約200年続く奈良・吉野の茶農家の三姉妹が事業承継。クラフト茶ブランド「茶ノ吉」11月5日デビュー
茶の「旬」を年間で提案。製茶時期の分散化で、小規模農家の新しい働き方を目指す
奈良県吉野郡大淀町で江戸時代中期、天保の頃(1830年頃)からおよそ200年続く製茶農家、嘉兵衛本舗(奈良県吉野郡大淀町中増1561 代表:森本正次)は、この度、父から娘の三姉妹への事業承継に向け、いつでも季節の旬が味わえるクラフト茶の新ブランド「茶ノ吉(ちゃのきち)」を開発、2025年11月5日(水)より嘉兵衛本舗オンラインショップおよび、中川政七商店オンラインショップ、中川政七商店の直営店で発売を開始します。

国内の茶業は、栽培農家戸数の大幅な減少と高齢化に加え、労働が一番茶の時期(4~5月)に集中するという季節的な偏在性が課題となっています。また、煎茶や番茶の価格が低迷する一方、高単価な抹茶の原料(てん茶)への生産シフトが進み、従来の製法を続ける小規模農家は厳しい状況にあります。こうした中、「茶ノ吉」では、農家が持つ「後加工」の技術を活かし、収穫時期と製茶時期を年間で分散させる商品ラインナップを設計しました。これにより、一番茶の時期に集中しがちな労働の平準化を図り、小規模農家としての持続可能性を追求します。手作業による製法で、産地の特性を活かしたクラフト茶の価値を提案します。
茶の吉について

コンセプトは「いつでも季節の旬が味わえる、 手間暇かけてつくるクラフト茶」。四季折々の自然と対話をしながら茶葉の栽培にこだわり、茶葉の状態に合わせて、最適な仕上げを行うことで、同じ茶の木から多様な味わいのお茶が生まれます。「茶ノ吉」は、反対から読むと「吉ノ茶(よしのちゃ)」となります。父から受け継ぐ三姉妹が、山里の自然と共に、吉野の地で茶づくりを守り続けます。
パッケージには、嘉兵衛本舗のお茶づくりにおける手間暇が感じられる「農業日誌」がデザインされています。
発売日: 2025年11月5日(水)
デビュー時商品ラインナップ: 釜炒り煎茶、和紅茶、烏龍茶の3種類。
※以降、季節に合わせてラインナップを拡充予定。
販売チャネル:
嘉兵衛本舗 公式オンラインショップ(https://kaheehonpo.com/)
中川政七商店 オンラインショップ(https://nakagawa-masashichi.jp/)
中川政七商店 直営店(一部店舗)
公式SNS:https://www.instagram.com/chanokichi.tea/
<ブランドの立ち上げ背景>
父から三姉妹への事業承継
現代表の森本正次氏には三姉妹がいますが、当初は三姉妹ともに家業を継ぐ意思はなく、森本氏も積極的に継承を考えていませんでした。 転機となったのは、次女が出産を機に実家の仕事に復帰し、その後長女が手伝いを始めたことです。これを機に、森本氏が長女へ畑仕事を積極的に教え始め、長女が畑仕事全般を担うようになります。三女も加わり、2013年頃から本格的に三姉妹が家業に従事する体制となりました。 その後、父の病気を機に三姉妹のみで製茶作業全般を経験したことや、2024年度に開催された中川政七商店の「経営とブランディング講座」を受講したことなどを通じ、事業承継と新ブランド立ち上げの構想が具体化しました。 本ブランドの立ち上げを機に、2027年4月を目処に法人登記を行い、三姉妹による経営体制へ移行する計画です。

茶農家の減少と構造的課題への挑戦
(1)深刻化する担い手不足と市場の二極化
全国的に茶の栽培農家戸数は平成20年比で43%減と大幅に減少し、基幹的農業従事者の74%が60歳以上(令和2年時点)と、生産基盤の縮小と高齢化が深刻です(※1) 。嘉兵衛本舗が位置する奈良県吉野郡大淀町でも、茶生産者が300軒からわずか5軒にまで激減しています。加えて、主力である「煎茶」や、飲料原料用の「番茶」の価格が低迷する(※1) 一方、高単価で取引される抹茶の原料「てん茶(碾茶)」への生産シフトが加速しています。これにより、てん茶を生産できる経営体と、従来の茶葉を扱う小規模農家との間で収益力の二極化が進んでいます。
※1 出典:「茶業及びお茶の文化に係る現状と課題(令和6年11月)」(農林水産省) (https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/attach/pdf/230929-4.pdf)
(2)季節的な労働の偏在と「茶ノ吉」の取り組み
茶栽培における労働時間は、一番茶や二番茶の摘採が行われる4月から5月が年間労働時間のピークとなるなど、季節的な偏在性が高いのが特徴です。この労働の偏りが、小規模農家のさらなる経営規模拡大を妨げる一因ともなっています。
嘉兵衛本舗の新ブランド「茶ノ吉」は、この課題に対し、一番茶だけでなく、二番茶、三番茶なども収穫を行い、茶葉の収穫時期と後加工の時期を年間計画の中で分散させます。これにより、労働時間の季節差を平準化し、持続可能な新しい働き方を作り出すことを目指します。また、一番茶以外の茶葉であっても、最適な後加工と手間をかけた手作業での製茶にこだわることで、それぞれの茶葉が持つ個性や特徴を引き出し、お茶の多様な魅力とその楽しみ方を提案します。


※出典:「茶業及びお茶の文化に係る現状と課題(令和6年11月) P.14」(農林水産省)(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/attach/pdf/230929-4.pdf)
茶ノ吉 商品ラインナップ
商品はすべてリーフタイプです。価格は税抜表記です。
和紅茶
価格:1,850円
内容量:20g
発売時期:11月5日(水)
商品特徴:渋みが少なく、やさしい甘み。希少品種「おくみどり」を使用。萎凋(いちょう)によって引き出された花のような香りが広がります。
釜炒り煎茶
価格:1,850円
内容量:20g
発売時期:11月5日(水)
商品特徴:釜で茶葉を直接炒る伝統製法。香ばしさの中にふわりと甘みが立ち、どこか懐しく、心にすっと馴染む味わいです。
烏龍茶
価格:1,850円
内容量:20g
発売時期:11月5日(水)
商品特徴:二番茶で釜炒り仕上げを施し、強めの焙煎で仕上げた半発酵茶。「倭烏龍(やまとうーろん)」ともいえるやさしい味わいが特徴です。
白茶
価格:2,350円
内容量:10g
発売時期: 12月3日(水)予定
商品特徴:若葉を摘み、自然の風と時間でゆっくりと乾かしたシンプルなお茶。やさしい甘みと草花のような香りが広がる清らかな味わいです。
越冬番茶
価格:1,850円
内容量:25g
発売時期: 2026年3月下旬予定
商品特徴:冬の寒さに耐え成分が凝縮された茶葉を使用しており、やわらかい味わいが特徴。嘉兵衛本舗伝統の天日干しの製法で仕上げています。
煎茶
価格:1,850円
内容量:20g
発売時期:2026年5月中旬予定
商品特徴:茶ノ吉の煎茶はいわゆる新茶(露地煎茶)。揉む工程を減らした昔ながらの製法を再現し、自然な曲がりのある素朴な形に。香ばしさとすっきりとした渋みが特徴です。
嘉兵衛本舗について
「かへえさん」と親しまれた森本嘉兵衛が、お茶作りを始めたのは江戸時代中期、天保の頃。それから6代にわたってお茶の仕事を受け継いできました。吉野郡大淀町内の生産者が300軒から現在はわずか5軒に減少する中、嘉兵衛本舗はこの地域で古くから製造されてきた「吉野大淀日干番茶」とその独特な製法を守り続けています。
代表者:森本 正次
所在地:〒639-3122 奈良県吉野郡大淀町中増1561
中川政七商店のコンサルティングについて
「茶ノ吉」の立ち上げは、2025年大阪・関西万博を契機とした奈良県のブランディング事業 (※2) において、支援対象企業に嘉兵衛本舗が採択され、業務委託を受けた株式会社中川政七商店によるコンサルティングの元実施いたしました。中川政七商店は「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、2009年より経営コンサルティングを始動、これまでに60社以上の支援を行ってきました。同社がSPA事業で培ってきた「ものを売る」ではなく「ブランドをつくる」という視点を活かし、結果に責任をもつ(決算書を良くする)ことをモットーとしてコンサルティングを実施しています。
<チーム体制>
コンサルタント:中川淳(PARADE株式会社)、横山遼大朗、(株式会社中川政七商店)
クリエイティブディレクション、グラフィックデザイン:坂本大祐、勝山浩二(合同会社オフィスキャンプ)
※2 当事業は、大阪・関西万博奈良県実行委員会が主催し、奈良県内で1300 年にわたり継承されてきた文化等を支える芸能や工芸等をストーリー化し、大阪・関西万博のテーマである SDGs 達成への貢献に向けたメッセージとして発信するための取組として、「クラフトフェア」等を実施予定。そのイベントに向けて、県内の魅力ある事業者を発掘し、ブランドをブラッシュアップする事業です。
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