「子宮頸がん」に関する意識調査

~個々のヘルスリテラシーが、がんや治療法の正しい知識にも影響~

株式会社エムティーアイ

 株式会社エムティーアイが運営する、ライフステージや悩みにあわせて女性の一生をサポートする健康情報サービス『ルナルナ』は、東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座と共同で、「子宮頸がん」についてアンケートとクイズを実施しました。ルナルナ通信Vol.56ではその結果をお届けします。
 本調査では、子宮頸がん検診やヒトパピローマウイルスワクチン(以下、「HPVワクチン」)の接種率をはじめとするアンケートや、『ルナルナ』としては初めて、健康や医療に関する正しい情報を入手し正しく理解し活用する力である“ヘルスリテラシー”を計るとともに、“ヘルスリテラシー”の高低が医療知識に対してどのような影響をあたえているかを調べました。
 子宮頸がんは早期発見、早期治療することで治る可能性も比較的高くなり、HPVワクチンによって予防できる場合もあります。また、罹患した場合も、症状や治療法について正しい知識があることで、自身の希望に沿った治療の選択肢を広げることができるため、今回の調査結果が正しい知識を学ぶきっかけになることを願っています。
■ 子宮頸がんの予防効果のあるHPVワクチンの接種率は、20代でも約5割
Q. あなたは、子宮頸がんワクチンを接種しましたか。

 最初に、子宮頸がんを予防する効果のあるHPVワクチンを接種したことがあるかを聞いたところ、全体では「ある」15.9%、「ない」83.4%となり、8割以上の人が受けたことのない結果となりました。

 年代別に見てみると、20代では「接種したことがある」52.2%と半数以上に接種経験がありますが、30代以降は「接種したことがない」が9割以上となりました。HPVワクチンは、平成25年度から定期接種(公費助成)となり、小学校6年から高校1年相当の女子であれば公費で接種が可能です。そのため、現在20代の人は定期接種として受けた経験がある人が多いのかもしれません。
 一方で、HPVワクチンの積極的勧奨が約8年間差し控えられていたことも影響してか、20代でも46.5%と半数弱の人が「接種したことがない」と回答しています。令和3年11月には、改めてワクチンの安全性・接種による有効性が認められ、厚生労働省からHPVワクチンの積極的勧奨再開の通達が出されました。定期接種の対象年齢の間に接種を逃した人(平成9年度生まれから平成17年度生まれの女性)は、あらためて公費での接種の機会を提供するキャッチアップ接種※1を実施していますので、希望される人は、お住いの自治体へ問合せしてみることをおすすめします。
 子宮頸がんのほとんどは「ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)」が原因ということが分かっており、性的接触のある女性であれば50%以上が生涯で一度はHPVに感染するとされていますが、HPVワクチン接種により子宮頸がん全体の50から70%の原因とされる2種類のHPVの感染などを防ぐことができると言われています※2。以前、ルナルナで行った調査でもHPVワクチンの接種を考えていない理由として「接種後の副反応が心配だから」という回答が最も多い結果となりました※3。副反応を心配する声も根強いですが、ワクチン接種は自身の健康を守る手段のひとつでもあるため、メリットとリスクを医師や家族と相談しながら判断して欲しいと思います。

■ 定期的に子宮頸がん検診を受けている人は3割ほど、年齢が若いほど受けたことがない結果に
Q. あなたは、子宮頸がん検診を知っていますか。

 続いて、子宮頸がん検診を受けたことがあるかをたずねてみると、全体では「検診を受けたことがある」78.6%が最も多い結果となりました。
 しかし年代別で見ると、30代以上は8割以上が受けたことがあると回答しているのに対し、20代は56.3%と約30ポイント近く下がる結果となりました。また、「聞いたことがあり、内容も知っている(検診は受けたことがない)」16.5%と「聞いたことはあるが、内容は知らない」26.6%を合わせると、20代女性の4割以上は子宮頸がん検診を受けたことがないことが分かります。

Q. 「検診を受けたことがある」と答えた方にお聞きします。子宮頸がん検診を受けている頻度を教えてください。
 20歳以上の女性は、2年に1回の頻度で子宮頸がん検診を受けることが推奨されていますが、検診を受けたことがある人は、定期的に受診しているのでしょうか。
 最も多かった回答は「受けたことはあるが、定期的には(2年に1回など)受けていない」46.2%、次いで「20歳-21歳から定期的に(2年に1回ずつなど)受けている」35.5%となり、健康意識の高いルナルナユーザーでも、推奨通り受けている人は3割ほどとなりました。
 子宮頸がんは若い年齢層で発症する割合が比較的高く、発症する割合は20代から上昇し、40代でピークを迎えます。早期に発見されれば、治療により治癒しやすいがんとされていますが、初期の頃にはほとんど症状のないことが多いため、定期的に子宮頸がん検診を受診し、早期発見・早期治療に努めることが重要です。

■ 子宮頸がん検診を受けない理由は、検査に伴う苦痛や経済的負担が上位に

Q. これまで子宮頸がん検診を受けてこなかった理由を教えてください(複数回答:上位6つ)

 では、子宮頸がん検診について「聞いたことがあり、内容も知っている(検診は受けたことがない)」と回答した人を対象に、受けてこなかった理由をたずねました。
 1位が「検査に伴う苦痛に不安があるから」37.7%、2位が「受ける時間がないから」33.8%、3位が「費用がかかり経済的にも負担になるから」22.3%となりました。
 子宮頸がん検診は、内診の際に視触診したり、器具を挿入して細胞を採取するなど、「怖い」、「痛い」、「恥ずかしい」といったネガティブなイメージを持つ人も多いと思います。しかし、実際の検診の時間は5分ほどと短時間で終わることも多く、自治体によっては検診の費用を全額または一部負担しています。初めて検診を受ける際は緊張するかもしれませんが、自身の健康を守るためにも、その一歩を踏み出してほしいと思います。



今回のアンケートでは、健康や医療に関する正しい情報を入手し、正しく理解し活用する力である“ヘルスリテラシー”についての調査※4と、がんや治療法に関するクイズも実施しましたので、その一部を紹介します。

■ 約8割がテレビやインターネットなどの情報を、信頼できると判断するのは難しいと感じている!
Q. メディア(テレビ、インターネット、その他のメディア)から得た健康リスク(危険性)の情報が信頼できるかどうかを判断することは簡単ですか?

 「とても簡単」3.5%と「やや簡単」17.3%を合わせると、簡単と感じている人は約2割となり、「やや難しい」54.9%、「とても難しい」22.3%を合わせると約8割の人が、信頼できる情報と判断するのが難しいと感じているようです。

Q. 気になる病気の治療に関する情報を見つけることは簡単ですか?
 「とても簡単」6.0%と「やや簡単」34.5%を合わせると、簡単と感じている人は4割ほどとなり、「やや難しい」46.0%、「とても難しい」9.3%を合わせると半数以上の人が、病気に関する情報を見つけることが難しいと感じていることが分かります。

Q. ストレスや抑うつなどの心の健康問題への対処方法に関する情報を見つけることは簡単ですか?
「とても簡単」6.2%と「やや簡単」30.4%を合わせると、簡単と感じている人は4割弱ほどとなり、「やや難しい」45.1%、「とても難しい」15.5%を合わせると6割以上の人が、心の健康問題への対処方法に関する情報を見つけることが難しいと感じているようです。
 現在はインターネットなどからいつでもどこでも自分が知りたい情報へ簡単にアクセスすることが可能です。その反面、大量にある情報の中から、正しい情報や信頼できる情報を見つけることは難しいと感じている人が多くいることが分かりました。

 

■ がんや放射線治療に関するクイズの正答率は、ヘルスリテラシーの高低が最も影響している!
 続いて、がんの治療法のひとつである放射線治療と子宮のがんに関するクイズを実施しました。
 クイズの正答率は、前述で紹介したヘルスリテラシーが高かった人※5ほど上昇することが分かりました。放射線治療に関するクイズでは、ヘルスリテラシーが高いと分類された人の正答率が60.5%で最も高く、子宮のがんに関するクイズでも、ヘルスリテラシーが高いと分類された人の正答率が59.6%と最も高くなりました。また、年齢による差はなく、学歴や年収、がんの罹患歴、家族の放射線治療歴などを加味しても、それぞれのクイズ正答率はヘルスリテラシーの高低が最も強く関係しているという結果となりました。
 ヘルスリテラシーという言葉は、まだまだ聞きなれない人も多いかもしれませんが、医療に関する正しい情報を取捨選択することは、自身の健康のためにも必要な能力と言えます。そのため、あふれる情報の中から、自身に本当に必要な正しい情報を見極めることが重要となり、得られた情報をそのままうのみにせずに、疑問や不安があるときは、医師など専門家に相談することも大切だと感じます。


 今回の調査では、女性の健康に関する正しい知識を発信する『ルナルナ』としても、ユーザーにとって本当に必要で信頼できる情報を届ける重要性を改めて再認識する結果となりました。
 今後も「FEMCATION®(フェムケーション)※6」を通じて、年齢や性別を問わず誰もが、女性のカラダやココロについて正しく学べる機会を創出し、あらゆる女性たちが、より生きやすく、暮らしやすく、働きやすい社会の実現の一助となることを目指します。

≪東京大学医学部附属病院放射線科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一先生からのコメント≫

 世の中には、発症原因も分からなければ、治療法も存在しない「難病」もたくさんあります。その点、がんは、「ヘルスリテラシー」を高めることで、ある程度は「コントロールできる」病気です。今回の調査でも、年齢、学歴、年収、がんの罹患歴などを加味しても、クイズ正答率をもっとも左右するのがヘルスリテラシーであることが分かりました。
 子宮頸がんは性交渉によるHPVが原因のほぼ100%で、17歳より前にワクチンを接種すれば発症率が12%になるという報告もあり※7、そのデータから考えるとHPV予防ワクチンで発がんの約9割を予防できる可能性があります。治療法も、ある程度進行したがんでは、放射線治療が治療のメインになり、手術より後遺症もすくないと言えますが、日本では国際的なガイドラインに沿っていない手術もまだまだ行われています。
 今回の結果では、健康に関心が高いルナルナユーザーでも、推奨通り子宮頸がん検診を受けているのは3割程度にとどまっていました。放射線治療ではがんの完治は困難、保険がきかない、などの誤った印象も多くみられました。
 今後は、ヘルスリテラシーの向上に向けた取り組みの他、ワクチンの効果や副反応についてもさらなる啓発が必要だと思います。
 最後になりますが、ルナルナユーザーの皆さまに心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。


調査実施時期:2022年9月26日(金)~2022年10月3日(火)
調査方法および人数:『ルナルナ』、『ルナルナWeb』、『ルナルナ 体温ノート』、『ルナルナ ベビー』にて調査
回収回答数:2,044名
有効回答数:研究参加に同意した20歳以上の女性、かつ「がんの診断歴」の質問とヘルスリテラシーに関する質問12問中10問以上に回答し、がんに関するクイズにすべて回答した方1,478名

※1:厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html
※2:厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A 問2-8. HPVワクチンはどれ位効くのですか?」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html#Q2-8
※3:ルナルナ通信Vol.51「HPVワクチンに関する意識調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001053.000002943.html
※4:本アンケート内の計12問のヘルスリテラシーに関する質問は、世界的に使われている尺度 HLS-EU-Q47の日本語版 J-HLS-EU-Q47のさらに短縮版であるHLS-Q12の日本語版を使用しました。
※5: HLS-Q12日本語版の回答結果をもとにヘルスリテラシー低・中・高に振り分けました。一般に、各質問により「簡単」と回答した場合にヘルスリテラシーを高いとみなしています。
※6:「FEMCATION®」は(株)エムティーアイの登録商標で、FEMALE(女性)とEDUCATION(教育)を掛け合わせた造語です。
※7:Jiayao Lei, Ph.D., Alexander Ploner, Ph.D.,et al.HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer.N Engl J Med 2020;383:1340-8.
※参考:厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html
 

サイト名:ルナルナ®

概要:ライフステージや悩みにあわせて女性の一生をサポートする健康情報サービス
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※『ルナルナ』は(株)エムティーアイの登録商標です。

 

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代表者名
前多俊宏
上場
東証プライム
資本金
52億1800万円
設立
1996年08月