「がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版」発刊。「がん患者さんのための栄養治療」に関する最新プレスセミナー開催
根拠に乏しい情報があふれる世の中で、科学的根拠に基づいた情報を患者さんへ
金原出版株式会社は、日本栄養治療学会による編集のもと、「がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年度版」を2025年2月に発刊いたしました。
「ペイシェントアドボカシー」とは、患者さんの視点から医療の課題を解決するために、政策や制度を改善する活動を指します。これまでは、病気や治療法の情報を患者さんに伝える役割が中心でしたが、現在では学会と患者さんが連携し、一緒に医療を作り上げる時代となりました。患者さんの声は、医療のあらゆる場面で重要性を増しています。
その中でも栄養は、患者さんの体力を支え、治療効果を高めるだけでなく、生活の質を向上させる重要な要素です。そこで本書籍は、患者さんの声に耳を傾けながら、がん治療における栄養の役割をわかりやすく解説し、より良い栄養治療をともに考えるための道しるべとなることを目指して、発刊されました。
がんの予防に役立つ栄養から、がん治療中の栄養治療まで幅広く取り上げています。例えば、薬物療法や手術療法といったがん治療の種類ごとに、栄養がどのように治療を支えるのかを具体的に解説しています。また、治療が難しい場合における緩和ケアにおいても、栄養治療が患者さんの生活の質を保つために果たす役割について触れています。
金原出版では本書籍を通じて、患者さんやそのご家族が栄養治療に関する知識を深め、役立てていただけることを願っております。そこで、本ガイドラインの発刊に伴い、「がん患者さんのための栄養治療」に関するプレスセミナーを、5月14日(水)に厚生労働省会見室にて開催いたしました。
プレスセミナーでは、本書籍の編集・制作にも関わった北里大学医学部 外科 上部消化管外科学 比企 直樹 主任教授および岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター 犬飼 道雄 主任医長を登壇者に招き、「がん患者さんのための栄養治療」についてお話をしていただきました。

■タイトル:「がん患者さんのための栄養治療」に関する最新プレスセミナー
■日 時:2025年5月14日(水)14:15~15:00
■会 場:厚生労働省会見室(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
■登壇者:
比企 直樹(ヒキ ナオキ)
北里大学医学部上部消化管外科学 教授
北里大学大学院医療系研究科長
日本栄養治療学会 副理事長
所属学会:日本栄養治療学会、日本外科学会、日本消化器外科学会、日本胃癌学会、
日本外科代謝栄養学会、日本臨床外科学会、日本癌治療学会、日本内視鏡外科学会、
日本病態栄養学会、日本エンドトキシン・自然免疫研究会、PEG・在宅医療学会
犬飼 道雄(イヌカイ ミチオ)
岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター 主任医長
所属学会:日本栄養治療学会、日本外科学会、日本消化器外科学会、PEG・在宅医療学会、岡山プライマリ・ケア学会
【北里大学医学部 外科 上部消化管外科学 比企 直樹 主任教授 発表概要】

■栄養治療とは何か
近年、科学的根拠に基づき、「どの栄養素を、どれだけ摂取すれば、どんな効果があるか」が明確になってきています。これを基に患者さんの治療を助けたり、栄養投与を行うことを栄養治療と言います。特に薬物療法と手術を伴うがん治療においては、栄養治療が副作用の軽減や合併症の予防に寄与することが近年の研究で明らかになっています。
■なぜ患者さんへ栄養治療について伝える必要があるのか
世の中には「◯◯を食べると健康に良い」といった根拠の乏しい情報があふれているため、患者さんが正しい情報を得られるように、情報の整理をする必要があると考えました。栄養治療が科学的根拠に基づいた情報であるということ、そしてどの栄養素をどれだけ摂ればよいのかを伝えることで、エビデンスによらない情報と一線を画すことができると考えています。
■患者の声を反映した「栄養治療ガイドライン」の策定
患者さんの声を医療に反映して安心して治療を受けられるようにする支援の在り方を「ペイシェントアドボカシー」と呼びます。日本栄養治療学会では、これに基づき、患者さんや家族からアンケートを取り、疑問や知りたいことを反映させて「がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版」を作成しました。また、誰もがこの本を手に取れるよう、全国の「がん診療連携拠点病院」と「がん情報ギフト寄贈館」へ1,172冊を寄贈しました。
【岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター 犬飼 道雄 主任医長 発表概要】

■患者さんからのアンケートで悩みが浮き彫りに
アンケートには幅広い年代の患者さんが回答し、なかでも乳がんや血液がんの若年層の患者さんが比較的多く含まれていました。治療中の悩みでは、リハビリに関するものが多い一方で、口腔に関する悩みが少ないことが分かりました。しかし薬物療法中の食欲不振や味覚障害といった悩みは、口腔の問題を改善することで軽減されることも少なくありません。そこで本ガイドラインは、栄養・口腔・リハビリの3分野について、Q&A形式で構成しました。
■栄養治療の重要性
薬物療法では、副作用の重症度を評価する指標であるCTCAEにおいて、副作用の程度に関わらず、それに応じた栄養治療の必要性が示されています。また、がんになると体重が減ると思われがちですが、体重維持はQOLの向上や副作用の軽減、治療の成績や予後の改善にもつながります。体重減少には「食べられない」と「食べていても痩せる」場合があり、特に前者は、うつや吐き気、味覚障害、口内炎などが原因であることも多く、介入することで改善が期待できます。
■ガイドラインの内容について
ご飯が食べられないことへのストレスや、吐き気・味覚障害で家族の食事が作れないという悩みが多く、これらの対応策をガイドラインで示しています。また、抗がん剤治療前の歯科受診の重要性はまだ十分に理解されていませんが、口腔ケアは手術の合併症や口内炎の悪化を防ぐことも知っていただきたいです。さらに、体力低下には有酸素運動が有効で、がん患者さんも「栄養・運動・社会参加」のバランスが健康維持に大切であることを伝えています。この本が患者さんにとって、ご自身の悩みを医療者へ相談いただくきっかけになれば幸いです。
一般からのお問い合わせ先
金原出版株式会社「がん患者さんのための栄養治療ガイドライン」担当宛
TEL:03-3811-7184
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