福井の繊維生産ロスを再び“糸”へ循環。国内でも事例少ない「繊維to繊維」の水平リサイクルを実証
繊維王国ふくいの生産ロスを資源に、産地横断型循環モデル「ぐるぐるヤーン」を構築し、マテリアルリサイクル糸を開発。
一般社団法人ぐるぐるふくい(所在地:福井県越前市、代表理事:阿部佐保子)は、このたび環境省採択事業として取り組んできた「ぐるぐるヤーン」の実証実験を完了しました。
「ぐるぐるヤーン」は、福井の繊維産地で発生する生産ロスを再び糸へと循環させることを目指した産地横断型循環モデルです。本取り組みでは、福井県内で排出されるポリエステル系繊維の生産ロスを原料に、再び“糸”へと戻すマテリアルリサイクル糸を開発。国内でも事例が少ない「繊維から繊維への水平リサイクル(繊維to繊維)」を実証しました。さらに、本糸を活用したフリースやスウェットなどの製品化も進めています。

■ 国内有数の繊維王国ふくいが抱える構造的課題
福井県は、長繊維織物を中心に、丸編ニット、トリコット、リボン、レース、紡績糸など多様な製品を製造する、全国でも稀有な繊維総合産地です。織布、編立、染色加工、縫製、紡績、合繊ファイバー製造などの工程が高度に集積し、国内有数の産地を形成しています。福井県の統計によれば、織物生産高が年間約1億5,600万㎡、染色整理加工高は織物・ニット生地を合わせて約4億2,000万㎡規模にのぼります(*1)。こうした大規模な生産を支える一方で、工程上どうしても一定量の生産ロス(裁断屑や端材などの繊維廃材)が発生します。高い技術力と生産規模を持つ一方で、生産ロスを内包していること。これが、繊維王国ふくいが抱える構造的課題の一つとなっています。
(*1) 「福井県生産動態統計調査年報 令和6年」より
■ 繊維から繊維へのリサイクルが進まない理由
現在、流通する再生ポリエステル糸の大半はPETボトル由来であり、繊維から繊維への水平リサイクルは1%未満にとどまると言われています。なぜなら、繊維製品の多くはポリエステルやウールなど複数素材が混ざり合う混紡構造であり、さらに染色や加工工程を経ることで、素材の分離や再資源化が容易ではないからです。加えて、回収から再生、紡糸までを一貫して担う仕組みも十分に整っていません。そのため、繊維製品の多くは最終的に焼却やダウンサイクルに回され、素材として循環する仕組みは十分に確立されていないのが現状です。こうした課題を前に、一般社団法人ぐるぐるふくいは「作って、使って、棄てる」という一方向の構造から「作って、使って、戻す」ことを模索し、このたび産地内外の企業と連携し、繊維廃材を新たな資源へと循環させる具体的な仕組みづくりに挑戦しました。
■ 産地横断型循環モデル「ぐるぐるヤーン」
こうした課題と挑戦を背景に誕生したのが、環境省採択事業(*2)として実証を進めてきた産地横断型循環モデル「ぐるぐるヤーン」です。
福井県は長繊維の合繊織物産地として国内有数の規模を誇る一方、ウールなど短繊維素材を高混率で活用する紡績設備は限定的という構造的課題があります。高度な混紡糸開発を実現するには、異なる産地との連携が不可欠です。この地域的制約を乗り越えるため、一般社団法人ぐるぐるふくいを中心に、株式会社SHINDO(福井)、株式会社モンスター(福井)、株式会社エコログ・リサイクリング・ジャパン(広島)、小山化学株式会社(栃木)、東洋紡糸工業株式会社(大阪)、株式会社A-GIRL’S(エイガールズ)(和歌山)の産地を超えた企業が連携しました。福井県内で発生するポリエステル系繊維の生産ロスを回収し、マテリアルリサイクル技術によって再び“糸”へと再生。さらに他産地の紡績技術と組み合わせることで、混紡素材による高付加価値な糸の開発を可能にしました。

これにより、国内でも事例が限られる「繊維to繊維」への水平リサイクルを実証するとともに、原料回収から再生、紡糸、製品化までを国内で完結させる循環型サプライチェーンの基盤を整えました。素材や工程の地域的偏在を越え、産地を横断する循環モデルは、国内でも先進的な取り組みです。本取り組みは、単なる再生糸の開発にとどまらず、産地構造そのものを循環型へ転換するための第一歩となります。
(*2) 令和7年度地域の資源循環促進支援事業 「循環型ビジネスモデル実証事業」採択事業
■ マテリアルリサイクル糸の特徴
本取り組みから生まれたマテリアルリサイクル糸は、福井県内で発生したポリエステルテープのロス材を原料に、熱溶融・再成形によるマテリアルリサイクル技術を用いて“高品質な糸”へと再紡糸しました。
①Quality(質)
本開発で目指したのは、環境配慮だけでなく「本当に良い糸」であることです。
ニュージーランド産スーパーエクストラファインメリノ(NZ-175)という最高級ランクの原料を使用。福井県内で発生した販売機会を失った別注ポリエステルテープを熱溶解しペレットに再成形、ウールの繊度と繊維長に合わせた原料(1.7d/64mmカット)を30%混紡しました。一般的に、このクラスの高級ウールにポリエステルを混紡するケースは多くありません。しかし、あえて30%を掛け合わせることで、以下の特性を実現しました。
● ウール100%糸と比較して強度・耐久性を向上
● 編地にした際の安定性と伸縮性を確保
● 高級原料を使用しながらも価格を抑えた設計
番手は24/1、24/2を展開。さらにロス材の色味とウール原料の調整を重ね、市場で使いやすいグレーに設計しました。アップサイクル素材でありながら、品質で評価される糸を目指したことが開発の出発点です。
②Co-Creation(共創)
この糸は一社だけでは完成しません。
「どのような生地にするのか」「どのような製品にするのか」といった出口を明確にしたうえで、原料選定、紡績設計、製品化までを一体の企画として共有しました。繊維産地がそれぞれに抱える課題を前提に、技術を持ち寄り、役割の枠を越えて連携。福井県内で生まれた生産ロスを原料としながらも、産地を越えた協業によって完成度を高めています。一本の糸が、産地と技術をつなぐ。それが「ぐるぐるヤーン」のもう一つの価値です。
③Unique Value(唯一無二)
廃材由来であること。小ロットであること。再現性に限りがあること。
これらは一般的には“弱み”とされがちな条件です。しかし本プロジェクトでは、それらを欠点ではなく、唯一無二の価値へと転換することを目指しました。同じものを大量につくるのではなく、背景とストーリーを持つ素材を届ける。 大企業には難しい柔軟なものづくりと挑戦の積み重ねが、この糸を「あるようでない存在」にしています。


■ マテリアルリサイクル糸を活用した製品事例
マテリアルリサイクル糸は、すでにさまざまな用途での展開が始まっています。
①糸を主役にしたアパレル製品(フリース/スウェット)
糸そのものの素材感を活かし、「糸を主役にする」ことをコンセプトに開発されたフリースとスウェットです。ニット製造は、世界的アワードを受賞するニットメーカーニットメーカー A-GIRL’S(エイガールズ) が担当。担当。縫製は高級婦人服を手がける モンスター、デザインは 4c Studios が担当しています。素材の特性を最大限に引き出しながら、高付加価値なプロダクトへと昇華させました。
②アウトドア向けプロダクト(ニット帽/ネックゲーター)
アウトドアシーンを想定した展開として、ニット帽やネックゲーターを製作。古着のリメイクブランド T.K Garment が企画・製造を行い、北陸最大級のアウトドアショップを運営する カンパネラ で販売予定です。循環素材を日常やアウトドアシーンに取り入れる新しい提案となります。
③「原料」として循環させる活用
自社製品を製造する過程で発生するロス材を、再び自社製品の原料として循環させる取り組みも行っています。副資材メーカー SHINDO で生じたロス材を原料としてマテリアルリサイクル糸を生産し、それを再び SHINDO へ戻し、既存ラインナップの ウールニットバインダーテープ に置き換えることができました。“廃棄物ではなく資源”として循環させる、新しい活用方法の実証です。





■ 一般社団法人ぐるぐるふくいとは
国内でも稀有な繊維総合産地・福井県の技術と資源を活かし、人・モノ・自然が循環するサーキュラーエコノミーの実現を目指して立ち上がった団体です。産業・行政・教育・福祉と連携することで、技術研究、新素材開発、事業支援、教育・啓発活動、情報発信に取り組んでいます。
設立:2025年10月1日
所在地:福井県越前市平和町10-6
Webサイト:https://gurugurufukui.jp/
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