリテマトーデスで免疫力が低下する原因分子を同定
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000419.000072793.html
・【岡山大学】酵母が必要としている栄養素を酵母に語らせる技術を開発
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000072793.html
・【岡山大学】神経内分泌腫瘍治療への新しい挑戦 ~新しい放射線治療の導入~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000582.000072793.html
・【岡山大学】岡山大学病院麻酔科蘇生科におけるAcute Pain Serviceへの取り組み ~手術を受ける患者様への安全・安心・満足度向上を目指して~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000615.000072793.html
・【岡山大学】フェイクコンテンツの真偽判定技術 ~AIによるウソ発見器~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000703.000072793.html
・【岡山大学】新炭素材料Qカーボンでエネルギー・環境問題に挑戦
  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000708.000072793.html

 

岡山大学文明動態学研究所(RIDC)が所在する岡山大学津島キャンパス(岡山市北区)岡山大学文明動態学研究所(RIDC)が所在する岡山大学津島キャンパス(岡山市北区)



◆本件お問い合わせ先
 岡山大学文明動態学研究所 教授 鈴木真太郎
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3丁目1番1号 岡山大学津島キャンパス
 TEL&FAX:086-251-7418
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/arch/about/suzuki.html

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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000736.000072793.html

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国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています

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086-252-1111
代表者名
那須保友
上場
未上場
資本金
-
設立
1949年05月