【岡山大学】闘争の代償は精子の量~負けても戦いすぎてもオスはメスに精子を渡せなくなる~

2025(令和7)年 6月 22日
国立大学法人岡山大学
<発表のポイント>
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メスとの交尾を巡ってオス同士が戦う行動は多くの生物で研究されてきました。昆虫でも角を使って相手オスを投げ飛ばすカブトムシなど多くの研究事例が知られています。
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今回、私たちはオス同士の戦いで、互いに相手オスの脚をかみ合う珍しい闘争をする大型甲虫のツヤケシオオゴミムシダマシを使って実験した結果、戦いに負けたオスは、戦っていないオスに比べ、メスに上手く精子を渡せないことを発見しました。
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これまで一般に戦いに負けたオスはメスに渡す精子数を増やすことが分かっていました。しかし、驚くべきことに本結果では、負けたオスはメスに精子を上手く渡せないという逆の結果が得られました。さらに戦いが長く続くほど戦ったオスがメスに渡せる精子の量は少なくなる一方、体サイズの小さなオスはメスに渡す精子の数が多いなど、オスの状態次第でメスに渡せる精子数が著しく変わることが初めてわかりました。一連の結果は、戦いの勝敗がその後にオスが残せる子の数を変えるという闘争の代償について、そのメカニズムを明らかにしたと言えます。
◆概 要
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の大学院環境生命自然科学研究科博士後期課程3年の松浦輝尚大学院生と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の宮竹貴久教授は、去年、ツヤケシオオゴミムシダマシ(通称: ジャイアントミルワーム)のオス同士で脚をかみ合う闘争で負けたオスの子供の数が減ることを発見しました。
今回は、その減少の原因を詳しく調査したところ、戦いに負けたオスは、メスに精子をうまく渡せなくなることを明らかにしました。
オス同士の闘争の勝敗による子供の数と精子への両方の影響が明らかにされた種は限られており、本研究は脚をかむ闘争による敗北がメスに渡す精子量の減少の原因であることを明らかにした世界初の研究成果となりました。
また、この種では闘争時間が長引くほどオスがメスに渡せる精子数が減少すること、またオスの体サイズが小さいほど潜在的にメスに多くの精子を渡せることも明らかにしました。
この研究成果は、2025年6月16日午前0時(日本時間)、Springerの日本動物行動学会誌「Journal of Ethology」にオンライン掲載されました。

◆松浦輝尚大学院生からのひとこと
多くの動物種のオス同士の闘争で、負けたオスはメスに渡す精子数を増加させることが明らかになっています。しかし、驚くべきことにジャイアントミルワームでは負けたオスはメスに精子を上手く渡せていないという従来とは逆の結果が得られました。多様性の高い昆虫では新発見がたくさん隠されているのも知れません。

◆論文情報
論文名:Leg-biting fights reduce the number of sperm transferred by the loser and in draws in Zophobas atratus
邦題名「ジャイアントミルワームの脚咬み闘争は敗者と引き分けオスの移送する精子量を減少させる
掲載誌:Journal of Ethology
著者:Teruhisa Matsuura, Takahisa Miyatake
DOI:10.1007/s10164-025-00850-y
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s10164-025-00850-y
◆研究資金
本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費」(研究・23K21343,25K09771研究代表:宮竹貴久)、岡山大学大学院環境生命自然科学研究科・学生奨励研究費の支援を受けて実施しました。
◆詳しい研究内容について
闘争の代償は精子の量~負けても戦いすぎてもオスはメスに精子を渡せなくなる~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20250616-1.pdf
◆参 考
・岡山大学 学術研究院 環境生命科学学域 昆虫生態学研究室(宮竹貴久教授)
https://sites.google.com/view/miyatake/home
・岡山大学農学部
https://www.okayama-u.ac.jp/user/agr/index.html
・岡山大学大学院環境生命自然科学研究科
https://www.elst.okayama-u.ac.jp/
◆参考情報1
・昆虫の細菌感染密度に季節性 世界に先駆けて発見
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id459.html
・“逃げるは恥”ではない!? 戦闘で負けた後に4日間逃げ続ける昆虫について動物の行動様式の進化を数理モデルで解析
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id437.html
・LEDと性フェロモンを用いた環境・生産に負荷の少ない新型の害虫誘殺トラップを開発
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id419.html
・ウォーキング・ブームが少子化を招く?~昆虫からの示唆~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id561.html
・死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id669.html
・歩かない虫のオスは、より多くの子の父となる!~より歩かないオスのほうがメスをめぐる競争に勝つ~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id638.html
・大きな大顎を持つオスは死んだふりをしやすい?甲虫を用いた検証により世界で初めて明らかに
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id802.html
・コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id774.html
・体内時計のリズムの振幅は北に行くほど小さくなる!昆虫を使った実証で発見
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id806.html
・世界初! 天敵から逃れる戦略を制御するゲノムの特徴を解明 ~死んだふりを操る遺伝子の全貌を突き止めた~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000072793.html
・食われる側も工夫する:異なる天敵には違う捕食回避戦略を使う甲虫~フリーズか、それとも死を装うのか?~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000072793.html
・虫の求愛にもご当地の流儀があった!~婚姻贈呈に見られた地域差~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000721.000072793.html
・死んだふりに見られた緯度クライン ~北の虫は死んだふりをよく行う~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001335.000072793.html
・いつ、死んだふりから目覚めるべきか ~覚醒を早める集合フェロモンの存在を世界に先駆けて発見!~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001663.000072793.html
・サツマイモの大害虫イモゾウムシはイモ苗のある場所に固執する ~環境にやさしい害虫根絶に役立つ世界初の発見!~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002023.000072793.html
・死んだふりしている場合じゃない!~オスは異性のフェロモンにより死んだふりから覚醒する事を世界で初めて発見!~〔琉球大学、岡山大学〕
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002262.000072793.html
・雄間闘争で脚を噛まれて負けた甲虫のオスは、交尾のときに踏ん張れない~ライバルに脚を噛まれたオスは残せる子の数が減る!~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002371.000072793.html
・カフェインの殺虫効果を実証~飲んだ昆虫は死ぬ~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002929.000072793.html
◆参考情報2
・岡山大学広報「いちょう並木」 Vol.107を発行~ファーブルを超えて 世紀の発見を生む「昆虫博士」~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002742.000072793.html



◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(農) 教授 宮竹貴久
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:086-251-8339
FAX:086-251-8388
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1392.html
<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
岡山大学病院 新医療研究開発センター
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/
<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-235-7983
E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/
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〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8745、086-251-8746
FAX:086-251-8748
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※ ◎を@に置き換えて下さい
https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/
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〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
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※ ◎を@に置き換えて下さい
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