【高島屋・東神開発】「高島屋・東神開発都市文化賞」を設立

            ― 現代における 都市文化とはなにか? ―

株式会社髙島屋

株式会社高島屋(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:村田善郎、以下「高島屋」)と、その連結子会社である東神開発株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役社長:倉本真祐、以下「東神開発」)は、現代における新たな都市文化の創造に寄与すべく、「高島屋・東神開発都市文化賞」を設立いたします。

高島屋・東神開発都市文化賞 ロゴ

■設立趣旨

「都市文化」という語が、かつてほどに明確な意味を持たなくなってきています。このたび、高島屋と東神開発が設立する「高島屋・東神開発都市文化賞」は、この曖昧さを出発点とし、都市文化とは何かを改めて問い直すための試みです。

本賞は、優れた著作物を顕彰するかたちをとりますが、本質的には、都市文化に対する「継続する問い」であると位置づけています。わたしたちは、1年間にわたって審査員らとともに繰り広げるトークイベント等を通じ、「都市文化とはなにか」という問いに開かれた思考の場を築いていきます。すなわち本賞は、単なる賞制度ではなく、都市文化をめぐって探求と実践が交差するプロセスであり、可動し続ける実験のフィールドでもあります。

企業活動と並走してこの取り組みを行うことで、わたしたちはむしろ問いかけたいと考えています。企業と社会、消費と文化、経済と倫理は、どのように関係しうるのか。都市における「豊かさ」とは、いったい何を意味するのか。確かな言葉で未来を語ることは難しくとも、その輪郭を描き出すことは可能かもしれません。

本賞が、都市文化に関心を寄せる多くの方々にとって思考の触媒となれたなら、これに勝る喜びはありません。

◾️選考概要

現代における都市文化を、商業や消費等の観点から独創的な視座のもとに分析し、私たちの社会、そして将来に新たな示唆をもたらすような優れた表現活動を挙げた著作物を顕彰します。

毎年1月以降、1年間に刊行された日本語の著作を対象とし、選考にあたっては、推薦委員協力のもと、審査員6名が受賞作を選出します。受賞者には賞状と記念品、副賞100万円を贈呈。あわせて受賞記念イベントの開催も予定しております。

*本賞は公募ではありません。詳細はWEBをご参照ください。

◾️2025審査員(五十音順)

審査員長 五十嵐 太郎 (いがらし・たろう)

賞の設立に寄せて

かつて圧倒的に物資が不足していた時代、あるいは景気が上向きだった時代は、ものさえあれば、飛ぶように売れていた。が、失われた30年とまで言われるように、景気が長期的に低迷し、一方でオンラインを介した商品の流通が存在感を増している。そうした状況において、わたしたちが都市文化を享受するとは、どのような意味をもつのだろうか。

少し前に世界を席巻したコロナ禍は、当たり前のように思っていた体験の価値を気づかせてくれた。すなわち、街に出かけ、散策し、映画や展覧会を鑑賞したり、買い物や飲食をするなど、コンピュータの画面では代替できない行為を楽しむこと。例えば、複製技術が発展した結果、音楽業界において人が集まるフェス、ライブ、会場での物販が重要になったように、都市の魅力はその場に身を置くことでしか体験できない。

今回、創設される賞は、現代の都市文化に対し、新しい示唆をもたらすような著作物を顕彰するものだ。手にとって読む本は、研究、評論、小説、漫画、写真集など、さまざまな形式をとりうるメディアのパッケージである。ウェブの時代に、改めて本の力を感じさせるとともに、街への独創的な回路をもった著作と出会うことを期待している。

1967年、フランス・パリ生まれ。東北大学大学院工学研究科教授。博士(工学)。専門は建築史・建築批評。芸術選奨文部科学大臣新人賞。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2008日本館コミッショナー、あいちトリエンナーレ2013芸術監督をつとめる。「3.11以後の建築」展、「戦後日本住宅伝説」展、「インポッシブル・アーキテクチャー」展、「Windowology」展、「アニメ背景美術に描かれた都市」展、「さらに装飾をひもとく」展、「猪熊弦一郎博覧会」などを監修・キュレーション。京都賞の思想・芸術部門の専門委員、梓会出版文化賞、グッドデザイン賞などの審査員を担当。著作は『過防備都市』(中央公論新社、2004年)、『美しい都市・醜い都市』(中央公論新社、2006年)、『被災地を歩きながら考えたこと』(みすず書房、2011年)、『モダニズム崩壊後の建築』(青土社、2018年)、『建築の東京』(みすず書房、2020年)、『増補新版 新宗教と巨大建築』(青土社、2022年)、『増補版 戦争と建築』(晶文社、2022年)、『誰のための排除アート』(岩波書店、2022年)、『現代建築宣言文集1960-2020』(彰国社、2022年、編著)など多数。

審査員 大山 顕 (おおやま・けん)

賞の設立に寄せて

寺山修司の「書を捨てよ、町へ出よう」の一節は、さまざまな場面でアレンジされて使われてきた。言うまでもなく、書を"持って"町へ出た方がいい。実際、同書名のなかで寺山はたくさんの成書からの引用文を披露している。都市の場末の人々の生き様をしたためるのに、書は必須だったわけだ。

ぼくにとって、都市は永遠の謎である。おそらくすべての人にとってもそうだろう。ぼくは学生のころから、都市について論じたものが大好きだ。それらを読んでから町に出ると、すべてが違って見える。そうやってぼくは写真家になった。都市風景とは記述されて、しかるのちに知覚されるものなのだとぼくは思う。本の数だけ都市の風景がある。

同書のなかで寺山は「手は、生産的だが、足は消費的である」と言っている。読んだ後、町を歩き回ってみたくなる本に出会いたい。

1972 年生まれ。写真家・評論家。立教大学社会学部講師。代表作に『撮るあなたを撮るわたしを』(2024年 講談社)、『新写真論 スマホと顔』(2020年 ゲンロン叢書・2023年日本写真協会学芸賞受賞)、『立体交差』(2019年 本の雑誌社・2020年土木学会出版文化賞)、『工場萌え』(石井哲との共著 2007年 東京書籍)など。X:@sohsai /Instagram: ken_ohyama

審査員 小田原 のどか (おだわら・のどか)

賞の設立に寄せて

現代における都市文化とはなにか。かような問いを掲げた「高島屋・東神開発都市文化賞」の最初の審査員のひとりにお声がけいただいたことを光栄に思います。企業による芸術文化支援(メセナ)活動が縮小傾向にある日本において、本賞は新風となることでしょう。企業の経済活動による環境負荷と資源の消費、そして労働力の占有を前提に、文化活動による次世代への還元としてメセナ活動を位置づけたのは、メセナ協議会の初代理事長であった故・福原義春氏でした。百貨店業を軸とし、まちづくりに取り組む高島屋と東神開発だからこそ実現できる、本賞を通じた次世代への還元の未来像に、大いに期待いたします。審査員のジェンダーバランスとともに、審査にかかる倫理規定が設けられたことにも、しなやかな決意がうかがえます。不動の権威を付与するためではなく、多様な価値観の交差点となること。そうした、まさに都市文化のありようを体現するかのような本賞の誕生を言祝ぎたいと思います。

彫刻家、評論家。版元代表。芸術学博士(筑波大学)。1985年宮城県仙台市生。彫刻を起点に、公共性、ジェンダー、帝国主義、インターセクショナリティの視点をふまえ、理論と実践の両輪で〈美術史〉を再検討する。個展「近代を彫刻/超克する」を国際芸術センター青森(2021〜2022年)、つなぎ美術館(2023〜2024年)で開催。あいちトリエンナーレ2019などの国際芸術祭、国立西洋美術館、東京都写真美術館での企画展に参加。主な著作に『モニュメント原論:思想的課題としての彫刻』(青土社、2023年)、『この国(近代日本)の芸術:〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』(山本浩貴との共編著、月曜社、2023年)、『近代を彫刻/超克する』(講談社、2021年)など。主宰する版元・書肆九十九(しょしつくも)から金川晋吾写真集『祈り/長崎』、『豊嶋康子作品集1989–2022』、『原爆後の75年:長崎の記憶と記録をたどる』(長崎原爆の戦後史をのこす会編)を刊行。横浜国立大学都市社会共生学科教員。

審査員 木ノ下 裕一 (きのした・ゆういち)

賞の設立に寄せて

演劇人という職業柄、日本各地の劇場でお仕事することが多く、年がら年中、旅しております。列車に乗って、通過する駅名や地名を眺めているだけで、楽しいわけです。狭い島国のことですから、たいていの土地は古典の舞台になっています。ああ、このあたりでヤマトタケルが深手を負ったのだな、とか、この線路は源義経が都落ちしたルートだなとか、退屈しません。まるで、能のワキにでもなったかのように、ヤマトタケルや義経の幻影を、車窓の外に見ながら移動しています。

「土地」は、記憶を孕みます。まず公の歴史や史実があり、そのまわりに無数の神話や伝説や説話があり、連綿と続いてきた人々の暮らし、汗と血があり。しかし、残念ながら、それらの「記憶」、現代の私たちの脳内ではやや薄らいできているようにも感じます。

もう一度「都市」について考える意義はこのあたりにあるようです。記憶の地層を丹念にほぐし、見つめ、切り取って、その先を考える。私たちの立っている現在地を、都市への考察を武器に、正しく把握し、一緒に未来を考える。本賞は、そんなサロンのようなものだと私は受け止めています。私も一緒に勉強させていただくつもりで、僭越ながらお引き受けしました。

木ノ下歌舞伎 主宰。まつもと市民芸術館芸術監督団団長。1985年和歌山市生まれ。2006 年に古典演目上演の補綴・監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。代表作に『娘道成寺』『隅田川』『義経千本桜 渡海屋・大物浦』『糸井版 摂州合邦辻』『三人吉三廓初買』など。2016年に上演した『勧進帳』の成果に対して、平成28年度文化庁芸術祭新人賞を受賞。渋谷・コクーン歌舞伎『切られの与三』(2018)の補綴、神田伯山への講談台本の提供など、外部での古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。NHK第2「おしゃべりな古典教室」パーソナリティ。著書に『物語の生まれる場所へ 歌舞伎の源流を旅する』(淡交社)がある。

審査員 瀧波 ユカリ (たきなみ・ゆかり)

賞の設立に寄せて

都市とは流動する巨大な多面体である。その都市に接する私たちもまた流動し、多面的であり続ける生命体である。ゆえに私たちは同じ都市にいたとしても、同じ都市を見ていない。そんな私たちが都市を思う時にできるのは、自分は今このように都市を眼差しているのだと表現することと、そうした表現を通して都市の姿を捉えようと試みることではないだろうか。その一連の営みに寄与するであろう本賞の審査員として、また都市に接し生きるひとりとして、選考に関われることを光栄に思う。

漫画家。1980年に札幌市に生まれ、小学生からは釧路市で育つ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、2004年に月刊アフタヌーンに投稿した4コマ漫画『臨死!!江古田ちゃん』が受賞し漫画家デビュー。同作はアニメ化やテレビドラマ化もされる人気作品となった。他に、実母の闘病と看取りを描き米アイズナー賞にノミネートされた実録漫画『ありがとうって言えたなら』、テレビドラマ化された恋愛コメディ漫画『モトカレマニア』、育児エッセイ『はるまき日記』など著作多数。現在は講談社のウェブマガジン「&Sofa」にてフェミニズムをテーマにした漫画『わたしたちは無痛恋愛がしたい』を連載中。コメンテーターやラジオパーソナリティとしても活動している。

審査員 富永 京子 (とみなが・きょうこ)

賞の設立に寄せて

物質的な消費や豊かさが人々から遠ざかっている現代において、「百貨店」という存在は、これまでと同様に捉えられる場ではなくなっているかもしれません。しかし、百貨店は物質的な消費の場であるのみならず、文化を生み出す拠点であり、人々を解放しエンパワーする空間でもあるのではないかと考えています。少なくとも私自身は、ファッションから自己を表現していいという解放を与えられ、化粧品にコンプレックスとの付き合い方や楽しみ方を教えられ、嗜好品から生活をやり過ごすひとときの癒しを与えられ、アートから鮮烈な刺激を貰いながら生きてきました。このように多くの人々を解放し、力づけてきた百貨店という場が、時空やメディアを越境しながら「都市」「文化」の形成と発展に対して支援を行う、この賞がその一助となればと思ってやみません。

1986年生まれ。立命館大学産業社会学部准教授。専攻は社会運動論、文化社会学。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。ほかライデン大学特別研究員、ウィーン大学特別研究員など。著書に『社会運動のサブカルチャー化』『みんなの「わがまま」入門』『「ビックリハウス」と政治関心の戦後史』、論文に ”Social reproduction and the limitations of protest camps”(Social Movement Studies)など。主に若者文化を通じて日本社会における社会運動と政治関心の戦後史を研究する一方、各種新聞・ニュース番組、ファッション誌、カルチャーメディア、文芸誌など幅広いメディアに寄稿・出演しながら、社会変革と文化の接点を探り続けている。

◾️ロゴ

創業期の高島屋は国内外の博覧会への出展を積極的に行い、そこでの受賞実績が企業の認知度やブランドの形成につながっていきました。今回、本賞のロゴにあしらわれた月桂樹のモチーフは当時の意匠に着想を得たものです。高島屋が明治期に国際的な評価を受けて価値を見出されたように、創設されたばかりの本賞も、今後長い時間をかけて同時代の都市文化を見つめ、育んでゆく存在でありたいとの願いが込められています。

ロゴとは本来、意味を固定するためのものですが、本賞においては、あえて意味の流動性を引き受けています。変化しつづける都市と、そこに生きる人びとの営みのように、このロゴもまた一つのかたちにとどまることなく、複数の姿を通じて自らを更新し続けていきます。

初年度は20種のバリエーションが用意されており、今後も都市文化の変化とともに、ロゴ自体も更新を重ねていく予定です。都市がとどまらない存在であるように、この賞の象徴もまた、継続と変化のあいだに積極的に身を置くことを意図しています。

<高島屋・東神開発都市文化賞>

■HP       https://www.takashimaya.co.jp/urbancultureaward/

■X       @toshibunka

■Instagram  @toshibunka_shou

<お問合せ先>

「高島屋・東神開発都市文化賞」事務局宛メール urbancultureaward@ad.takashimaya.co.jp

もしくは、上記HPの「CONTACT」からお問合せください。

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会社概要

株式会社髙島屋

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URL
https://www.takashimaya.co.jp/
業種
商業(卸売業、小売業)
本社所在地
東京都中央区日本橋2-12-10 髙島屋グループ本社ビル
電話番号
-
代表者名
村田善郎
上場
東証1部
資本金
660億2500万円
設立
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