リクルートと東京観光財団が持続可能な観光に関する共同研究を実施 「サステナブル」を軸にインバウンド旅行者の誘客促進につながる情報を整備
観光関連事業者が参考にできる「サステナブル情報整備指南書」を発表
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)の観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(以下JRC)は、公益財団法人東京観光財団(以下TCVB)とマーケティング観点における持続可能な観光の共同研究を実施しましたのでその研究成果をお知らせします。
■マーケティング観点における「持続可能な観光」の共同研究を実施した背景
持続可能な観光(※)は、国の観光施策の基本方針にも置かれ取り組まなくてはならない重要なテーマの一つです。また、欧米豪を中心とした諸外国のサステナビリティへの関心の高まりは急回復するインバウンド旅行者の誘客においても見逃すことのできないテーマといえます。一方で、日本国内の観光業におけるサステナブル対応は、具体的に何をすればいいのか不明瞭で工数もかかることなどから観光関連事業者が取り組みにくい現状があります。そこで、「サステナブル」を軸としたインバウンド旅行者の誘客促進につながる情報を整備し、対応する事業者を増やすための機運醸成をしていきたいという思いから、まずは東京全体で取り組むべく、リクルートとTCVBが共同で研究することと致しました。JRCではこれまで、インバウンド旅行者のニーズを調査し有効的なマーケティング施策に関して研究し事業者の皆さまの施策に還元できるよう取り組んでまいりました。そういったインバウンドにおけるマーケティング観点での研究実績や過去の取り組みを生かした研究となっています。
※持続可能な観光…「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響に十分配慮した観光」と定義(国連世界観光機関より)
■取り組み内容
欧米豪のインバウンド旅行者が旅行計画を立てる際、サステナブルな旅行体験等がどれほど誘客のフックになるのかを検証しました。欧米豪のミドル富裕層を中心に顧客を持つ旅行会社向けに、東京都内の「サステナブル」を軸として情報を整備した「東京サステナブル情報マニュアル」を作成。このマニュアルは、持続可能な観光の国際基準であるGSTC(Global Sustainable Tourism Council)Criteriaをベースに、経済、文化、環境の誘客促進につながる動機付けに着目して、インバウンド旅行者のニーズや旅行会社が販売する商流に合わせて一気通貫でプロモーションできる情報として整理しました。それによって、東京のイメージ変化の可否やこれまで訪問率が低いエリアの旅程追加の可能性有無、実際に誘客につながるかなどを検証しました。また具体的にどのサステナブル情報が響いたかを綿密にヒヤリングすることで、事業者で整備すべき情報の観点を明らかにし、発信方法も含めて「サステナブル情報整備指南書」としてまとめました。
研究発表資料:
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2023/03/sustainabilityresearch.pdf
東京サステナブル情報マニュアル:
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2023/03/responsibletravelmanual.pdf
サステナブル情報整備指南書:
https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2023/03/informationguide.pdf
▼「東京サステナブル情報マニュアル」の概要
<タイトル>
TOKYO RESPONSIBLE TRAVEL-Trade Manual-
GSTC基準での分野(経済、文化、環境)を網羅したマニュアルとしてこのタイトルを採用。海外旅行会社へのヒヤリングにより、「Sustainable」は環境中心に捉えられることが多いため、経済面も網羅したイメージとして想起されやすい「Responsible」を取り入れた。
<テーマ>
Slow Tokyo
東京=巨大な近代的都市景観や忙しい都市生活という印象を持たれることが多いため、「Slow Tokyo」という言葉を使うことで、東京に対する新たな印象を与えることに挑戦し、需要喚起することを目指した。
Rural Tokyo
サステナビリティに関するテーマでは、世界的に農村の風景などが人気であるが、東京にも自然のオプションや農村がたくさんあることは知られていない。そのため、東京でも体験できる自然や農村を連想できる言葉を設定。
Made in Tokyo
サステナビリティに関するテーマでは、その土地でしか作れないユニークな工芸品や芸術を広めることも重要である。東京にしかない独自性をアピールすることは響きやすく、文化遺産の保護や家族経営、地域密着型企業を支援するという考えにもつながる。
Eco Tokyo
エコツアー、低カーボンフットプリント、自然体験は、サステナビリティの強力なテーマである。東京でも具体的にどのような活動ができるかを示すことが重要である。
Boutique Hotels
旅行者においては、ユニークな宿泊施設に泊まること自体が旅行体験の大きな部分になる場合が多い。サステナビリティというテーマでは大手グローバルチェーンや一般的なホテルは避けて、その場所でしか見つからないような独立した宿泊施設をサポートしたいという場合も多い。
Responsible Hotels
一方、成熟した旅行者には、便利で広々とした信頼できる宿泊施設の利用希望者も多い。快適さが保証され、英語を話すスタッフがいること、さらにサステナブル対応を積極的に推進するホテルを望む。そのような旅行者へのオプションとなるホテルを紹介する。
■結果・成果
「東京サステナブル情報マニュアル」の内容に対し、海外旅行会社全社が「満足」と回答。誘客促進につながることが明らかに
「東京サステナブル情報マニュアル」を提示した海外旅行会社14社のうち5段階評価で「非常に満足」が11社、「満足」が3社という結果となりました。また、12社が東京のイメージが変わったと回答。「東京が持続可能な旅行を促進するために懸命に取り組んでいることが分かった」「東京都内で数日のツアーを作成でき、どのように旅行するか意識しているゲストを満足させることができると分かった」といったコメントがありました。さらに、新たに旅程に入れて顧客に提案したいかという質問では、先述したテーマの14のコンテンツのうち、「Slow Tokyo」に掲載した高円寺、谷中、「Rural Tokyo」に掲載した御岳、青梅、「Made in Tokyo」に掲載した「Indigenous Culinary Arts(その土地発祥の食文化)」「Responsible Restaurants」の6つのコンテンツで8割を超える高い意向度を獲得しました。海外旅行会社が商品を開発するにあたり、エリアの十分なリサーチ時間が取れないツアーオペレーターにとって開示され簡単にアクセスできる情報は役に立つものであることも分かりました。
これらの結果から、情報マニュアルによって海外旅行会社が提示しているオプションを旅程に入れる確率が上がり、誘客促進につながることが明らかとなりました。
サステナブル情報を整備するためのポイントは大きく7つと判明
さらに、情報マニュアルの中でも特に旅程に入れてもらいやすい要素を調査したところ、「ビジョン」「人間味」「地域コミュニティー」「地域への貢献」「歴史ストーリー」「具体事例」「世界基準の認証制度」の7つのポイントがあることが分かりました。これをベースに東京以外の事業者も活用できる「サステナブル情報整備指南書」を作成しました。
▼「サステナブル情報整備指南書」7つの情報整備ポイント
■今後の予定
TCVBは、東京をより持続可能なデスティネーションとして成長・発展させるべく、令和5年度より「TCVB Sustainable Tourism Partnership」を立ち上げ、都内の観光を支える事業者や団体の皆さまと連携し、情報発信を強化してまいります。JRCでは、全国にこの知見を広めていくことを目指し、事業者向けの情報発信を実施してまいります。JRCが発行する、観光マーケット活性化のための研究冊子「とーりまかし」6月号にて特集記事の掲載や、JRCが毎年実施している自治体・観光事業者向けの『観光振興セミナー2023(仮)』でも詳細を発表予定です。
■じゃらんリサーチセンター 研究員 松本百加里のコメント
日本には、海外旅行者に響きやすいサステナブル対応の慣習が多数存在していますが、当たり前の地域文化になりすぎて、アピールしきれていないように感じます。本研究では、世界基準でサステナブル情報を整備すれば、誘客促進につながることがわかりました。ゼロから何か作ろうとしなくても、今取り組まれていることを整備することからスタートできます。まずは日々の取り組みを、経済・文化・環境の観点で整理して、その取り組みへの思いを「サステナブル情報整備指南書」の好事例を参考にウェブサイトなどで情報掲載することをお勧めします。
▼リクルートについて
https://www.recruit.co.jp/
▼本件に関するお問い合わせ先
https://www.recruit.co.jp/support/form/
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