低出生体重児 世界で7人に1人~先進国でも約7%、改善進まず【プレスリリース】
ユニセフ専門家ら 世界的医学専門誌『ランセット』で論文を発表
【2019年5月15日 ニューヨーク/ロンドン/ジュネーブ 発】
ユニセフ(国連児童基金)などの専門家が新たに行った分析によれば、2015年に世界で低体重(2,500グラム未満)で生まれた赤ちゃんの数は、出生数全体のおよそ7人に1人にあたる2,000万人以上にのぼることが明らかになりました。
ユニセフ、ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン・アンド・トロピカル・メディスン(ロンドン大学)、および世界保健機関(WHO)の専門家が、148カ国における2億8,100万の出生に関するデータを用いて行った分析の結果は、世界的医学雑誌『ランセット』に掲載されています。低出生体重児の約4分の3が南アジアおよびサハラ以南のアフリカで生まれ、これらの地域は最もデータが限られていること、また、ヨーロッパ、北米、オーストラリアやニュージーランドといった高所得国でもこの問題は続いており、2000年以降に低出生体重児の出生率減少に前進が見られていないことなどがわかりました。
2012年に、WHOに加盟する全195カ国は、2025年までに低出生体重児の割合を2012年と比較して30%減らすことを約束しました。世界で初めて実施された今回の推計によれば、世界の低出生体重児の割合は2000年の17.5%(2,290万人)から2015年には14.6%(2,050万人)へと僅かに減少しました。しかし、この間の低出生体重児の出生率の減少が年1.2%という進捗の速度は、2012年から2025年の間に30%削減するとしたWHOの目標を達成するために必要な年2.7%には遠く及びません。
研究結果は、低出生体重の主な要因に関する理解と取り組みによって進捗を加速させるため、より多くの投資と行動が喫緊に必要なことを示しています。低出生体重の要因には、極端な妊娠年齢、多胎妊娠、分娩合併症、妊娠高血圧症候群(HDP)などの妊婦の慢性的な症状、マラリアなどの感染症、栄養状態、また室内空気汚染などの環境要因、喫煙および薬物使用などが含まれます。低所得国では、主な要因は子宮内での不十分な発達です。より開発が進んだ国においては、低出生体重児の多くは早産(妊娠37週未満での出産)と関係しています。
「私たちの推計は、各国政府は明確に約束したにも関わらず、低出生体重児を減らすための努力が少なすぎることを示唆しています。妊娠年齢の高齢化、喫煙、医学的に不必要な帝王切開、ならびに多胎の危険を増加させる不妊治療などによる早産が主な要因である先進国においても、この15年間の変化はごく僅かに留まっています。これらの課題は先進国政府が取り組むべきものです」と主要執筆者ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン・アンド・トロピカル・メディスンのDr. Hannah Blencowe は述べました。「2025年までに30%削減という目標を達成するには、進展のペースを2倍以上にする必要があります」
「すべての赤ちゃんの出生時の体重を測らなければなりません。しかし、世界では約3人に1人の出生時の体重の記録がありません」と共同執筆者であるユニセフ・統計評価専門家のJulia Krasevecは述べました。「より多くのそしてより正確なデータが収集できなければ、低体重で生まれてくる赤ちゃんを助けることはできません。よりよい測定機器とより強化されたデータシステムによって、家で生まれる子どもも含めて、すべての赤ちゃんの正確な体重を知ることができ、生まれてくる赤ちゃんと母親に対してより質の高いケアを提供できるのです」
毎年世界で亡くなる250万人の新生児のうち80%以上は、低出生体重児です。そして新生児期を生き延びたとしても、低出生体重児は、発育阻害(スタンティング)や、その後の人生において糖尿病や循環器疾患などの慢性的な症状を含む、発達上のまた身体的な健康問題のリスクにより高く晒されることになります。
今回、研究者たちは、低出生体重児の出生率と傾向を推計するために、世界148カ国について2000年から2015年までの入手可能なデータを、政府データベースや各国調査から徹底的に調べ、合計2億8,100万件を超える出生に関するデータが収集されました。しかし執筆者たちは、世界中のすべての出生数の約4分の1を占める40の低中所得国を含む47カ国には、十分なデータが存在しないことを指摘しています。
2015年の低出生体重児の出生率が推計で最も低い国のひとつはスウェーデンで2.4%ですが、米国(8%)、英国(7%)、オーストラリア(6.5%)、ニュージーランド(5.7%)を含むいくつかの先進国では7%前後となっています。
*日本は9.5%(2015年)で、2000年の8.6%から増加
最も前進が見られる地域は、低出生体重児の数が最も多い南アジアとサハラ以南のアフリカで、2000年から2015年の間に低出生体重児の出生率がそれぞれ年1.4%ならびに年1.1%減少しました。しかし実際には、サハラ以南のアフリカ地域における低出生体重児の総数は、主に出生数の多さや移民などによる人口増加の傾向により、440万人から500万人に増加しました。同様に、南アジアでは世界の約半数の低出生体重児が生まれており、その数は2015年で980万人と推定されます。
「この課題への対応は、緊急下や保健システムが脆弱なところでは特に困難です」South African Medical Research CouncilのProfessor Tanya Dohertyは言います。「それでも、今回の調査結果は、この問題への取り組みを進め、すべての赤ちゃんの出生時の体重を測り、情報を集めてそれをローカルな行動や、家庭、地域、国、さらにグローバルレベルでの責任の明確化に活かすため、すべての関係者に一致した行動を求めるよい機会を提供します。同時に私たちは、毎年低体重で生まれる2,000万人以上の赤ちゃんとその家族のためのケアを改善させなければなりません」
■補足情報
本調査は、ビル&メリンダ・ゲイツ 財団、The Children’s Investment Fund Foundation、ユニセフ、WHOの助成を受けて行われました。
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )
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