溶液成長法による6インチp型SiCウエハを国内初展示
株式会社オキサイドパワークリスタル(本社:山梨県北杜市、代表取締役社長:古川 保典)、マイポックス株式会社(本社:栃木県鹿沼市、代表取締役社長:渡邉 淳)、株式会社UJ-Crystal(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:宇治原 徹)、アイクリスタル株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:髙石 将輝)、国立研究開発法人産業技術総合研究所 先進パワーエレクトロニクス研究センター(チーム長:児島 一聡)、ならびに国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 未来材料・システム研究所(教授:宇治原 徹)の開発グループは、名古屋大学で長年培われてきた溶液成長法(注1)を基盤技術とし、AI技術であるデジタルツイン(注2)によるプロセス最適化を組み合わせることで、6インチp型SiCウエハの試作に成功しました。本ウエハは、2025年12月17日~19日に東京ビッグサイトで開催される半導体製造技術の展示会「SEMICON Japan 2025」において、国内で初めて公開展示します。
SiC(シリコンカーバイド)は、電気自動車や鉄道、再生可能エネルギー用インバータなどに用いられる、持続可能な社会に不可欠な次世代パワー半導体材料です。本格普及には、ウエハの大口径化と結晶欠陥の低減による高品質化が強く求められています。オキサイドパワークリスタルは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトの一環として、マイポックス株式会社、株式会社UJ-Crystal、アイクリスタル株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学とともに、溶液成長法によるSiC単結晶およびウエハの研究開発を推進してきました。
2025年9月には、韓国・釜山で開催されたSiC国際会議「ICSCRM2025(注3)」において、溶液成長法による6インチp型SiCウエハおよび6インチ・8インチn型SiCウエハを展示しました。特に、超高耐圧パワーデバイスの実現に不可欠なp型SiCウエハは、日本企業として初の出展となり、直流送電や大規模データセンター向け電源システムなど、次世代社会インフラを支える新たなキーマテリアルとして国内外から大きな注目を集めました。
今回、ICSCRM2025で大きな反響を得たp型SiCウエハを、SEMICON Japan 2025にて日本国内で初公開します。会場では、6インチp型SiCウエハに加え、6インチおよび8インチのn型SiCウエハも展示し、溶液成長法によって得られた大口径・低欠陥SiC結晶の最新成果を紹介します。
オキサイドパワークリスタルは、大学発シーズによる溶液成長法と、自社およびパートナー企業が持つAIデジタルツイン技術と育成技術を組み合わせることで、これまで課題とされてきた大型化と結晶品質向上の両立に取り組んでいます。今後もNEDOグリーンイノベーション基金事業との連携のもと、社会実装に向けた段階的なステップを着実に進めることで、電力損失の低減とカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。
■展示内容
展示品 :6インチp型SiCウエハ、6インチ・8インチn型SiCウエハ(注4)
展示場所:マイポックス株式会社ブース(小間番号:W3855)
※マイポックス株式会社様は、NEDOグリーンイノベーション基金事業「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトのコンソーシアムメンバーです。

(注1)溶液成長法とは、溶媒に溶け込んでいる溶質を種結晶上に析出させることで結晶成長させる方法です。SiCの場合、炭素(C)製坩堝内にシリコン(Si)を投入し加熱して液体とし、坩堝材のCがSi溶媒中に溶け込んでSiC溶質が生成されます。そのSiC溶質をSiC種結晶に析出させることでSiC単結晶を成長させます。従来の昇華法に比べ、原理的に欠陥が少なく高品質な単結晶育成が可能な方法です。
(注2)デジタルツインとは、実験や製造工程を仮想空間に再現し、条件探索や最適化を高速に実行するシミュレーション技術です。温度場・濃度場・流れ場などのパラメータを包括的に扱い、膨大な条件の中から最適な成長条件を抽出することで、実験回数の削減と開発期間の短縮に寄与します。
(注3)ICSCRM(International Conference on Silicon Carbide and Related Materials)2025は、2025 年 9月 14 日から 9 月 19日に韓国・釜山で開催された、SiCの材料からデバイスまでの技術を網羅する重要な国際会議です。
(注4)SiCウエハは、不純物(ドーパント)の有無や種類によって色が変わります。無色のウェハは不純物をほとんど含まない高純度結晶で、電気をほぼ通さない「半絶縁」状態になります。絶縁体に近い性質を持つため、パワー半導体用途には使用されません。パワー半導体向けでは、ドーパントを導入して導電性を持たせたウエハが用いられます。現在一般的に採用されているn型ウエハ(薄緑色)は、窒素などをドーピングすることで電子が主要な負の電荷担体となり伝導が可能になり、光の吸収によって薄緑色を帯びます。一方、p型ウエハ(青色)は、アルミニウムなどをドーピングすることで正孔が主要な正の電荷担体となり伝導に寄与し、光の吸収特性によって青色に見えます。
【会社概要】
株式会社オキサイドは、国立研究開発法人物質・材料研究機構発のベンチャー企業として2000年に設立しました。創業以来、単結晶・レーザのグローバルニッチトップカンパニーを目指し、「研究成果を社会に還元し、キーマテリアルを世界に向けて発信する」、「顧客へマテリアルソリューションを提供し、社会の発展に貢献する」、「単結晶を核とした製品を開発し、未来の市場機会を創造し続ける」という経営理念の下、事業展開してまいりました。株式会社オキサイドパワークリスタルは株式会社オキサイドの100%子会社として2024年10月に設立され、パワー半導体向け材料の事業を承継しております。
マイポックス株式会社は、2025年11月に創業100周年を迎えました。これまで培ってきた技術力を基に、更なる進化と持続的な成長を目指します。1970年代より本格的に研磨分野に参入しました。当社の事業は非常にニッチではありますが、「塗る」「切る」「磨く」のコア技術を基に、ハードディスクや光ファイバー、半導体ウエハをはじめとするハイテク分野で強みを発揮してまいりました。これからも挑戦を続ける100年ベンチャーとして、持続可能な社会の実現を目指し、お客様が実現したいことを具現化し、「塗る」「切る」「磨く」のコア技術で世界を変えていきます。
株式会社UJ-Crystalは、名古屋大学未来材料・システム研究所宇治原教授のシーズ技術である超高品質SiC溶液成長法によるSiCウエハの研究開発と事業化を目指し、名古屋大学発スタートアップとして2021年に設立されました。高度なシミュレーション技術やAIデジタルツイン技術による結晶成長プロセスの高度最適化を推進し、革新的な材料開発を通じて次世代パワー半導体市場の発展とカーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指しています。
アイクリスタル株式会社は、次世代半導体材料であるSiCの結晶成長プロセスの最適化をルーツとする名古屋大学発スタートアップです。半導体業界を始めとした様々な産業に向けて、品質向上、コスト削減などを達成する製造条件をAIを活用したプロセスインフォマティクス技術を駆使して高速に見つけ出し、開発期間を圧倒的に短縮するプロセスインフォマティクス技術のソリューションを提供しています。
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、経済および社会の発展に資する科学技術の研究開発などを総合的に行う日本最大級の公的研究機関であり、「社会課題の解決」と「我が国の産業競争力強化」をミッションとしています。多岐にわたる研究開発を実施しており、傘下の株式会社AIST Solutionsと一体となった産総研グループとして、世界最高水準の成果の創出とその社会実装に力を入れています。
名古屋大学は、「自由闊達な学風のもと、人間と社会と自然に関する研究と教育を通じて、人々の幸福に貢献すること」を使命とする指定国立大学法人です。自発性を重視した教育で、論理的思考力とグローバルな視野を持つ「勇気ある知識人」を育成。21世紀に入り6名のノーベル賞受賞者を輩出するなど、世界屈指の研究成果を誇ります。本学未来エレクトロニクス集積研究センターは、窒化ガリウムなどのポストシリコン材料を用いた、次世代省エネルギーデバイス研究を推進し、材料から応用システムまで一貫した研究・教育体制を構築し、学術的・社会的な波及効果を生む拠点となることを目指しています。
<コンソーシアムメンバー>

本件に関する問い合わせ先
株式会社オキサイド IR 担当: ir@opt-oxide.com
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