【岡山大学】相容れないと考えられていた「氷の規則」と「最密充填構造」を同時に満たす“未知の氷”がナノチューブ内では存在することを予測! ~身近な水の知られざる姿を発見~

国立大学法人岡山大学

2024(令和6)年 1月 16日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/




<発表のポイント>

  • 氷には結晶構造の異なる数多くの種類がありますが、最密充填構造(分子が最大限密に詰まった構造)をもつ氷は見つかっていませんでした。

  • ところが、円筒状のナノチューブ内では、最密充填構造をもつ新しいタイプの氷が分子シミュレーションにより見出されました。

  • ナノチューブ内の最密充填氷には2つのタイプがあることが分かりました。一つは完璧な水素結合ネットワークをもつ水素秩序氷、もう一つはランダムな分子配向をもつプラスチック氷です。



◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)高等先鋭研究院の異分野基礎科学研究所の甲賀研一郎教授(理論物理化学)、浙江大学(中国)の望月建爾教授、岡山大学大学院自然科学研究科博士後期課程の足立優司大学院生(当時)の研究グループは、これまで知られていなかった最密充填構造の氷がナノチューブ内では存在できることを分子シミュレーションにより明らかにしました。


 水という身近な物質には18種類もの氷(分子性結晶相)があることが確認されています。しかし、いずれの結晶構造も最密充填構造ではありません。最密充填構造とは、箱に球(例えばテニスボール)が最も密に詰め込まれたときの球の配列です。


 金、銀、銅など多くの固体での原子配列は最密充填構造ですが、水は高圧条件下でも最密充填構造にはなりません。その理由は、水分子は近接する4分子との間で丁度4本の水素結合を形成すること(「氷の規則」)を優先するからだと理解されてきました。


 ところが、本研究で初めて、円筒状のナノチューブ内にある水は高圧条件下で自発的に最密充填構造をもつ結晶に変化することが示されました。圧力・温度・チューブ直径を変えることにより、螺旋状あるいは直線状に分子が並ぶ様々な最密充填構造の結晶相が現れます。


 特に注目すべき点は、ナノチューブ内では「氷の規則」と「最密充填」の2つの相容れないと思われていた条件を同時に満たす氷(水素秩序氷)が存在することです。加えて、結晶中の個々の水分子が回転しつづけ、ランダムな分子配向をもつプラスチック氷の存在も明らかになりました。


 この研究成果は米国化学会ACS Nanoに2023年12月18日付で掲載されました。


図. ナノチューブ内の最密充填氷の水分子の配列(螺旋型の最密充填構造の一例。ナノチューブは描かれていない)。氷の規則(左上)を満たす水素秩序氷(中段)および氷の規則を満たさず、水分子が回転運動を行うプラスチック氷(下段)が存在する図. ナノチューブ内の最密充填氷の水分子の配列(螺旋型の最密充填構造の一例。ナノチューブは描かれていない)。氷の規則(左上)を満たす水素秩序氷(中段)および氷の規則を満たさず、水分子が回転運動を行うプラスチック氷(下段)が存在する



◆甲賀教授からのひとこと

 身近なはずの水や氷の性質には意外に未解明な部分が多く残されています。そのため、最先端実験と理論的研究が世界中で活発に行われています。今回私たちの研究グループは、分子動力学シミュレーションと呼ばれる手法を用いて、ナノ空間内部の水が新しいタイプの氷に変化することを見出しました。今後、ナノチューブ内の最密充填氷が実験により確認されることを期待します。


甲賀研一郎教授甲賀研一郎教授


◆論文情報
 論 文 名:Close-Packed Ices in Nanopores
 掲 載 紙:ACS Nano
 著   者:Kenji Mochizuki, Yuji Adachi, and Kenichiro Koga
 D  O  I:10.1021/acsnano.3c07084
 U  R  L:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.3c07084



◆研究資金
 本研究は科学研究費(18KK0151, 20H02696)の支援を受けて実施しました。また、本研究は岡山大学と浙江大学の国際共同研究により実施しました。



◆詳しいプレスリリースについて

 相容れないと考えられていた「氷の規則」と「最密充填構造」を同時に満たす“未知の氷”がナノチューブ内では存在することを予測!~身近な水の知られざる姿を発見~

 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20240111-1.pdf



◆参 考

・岡山大学異分野基礎科学研究所(RIIS)

 http://www.riis.okayama-u.ac.jp/



◆参考情報

・【岡山大学】タンパク質と水と共溶媒の「三角関係」を解く方法を考案 ~タンパク質医薬品の開発に必要な膨大な計算コストの効率化に貢献~

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001698.000072793.html



岡山大学異分野基礎科学研究所(岡山大学津島キャンパス)岡山大学異分野基礎科学研究所(岡山大学津島キャンパス)



◆本件お問い合わせ先

 岡山大学異分野基礎科学研究所 教授 甲賀 研一郎(こうが けんいちろう)

 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス

 TEL:086-251-7904

 http://phys.chem.okayama-u.ac.jp/


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 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
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 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
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 岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
 岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw

 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2024年1月期共創活動パートナー募集中:
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001931.000072793.html
   
 岡山大学「THEインパクトランキング2021」総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
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    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html

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教育・学習支援業
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岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟
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086-252-1111
代表者名
那須保友
上場
未上場
資本金
-
設立
1949年05月