OIST発 量子スタートアップのQubitcore、国産イオントラップ量子コンピュータで社会実装へ向けてプレシード資金調達を実施
~画期的な分散型アーキテクチャで「誤り耐性型量子コンピュータ」実現へ加速~
【共同プレスリリース】
Qubitcore株式会社
沖縄科学技術大学院大学
ライフタイムベンチャーズ合同会社

人類が直面する複雑な課題を解決する、これまでにない高性能なコンピュータ「量子コンピュータ」。この分野で、日本から世界をリードする新たな挑戦が始まります。Qubitcore株式会社(キュービットコア、本社:神奈川県横浜市、代表取締役CEO 綿貫竜太、以下「Qubitcore」)は、量子コンピュータの基盤技術であるイオントラップ技術と光共振器 [1]を組み合わせることで、分散型量子計算システムの実現を目指すスタートアップです。この度、沖縄科学技術大学院大学(沖縄県国頭郡恩納村、以下「OIST」)との独占的ライセンス契約を締結し、「OIST発スタートアップ」の仲間入りを果たしました。
これに伴い、OIST Lifetime Ventures Fund (無限責任組合員:ライフタイムベンチャーズ合同会社)をリード投資家とするプレシードラウンドの資金調達を完了。Qubitcoreは今後、OISTの高橋優樹准教授が率いる研究成果を基盤に、誤り耐性型汎用量子コンピュータ(FTQC [1])の実現に不可欠な次世代アーキテクチャの開発と商用化を強力に推進し、量子時代における経済、産業、安全保障の飛躍的発展を力強く支えてまいります。
[1] 光共振器: 光を反射構造で閉じ込めることで、イオンと光の信号のやり取り(相互作用)を効率的に行えるようにする量子デバイスの中核技術
[2] FTQC: Fault-Tolerant Quantum Computer. 計算エラーを大幅に抑制し、大規模な計算が可能な次世代量子コンピュータ
Qubitcore:量子技術で社会を駆動するフロンティア
Qubitcoreは、新薬開発や新素材・エネルギー材料の設計、気候関連シミュレーションの高精度化、将来的なAI モデル学習の高速・省電力化など、従来型計算機では膨大な資源を要する課題に取り組む「誤り耐性型汎用量子コンピュータ(FTQC)」の実現を目指す、OIST発の量子コンピューティングスタートアップです。
Qubitcoreの独自技術:分散型量子計算アーキテクチャ

光共振器を統合した独自のイオントラップモジュールとフォトニックネットワークを組み合わせることで、既存の量子処理装置(QPU [3])が抱える拡張性の限界を打ち破ります。これにより、複数のモジュール間で高速かつ高信頼な遠隔量子もつれ [4] を可能にし、スケーラブルな大規模分散量子計算アーキテクチャという画期的な解決策を提供します。
Qubitcoreの技術は、個々の量子処理ユニット(QPU)の性能を最大限に引き出しつつ、それらを光で相互接続することで、従来のイオントラップ方式では難しかった大規模化を実現します。これにより、真に実用的なFTQCの構築を目指します。
[3] QPU: Quantum Processing Unit. 量子計算を行うプロセッサ部分
[4] 遠隔量子もつれ: 異なるモジュールに属する量子ビット [5] 同士を光で結び、一方の状態を測定すると、他方の結果が瞬時に決まり、強い相関(量子もつれ)が観測される量子力学特有の現象。分散型量子計算に不可欠な基盤技術。
[5] 量子ビット (qubit): 測定前には0と1の重ね合わせた「中間的な状態」をとれる、量子情報・量子計算の最小単位。
革新の源泉:OIST高橋ユニットの研究成果
Qubitcoreの技術シーズは、世界最高水準の研究拠点であるOISTの高橋優樹准教授が率いる量子情報物理実験ユニット(高橋ユニット)からスピンアウトされたものです。
高橋准教授は、内閣府が推進するムーンショット型研究開発制度において、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)が研究推進法人として担当する目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」における研究開発プロジェクト「イオントラップによる光接続型誤り耐性量子コンピュータ」のプロジェクトマネージャーを務めています。
このムーンショットプロジェクトでは、複数のイオントラップを光で連結する新しいアイデアにより、大規模化が容易なイオントラップデバイスの開発を目指しています。また、高橋ユニットの研究活動の一部は、OIST InnovationのProof of Concept (POC)プログラムによっても支援を受けてきました。Qubitcoreは、この同ユニットで培われてきた研究成果を継承し、社会実装を担う中核企業として、商用化を加速する計画です。
Qubitcore独自のロードマップ:FTQC実現への明確な道筋
【2028年 → 2029年 → 2030年】
Qubitcoreは、独自のロードマップに基づき、具体的な目標を定めています。
-
2028年: 誤り訂正の検証・研究用テストベッドとして、第一世代機を公開します。
-
2029年: 少数モジュールのリンクながらも、1,000量子ビット超のシステムへの自然な拡張可能性を示せる第2世代機を公開します。
-
2030年: この第2世代機をベースとして、商用稼働を目指します。
今回の資金調達と今後の展開
今回の資金調達は、Qubitcoreの分散型量子計算システムの開発と研究開発の強化を目的としています。具体的には、以下の取り組みを進めてまいります。
-
微小光学共振器を内蔵したイオントラップの開発・試作
-
分散型量子計算向けフォトニックリンクの実証
-
高効率な量子誤り訂正の実装に向けた研究開発
-
量子計算サービスプラットフォームの初期設計・制御系開発
これらの取り組みにより、Qubitcoreは量子計算技術を通じて、持続可能な情報処理基盤の未来を様々な企業と推進して切り拓いていきます。
コメント:量子時代の幕開けへ
Qubitcore 創業者/代表取締役CEO 綿貫竜太 「OIST発スタートアップの仲間入りをし、また、ライフタイムベンチャーズ様からのご支援を得て、日本初の国産イオントラップ量子コンピュータの商用化に向けた大きな一歩を踏み出せることを大変嬉しく思います。OISTの高橋ユニットの研究成果を基盤に、分散型量子計算システムの実用化を加速し、社会的価値の創出に注力していく所存です。産業応用を見据えた技術開発を着実に進めながら、量子技術が社会に深く根を下ろす未来を切り開いてまいります。」
Qubitcore 共同創業者/取締役CSO 高橋優樹(OIST 准教授) 「OISTで取り組んできたイオントラップの量子光接続に関する研究成果が、社会実装に向けた具体的な取り組みへと展開されることを大変意義深く感じています。今後、OISTとQubitcore社を中心に、国内外の研究者を巻き込んで研究開発が飛躍的に進展していくことを期待しています。」
ライフタイムベンチャーズ 代表パートナー 木村亮介 「ライフタイムベンチャーズは、OISTと連携するファンドの運営者として、Qubitcoreの構想初期から2年以上にわたり、ディープテックの社会実装に向けた創業支援を続けてきました。今回、イオントラップと光ネットワークを融合させた分散型アーキテクチャというハードウェアの中核課題に挑むQubitcoreが正式にローンチを迎えたことに、身が引き締まる思いです。研究と事業の接続に取り組む中で、日本から世界へ広がる量子テクノロジーの未来に、QubitcoreおよびOISTと共に挑めることを心より嬉しく思います。」

Qubitcoreについて |
---|

Qubitcore株式会社(キュービットコア)は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の高橋優樹准教授が率いる量子情報物理実験ユニット(高橋ユニット)の研究成果を社会実装することを目的に設立されたスタートアップです。当社は、イオントラップ技術と光量子ネットワークを融合した分散型量子計算アーキテクチャの実現を目指し、誤り耐性型汎用量子コンピュータ(FTQC)の開発に取り組んでいます。本社は神奈川県横浜市に位置し、研究開発拠点をOIST内に設置しています。
会社概要

会社名 |
Qubitcore株式会社(Qubitcore Inc.) |
---|---|
設立 |
2024年7月 |
所在地 |
神奈川県横浜市 |
代表者 |
代表取締役CEO 綿貫竜太 |
事業内容 |
分散型イオントラップ量子コンピュータの研究開発 |
公式サイト |

沖縄科学技術大学院大学(OIST)について |
---|

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、世界の科学技術の発展に貢献することを目的に、日本政府の主導により2011年に設立されました。国内外から優れた研究者を招き、世界トップレベルの研究拠点および革新的な知的クラスターの形成を目指しています。先駆的な大学院大学として、学際的な連携によって新たな科学的知見のフロンティアを切り拓く研究を推進するとともに、次世代のリーダーを育成し、沖縄における産業イノベーションの触媒となることを使命としています。
公式サイト: https://www.oist.jp/

ライフタイムベンチャーズ合同会社について |
---|

ライフタイムベンチャーズは、日本を拠点とするシードステージ特化型のベンチャーキャピタルです。2017年の設立以来、ディープテック領域を中心に、人類と地球の健康に資する50社以上のスタートアップへの投資・支援を行ってきました。科学と技術の力で、30年後の世界に価値を残すイノベーションの創出を目指しています。
公式サイト: https://lifetime-ventures.com/
本件に関するお問い合わせ
Qubitcore株式会社
E-mail: watanuki@qubitcore.jp
沖縄科学技術大学院大学
E-mail: media@oist.jp
ライフタイムベンチャーズ合同会社
E-mail: info@lifetime-ventures.com
※ 本リリースに記載された会社名は登録商標です。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像