「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査」の結果第2弾を発表
モチベーションの源泉が満たされているほど、70代以降も働きたい傾向がある
今回は、高年齢者雇用安定法の改定や、人的資本開示の観点をふまえ、プロジェクト第2回目のレポートとして、「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査」の中から、70代以降に働くことについての分析結果を発表します。
【エグゼクティブサマリ】
TOPIC1:70代以降も働きたい人はどのくらいいるのか
「70代以降も働きたい人」は全体の14.2%
TOPIC2:70代以降も働きたい人とそうではない人の違い
今の仕事は自分の成長につながると思っている40代・50代は、70代以降も働きたい傾向がある
TOPIC3:「モチベーション・リソース(モチベーションの源泉)」と「70代以降も働きたいと思う人」の関係
モチベーション・リソースが満たされているほど、70代以降も働きたい傾向がある
*詳細は調査レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000001213/)を参照ください。
1.調査のポイント
【TOPIC1:70代以降も働きたい人はどのくらいいるのか】
●「70代以降も働きたい人」は全体の14.2%(図表1)
「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」という問いかけに対し、70歳以上と回答した方は全体の14.2%でした。極端に少ない印象はないかもしれませんが、やはり多くの方が60代までには引退するイメージを持っているようです。
図表2は、「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」の年齢別回答結果です。
最も若い20~24歳では、70歳以上まで働きたい人はわずか8.2%という結果に。70代で働くことがより現実的に感じられるであろう55~59歳でも16.7%でした。さらに、55~59歳の人は「65~69歳まで働きたい人(30.7%)」を加えても過半数に届きません。20代はもちろん50代でも、70代以降に働きたいと思う人は少数派なのです。
【TOPIC2:70代以降も働きたい人とそうではない人の違い】
仕事や会社に対する認識についての質問をもとに、70代以降も働きたい人とそうでない人の違いを見ました。具体的には、「(従来、定年退職の年齢と認識されてきたであろう)60~64歳まで働きたいと考えている人と、就業確保の努力義務である70代以降も働きたいと思っている人の現状認知の差」を5歳刻みで調べました。
なお今回は、70代以降も働くかどうかを現実的に考え始める40~ 50代にフォーカスしています。
図表3は、結果の年代別まとめです。統計的に確からしい差が見られた項目を抜粋し、70歳以降も働きたいと考えている人が60~64歳まで働きたいと考えている人より高い場合は「プラス(+)」、低い場合は「マイナス(-)」で表記しています。
●今の仕事は自分の成長につながると思っている40・50代は70代以降も働きたいと考える傾向がある
この結果は、40代・50代に共通する点です。つまり、成長への期待と働く意欲には一定の関係があることが推察されます。
また、5歳刻みの年代ごとに異なる統計的に有意な項目の違いも明らかになりました。
40代前半(40~44歳)で70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴
※次の項目で得点が高い傾向がある。
●今の仕事を通じて成長できている
●各部門に、経営資源(ヒト・モノ・カネ)が適切に配分されている
●各部門が、顧客への提供価値を高めるために積極的に協力し合っている
●従業員が必要な能力やスキルを身につけるための、制度や仕組みが整っている
40代前半は「自分は良い職場環境で働いていると感じる人」が、70代以降も働こうと思いやすい傾向にあります。しかし、現実的には何十年も職場環境が一定ということは稀で、年代によって職場に求めるものが変わってくることも一般的です。また、何十年も同じ職場で働き続けるのは難しいという方も多くいます。この年代は、まだ70代以降も働くことにそれほどリアリティを感じていない方が多いのではないかとも推察されます。
40代後半(45~49歳)で70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴
※次の項目で得点が高い傾向がある。
●今の仕事は会社や職場の成長・発展につながると思う
●今の仕事は顧客や社会に価値を提供することにつながると思う
40代後半は「会社・職場・顧客・社会への貢献感」が、70代以降も働こうとする意欲を高めていることが明らかになりました。ちょうど「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」と言われる、自分のあり方などに悩む時期です。そのため、「貢献できている」実感がある人が、長い期間働こうと思いやすいと考えられます。
50代前半(50~54歳)で70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴
※次の項目で「得点が低い」傾向がある。
●今の年収に満足している
●従業員が必要な能力やスキルを身につけるための、制度や仕組みが整っている
50代前半は、いよいよリアリティをもって定年や引退について考え始める年代。その際、今の年収に満足していたり、現職の制度・仕組みが整っていたりする場合、70代以降は働く必要がないのではないかと考えるようです。
50代後半(55~59歳)で70代以降も働きたいと考えている人の認識の特徴
※次の項目で得点が高い傾向がある。
●今の仕事は会社や職場の成長・発展につながると思う
●この会社の理念やビジョンに共感している
●従業員が必要な能力やスキルを身につけるための、制度や仕組みが整っている
50代後半は、70代以降も働くかどうかを現実的に考える年代。能力やスキルを身につけるための制度・仕組みが整っている組織に在籍する人は、実際に70代以降も働き続けられるというイメージがつきやすいのではないかと考えられます。また、組織貢献実感や理念・ビジョンへの共感がある人は、その会社で長く働き続けたいと思うのではないでしょうか。
【TOPIC3:「モチベーション・リソース」と「70代以降も働きたいと思う人」の関係】
ここまで、年代別の分析結果をお伝えしてきましたが、同じ年齢の人であっても考え方は一人ひとり異なります。そのため、長く働き続ける意欲を高めるための施策に、画一的な正解は存在しません。より多くの社員の長く働き続ける意欲を向上させるためには、個人の特性に目を向ける必要があります。
その点をふまえて、最後に第1回レポート(https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000001204/?theme=assessment,staffing)で注目した「モチベーション・リソース」と「70代以降も働きたいと思う人」の関係を見ます。なお、モチベーション・リソースとは、働く皆さんのモチベーションの源泉のことです。今回は、「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている人ほど、70代以降も働きたいと思っている」という仮説を立て、検証を行いました。
●モチベーション・リソースが満たされているほど、長く働きたい傾向がある(図表4)
図表4では次のことが明らかになりました。
●45~49歳、50~54歳は、70代以降も働きたい人のほうが「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている」という統計的に有意な結果が出た。
●55~59歳に関しては、統計的に有意とまではいえないが、やはり70代以降も働きたい人のほうが「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている」という結果が出た。
●40~44歳に関しては、統計的に有意な差はなかった。
つまり、45~59歳の人に関しては「モチベーション・リソースにフィットした仕事に就いている人ほど、長く働きたいと思っている」という仮説がおおむね正しいと考えられます。個々の特性を踏まえて、適した内容の職務・役割を期待したり、仕事の意義を伝えたりすることで、長く働きたいという意欲の向上につながると言えるのではないでしょうか。
【今回の調査について】
日本では、寿命が延びるとともに健康寿命も延びており、70歳を超えても元気に働ける人が増えています。それに合わせて、2021年4月に施行された改正高齢者雇用安定法では、70歳までの雇用確保が努力義務となり、70代以降も働きやすい環境が徐々に整ってきています。しかし、個人が70代以降も働きたいと思っているかどうかは別問題です。昨今、注目されている「人的資本経営」の観点からも、多くの経営者が自社の従業員が何歳まで働こうと思っているのか、長く働こうと思っている従業員はどのような従業員か知りたいのではないでしょうか。
こういった社会的背景を踏まえて、本リリースでは、「70代以降も働きたい人はどのくらいいるのか」、「70代以降も働きたい人とそうでない人の間にはどのような違いがあるのか」についての分析結果をまとめました。なお、今回の分析では、第1弾でフォーカスした「“モチベーション・リソース”と“現在の仕事の特徴”のフィット度合い」を活用しています。
当社は、これまで60年以上に渡って人々の内面(性格、志向、価値観など)を測定してきた技術を活かし、人材、つまり働く人々の意識・特性を多角的に捉えるプロジェクトを発足しました。本調査はプロジェクト最初の取り組みとして実施したものです。
2. 調査担当研究員のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
研究本部 HR Analytics & Technology Lab 所長 入江 崇介
少子高齢化が進む中、年金、社会保障、労働力不足など、さまざまな理由により、「長い期間働く」ことが求められるようになっています。しかし、「働きたい」という思いが伴わなければ、定年延長などの仕組みだけ整えても、「長い期間働く」という選択は積極的に取られなかったり、肯定的なものにならなかったりしてしまいます。
本レポートでは、「長い期間働く」ことが肯定的なこととなるためのヒントを得るべく、「長い期間働こうと思っている人=70代以降も働きたい人」について、仕事や会社についてどのような認識を持っているのか、また、モチベーション・リソースの充足度がどのようになっているのかを確認しました。
今回分析対象とした40~59歳に共通する特徴として、70代以降も働こうと思っている人は、60~64歳まで働こうと思っている人と比べ、「今の仕事は自分の成長につながると思う」と感じている傾向にあることが確認されました。また、45~59歳では、70代以降も働こうと思っている人は「モチベーションの源泉が満たされている」傾向にありました。当たり前かもしれませんが、仕事がポジティブな経験になっているほど、「70代以降も働きたい」という肯定的な思いを抱けるようです。
一方で、40~59歳といえば、組織の中ではベテランです。一通りの仕事ができるがゆえに、成長感が感じづらくなっているかもしれません。また、周囲から「成長している」というフィードバックの声をかけられることも少なくなっているかもしれません。さまざまな責任を担うようになり、自分がしたいことよりも、できることや、しなくてはならないことに取り組んでいることもあるかもしれません。
それゆえ、企業としては、ベテラン社員に対して、「自分の面倒は、自分で見られるだろう」と思うことなく、成長のフィードバックや、個々人が担う仕事とモチベーションの源泉のつながりを認識する機会を作ることが必要になるのではないかと、改めて考えた次第です。
なお本調査では、「あなたは何歳まで働きたいと思いますか」という質問について、若い年代ほど高い年齢の選択率が低くなっていました。とはいえ、20代や30代の若手世代が長い期間働くことを求められる風潮は今後も続くと思われるため、「長い期間働くこと」がポジティブな選択肢の一つと思えるよう、「長い期間働いている人が、いきいきしている」姿が見られることが大切ではないでしょうか。だからこそ、40代、50代、60代、そして70代、これらの世代でいきいきと働いている人が増え、「長い期間働くことのよさ」が実感できるような社会になっていくことが必要です。私どもも、さまざまな世代の方がいきいきと働くためのご支援を、より一層行っていきたく思います。
また、今後も、働く個人や組織、個と組織の関係について、調査結果などを通じて情報提供をさせていただくことで、個と組織の益々の発展に寄与できれば幸いです。
3. 調査概要
※調査実施は株式会社マクロミルに委託
リクルートマネジメントソリューションズについて
ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・ 戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。
●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス
また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」「HR Analytics&Technology Lab」
を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。
※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp
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