働く障がい者の自己肯定感に関する調査結果
株式会社EiU、株式会社ゼネラルパートナーズ「障がい者総合研究所」共同調査
就労障がい者向けのキャリア支援事業を行う株式会社EiU(東京都墨田区、代表:渡邊佑)は、株式会社ゼネラルパートナーズ「障がい者総合研究所」(東京都中央区、代表取締役社長:進藤 均)と共同で、働く障がい者の自己肯定感に関するアンケート調査を実施しました。
本調査は、自己肯定感が障がい者の仕事満足度や能力発揮度などにどのような影響を与えるか、またコミュニティ所属の有無やロールモデルの存在が自己肯定感にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としています。
【調査のサマリー】
本調査を通じて、下記3点が明らかになりました。
・働く障がい者の自己肯定感を高める事は、雇用の質を向上することに寄与する
・質の高い障がい者コミュニティへの所属は自己肯定感を高める
・ロールモデルの存在は自己肯定感を高める
【調査の背景】
2021年に改定された障害者雇用促進法では、障がい者の雇用を「量」から「質」へとシフトさせることが求められるようになりました。これまで、多くの企業は障がい者雇用の数値目標の達成を主な目的として取り組んできましたが、今後は障がい者が働きがいや自己成長を感じられるような「質の高い雇用」の実現が求められています。しかしながら、障がい者雇用における質を測定・評価するための具体的な指標はまだ十分に整備されていないのが現状です。
特に、働く障がい者自身の「自己肯定感」や「働きがい」は、雇用の質を示す重要な要素であるにもかかわらず、これに関する詳細なデータや分析は不足しています。本調査では、働く障がい者の自己肯定感に焦点を当て、その実態や課題を明らかにすることで、質の高い障がい者雇用の実現に向けた指針を提供することを目指します。
【調査概要】
・対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター
・実施方法:インターネット調査
・アンケート期間:2024/6/18〜2024/6/25
・有効回答数:130名
・回答者の属性
<障がい種別>
<性別>
<年代>
【調査結果の概要】
0.障がい当事者の自己肯定感
自己肯定感を問う設問「自分の価値や能力を信じ、自分自身を肯定的に評価していますか?」(高い順に5〜1)については下記の結果となりました。
1.自己肯定感と仕事満足度
自己肯定感の評価毎に仕事満足度の平均値を算出した結果、下記の通りとなりました。
※仕事満足度に関する設問:「全体として、現在の仕事に対してどの程度満足していますか?」(高い順に5〜1)
【結果①】
・自己肯定感を高く評価した回答群ほど仕事満足度の平均値は高くなった。
2.自己肯定感と能力発揮度
自己肯定感の評価毎に能力発揮度の平均値を算出した結果、下記の通りとなりました。
※能力発揮度に関する設問:「仕事を通して、自分の能力を発揮できていると感じていますか?」(高い順に5〜1)
【結果②】
・自己肯定感を高く評価した回答群ほど能力発揮度の平均値は高くなった。
3.障がい者コミュニティの所属と自己肯定感
障がい者コミュニティへの所属に関する回答毎の自己肯定感の平均値を算出した結果、下記の通りとなりました。
※障がい者コミュニティに関する設問:障がい者コミュニティに所属していますか?
【結果③】
・所属している人は全体の27%(36名)、そのうち自己肯定感向上に役立つコミュニティに所属している方は25%(9名)となった(結果③-1)
・自己肯定感を高めるのに役立つコミュニティに所属している回答群は、その他の回答群に比べて自己肯定感が高くなった。(結果③-2)
・自己肯定感を高めるのに役立っていないコミュニティに所属している回答群は、所属したことがないと答えた回答群と自己肯定感の平均値は変わらなかった。(結果③-3)
4.ロールモデルの存在と自己肯定感
ロールモデルの存在に関する回答毎の自己肯定感の平均値を算出した結果、下記の通りとなりました。
※ロールモデルの存在に関する設問:自分と同じ障害を持つロールモデル/メンターのような存在がいますか?
【結果④】
・ロールモデルがいる方は、「過去にいた」も含めると20.8%(27名)となった。(④-1)
・ロールモデルがいると答えた回答群は、「いない」と答えた回答群に比べて自己肯定感の平均値が高くなった。(④-2)
5.自己肯定感とその他の要素
自己肯定感の評価毎に障がい受容度、人間関係満足度の平均値を算出した結果、下記の通りとなりました。
※障がい受容度に関する設問:「自分の障害を受け入れ、前向きに捉えられていますか?」(高い順に5〜1)
※人間関係満足度に関する設問「職場の人間関係に満足していますか?」(高い順に5〜1)
【結果⑤】
・自己肯定感を高く評価した回答群ほど障がい受容度および人間関係満足度の平均値は高くなった。
【調査結果に対する考察】
① 働く障がい者の自己肯定感を高める事は、雇用の質を向上することに寄与する
結果①・②・⑤より、自己肯定感と仕事満足度、能力発揮度、障がい受容度との相関性が示された。このことから、雇用障がい者の自己肯定感を高める事は、障がい者が障がいを前向きに捉えた上で能力を発揮し、仕事から得る満足度を高めることにつながることが示唆された。
② 質の高い障がい者コミュニティへの所属は自己肯定感を高める
結果③-2より、質の高い(自己肯定感を高めることに役立つ)障がい者コミュニティへの所属は障がい者の自己肯定感を高めることが示された。一方で、結果③-3より、質の低い(自己肯定感を高めることに役立たない)障がい者コミュニティに所属しても、所属していない回答群と差が見られなかったことから、所属するコミュニティの質を精査することが肝要であると考えられる。また、③-1より、そもそも障がい者コミュニティに所属している人の割合は少ないこともわかった。
③ ロールモデルの存在は自己肯定感を高める
結果④-2より、ロールモデルがいることは自己肯定感を高めることにつながる事が示唆された。一方で結果④-1からわかる通り、ロールモデルがいる人は一部にとどまっており、ロールモデルを通じた自己肯定感向上の機会を得られている人は限定的である事がわかった。
【まとめ】
本調査より、働く障がい者の自己肯定感が高いほど仕事満足度や能力発揮度、人間関係満足度といった直接的に雇用の質を表すと考えられる項目が高い傾向であることが明らかになりました。このことから、障がい者雇用の質を高める上で働く障がい者の自己肯定感を測定し向上を図ることは、一定の意義がある事が示唆されたと考えます。
また、自己肯定感を上げる要素として、「質の高いコミュニティへの所属」「ロールモデルの獲得」がプラスに作用することが示唆された一方で、そのような機会を得ている方は一部にとどまっている現状も明らかになりました。一般に、働く障がい者は所属する組織内でマイノリティであることが多く、所属組織内で同質性の高い(同じような背景を持つ方)コミュニティおよびロールモデルに出会う機会が少ないと考えられます。このことから、自己肯定感を高める支援として、「質の高いコミュニティへの所属」「ロールモデルの獲得」について外部リソースも含めた獲得機会をデザインしていく事が必要であると考えます。
今後、更なる法定雇用率の上昇が見込まれる中、障がい者の量的な雇用から「質の高い雇用」を実現するためには、障がい者の雇用の質の測定、および外部リソースの活用も含めた自己肯定感を高める環境整備が必要と考えます。
会社概要
・企業名:株式会社EiU(カブシキガイシャエイユー)
・代表取締役:渡邊 佑
・設立:2023年7月
・所在地:東京都墨田区江東橋4丁目27番14号楽天地ビル3階
・事業内容:就労障がい者向けのキャリア支援のためのビジネススクール&コミュニティ運営
・公式サイト:https://d-biz-college.jp/
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像