夏のボーナス、前年より「増加」が約4割 支給額は平均2.0%増、規模間格差が顕著

2024年夏季賞与の動向アンケート

株式会社帝国データバンク

大企業で満額回答が相次いだ2024年の春闘。賃金と物価の好循環が強まり、景気の本格的な回復が期待されるなか、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」によると、2024年4月の就業者1人当たりの基本給などにあたる所定内給与は、前年同月比2.3%増と約30年ぶりの高い伸び率となった。しかし一方で、物価の変動を反映した実質賃金は、過去最長の25カ月連続で減少する結果となり、依然として物価の上昇に賃上げが追いついていない状況が続いている。
名目賃金が上昇しているにも関わらず実質賃金の減少が続き、個人消費への下押し圧力が強まるなか、夏のボーナスが消費を上向かせることができるか注目が集まっている。
そこで帝国データバンクは、2024年夏季賞与についてアンケートを行った。

<調査結果(要旨)>

  1. 夏季賞与、企業の約4割で1人当たり平均支給額が前年より「増加」

  2. 「大企業」の約5割で夏季賞与が「増加」。一方、「小規模企業」は全体を10ポイント下回る

  3.  1人当たり支給額は前年から平均+2.0%。「大企業」は+4.1%の一方、「中小企業」は+1.7%となり、規模間格差が目立つ

※アンケート期間は2024年6月7日~11日、有効回答企業数は1,021社(インターネット調査)

※調査機関:株式会社帝国データバンク

※本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している



2024年夏季賞与、企業の約4割で1人当たり平均支給額が前年より「増加」

                     

                
2024年の夏季賞与[1]の支給状況について尋ねたところ、「賞与はあり、増加する」と回答した企業の割合は39.5%(前年比2.1ポイント増)となった。「賞与はあり、変わらない」は34.2%(同2.2ポイント減)、「賞与はあるが、減少する」は11.3%(同2.0ポイント増)で、合計すると、『賞与あり』の企業は85.0%となり、前年(83.1%)から1.9ポイント上昇した。一方で、「賞与はない」企業は10.3%(同0.9ポイント減)だった。


[1] 従業員1人当たりの平均支給額。ボーナス、一時金、寸志など含む


「賞与はあり、増加する」とした企業からは、「賃上げムードもあるが、業績が好調なのが一番の要因」(鉄鋼・非鉄・鉱業)という声があるなど、業績の回復をあげた企業が多数みられた。


他方、「利益は減少したが、賃上げと賞与アップをしないと従業員の定着が困難になってくる」(情報サービス)や「物価が高騰するなか社員の生活を支えるために、増額を検討している」(自動車・同部品小売)のように、業績は改善していないものの、物価高騰に対する従業員の経済的負担の軽減や従業員のモチベーション維持を理由に賞与を増やす企業も少なくなかった。


4月に大幅な給与のベースアップがあったため支給額も増加する」(建材・家具、窯業・土石製品製造)のように、ベースアップしたことにより賞与の支給額も増加するとの声もあがった一方、「賃上げ率が低く基本給も多くないので、賞与で還元する」(機械製造)との声も聞かれた。

一方で、「賞与はあり、減少する」企業からは、「円安にともなう仕入価格の高騰分を十分に価格転嫁できず、利益が大幅に減少してしまったため、前年比50%減の支給になった」(輸送用機械・器具製造)のように、原料費の高騰などによる収益悪化を理由にあげる企業が多かった。



「大企業」の約5割で夏季賞与が「増加」。一方、「小規模企業」は全体を10ポイント下回る

               

  

規模別に「賞与はあり、増加する」企業の割合をみると、「大企業」は前年比4.9ポイント増の47.2%となり、全体(39.5%)を7.7ポイント上回った。


他方、「中小企業」は同1.7ポイント増の38.2%、「小規模企業」は同1.9ポイント増の29.2%と、前年と比べて夏季賞与が増加すると回答した企業の割合が「大企業」よりも小幅な上昇にとどまった。

また、「小規模企業」では夏季賞与が「増加」すると回答した企業の割合が全体より約10ポイント低くなっており、依然として企業規模間に格差がみられる。



夏季賞与1人当たり支給額は前年から平均2.0%増。規模間格差が顕著

   

             

2024年の夏季賞与の従業員1人当たり平均支給額について、前年からの増減を尋ねたところ、夏季賞与の1人当たり支給額は前年から平均で+2.0%だった[1]。前年(+2.4%)を0.4ポイント下回った。


規模別にみると、「大企業」は+4.1%で、前年からは0.6ポイント上昇した。他方、「中小企業」は前年から0.5ポイント低下して+1.7%となった。「中小企業」の増加率は「大企業」を2.4ポイント下回っており、規模間格差が目立つ結果となった。

中小企業からは「大企業は賃上げや賞与の増額を行っているが、中小企業は苦しい」(飲食料品・飼料製造)や「大企業は利益が大きいようだが、その恩恵は自社のようなサプライヤーには還元されず賞与を減らすこととなった」(鉄鋼・非鉄・鉱業)といった厳しい声が聞かれた。



[1] 増減率の平均は、「100%以上増(100%減)」「70~100%未満増(減)」「40~70%未満増(減)」「20~40%未満増(減)」「10~20%未満増(減)」「7~10%未満増(減)」「5~7%未満増(減)」「3~5%未満増(減)」「1~3%未満増(減)」「1%未満増(減)」「変わらない(0%)」の各選択肢のレンジの中間値を回答数で加重平均したもの(ただし、「100%以上増」は100%として算出)



   

企業からの主な声「賞与はあり、増加する」

  • ベースアップや業績改善による増額(建設)

  • 増収増益と物価高への支援および社員のモチベーション向上のため(不動産)

  •  雇用の維持および、求人応募者を増加させるために賞与を増やした(化学品製造)

  •  業績の上向きの兆しがみえてきたこと、および従業員の生活を考慮し賞与を大胆に増加させた。経費が若干コストダウンできたことも一因だった(機械・器具卸売)

  •  大企業における賞与支給が増えているといったニュースが流れて景気が良いと思われがちだが、中小企業では利益を上げることが難しいなかで、ベースアップや賞与の増額などで人件費の割合が上昇し厳しい状況(娯楽サービス)

      

企業からの主な声「賞与はあり、変わらない」または「賞与はあり、減少する」 

  • 円安による仕入原価の上昇と賃金ベースアップなどのコスト増、価格転嫁の厳しい状況などにより、業績給の側面が強い賞与は横ばいとなる見込み(機械・器具卸売)

  • 未だコロナ前の売上高に戻らないため、賞与の減少はやむを得ないと言わざるを得ない(飲食店)

  •  経営現況を鑑みれば、前年比10%程度の減額としたい。しかしながら、物価高の継続に対し社員を守る意味も含めて前年比変化なしとしている(建材・家具、窯業・土石製品卸売)

  • 資源・エネルギー価格高騰および為替変動リスクが大きく、業績悪化により賞与は減額(機械・器具卸売)

      

企業からの主な声「賞与はない」

  •  建設業は2024年問題の対応で、ボーナス支給どころではない。受注単価が上がらないなか、工期の長期化が利益を圧迫している(建設)

  • 経営状況が悪いため賞与はなく、来年も出すまでに至らないと思う。しかし、来年はベースアップをしたい(繊維・繊維製品・服飾品卸売)



 本アンケートの結果、2024年夏は企業の85%がボーナスや一時金などを含め何らかの賞与を支給する予定であることが明らかになった。なかでも賞与が増加する企業は約4割となり、支給額は前年よりも平均で2.0%増加すると見込まれることが分かった。


賞与を増やす理由として、業績の回復のほか、従業員のモチベーション維持や物価高騰による従業員の経済的負担の軽減を理由にあげる企業も少なくなかった。他方、賞与を減らす企業の多くは、原料費の高騰などによる収益悪化を理由にあげていた。


賞与支給予定の企業は多いものの、今後はエネルギー価格の高騰に対する政府の補助金の終了などによる電気代の値上がりや、円安の進行などを背景とした食品の値上げなどにより、消費拡大への効果は限定的にとどまる可能性もある。物価の高騰に負けない賞与を含む賃金の上昇、および「持続的な賃上げ」が実現できるかが注目されている。

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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月