EVERSTEEL、東京製鐵と鉄スクラップ自動解析AIシステムの実証実験完了

本運用に向けたβ版開発の開始

株式会社EVERSTEEL

東京大学発スタートアップの株式会社EVERSTEEL(本社:東京都文京区、代表取締役社長:田島 圭二郎、以下、EVERSTEEL)は東京製鐵株式会社(本社:東京都千代田区、取締役社長:西本 利一、以下、東京製鐵)と鉄スクラップ自動解析AIシステム(以下、本AIシステム)を用い、鉄スクラップ検収作業の作業効率化や検収員毎の査定のばらつきの低減を目指した実証実験を完了しました。この度、現場本運用に向けた製品β版開発を開始します。

■実証実験の背景

2050年までの脱炭素社会の実現には、我が国全体のCO2排出量の約14%を占める「鉄鋼部門」における排出抑制の取り組みが不可欠であり、そのためには現在日本において主流となっている高炉法に比べ、CO2排出量を80%以上削減できる電炉法による鉄鋼生産の拡大が求められています。東京製鐵は、国内最大の電炉メーカーであるとともに、年間300万t以上の鉄スクラップを購入する国内最大の鉄スクラップ購入企業です。鉄鋼業界のトップランナーとして、電炉鋼材の普及拡大を通じ、社会の持続的な発展に貢献するという強い決意をもって、Tokyo Steel Eco Vision2050のもと、脱炭素社会・循環型社会の実現に取り組んでいます。

電炉鋼材普及において鍵を握るのが、原料である鉄スクラップの品質管理です。鉄スクラップは受け入れ時の現場検収員による高度な検品作業により原材料品質を担保しています。しかしながら、日々搬入される大量のスクラップに対する正確な検品作業には、習熟したスキルが要求され、検収員の高齢化、採用難が顕著化しています。そのような状況を打破すべく、属人的なスキルのAIによる客観化、技術継承を行うために、EVERSTEELは東京製鐵との鉄スクラップ自動解析AIシステムの実証実験を開始しました。

 
■実証実験の内容
1.検収員(熟練工)のスキル定量化
EVERSTEELによる工場滞在の上、1ヶ月間かけ宇都宮工場での検収員の検収スキルの定量化を実施しました。等級査定には長年の経験と高度なスキルが求められ、検収員でも客観的な査定の安定的な実施には困難を要し、業界全体において査定のばらつきが課題視されています。そこで検収員間の査定のばらつきの程度を可視化するために、実際に荷下ろしされるスクラップに対する検収員の検収業務を分析することで、査定のばらつきの定量化を実施しました。これにより本AIシステム開発における一つの目標精度値である、検収員の査定精度の測定を完了いたしました。

図1.東京製鐵宇都宮工場での検収作業現場図1.東京製鐵宇都宮工場での検収作業現場

 

2.本AIシステムの開発
等級分類では、本AIシステムによりトラック1台に積載されたスクラップに対する等級査定を実施致します。実証期間において、すでに本AIシステムが検収員の検収スキルと近い精度で検収を実施可能であることを確認いたしました。
以下に例を記載いたします。図2での単一の等級で構成されるトラックに対する解析に加え、図3では、複数の等級が混在するトラックに対しても、検収員の査定に近い精度でAI解析が可能であることが確認できています。​ 

図2.検収員とAIの等級分類結果図2.検収員とAIの等級分類結果

 

 

図3.検収員とAIの等級分類結果比較例図3.検収員とAIの等級分類結果比較例


異物検出では、本AIシステムにより鋼材中への混入が課題となる不純物や、炉内にて急反応を引き起こす密閉物といった「異物」を検出します。実証実験期間において、本AIシステムによってトランプエレメントの代表であるCuを含むモーターについて、以下の例のように高い精度で検出可能であることを確認いたしました。

図4.異物検出結果例図4.異物検出結果例

 


■本AIシステムの概要

図5.本AIシステムのアプリケーションイメージ画像図5.本AIシステムのアプリケーションイメージ画像

 

将来的に本運用されるアプリケーションでは、現場に設置したカメラで撮影した画像のリアルタイムでの解析が可能となります。画像を元に検収員が実施しているスクラップの等級判定の補助、作業負担低減、検収員毎の査定のばらつきの低減、熟練作業者の技能承継補助をAIが実施いたします。また、鉄リサイクルの大きな課題である、異物経由で様々な非鉄金属が混ざり込むことによる品質低下や密閉物の混入による事故の危険性を防ぐために、異物の検出をAIが実施いたします。

■本運用に向けた展望
本AIシステムの本運用に向け、6月よりβ版開発を開始致します。β版では、実際の荷下ろし業務中に、リアルタイムで鉄スクラップをAI解析し、結果を作業者の元へフィードバックします。β版の運用により、ユーザビリティ面の改善と並行し、データ収集によるAI解析精度の向上を目指します。

■両社の代表コメント
東京製鐵株式会社:執行役員宇都宮工場長 酒井久敬氏
「当社は長期環境ビジョン Tokyo Steel EcoVision2050で、電炉鋼材が可能にするカーボンマイナスとアップサイクルを通じた脱炭素社会・循環型社会の実現を目指しています。自動解析AIシステムの分野において突出した技術を持つEVERSTEEL社との本取り組みは当社ビジョン実現への大きな一歩です。日本最大のスクラップ購入企業である当社のスクラップ検収分野におけるノウハウ・知見を惜しみなく提供することで、早期に本運用に繋げていきたいと考えています。」

株式会社EVERSTEEL:代表取締役社長 田島圭二郎氏
「カーボンニュートラル社会の実現において、鉄鋼業におけるCO2排出量抑制は喫緊の課題です。鉄スクラップの品質管理に求められる検収作業は、高齢化・人材不足・スキル属人化といった様々な課題を抱えており、鉄リサイクル促進のためにはAI技術による抜本的な解決が不可欠です。国内電炉メーカーのトップランナーである東京製鐵との取り組みを通じて、国内、ひいては世界全体での鉄リサイクル促進を目指していきます。」

東京製鐵株式会社について
【会社概要】
会社名:東京製鐵株式会社
本社所在地;東京都千代田区霞が関3-7-1霞が関東急ビル15階
取締役社長:西本 利一
設立:1934年11月
URL;https://www.tokyosteel.co.jp/

株式会社EVERSTEELについて
【会社概要】
会社名:株式会社EVERSTEEL
本社所在地:東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ202
代表者取締役社長:田島 圭二郎
設立:2021年3月
URL;https://eversteel.co.jp/

【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社EVERSTEEL
Email:contact@eversteel.co.jp
東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ202

この成果は、NEDO(国⽴研究開発法⼈新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成事業NEP(NEDO Entrepreneurs Program)の結果、得られたものです。

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会社概要

株式会社EVERSTEEL

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URL
https://eversteel.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都文京区本郷7-3-1 東京大学南研究棟アントレプレナーラボ202
電話番号
-
代表者名
田島圭二郎
上場
未上場
資本金
100万円
設立
2021年03月