【小学生から高校生の読書に関する7年間の追跡調査データ】約50%の子どもの読書時間が0分読書時間が長いほど自分の能力評価が高い傾向
調査結果からは、約半数の子どもの読書時間が0分であること、学年が上がるにつれて読書ばなれが進むこと、過去7年間で読書時間がわずかに減少していることなどが明らかになりました。さらに、同じ親子を7年間追跡したデータの分析からは、幼少期の読み聞かせや早期の読書習慣の形成がその後の読書行動に大きく影響していることが判明しました。このような親子の縦断調査から読書行動の変化をとらえたデータは、他に類を見ない新たな発見です。また、データからは子どもの読書行動と関連する家庭環境や子ども自身の要因も明らかになっています。
【主な分析結果】
① 読書行動の実態―約半数が読書ゼロ。この7年間では減少の傾向 1)約半数の子どもの読書時間が0分 小1から高3生の全体では、49.0%が平日に読書を「しない=0分」と回答。性別では男子に、学校段階別では上の学年に上がるほど0分の割合が多い。→図1 2)読書時間は7年間で微減 全体の読書時間(1日当たり)の平均は、2015年18.2分から2022年15.2分と3.0分減少。→図2 ② 家庭の影響―読み聞かせに効果あり。早期の読書の習慣づけや促しが重要 1)家庭的な背景によって読書時間が異なる 蔵書数が多い家庭、本を読む大切さを伝えている保護者の子どもほど、読書時間が長い。→図3-1・2 2)小学校入学前の読み聞かせの効果は長く継続 入学前に読み聞かせを受けた子どもはその後の読書時間も長く、その効果は中学生まで残る。→図4 3)早期の読書習慣の形成がその後にも残る 早い段階で読書習慣を身につけている子どもは、その後も長い時間、読書をする傾向がある。→図5 ③ 読書の効果―読書をしている子どもは自分の能力に対する評価が高い 1)理解・思考・表現の能力に対する自己評価が高い 読書時間が長い子どもは理解や思考、表現などの活動について「得意」と自己評価する傾向がある。→図6 2)読書行動と自信や将来の目標などに関連がみられる 読書をしない子どもは、ニュースへの関心や自信、将来の目標などの肯定率が低い。→図7 |
【データからの考察】
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で実施している「子どもの生活と学びに関する親子調査」の7年間のデータを分析した結果では、小1生から高3生の約半数の子どもが読書時間0分という結果であり、性別では男子の方が、学校段階別では上の学年に上がるほど0分の割合が高いことがわかりました【図1】。さらに、この7年間で、読書時間は減少する傾向もみられました【図2】。 それでは、読書の時間を増やすにはどうすればよいのでしょうか。分析の結果では、蔵書数が多い家庭の子どもや本を読む大切さを伝えている保護者の子どもほど、読書時間が長いことが明らかになりました【図3-1・2】。読書時間を増やすには、家庭の環境や保護者の働きかけが重要だと言えそうです。また、同じ子どもを7年間追跡した結果では、入学前に読み聞かせをたくさん受けていたグループは、そうでないグループと比べて、中学生までずっと読書時間が長いという結果が得られました【図4】。さらに、早い段階で読書習慣を身につけた子どもは、その後も長い読書時間を保つ傾向があることもわかりました【図5】。こうしたことから、できるだけ早期に家庭で読書習慣を身につけることが重要であることがわかります。 読書時間が長い層(多読層)の子どもは、図や表の理解、論理的な思考、長い文章の理解、考えを文章にまとめることなどが得意だと回答しています【図6】。加えて、ニュースへの関心や自分への自信、将来の目標などが明確な傾向もみられます【図7】。読書行動が望ましい資質・能力に関連があることは明らかであり、今後、読書の効果に関する因果関係についての検証が期待されます。 読書は子どもたちの世界を広げ、さまざまな知識を身につけたり、思考の手がかりを得たりすることができます。10月27日~11月9日は、読書週間です。本データがご家庭で、読書の魅力について考える材料になれば幸いです。 |
【資料編:小学生から高校生の読書行動に関するデータ】
※データはすべて「子どもの生活と学びに関する親子調査」→調査概要P6参照
① 読書行動の実態―約半数が読書ゼロ。この7年間では減少の傾向
1)約半数の子どもの読書時間が0分
小1から高3生の全体では、49.0%が平日に読書を「しない=0分」と回答。性別では男子の方が、学校段階別では上の学年に上がるほど0分の割合が多い。
図1:1日の読書時間(全体、性別、学校段階別) 【2022年データ】
*「あなたはふだん(学校がある日)、次のことを、1日にどれくらいの時間やっていますか」という設問の「本を読む」に対する回答(%)。
*小1~3生は保護者、小4~高3生は子どもの回答。「2時間以上」は「2時間」「3時間」「4時間」「4時間以上」の合計。平均時間は「しない」を0分として算出。
*全体、全体の性別の数値は、小1~3生:小4~6生:中学生:高校生=1:1:1:1になるように重みづけを行った。
2)読書時間は7年間で減少
全体の読書時間(1日当たり)の平均は、2015年18.2分から2022年15.2分と3.0分減少。
図2:読書の平均時間(1日当たり)の推移(学校段階別)【2015-22年データ】
*「あなたはふだん(学校がある日)、次のことを、1日にどれくらいの時間やっていますか」という設問の「本を読む」に対する回答から平均時間(分)を算出。「しない」は0分として算出。
*小1~3生は保護者、小4~高3生は子どもの回答。
*全体の数値は、小1~3生:小4~6生:中学生:高校生=1:1:1:1になるように重みづけを行った。
② 家庭の影響―読み聞かせに効果あり。早期の読書の習慣づけや促しが重要
1)家庭的な背景によって読書時間が異なる
蔵書数が多い家庭、本を読む大切さを伝えている保護者の子どもほど、読書時間が長い。
図3―1:1日の読書時間(家の蔵書数別)【2019年データ】
*「あなたはふだん(学校がある日)、次のことを、1日にどれくらいの時間やっていますか」という設問の「本を読む」に対する回答(%)。
*小1~3生は保護者、小4~高3生は子どもの回答。「2時間以上」は「2時間」「3時間」「4時間」「4時間以上」の合計。平均時間は「しない」を0分として算出。
*家の蔵書数は保護者の回答。「30冊未満」は「9冊以下」「10~29冊」、「30~100冊未満」は「30~49冊」「50~99冊」、「100冊以上」は「100~199冊」「200~499冊」「500冊以上」と回答した保護者の子ども。この設問は、2020~22年調査ではたずねていない。
*小1~3生:小4~6生:中学生:高校生=1:1:1:1になるように重みづけを行った。
図3―2:1日の読書時間(保護者の働きかけ別)【2021年データ】
*「あなたはふだん(学校がある日)、次のことを、1日にどれくらいの時間やっていますか」という設問の「本を読む」に対する回答(%)。
*小1~3生は保護者、小4~高3生は子どもの回答。「2時間以上」は「2時間」「3時間」「4時間」「4時間以上」の合計。平均時間は「しない」を0分として算出。
*「本や新聞を読むこと」の大切さを伝えているかどうかの質問は、保護者が回答。「伝えている」は「よく伝えている」「ときどき伝えている」、「伝えてない」は「あまり伝えていない」「まったく伝えていない」と回答した保護者の子ども。この設問は、2022年調査ではたずねていない。
*小1~3生:小4~6生:中学生:高校生=1:1:1:1になるように重みづけを行った。
2)小学校入学前の読み聞かせの効果は長く継続
入学前に読み聞かせを受けた子どもはその後の読書時間も長く、その効果は中学生まで残る。
図4:読書時間の個人変化(入学前の読み聞かせ日数別、小1→中2を追跡)【2015-22年データ】
*「あなたはふだん(学校がある日)、次のことを、1日にどれくらいの時間やっていますか」という設問の「本を読む」に対する回答から平均時間(分)を算出。「しない」を0分として算出。
*小1~3生は保護者、小4~中2生は子どもの回答。
*小1時点の保護者調査で、小学校入学前の読み聞かせの日数を分類。「週4日以上」は「ほとんど毎日」「週に4~5日」、「週1~3日」は「週に2~3日」「週に1日」、「週1日未満」は「月に1~3日」「ほとんどしなかった」と回答した保護者の子ども。同じ集団の各学年での読書時間を算出。
3)早期の読書習慣の形成がその後にも残る
早い段階で読書習慣を身につけている子どもは、その後も長い時間、読書をする傾向がある。
図5:読書時間の個人変化(小1時点の読書量別、小1→中2を追跡)【2015-22年データ】
*「あなたはふだん(学校がある日)、次のことを、1日にどれくらいの時間やっていますか」という設問の「本を読む」に対する回答から平均時間(分)を算出。「しない」を0分として算出。
*小1~3生は保護者、小4~中2生は子どもの回答。
*小1時点の保護者調査で、読書時間についてたずねた回答をもとに分類。「5~30分」は「5分」「10分」「15分」「30分」、「1時間以上」は「1時間」「2時間」「3時間」「4時間」「4時間以上」と回答した保護者の子ども。同じ集団の各学年での読書時間を算出。
③ 読書の効果―読書をしている子どもは自分の能力に対する評価が高い
1)理解・思考・表現の能力に対する自己評価が高い
読書時間が長い子どもは、理解や思考、表現などの活動について「得意」と自己評価する傾向がある。
図6:得意(理解・思考・表現)(読書量別)【2022年データ】
*「あなたは次のようなことが得意ですか、苦手ですか」という設問で「とても得意」「やや得意」と回答した比率の合計(%)。
*「不読層」は1日の読書時間が「0分」の子ども、中間層は「5分」「10分」「15分」「30分」の子ども、多読層は「1時間」「2時間」「3時間」「4時間」「4時間以上」の子ども。
*回答は小4~高3生の子ども。小4~6生:中学生:高校生=1:1:1になるように重みづけを行った。
2)読書行動と自信や将来の目標などに関連がみられる
読書をしない子どもは、ニュースへの関心や自信、将来の目標などの肯定率が低い。
図7:特性/なりたい職業(読書量別)【2022年データ】
*左の3項目は「あなた自身のことについて、次のようなことはどれくらいあてはまりますか」という設問で、「とてもあてはまる」「まああとてまる」と回答された比率の合計(%)。右の1項目は「あなたには、将来なりたい職業(やりたい仕事)はありますか」という設問で、「ある」と回答された比率(%)。
*「不読層」は1日の読書時間が「0分」の子ども、中間層は「5分」「10分」「15分」「30分」の子ども、多読層は「1時間」「2時間」「3時間」「4時間」「4時間以上」の子ども。
*回答は小4~高3生の子ども。小4~6生:中学生:高校生=1:1:1になるように重みづけを行った。
【詳細データ】 今回の分析の詳細なデータを、以下にまとめています。
https://berd.benesse.jp/special/datachild/datashu04.php
【分析データ】
●子どもの生活と学びに関する親子調査(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所による共同実施)
【調査テーマ】子どもの生活と学習に関する意識と実態(子ども調査)/保護者の子育て・教育に関する意識と実態(保護者調査)……同一の親子を対象に2015年から継続して追跡する縦断調査
【調査時期】各年7~9月
【調査方法】調査依頼は各回とも郵送で実施、回収は2015年郵送・WEB併用、16~20年郵送、21年郵送・WEB併用、22年WEB
【調査対象】各回とも約2万組の調査モニターに協力を依頼、発送数・回収数・回収率は以下の通り
●本調査の詳細は、以下にまとめています。
https://berd.benesse.jp/special/childedu/
【ベネッセ教育総合研究所】
ベネッセ教育総合研究所は1980年に発足した株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンクです。子ども、保護者、学校・教員を対象に、さまざまな調査・研究を行っております。また教育内容や方法、評価測定などについても研究開発を進めています。調査・研究で得られた知見は、ベネッセ教育総合研究所のWebサイト(https://berd.benesse.jp/)にて公開し、子どもの成長・発達を取り巻く環境の改善に役立てていくように情報発信を行っています。
【本分析の担当】
●木村治生(きむら・はるお) ベネッセ教育総合研究所 調査研究室長・主席研究員
【分析協力】
●松本留奈(まつもと・るな) ベネッセ教育総合研究所 主任研究員
●福本優美子(ふくもと・ゆみこ) ベネッセ教育総合研究所 研究員
●朝永昌孝(ともなが・まさたか) ベネッセ教育総合研究所 研究員
●中島功滋(なかじま・こうじ) ベネッセ教育総合研究所 主任研究員
●大内初枝(おおうち・はつえ) ベネッセ教育総合研究所 スタッフ
●渡邉未央(わたなべ・みお) ベネッセ教育総合研究所 スタッフ
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