JAL、JALカード、ドコモ、「秘匿クロス統計技術」を用いて地域活性化につながる知見の獲得に成功
~空港からの訪問エリアを越えた移動を促す施策により、道東エリアの広範囲の人流創出をめざす~
(共同リリース)
2024年12月2日
日本航空株式会社
株式会社ジャルカード
株式会社NTTドコモ
日本航空株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:鳥取三津子、以下 JAL)、株式会社ジャルカード(本社:東京都品川区、代表取締役社長:西畑智博、以下 JALカード)、株式会社NTTドコモ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:前田義晃、以下 ドコモ)は、JALおよびドコモが保有するデータから、ドコモが日本電信電話株式会社の協力を得て開発した「秘匿クロス統計技術®︎」を用いた新たな調査手法により、各空港から道東の各エリアへの訪問傾向を統計的に明らかにしました。今般得られた知見をもとに、道東エリアの人流創出をめざした施策を実施し、地域活性化につなげます。
■概要
JAL、JALカード、HAC※1、ドコモが2023年8月より実施した北海道内の移動ニーズを把握する実証実験※2において、JALおよびドコモのデータから「秘匿クロス統計技術」を用いて得られた航空機利用後のお客さまのご移動状況に関する人口統計情報により、空港から先の人々の訪問傾向が分かり、利用空港と訪問エリアの関係性を把握することができました。また、複数空港の訪問エリアを重ね合わせることで、さらなる人流創出につながる可能性があるエリアを発見しました。現在、複数エリアをまたぐ移動を促す施策を実施しており、引き続き実証実験を行う中で、さらなる知見の獲得や人流創出の効果をJAL・ドコモのデータを用いて検証します。
※1 株式会社北海道エアシステム(本社:北海道札幌市、代表取締役社長:武村栄治)
※2 2023年8月より実施した実証実験に関する情報は、2023年8月22日付共同プレスリリース「JAL、JAL カード、HAC、ドコモ、 「秘匿クロス統計技術」を用いて北海道内の移動ニーズを把握する実証実験を開始」をご参照ください。
■広範囲な移動を促す効果があるエリアの調査と得られた知見
人流創出を実現するためには、さまざまなエリアへの移動を増やすことが重要ですが、人流創出に効果的なエリアを明らかにするのは容易ではありません。そこで、本実証実験では、より広範囲の移動を促す効果が期待されるエリアを特定するために「秘匿クロス統計技術」を用いて、航空機をご利用のお客さまが空港に到着後、どのエリアにどれくらいの人数が訪問するかを定量的に明らかにしました。また、「モバイル空間統計®︎※3」を活用して航空機以外の交通手段を使った訪問者数も併せて確認することで、各エリアを訪問する方のうち、どの程度の割合が航空機を利用していたか、各空港の訪問エリアを把握できるようになりました。
その結果、空港から遠くのエリアになるほど、航空機利用割合が一定の法則に従って減少する※4ことが分かりました。さらに、各空港の訪問エリアを重ね合わせることで、各空港からの訪問者が拮抗するエリア(どのエリアはどの空港を利用しやすいかをわける分水嶺)が判明しました。そのエリアを越えた遠方への移動を促すことで、往路の到着空港と復路の出発空港が異なる広範囲の人流創出が期待されます。
本実証実験の知見で得るために用いた本手法は、他地域のさまざまな交通手段に適用されることで、広範囲の周遊を促すことによる日本全体の地域活性化や交通課題の解決に貢献することが期待されます。
※3 モバイル空間統計は、ドコモの携帯電話サービスをお客さまに提供する過程で必要となる位置データや属性データなどの運用データを統計処理することによって作成された人口の推計値であり、お客さま個人を特定できない統計情報です。モバイル空間統計に関する詳細はこちらをご覧ください。
※4 物理学における距離と重力の関係を表す法則に類似した関係に従い、航空機を使う人の割合が移動距離の「べき乗」に減少します。
■人流創出の知見を活用した施策
本実証実験で得られた人流創出の知見を活用した施策の第一歩として、JAL、JALカードは、JALカード会員のお客さまへプロモーション実施やOnTrip JAL※5へモデルコースの掲載を開始しました。さらなる人流創出効果が期待されるだけでなく、よりご利用いただけるサービスの在り方を検証することで、新たな商品開発やサービス展開などにつなげていくとともに、自治体と連携した地域活性化に取り組んでまいります。
※5 OnTrip JALに関する情報は、こちらをご参照ください。
■今後の展開先
JALグループは人・モノの「移動」や社会的な「つながり」を創出し、その「移動・つながり」による地域経済の活性化に取り組んでいます。ドコモは、プライバシーを保護した安全な統計情報の活用を通じたパートナー企業との協業により、交通、地域活性化などの社会課題の解決に取り組んでいます。
JAL、JALカード、ドコモの3社は、本実証実験を通じて得られた知見を活かして、多様な交通サービスとの連携を通じたシームレスな移動の実現やお客さまに寄り添った商品サービスの提供による人流創出をめざすとともに、今後も異業種事業者の安全なデータ連携の実現を通じ、人と地域をつなぐことによる社会価値の創造と有用性の検証に向け取り組んでまいります。
*「秘匿クロス統計技術」および「モバイル空間統計」は、株式会社NTTドコモの登録商標です。
別紙1:本実証実験で得られた知見
地域活性化のためには、移動の利便性の向上により、広範囲な移動を促す効果が期待されるエリアの特定が重要ですが、これまでそのようなエリアの選定は困難でした。そこで、秘匿クロス統計技術を活用し、航空機を降りた後、航空機に乗っていた人々がどこを訪問するのかを明らかにしました。これにより、空港から周辺地域への交通ニーズの大きさが定量的に分かるようになり、空港からの二次交通の整備を移動の実態に基づいてきめ細やかに充実させられることが期待されます。また、モバイル空間統計で分かる航空機以外の交通手段を使った訪問者数も併せて確認することで、それぞれのエリアを訪問する人のうち、どのくらいの割合の人が航空機を使い、それらの人々がどの空港を利用するのか、という分析も行いました。
その結果、空港から遠くなるにつれて航空機を使う人の割合は減少していく「べき乗則」と呼ばれる物理学における距離と重力の関係を表す法則に類似した関係に従うことが分かりました。
さらに、どのエリアがどの空港を利用するかの関係性も明らかになり、複数空港の航空利用者割合が拮抗するエリアも浮かび上がってきました。道東エリアでは、釧路空港と女満別空港の訪問エリアは、摩周湖などが位置する弟子屈エリア周辺で拮抗し、そこが「釧路空港圏」と「女満別空港圏」の「拮抗訪問エリア」となることが分かりました。
この拮抗訪問エリアは、どの空港を一番利用しやすいかをわける「分水嶺」に相当するものであり、このエリアを越えて移動するような観光施策を実施することにより、単に空港との間を往復するだけではない、広範囲の周遊を促すことで、効果的な人流の活性化に寄与すると考えられます。
人流創出による地域活性化は、他の地域でも社会課題となっており、他地域のさまざまな交通手段にも本手法を適用することで、着目すべきエリアを効果的に把握することができ、日本全体の地域活性化に貢献することが期待されます。
別紙2:秘匿クロス統計技術について
秘匿クロス統計技術(以下、 本技術)」は、相互にデータを明かさない状態で安全な統計情報を作成することを可能にする、NTTグループが推進する次世代ICT基盤構想「IOWN®︎」の構成技術です。本実証実験では、本技術を用いて、JALとドコモが保有する同じ形式の ID リストを、それぞれの安全な処理環境(隔離実行環境)で非識別化処理(不可逆変換および暗号化)を行い、個人を識別できない状態に加工した上で、暗号状態のまま集計処理と秘匿処理を実施します。
本実証実験で作成する、JAL 便利用のお客さまの搭乗前後の移動状況に関する人口統計情報は、本技術を用いて安全に作成されます。本技術は、各社が保有するデータを、各社において、個人を識別できない状態(個人情報ではない状態)に加工した上で、データを相互に明かすことなく、つまり、一連の処理を、人の目に触れることなく機械が行うことを技術的に保証することで、企業横断で統計情報を安全に作成するものです。 本実証実験で取り扱う各社の保有データは、JAL が保有する搭乗に関する情報および会員データと、ドコモが 保有する携帯電話ネットワークの運用データ※6の一部(お客さまがご利用の携帯電話の位置データおよびお客さまの属性データ)です。なお、人口統計情報は、集団の人数のみを表す統計情報であり、作成される統計情報以外の情報は関係各社のいずれも確認することはできません。
本技術の安全性は、日本電信電話株式会社の研究成果である高速・安全なデータ結合処理技術※7に加えて、 ドコモが保有する差分プライバシー※8に基づくプライバシー保護技術を併用することで実現しています。本技術は、「モバイル空間統計」のガイドラインに準拠しており、非識別化処理、集計処理、秘匿処理を通じて統計情報を作成します。また、モバイル空間統計ガイドラインの中でご案内している 「運用データ利用停止手続き」を行っているお客さまのデータは、本実証実験において利用しません。
※6 電気通信サービスを提供する過程で発生するデータの総称でモバイル空間統計でも利用されています。運用データは、お客さまがご利用の携帯電話の位置データおよびお客さまの属性データを含むものですが、それぞれの定義についてはモバイル空間統計ガイドラインをご覧ください。
※7 データを暗号化したまま処理できる暗号方式(準同型暗号)を応用し、複数の主体がおのおの持つデータを互いに明かさずに、 データ結合処理と統計情報の作成を行う技術です。
※8 特定の背景知識や攻撃能力を持つ攻撃者に対しても安全性を保証できることを目的として作成されたプライバシー保護の強度を定量的に測る指標です。なお、米国国勢調査においても、「差分プライバシー」を用いた保護手法が採用されています。
*「IOWN」は、日本電信電話株式会社の商標または登録商標です。
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