子どものインターネット利用:デジタル世界のリスクと機会~子どもたちを守るおとなの役割【プレスリリース】
11カ国の子ども1万5,000人のデータを比較
【2019年11月28日 フィレンツェ(イタリア)発】
ユニセフ(国連児童基金)は、ベルリン(ドイツ)で29日まで開催中のインターネットガバナンスフォーラム(Internet Governance Forum:IGF)において本日発表した新しい報告書『つながる世界で成長する私たち』(原題:Growing up in a connected world)の中で、子どものインターネット利用の行き過ぎた制限は、子どもたちが学習とスキルを身に着ける機会を奪うと述べました。
ユニセフ・イノチェンティ研究所とLSE ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(ロンドン大学)が、Global Kids Onlineの調査に基づいてまとめた本報告書は、ヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカの11カ国における1万5,000人近くの子どものインターネット利用に関するデータを比較しています。子どもたちがインターネット上で行うことは、たとえ娯楽と見なされるものであっても、デジタルスキルの構築に非常に重要であることを指摘しています。
「私たちは、子どものインターネット利用のリスクについてはよく耳にしますが、インターネットが提供するレジリエンス(回復力)や、子どもたちのデジタルスキルの構築についてはあまり語りません」と、ユニセフ・イノチェンティ研究所所長代行のプリシラ・イデレ(Priscilla Idele)は述べました。「道路の渡り方を教えるのと同じように、子どもたちにはインターネットの使い方を教えるべきです。リスクがあるからといって、子どもたちが道路を渡るのをやめさせることはできません。私たちの役割は、あらゆる状況で、安全で責任を持った道路の渡り方を子どもたちに教えることと、子どもたちを守るための安全策を講じることです」
本報告書では、より広範なインターネット上の活動に参加する子どもたちはインターネット利用に熟練している一方で、インターネットへのアクセスが制限されている子どもたちのデジタルスキルは弱い傾向があることを指摘しています。例えば、ゲームや動画などのネット上のエンターテインメントは、幼い子どもたちが教育的、情報的、社会的なネット上での経験に関心を抱く助けにもなります。報告書は、娯楽だけに留まらずインターネット上での活動を広げていくことで、さまざまな技術や重要な能力も伸ばすことができると述べています。
「子どもたちは、ある程度のリスクがあることを前提に、デジタル環境を活用する方法を学ぶ必要があります。これは、オフラインの世界でどう歩んでいくかを学ぶのと同じです」と、ユニセフ・イノチェンティ研究所の子どもとデジタル技術の研究主任で、報告書の共著者であるダニエル・カルデフェルト・ウィンター(Daniel Kardefelt-Winther)は、述べます。「保護者が必要以上にインターネット利用を制限すると、子どもたちの将来のための準備が疎かになってしまうかもしれません。最も重要なことは、子どもたちがサポートを必要としている時に、おとなはそれに応える準備ができているということです」
インターネットの使用における子どもへのリスクとして、報告書は次のような事例を紹介しています。
- 南アフリカで調査対象となった子どもや若者の半数以上が、ネット上で性的コンテンツに晒されたと述べた。
- イタリアとウルグアイでの調査対象者22%が、自傷行為の内容に晒されたと述べた。
- イタリアとウルグアイで調査対象となった子どもの35%が、ヘイトスピーチに晒されたと述べた。
- ブルガリアの10〜14歳のFacebookユーザーのうち、5人に2人がアカウントを公開している。
- 調査対象となった11カ国で、30%から75%の子どもが、ネットで得られる情報の真偽を見分けられないと答えている。
子どもたちがデジタル世界のリスクに晒されるのを最小限に抑え、その利益を最大限に活かすには、問題のあるオンラインコンテンツやそれへのアクセスに対処することが重要です。ユニセフは、ハイテク企業に対して、幼い子どもにとって有害なコンテンツを積極的に監視および削除し、保護者や教育者が、子どもたちがインターネット上での機会を最大限に活用できるようサポートすることを求めています。
中でも、保護者は、子どもたちにインターネット上で何をするかについて話したり、一緒に活動したりするなど、重要な役割を果たすと報告書は指摘しています。保護者からのサポートがあって、子どもたちはインターネット上でより幅広い活動に参加し、スキルを伸ばし、リスクに晒されることも減らすことができるのです。
「Global Kids Onlineの調査では、子どもがインターネット上で過ごす時間を心配するよりも、親が子どものデジタル世界に積極的に関わり、遭遇する可能性のある特定のコンテンツと接触のリスクについて話し合うことで、子どもが自己回復力を得て、成長できると示唆しています」 と、LSEの社会心理学教授であり、報告書の共著者であるソニア・リビングストン(Sonia Livingstone)氏は述べています。
また、学校では、どのようにインターネットを使って情報を得て、見つけた情報の真偽を見分けるかについて、教師から子どもたちに指導する機会を持たなければなりません。報告書では、授業の一環としてこのような内容が実施できるよう、教師への研修機会が必要だと強調しています。
子どもたちは、自分の携帯電話などモバイル端末を用いたり、自宅でインターネットにアクセスする機会が増えています。子どもの安全を守りながら利益を最大化するには、子どものインターネットとの付き合い方についてバランスの取れた取り組みが必要です。
注釈:
本報告書に提示されたデータは、ユニセフ・イノチェンティ研究所およびLSEが率いる研究ネットワークであるGlobal Kids Onlineによって、アルバニア、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、チリ、ガーナ、イタリア、モンテネグロ、フィリピン、南アフリカ、ウルグアイで収集されました。本ネットワークは、ネットを利用する子どもたちのデジタル空間での体験について比較可能なデータを収集することを目的とするものです。
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )
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