高校1年生と英語教師の英語スピーキング能力の実態を調査。高校生は“定型的な受け答えならできる”、教師は“英語で授業が可能”なレベルという結果に-『アルク英語教育実態レポートVol.6』4月22日発表

高校生がスピーキング力を伸ばすには「文の形で話す」練習がカギ。教師が授業中の英語使用をさらに増やすには意識改革も必要か

株式会社アルク

株式会社アルク(東京都杉並区永福 代表取締役社長:野田 亨、以下アルク)は本日、『アルク英語教育実態レポート(Vol.6) 日本の高校生の英語スピーキング能力実態調査Ⅰ-3年間追跡調査における1年目調査レポート-』を発表しました。近年、大学の英語入学試験に、「話す」「書く」も含めた4技能試験を導入する動きが活発ですが、高校生の英語スピーキング能力の実態についてはまだ調査・研究が少ないのが現実です。そこで、英語学習者に成果をもたらす有益な方法を調査・研究する「アルク教育総合研究所」が、高校生は準備なしに英語をどの程度「話せる」のか、またその能力レベルの背景にはどのような学習や授業があるのか、教師のスピーキング能力と合わせて調査・分析しました。
「アルク教育総合研究所」は、日本の高校生の英語スピーキング能力とその学習実態を明らかにするため、2015年度の高校1年生323人を対象にした、3年間に渡る追跡調査を実施しています。調査協力校の日本人英語教師の英語スピーキング能力と授業実態も同時に調査することで、高校生の英語を話す能力の実態を多角的に検証します。英語スピーキング能力の測定には、電話で受験できる英語のスピーキングテスト「TSST(Telephone Standard Speaking Test)」(詳細:http://tsst.alc.co.jp/)を使用しました。この度発表する『日本の高校生の英語スピーキング能力実態調査Ⅰ-3年間追跡調査における1年目調査レポート-』(http://www.alc.co.jp/press/report/pdf/alc_report_20160422.pdf)では、その1年目の結果を公開いたします。

【調査対象】
日本の高校3校(※)に通う高校1年生323人と、その高校に勤務する日本人英語教師30人。
※特色の異なる3校に協力を仰ぐことで、大きな偏りなく、日本の高校生の実態に近い姿をあぶり出すことを目指した。

【調査結果】
■高校生
1.    高校1年生は、「定型的な受け答えならできる」9段階評価のレベル3が67.2%

高校1年生の英語スピーキング力は、67.2%が「レストランでの食事の注文など身近な話題についてのある程度定型的な受け答えは、暗記した表現を多く使ってかなりできる」レベル(9段階評価[※]のレベル3)。「質問されて沈黙してしまう」レベル(9段階評価のレベル1)はいない(図1)。

※TSSTの9段階評価は、レベル1が最も低く9が最も高い力を表します。
 

 

2.    スピーキング力向上には、「自分で簡単な文を作りだす」練習がカギ
高校1年次に「身近である程度定型的な受け答えはかなりできる」レベルの生徒が、高校卒業までに目指したい1段階上のレベル「自分の学んでいることや学校生活について簡単に概要を説明するなど、社会生活の維持に必要な受け答えが何とかできる」レベル(9段階評価のレベル4)へ到達するには、語彙・文法学習に加えて「自分で簡単な文を作り出して話す」練習が必要である。

3.    スピーキング力が高い生徒が多い学校は、英語の授業での「会話・ディスカッション」が盛ん
高校生の96.1%が、授業中に30%以上英語を使う場面があるが(図2)、どのような活動で使うかは学校により異なる。3校中、スピーキング能力が最も高いB高校(9段階のレベル2がほとんどおらず、他校に比べてレベル4が多い。図3参照)では65.7%が、英語の授業中に英語を使う具体的な活動として「会話・ディスカッション」を挙げていた(図4)。これは他の2校の3倍以上と際立って多い。スピーキング力が高い生徒が多いと、「会話・ディスカッション」を授業に取り入れやすい、もしくはそうした活動を実施することで生徒のスピーキング力が上がる、といった関係性が伺える。
 

 

 

 

4.    自宅では「単語・文法・教科書」の学習が中心。「話す」練習は少ない
自宅でする学習は、「単語・文法・教科書」に関する学習が多く、「自分で文を作って話す」ことにつながる学習はあまり行われていない。
 

 

■英語教師
1.    「英語で授業ができる」スピーキング力を持つ教師が多い
英語教師の英語スピーキング力は、「多少の不自由さはあっても英語で仕事ができる」レベル(9段階評価のレベル6以上)を満たす人が6割。残りの4割もほとんどがその1段階下のレベルに集中している(図6)。スピーキング力の面では「事前準備等をしっかりと行えば、英語で授業を行うことができる」教師が多い。
 

 

2.    授業を部分的に 英語で行っている教師が多い
82.4%の教師が、授業中の発話の25%以上を英語で行っている(図7)。
 

 

3.    教師の英語使用が多いと、生徒も多くなる
授業での生徒の英語使用率は、教師と同じ(41.2%)か、それより少ない(35.3%、図8)。教師が英語を多く使っていると、生徒も英語を多く使う傾向がある。
 

 

4.    教師は授業でもっと英語を使いたい。しかし不安もある
82.4%の教師が、授業中の発話の25%以上を英語で行っているにもかかわらず、76.5%の教師は、授業で理想通り英語を使用できていないと考えている(図9)。その背景には、「日本語で説明しないと生徒が理解できたかどうか不安になる」といった生徒側の状況や「授業で教師の話す英語は正しいお手本でなければならないと考えているが、常に正しい英語を使えるか不安」という教師側の状況などがある。
 

 

【まとめ・考察】
高校生は、授業と自宅学習で「文を作り出す」学習を増やすことが必要
教師が、生徒のロールモデルとしてより多く英語を使うことも生徒のスピーキング力向上につながる


高校1年生の英語スピーキング力は、9段階評価で「レベル3」が最も多く67.2%を占める結果となりました。その背景として、生徒のスピーキング力が高い学校では、授業に「会話・ディスカッション」を多く取り入れていることが分かりました。他校においても、英語活動を活発化させることでスピーキング力が向上し、その結果、さらに英語活動が活性化する好循環が生まれるのではないかと思われます。また、自宅学習では、「自分で文を作り出す」練習はあまり行われていないので、そうした「文を作る」活動を自宅学習にいかに取り入れるかも、今後のスピーキング力アップのポイントになると言えます。

英語教師のスピーキング力については、その6割が、「大きな支障なく英語で授業を行える」レベル6以上でした。教師の7割以上は自身の英語使用の割合に満足しておらず、増やしたいと思っています。教師が思ったように英語を使わない理由として、「内容によっては日本語で説明しないと生徒が理解できないかもしれない」といった生徒側の事情と、「教師は誤った英語を使用すべきでないが、授業中に常に正しい英語を使えるかどうか不安」といった教師側の事情が存在します。後者については、教師自身がネイティブスピーカーでないがゆえに犯す「英語の小さな誤り」をある程度許容しながら、生徒のロールモデルとして、授業の目的を果たすためにきちんと準備し最大限英語を使おうとしている姿勢を見せることが必要なのではないでしょうか。教師の英語使用が多いと、生徒の英語使用も多くなる、という結果からも分かるように、教師が積極的に英語を使用することが、生徒の英語使用を促し、生徒のスピーキング能力を伸ばすことにつながると思われます。

今後、大学入試等、高校生や教師を取り巻く環境が変わる中で、2015年度の高校1年生がどのような学習を積み、教師がどのような授業を展開するのか、そしてそれがスピーキング力の変化にどのように反映されるのか、2016年、17年度に追跡調査・分析を重ね、明らかにしていきます。

【アルク英語教育実態レポート】
URL:http://www.alc.co.jp/press/report/pdf/alc_report_20160422.pdf
URL:http://www.alc.co.jp/company/report/(アルク調査レポート)
URL:http://www.alc.co.jp/company/pressrelease/ (プレスリリース)

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[アルクとは]
アルクは、1969年4月の創業以来、企業理念として「地球人ネットワークを創る」を掲げ、実践的な語学力を身につける教材の開発をすすめてきた出版社です。『ENGLISH JOURNAL』などの学習情報誌をはじめ、受講者数延べ120万人の通信講座「ヒアリングマラソン」シリーズ、書籍、eラーニング教材、各種デジタルコンテンツの提供など、語学分野における学習者向けの様々な支援を行っております。
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本社所在地
東京都品川区北品川6-7-29 ガーデンシティ品川御殿山 3階
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代表者名
天野 智之
上場
未上場
資本金
1億円
設立
1969年04月