2023年度「東京ビジネスデザインアワード」最優秀賞・優秀賞を発表
最優秀賞は「時を自在にデザインする真鍮ブランドの提案」に決定
東京都内の中小企業活性化策として東京都が主催し、公益財団法人日本デザイン振興会が企画・運営を行う「東京ビジネスデザインアワード(以下TBDA)」は、2023年度の最優秀賞1件、優秀賞2件を発表しました。
TBDAは、東京都内の中小企業の持つ技術や素材等をテーマにデザイナーから新規用途開発とビジネス全体のデザイン提案を募集、両者をマッチングして製品・サービスの実現化を目指すコンペティションです。本年度は11件のテーマに対し寄せられた提案から、審査委員会による一次審査、テーマ選定企業を交えた二次審査を経て11件がテーマ賞として選出されました。
このたび2月8日(木)に提案最終審査会を開催し、テーマ賞を獲得した11組のデザイナーによるプレゼンテーションと試作品による審査を実施しました。この結果、デザイン性や実現可能性、ビジネスプランの完成度などが最も高く優れている提案として、2023年度東京ビジネスデザインアワード最優秀賞に「時を自在にデザインする真鍮ブランドの提案」、優秀賞に「ワイヤーカット放電加工を活かしたアクセサリーブランドの提案」「自然に優しいゴムと廃棄材を融合させたプロダクトブランドの構築」が選出されました。
開催にあたり、本アワードを主催する東京都は、「都内中小企業の経営環境はグローバル化の進展や激化する企業間競争で厳しさが増す中、個々の企業が市場での優位性を確保できるよう、企業と専門家との協働による新しい価値の創出が重要となり、ビジネスすべてのプロセスにデザイナーが関わる「デザイン経営」が企業の競争力を高める上で重要視されています。」と述べられました。各テーマ賞のデザイン提案については、企業とデザイナーの間で事業化に向けた検討が早速始まっています。TBDA発の、企業とデザイナーの協業による今後の展開にご注目ください。
2023年度「東京ビジネスデザインアワード」は、提案最終審査会をもって全てのプロセスを終了しました。今後はテーマ賞を受賞した各提案のビジネスの実現化に向けて、審査委員会と事務局が各種セミナーや個別コンサルティングなどによるサポートを提供します。
【最優秀賞】提案名:時を自在にデザインする真鍮ブランドの提案
提案者:榎本清孝(アートディレクター / プランナー)、村上麻衣子(デザイナー)【株式会社トムテ】
企業テーマ:職人技で古美色を再現する「硫化燻し加工技術」
企業名:株式会社富士産業(葛飾区)
提案内容:
企業の高い技術力とデザインの力で、真鍮に新たな価値を与え事業拡大していくブランドプロジェクトの提案。
審査委員評価:
企業はデザイナーと出会い、良い刺激を受け、デザイナーも企業に対しシンパシーを感じ、お互いがリスペクトし合う協業の姿が印象的だった。企業が持つ、真鍮素材からなる硫化燻しの技術は、従来の市場では伝統的な技術の活躍の場が少なくなっていることに対して、ビジネスデザインの提案、相対的に付随するプロダクトデザインを、二つを同時に高いクオリティでまとめることは容易ではない。短い協業期間の間に良いコンセプトに到達しており、引き続きの協業と実現化を期待している。
榎本清孝氏(アートディレクター / プランナー)【株式会社トムテ】 受賞コメント
今回の提案は現実的に実現可能な技術とデザインが組み合わさったものです。
自分はプロダクトデザインではなく、グラフィックデザインを主にやっています。グラフィックデザイナーの僕が、プロダクトデザインをどう生かしていくか、今後試されていくと思います。
株式会社富士産業 代表取締役社長 杉本秀樹氏 受賞コメント
町工場から生まれた技術がデザインを通じて大きな第一歩になったと確信しています。今回ご縁をいただいたトムテさんと、これからさらに意見を出し合い、皆様がわくわくするようなものづくりを行っていきます。
【優秀賞】提案名:自然に優しいゴムと廃棄材を融合させたプロダクトブランドの構築
提案者:土井智喜(デザイナー)【soell株式会社】
企業テーマ:独自のゴム配合設計と幅広い加工技術
企業名:株式会社江北ゴム製作所(足立区)
提案内容:
みかんの皮やコーヒーのカスなどの廃棄材を天然ゴムと組み合わせて作るサステナブルな素材の開発と、その新素材を使ったプロダクトブランドの提案。自然に優しいということだけでなく、身近な廃棄物と組み合わせることで、ゴムをより親しみやすい存在にすることを意識した。
審査委員評価:
テーマ賞決定からこれまでの期間で金型の制作まで行っており、メーカー側との綿密なコミュニケーションの跡が見えた。いろいろな素材にトライして短い間によく試されていたし、素材選定を通した地域企業とのつながりも素晴らしい。現代的なアプローチ(サスティナビリティの確保)もできており、長期的視点で捉えられていた。「ゴム」という素材としての需要はあるが不利な要素もある中で、廃棄素材との組み合わせは今後のものづくりにも必要な視点を示唆するだろう。
土井智喜氏(デザイナー)【soell株式会社】 受賞コメント
短い期間で江北ゴム製作所さんに沢山の協力をいただいたからこそ一つの形になったと思っています。プロダクトをさらにブラッシュアップする道筋は見えてきているので、引き続き取り組んでいきたいと思います。
【優秀賞】提案名:ワイヤーカット放電加工を活かしたアクセサリーブランドの提案
提案者:千頭龍馬(デザイナー)、梅村隼多(デザイナー)
企業テーマ:ワイヤーカット放電加工による微細・精密金属加工技術
企業名:有限会社オクギ製作所(東久留米市)
提案内容:
長年企業が顧客の依頼に応えていく中で培った高度なワイヤーカット放電加工技術と知見。それらを駆使した製品開発を行うことで、BtoC領域への進出だけではなく、自社の技術力をアピールするためのプロモーションツールへの活用、更なる技術開発のきっかけになることを目指したアクセサリーブランドの提案。
審査委員評価:
ワイヤーカットの捻り加工、精密に作れる技術の高さがうかがえた。企業とデザイナーが出会うことで生まれる新たなチャレンジもビジネスデザインアワードの意義に沿っている。企業がどういったフレームでデザインを活用していくかという目的の部分を、技術の高さを伝えるためのアイコンであると位置付けた点での提案として評価した。今後のさらなるものづくりの可能性に期待したい。
千頭龍馬(ちかみりょうま)氏(デザイナー)受賞コメント
賞をいただき嬉しい気持ちでいっぱいです。賞をいただいた今日がプロジェクトの始まりだと思うので、オクギ製作所の皆様と一緒に製品化に向けて取り組んで参りたいです。
2023年度「東京ビジネスデザインアワード」審査委員長 山田遊 提案最終審査講評
本日、ご参加いただきましたテーマ賞受賞の皆様、最優秀賞、優秀賞を受賞された企業およびデザイナーの皆様、本当にお疲れさまでした。そしておめでとうございます。
本日のプレゼンテーションの中で、惜しくも最優秀賞・優秀賞には届かなかった提案でも、一部の点だけを見ればむしろ評価が上回っているものや、ビジネス的には実現性が高く、これは売れるだろうと想像できるものも複数ありました。
毎年審査を行っていると、年々最優秀賞・優秀賞と、それらに選ばれなかった提案との差が拮抗していることを感じています。その小さい差は何かというと、「ステークホルダーとの共創」という視点があるかどうかだと考えています。本来、ビジネスデザイン、そしてデザイン経営とは、企業の経営者、デザイナーの双方がお互いの立場や考えを理解してともに事業を起こすものです。ですから、ステークホルダー全員、BtoBやBtoCといった業態を問わず、顧客を含めたサービス、プロダクト全体をともにつくり、共創する仲間であるという認識が必要になってきます。
この最終審査会はゴールではなく、スタートです。今後、審査委員一同は一年間ともに伴走しますので、一緒にプロジェクトをつくり上げる仲間と考えて、なんでもご相談いただきたいと思っています。
●2023年度「東京ビジネスデザインアワード」審査委員会
審査委員長:山田遊 バイヤー 株式会社メソッド 代表取締役
審査委員:
秋山かおり プロダクトデザイナー STUDIO BYCOLOR
谷口靖太郎 デザインエンジニア/ディレクター Takram
日髙一樹 特定訴訟代理人・弁理士/デザインストラテジスト 日高国際特許事務所 所⻑
坊垣佳奈 株式会社マクアケ 共同創業者/取締役
宮崎晃吉 建築家 株式会社HAGISO代表取締役
2023年度「東京ビジネスデザインアワード」企業テーマ・デザイン提案一覧
各テーマの詳細は、公式サイトをご覧ください。
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