企業の63.5%が賃上げを見込む、ベアは58.3%で高水準 中小企業の従業員給与の増加率(試算)は平均4.53%

2026年度の賃金動向に関する企業の意識調査

株式会社帝国データバンク

政府は、物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に向けた労働市場改革を進めている。あわせて、最低賃金引き上げに対応する中小企業・小規模事業者を後押しするため、業務改善助成金やものづくり補助金、IT導入補助金など、生産性向上を促す投資と賃上げを組み合わせた支援策の拡充・要件緩和を打ち出している。

そこで、帝国データバンクは、2026年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2026年1月調査とともに行った。

SUMMARY

2026年度に賃金改善を見込む企業は63.5%。2年連続で6割台となった。ベースアップを実施する企業は58.3%にのぼり、5年連続で過去最高を更新した。賃上げの理由は、「労働力の定着・確保」が74.3%でトップだった一方、「最低賃金の改定」が29.2%と過去最高となった。他方、賃上げを行わない理由は「自社の業績低迷」が55.1%で最も高かった。2026年度の総人件費は平均4.51%増と見込まれ、中小企業の従業員給与は平均4.53%増と試算した。

※ 調査期間は2026年1月19日~1月31日。調査対象は全国2万3,859社で、有効回答企業数は1万620社(回答率44.5%)。なお、賃金に関する調査は2006年1月以降毎年実施し、今回で21回目
※ 本調査における詳細データは、帝国データバンクホームページのレポートカテゴリにある協力先専用コンテンツに掲載している
※ 賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)すること。定期昇給は賃金改善に含めない。


2026年度、企業の63.5%が賃金改善を見込む、ベースアップは5年連続で過去最高を更新

2026年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある」と見込む企業は63.5%となった。5年連続で前の年を上回り、2年連続で6割台となり、過去最高を更新した。一方で、「ない」とする企業は11.8%と、前回調査(13.3%)から1.5ポイント低下し、2年連続で過去最低を更新した。

従業員数別にみると、「51~100人」「21~50人」の企業では賃金改善を見込む割合が7割を超えた。また、「6~20人」「101~300人」でも6割を超えており、中規模企業で賃金改善の動きが目立つ。とりわけ「51~100人」では、前回調査の2025年度見込み(69.5%)より5.3ポイント増加しており、「最低賃金の引き上げや、官民で連携した賃金上昇機運もあり、雇用維持のためにも継続的に賃上げを実施している」(鉄骨工事、北海道)などの意見が聞かれた。

一方で、「1,000人超」(48.1%)は前年の見込みから4.2ポイント減少し4割台となったほか、「5人以下」(41.6%)は従業員数別で最も低い水準となった。「5人以下」では、賃金改善を実施しない割合(29.7%)も突出して高く、小規模企業で賃金改善を行う環境の厳しさがうかがえる。

業界別では、『製造』が71.5%で最も高く、『運輸・倉庫』(69.1%)、『建設』(66.5%)、『農・林・水産』(65.8%)が続いた。最低賃金の引き上げへの対応に加え、いわゆる2024年問題などで人手不足感が強い運輸業界では、賃金改善を実施する割合が高まった。

賃金改善の具体的な内容についてみると、「ベースアップ」が58.3%(前回調査比2.2ポイント増)、「賞与(一時金)」が28.2%(同0.8ポイント増)となった。「ベースアップ」は、過去最高となった前年の56.1%を上回り、5年連続で最高を更新した。

賃金改善の理由、トップは「労働力の定着・確保」、「最低賃金の改定」が大きく増加し過去最高を更新

賃金改善が「ある」企業に理由を尋ねたところ、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が74.3%(複数回答、以下同)で最も高く、6年連続の7割台となった。以下、「従業員の生活を支えるため」(61.5%)、「物価動向」(53.0%)、「採用力の強化」(36.3%)、「最低賃金の改定」(29.2%)、「同業他社の賃金動向」(28.4%)が続いた。とりわけ、2025年度の引き上げ額が全国加重平均で66円と過去最大の増加幅となった「最低賃金の改定」を理由にあげる企業の割合は、前回より5.8ポイント増加し過去最高を更新した。

賃金を改善しない理由、「自社の業績低迷」が55.1%でトップ

賃金改善が「ない」企業に理由を尋ねたところ、「自社の業績低迷」が55.1%(複数回答、以下同)で最も高かった。次いで、「物価動向」(18.2%)は、過去最高だった2025年度(22.7%)を4.5ポイント下回り大きく減少した。一方で、新規採用増や定年延長にともなう人件費・労務費の増加、労働環境の改善などの「人的投資の増強」(14.2%)は、前年度から2.7ポイント増加しており、教育研修の実施など賃上げ以外で「人」への投資を増やしていることが賃金改善を行わない背景として高まっていることがうかがえた。以下、「同業他社の賃金動向」(12.9%)、「内部留保の増強」(11.1%)が続いた。

総人件費は平均4.51%増加。
中小企業の従業員給与は平均4.53%増と試算

2026年度の自社の総人件費が2025年度と比較してどの程度変動すると見込むかを尋ねたところ、「増加」[1]を見込む企業は73.9%と、この質問を取り始めた2016年度以降で最高となった。一方、「減少」すると見込む企業は5.0%だった。その結果、総人件費は前年度から平均4.51%増加すると見込まれる(大企業:平均4.48%、中小企業:平均4.51%)。従業員給与の増加率は平均4.53%と試算した(大企業:平均4.49%、中小企業:平均4.53%)、賞与は平均4.34%(大企業:平均4.44%、中小企業:平均4.48%)、各種手当などを含む福利厚生費も平均4.40%(大企業:平均4.48%、中小企業:平均4.49%)と試算される。


本調査では、2026年度に賃上げを見込む企業が63.5%と過去最高を更新、賃金改善の動きが広がっていることが確認された。特に、ベースアップにより賃上げを進めようとする企業が6割に迫り、恒常的な所得の底上げによる個人消費の拡大に向けた条件が揃いつつある。

背景としては、企業にとって「労働力の定着・確保」が最大の理由であるほか、物価高が続くなかで従業員の生活を支える必要性、最低賃金の引き上げへの対応も賃金を押し上げる要因となっている。一方で、人手不足は経営上のリスクでもあり、教育研修の実施など「人」への投資を増やす動きもみられる。

2026年の春闘では、連合が定昇相当分を含めて「5%以上」の賃上げを求める方針を掲げており、賃上げ継続に向けた機運は高いままだ。また、2026年4月入社の新卒社員に支給する初任給を前年度から引き上げる企業は7割近くに達しており[2]、人材確保・定着の促進や最低賃金の引き上げへの対応、そして賃金テーブル全体のベースアップが影響しているとみられる。

こうした環境下で、賃金と物価の関係を安定した巡航軌道に乗せられるかが焦点となる。企業が持続的な賃上げを行うには、付加価値の拡大と適切な価格転嫁を通じた利益の確保が従来以上に重要となる。まさに実体経済の上昇とともに賃上げを行うステージへ進めるか、正念場の段階に来ている。

[1] 「増加」(「減少」)は、「20%以上増加(減少)」「10%以上20%未満増加(減少)」「5%以上10%未満増加(減少)」「3%以上5%未満増加(減少)」「1%以上3%未満増加(減少)」の合計

[2] 帝国データバンク、「初任給に関する企業の動向アンケート(2026年度)」(2026年2月18日発表)

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URL
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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 健夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月