<アデランス研究開発チーム>健常人と疾患患者の毛髪成分分析に関する論文が医学誌「SKIN SURGERY」に掲載
1. 研究背景
人生100年時代、健康寿命の延伸及び健康格差の縮小の実現に向けて、生活習慣病の疾病予防、重症化予防に対し、健康診断の大きな役割が期待されています。しかし、健康診断にはいくつかの課題があり、今後更なる進化が求められています。例えば、健康診断の検査項目である「採血検査」や「尿検査」などは広く普及している検査手法ですが、これらの検査は、直前の食事内容や水分摂取量等の影響を受けて結果が変動するため、得られるデータが不安定であるといわれています。さらに、健康診断を受けるには病院や健診センターに行かなければいけないといった課題もあります。
そこで、当研究グループは健康診断のこれらの課題を解決する新しい診断方法として「毛髪検査」に着目しました。毛髪検査は、病院に行かなくても毛髪を郵送するだけで検体が受渡できる利便性や、血液や尿よりも長期間安定した健康データの取得が可能といったメリットがあると考えています。
当研究グループは、毛髪を用いて、科学的な根拠に基づく、安定した健康管理指標の確立に向けて研究に取り組んでいます。
2. 研究内容
健常人と6疾患(糖尿病、高血圧、男性型脱毛症、アルツハイマー型認知症、うつ病、脳梗塞)の毛髪を分析することで、これらの疾患の早期発見につながるマーカー※1を探索しました。毛髪に含まれるアミノ酸、ミネラル、ホルモンの成分を詳細に解析した結果、健常人の毛髪に比べてそれぞれの疾患毛髪に多い成分や少ない成分を特定しました。
3. 今後の展望
当研究グループは、本研究を通じて、毛髪から多くの組成成分情報を取得することができました。そして、健常者と各種疾患患者間で、毛髪中成分量の有意差が認められる成分が存在し、毛髪中の疾患マーカーに関する過去の報告と一致する成分も多く認められました。この結果より、毛髪は生体内状況の記録媒体として、有益な試料となりうる可能性が示唆されました。今後、各疾患を対象とした前向きコホート研究※2を実施し、治療の効果や治療経過などに着目することで、生体内イベントと毛髪中成分の因果関係を明確化されることが期待されます。また、健常人と各疾患の未治療者を比較することで、毛髪におけるより有効な疾患マーカーを同定したいと考えております。さらに、血液や尿といった日内変動の大きい体液とは異なる、毛髪独自の有用性を明らかにし、毛髪検査の実用化を目指して研究を進めて参ります。
※1 疾患の有無、病状の変化、治療の効果などの指標となる項目や生体内物質
※2 さまざまな要因を研究開始時に把握し、時間の流れに沿って、健康状態の変化などを追跡する研究
4. 学会誌の紹介
「SKIN SURGERY」は、日本臨床毛髪学会と日本臨床皮膚外科学会が共同で年間2、3誌発行する医学誌です。発刊が始まった1992年から現在まで、毛髪や皮膚に関する基礎研究から臨床研究まで幅広い研究論文を掲載しています。
5. 論文情報
●学会誌名称
SKIN SURGERY(32巻1号)
●雑誌URL
https://www.jsds.jp/essay_search/journal_list.php
●発行日
2023年6月30日
●題名
毛髪における疾患マーカー同定に向けたマルチオミクス解析
●研究グループ
杉元 啓悟1、太田 あつ子1、北村 弘明1、小川 美帆2、3、堂前 直4、
奥野 広樹5、高橋 和也5、池田 和貴6、冨田 努7、松岡 直樹8、
松石 邦隆8、猪熊 哲朗8、長野 徹8、武尾 真2、辻 孝2、3
1株式会社アデランス
2国立研究開発法人理化学研究所 生命機能科学研究センター 器官誘導研究チーム
3株式会社オーガンテクノロジーズ
4国立研究開発法人理化学研究所 環境資源科学研究センター 技術基盤部門 生命分子解析ユニット
5国立研究開発法人理化学研究所 仁科加速器科学研究センター
6公益財団法人かずさDNA研究所 生体分子解析グループ
7国立研究開発法人国立循環器病研究センター バイオバンク
8地方独立行政法人神戸市立医療センター中央市民病院
株式会社アデランスは、おかげ様で2023年をもって創業55周年を迎えます。新時代を表す「NEXT ADERANS」として掲げ、創業当初からの理念「世界のブランド アデランス」を目指し、毛髪・美容・健康・医療・衛生のグローバルウェルネスカンパニーとして夢と感動を提供し続けていきます。
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