遺伝要因がピロリ菌感染の胃がんリスクを高めることを解明〔理化学研究所、愛知県がんセンター、岡山大学、東京大学、微生物化学研究所、国立がん研究センター、佐々木研究所附属杏雲堂病院〕

-ピロリ菌除菌によりその高まったリスクを低減できる可能性-

国立大学法人岡山大学

理化学研究所、愛知県がんセンター、岡山大学、東京大学、微生物化学研究所、国立がん研究センター、佐々木研究所附属杏雲堂病院の共同研究成果プレスリリースです。
2023(令和5)年 4月 2日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 



◆概 要
 理化学研究所(理研)生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの碓井喜明特別研究員、桃沢幸秀チームリーダー、愛知県がんセンター研究所がん予防研究分野の松尾恵太郎分野長らの国際共同研究グループは、日本の11,000人以上の胃がん患者群と44,000人以上の非がん対照群を用いた世界最大規模の症例対照研究を行い、胃がんのリスクに関連する遺伝子の存在とその特徴を示し、それらの遺伝子の病的バリアントがヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)感染による胃がんのリスクへの影響を増強させていることを明らかにしました。

 本研究成果は、胃がんのゲノム医療に貢献すると期待できます。

 今回、国際共同研究グループは理研で独自に開発したゲノム解析手法を用いて、バイオバンク・ジャパン(BBJ)および愛知県がんセンター病院疫学研究(HERPACC)により収集された胃がん患者群と非がん対照群のDNAについて、27個の遺伝性腫瘍に関連する遺伝子を解析しました。BBJデータの解析により、9個の遺伝子の病的バリアントが胃がんのリスクに関連することが示され、遺伝子ごとの臨床的な特徴が明らかになりました。

 これらの遺伝子の病的バリアントと、胃がんのリスク因子として知られるピロリ菌感染情報を組み合わせてHERPACCデータを解析した結果、BRCA1・BRCA2遺伝子など相同組換え修復機能に関わる遺伝子群の病的バリアント保持者は、非保持者と比較してピロリ菌感染による胃がんリスクへの影響がより強くなることが明らかになりました。病的バリアント保持者では、ピロリ菌感染の検査や除菌による胃がんのリスクの低減を検討する重要性がより一層高いと考えられます。

 本研究は、総合医学雑誌『The New England Journal of Medicine』オンライン版(2023年3月29日付:日本時間2023年3月30日)に掲載されました。
 



◆論文情報
<タイトル>
 Helicobacter pylori, Homologous-Recombination Genes, and Gastric Cancer
<著者名>
 Yoshiaki Usui, Yukari Taniyama, Mikiko Endo, Yuriko N. Koyanagi, Yumiko Kasugai, Isao Oze, Hidemi Ito, Issei Imoto, Tsutomu Tanaka, Masahiro Tajika, Yasumasa Niwa, Yusuke Iwasaki, Tomomi Aoi, Nozomi Hakozaki, Sadaaki Takata, Kunihiko Suzuki, Chikashi Terao, Masanori Hatakeyama, Makoto Hirata, Kokichi Sugano, Teruhiko Yoshida, Yoichiro Kamatani, Hidewaki Nakagawa, Koichi Matsuda, Yoshinori Murakami, Amanda B. Spurdle, *Keitaro Matsuo, *Yukihide Momozawa
*Keitaro Matsuo and Yukihide Momozawa contributed equally to this work.
<雑誌>
 The New England Journal of Medicine
<DOI>
 10.1056/NEJMoa2211807


◆研究支援
 本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)ゲノム創薬基盤推進研究事業「乳がん・大腸がん・膵がんに対する適切な薬剤投与を可能にする大規模データ基盤の構築(研究開発代表者:桃沢幸秀)」、同革新がん的がん医療実用化研究事業「がんリスクに対する環境要因・遺伝要因の公衆衛生学的インパクトを評価する大規模分子疫学研究(研究開発代表者:松尾恵太郎)」「個人の生活習慣等の環境要因と遺伝的リスクを考慮した科学的根拠に基づく効率的な乳がん予防法の開発研究(研究代表者:松尾恵太郎)」、同ゲノム研究バイオバンク事業「利活用を目的とした日本疾患バイオバンクの運営・管理(研究代表者:山梨裕司)」、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業特定領域研究「分子疫学コーホート研究の支援に関する研究(研究代表者:浜島信之)」、同新学術領域研究(研究領域提案型)「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動(領域代表者:今井浩三・中村祐輔)」、同学術変革領域研究(学術研究支援基盤形成)「コホート・生体試料支援プラットフォーム(研究代表者:村上善則・今井浩三)」、同基盤研究(B)「クローン性造血と生活習慣曝露、生活習慣病リスクとの関連を解明する研究(研究代表者:松尾恵太郎)」、厚生労働省第3次対がん10か年総合戦略研究経費「生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究(研究代表者:津金昌一郎)」、Australian National Health and Medical Research Council(Amanda B. Spurdle)による支援を受けて行われました。


◆詳しい研究内容について
 遺伝要因がピロリ菌感染の胃がんリスクを高めることを解明-ピロリ菌除菌によりその高まったリスクを低減できる可能性-
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20230330-1.pdf


◆本件お問い合わせ先
<発表者> ※研究内容については発表者にお問い合わせください。
 理化学研究所 生命医科学研究センター 基盤技術開発研究チーム 特別研究員 碓井喜明 (ウスイ・ヨシアキ)
(愛知県がんセンター研究所 がん情報・対策研究分野 任意研修生、岡山大学 医学部 血液・腫瘍・呼吸器内科学分野 客員研究員)チームリーダー 桃沢幸秀 (モモザワ・ユキヒデ)
 愛知県がんセンター研究所 がん予防研究分野 分野長 松尾恵太郎(マツオ・ケイタロウ)
 東京大学 医科学研究所 人癌病因遺伝子分野 教授 村上善則 (ムラカミ・ヨシノリ)

 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 クリニカルシークエンス分野 教授 松田浩一 (マツダ・コウイチ)

 微生物化学研究所 第3生物活性研究部 部長 畠山昌則 (ハタケヤマ・マサノリ)

 国立がん研究センター中央病院 遺伝子診療部門 部門長 吉田輝彦 (ヨシダ・テルヒコ)

 佐々木研究所附属杏雲堂病院 遺伝子診療科 科長 菅野康吉 (スガノ・コウキチ)

<機関窓口>
 理化学研究所 広報室 報道担当
 TEL:050-3495-0247
 E-mail: ex-press◎ml.riken.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい

 愛知県がんセンター 運用部経営戦略課企画・経営グループ
 TEL:052-762-6111(代表)
 E-mail: tmushika◎aichi-cc.jp

 岡山大学 総務・企画部 広報課
 E-mail: www-adm◎adm.okayama-u.ac.jp

 東京大学 医科学研究所 国際学術連携室(広報)
 E-mail: koho◎ims.u-tokyo.ac.jp

 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 広報室
 E-mail: press◎k.u-tokyo.ac.jp

 微生物化学研究所 知的財産情報部
 E-mail: yamazakik◎bikaken.or.jp

 国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
 E-mail: ncc-admin◎ncc.go.jp

 佐々木研究所 附属佐々木研究所 研究事務室
 TEL:03-3294-3286
 FAX:03-3294-3290
 E-mail: otani◎po.kyoundo.jp

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:086-235-7983
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
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1949年05月