アカエイの淡水進出を可能にする腎機能の解明 -なぜエイ類にはサメ類よりも汽水域や淡水域に生息する種が多いのか?-
東京大学と岡山大学の共同研究成果プレスリリースです
2022(令和4)年 8月 10日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
<発表のポイント>
◆概 要
東京大学大気海洋研究所と国立遺伝学研究所、理化学研究所、岡山大学の共同研究グループは、アカエイの淡水進出を可能にする腎臓の機能を初めて明らかにしました。
板鰓類(エイ類・サメ類)は、ほとんどが海水にのみ生息する種ですが、例外的に河川などの淡水環境にも適応できる能力(広塩性)を持つ種が存在します。これまでの先行研究によって、広塩性のサメ類であるオオメジロザメでは、腎臓のネフロンの特定分節で発現する膜輸送体の遺伝子が淡水適応に重要であることが示唆されていましたが、このメカニズムがすべての広塩性板鰓類に共通かは不明でした。
本研究では、淡水に移行したアカエイの血液・尿の組成と、腎臓での遺伝子発現を詳細に解析することで、オオメジロザメとは異なるネフロンの分節が、淡水中での溶質再吸収亢進に大きく貢献することを明らかにしました。
本研究の成果は、板鰓類における広塩性の機能発達と獲得起源についての進化的洞察を提供するもので、希少な広塩性板鰓類の生活史研究や保全の推進にも貢献することが期待されます。
本研究成果は、2022年8月9日(英国夏時間)に「Frontiers in Physiology」のオンライン版に掲載されました。
◆論文情報
雑 誌 名:Frontiers in Physiology(2022年8月9日付)
タイトル:Molecular and morphological investigations on the renal mechanisms enabling euryhalinity of red stingray Hemitrygon akajei
著 者:Naotaka Aburatani*, Wataru Takagi*, Marty Kwok-Shing Wong, Shigehiro Kuraku, Chiharu Tanegashima, Mitsutaka Kadota, Kazuhiro Saito, Waichiro Godo, Tatsuya Sakamoto, Susumu Hyodo
D O I:10.3389/fphys.2022.953665
U R L:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2022.953665/abstract
◆研究資金
本研究は科研費「川を遡上するオオメジロザメの広塩性に関する生理生態学的研究(17H03868)」「軟骨魚類研究への逆遺伝学的解析の導入(19K22414)」「軟骨魚類の広塩性メカニズムの解明:「海水魚」がなぜ低塩分環境に適応できるのか(21J20882)」の支援により実施されました。
◆発表者
油谷 直孝(東京大学大学院理学系研究科 博士課程)
高木 亙(東京大学大気海洋研究所 助教)
齊藤 和裕(岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所 技術専門職員)
坂本 竜哉(岡山大学学術研究院自然科学学域/岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所 教授)
工樂 樹洋(国立遺伝学研究所 教授)
兵藤 晋(東京大学大気海洋研究所 教授)
◆詳しいプレスリリースについて
アカエイの淡水進出を可能にする腎機能の解明-なぜエイ類にはサメ類よりも汽水域や淡水域に生息する種が多いのか?-
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20220809-1.pdf
◆参 考
・東京大学大気海洋研究所
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/
・岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所
https://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/
・国立遺伝学研究所
https://www.nig.ac.jp
◆本件お問い合わせ先
<研究に関して>
東京大学大気海洋研究所 海洋生命システム研究系海洋生命科学部門
助教 高木 亙(たかぎ わたる)
東京大学大気海洋研究所 海洋生命システム研究系海洋生命科学部門
教授 兵藤 晋(ひょうどう すすむ)
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
「岡大TV」(YouTube):https://www.youtube.com/channel/UCi4hPHf_jZ1FXqJfsacUqaw
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2022年8月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000794.000072793.html
岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
<発表のポイント>
- 海水と淡水の両環境に適応可能なアカエイが、淡水環境において腎臓での溶質の再吸収を亢進するメカニズムを遺伝子レベルで初めて解析しました。
- 板鰓類(サメ類・エイ類)の中でも、エイ類のアカエイは、サメ類であるオオメジロザメとは異なるメカニズムで淡水環境に適応していることがわかりました。
- 本研究成果は、板鰓類における広塩性の進化と、広塩性種の生活史の理解に繋がる重要な基礎的知見を提供し、希少な広塩性板鰓類の生活史研究や保全の推進にも貢献することが期待されます。
◆概 要
東京大学大気海洋研究所と国立遺伝学研究所、理化学研究所、岡山大学の共同研究グループは、アカエイの淡水進出を可能にする腎臓の機能を初めて明らかにしました。
板鰓類(エイ類・サメ類)は、ほとんどが海水にのみ生息する種ですが、例外的に河川などの淡水環境にも適応できる能力(広塩性)を持つ種が存在します。これまでの先行研究によって、広塩性のサメ類であるオオメジロザメでは、腎臓のネフロンの特定分節で発現する膜輸送体の遺伝子が淡水適応に重要であることが示唆されていましたが、このメカニズムがすべての広塩性板鰓類に共通かは不明でした。
本研究では、淡水に移行したアカエイの血液・尿の組成と、腎臓での遺伝子発現を詳細に解析することで、オオメジロザメとは異なるネフロンの分節が、淡水中での溶質再吸収亢進に大きく貢献することを明らかにしました。
本研究の成果は、板鰓類における広塩性の機能発達と獲得起源についての進化的洞察を提供するもので、希少な広塩性板鰓類の生活史研究や保全の推進にも貢献することが期待されます。
本研究成果は、2022年8月9日(英国夏時間)に「Frontiers in Physiology」のオンライン版に掲載されました。
本研究で用いたアカエイ(Hemitrygon akajei)。日本を含む東アジアに広く分布する。
淡水移行に伴うアカエイの体液(尿・血液)組成の変化。尿中濃度と血中濃度の比をとることで、正規化を行っている。淡水移行したアカエイでは、腎臓での溶質再吸収が亢進するため、尿中の浸透圧と塩分(Na+およびCl-濃度)が低下し、結果として尿中濃度と血中濃度の比が小さな値になる。
アカエイの海水及び淡水移行個体の腎臓でのNKCC2とNKAの遺伝子局在解析。それぞれの遺伝子が発現する分節は、その発現量に応じて紫~青色の発色を呈する。矢じりで示す遠位尿細管前部(EDT)では、淡水環境下で両遺伝子の発現量が上昇し、海水個体よりも強い発色を呈する。スケールバーは50 μmを表す。
◆論文情報
雑 誌 名:Frontiers in Physiology(2022年8月9日付)
タイトル:Molecular and morphological investigations on the renal mechanisms enabling euryhalinity of red stingray Hemitrygon akajei
著 者:Naotaka Aburatani*, Wataru Takagi*, Marty Kwok-Shing Wong, Shigehiro Kuraku, Chiharu Tanegashima, Mitsutaka Kadota, Kazuhiro Saito, Waichiro Godo, Tatsuya Sakamoto, Susumu Hyodo
D O I:10.3389/fphys.2022.953665
U R L:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2022.953665/abstract
◆研究資金
本研究は科研費「川を遡上するオオメジロザメの広塩性に関する生理生態学的研究(17H03868)」「軟骨魚類研究への逆遺伝学的解析の導入(19K22414)」「軟骨魚類の広塩性メカニズムの解明:「海水魚」がなぜ低塩分環境に適応できるのか(21J20882)」の支援により実施されました。
◆発表者
油谷 直孝(東京大学大学院理学系研究科 博士課程)
高木 亙(東京大学大気海洋研究所 助教)
齊藤 和裕(岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所 技術専門職員)
坂本 竜哉(岡山大学学術研究院自然科学学域/岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所 教授)
工樂 樹洋(国立遺伝学研究所 教授)
兵藤 晋(東京大学大気海洋研究所 教授)
◆詳しいプレスリリースについて
アカエイの淡水進出を可能にする腎機能の解明-なぜエイ類にはサメ類よりも汽水域や淡水域に生息する種が多いのか?-
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20220809-1.pdf
◆参 考
・東京大学大気海洋研究所
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/
・岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所
https://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/
・国立遺伝学研究所
https://www.nig.ac.jp
◆本件お問い合わせ先
<研究に関して>
東京大学大気海洋研究所 海洋生命システム研究系海洋生命科学部門
助教 高木 亙(たかぎ わたる)
東京大学大気海洋研究所 海洋生命システム研究系海洋生命科学部門
教授 兵藤 晋(ひょうどう すすむ)
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
「岡大TV」(YouTube):https://www.youtube.com/channel/UCi4hPHf_jZ1FXqJfsacUqaw
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2022年8月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000794.000072793.html
岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html
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