【調査レポート】ESG、SDGsなどのサステナビリティ経営に関するサプライチェーンマネジメントの取り組み状況
『第2回ESG時代/SDGs時代のサプライチェーンマネジメント強化に関する自主調査』結果の公表
企業経営において重要なテーマとなっているESG、SDGsなどのサステナビリティ経営において、サプライチェーンを所管する調達・購買部門がどのような役割を果たしているかを明らかにします。
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<調査結果のポイント>
SDGsを重視する趣旨が経営方針等に明記されている企業は8割に達し、調達活動の具体的な事項にまで落とし込んでいる企業も5割程度となっており、いずれも前回調査より10p程度増加。
8割強の企業が、サプライヤーのコンプライアンス(CSR・取引指針遵守を含む)の取組み状況を、アンケートやヒアリングなどの手法により把握している。
自社のサプライチェーンを十分に把握していると認識している企業であっても、BCPの観点からサプライチェーン全体に渡る必要な情報をしっかり把握できているとは言い切れない。
サプライヤーの経営実態等の確認は、取引開始時のみ確認している企業が多く、取引継続中の確認(モニタリング)まで実施している企業は少ない。
人権方針の策定と公開に関しては、5割強が方針は策定し、ホームページ等で公開している。また、対外的には公開していないものの方針を策定している割合を合わせると7割以上が策定済という状況である。(「方針は策定していない」は2割弱)
グリーン調達方針の策定と管理については、「方針を策定し、具体的な指標とその目標値を決めている」が前回から10p以上増加して、4割超となり、より具体的な取組みが進んでいる。方針を策定していない割合は、2割程度であり、前回から10p以上改善している。
調達BCPの策定については、策定済が5割強と前回から10p程度増加している。また、策定していない割合は3割程度と前回から10p程度減少している。
情報セキュリティへの対応方針の策定と公開は、5割弱が方針を策定し、「ホームページ等で公開」しており、「対外的に公開はしていないが策定している」と合わせると8割程度が策定している。
コロナ禍におけるサプライチェーンにおけるリスクマネジメントの課題としては、「代替品への切り替え」が5割程度と最も高い。一方で、「サプライヤー訪問と新規サプライヤーの探索」が5割弱であるがいずれも前回から10p程度減少している。
22年度における調達環境の変化がきっかけで変更したSCの考え方については、変化させていない事柄として、「確定発注の見込み発注への切り替え」、「サプライチェーンの再編」が5割程度選択されており、今後のリスク予防に向けたSCの再構築も5割弱選択されている。一方で、「在庫の積み増し(60.5%)」、「新規サプライヤーの追加(52.8%)」、「今後のリスク予防に向けたSCの再構築(52.0%)」は他のテーマと比べて過半数以上の変化がみられた。
調査結果概要
1.調達/サプライチェーン(SC)管理部門
独立した調達部門またはサプライチェーン管理部門(以下、調達/SC管理部門)の設置は、約7割超(本社のみにある企業、本社と事業部の両方にある企業が、それぞれ3割強)。製造業の方が高い傾向にある。
責任者は、4割程度が役員クラス(ただし、専任役員は2割弱に留まる)。
2.SDGsに関する取組み状況
SDGsを重視する趣旨が経営方針等に明記されている企業は8割に達し、前回よりも10p程度増加し、調達活動に関して具体的な事項まで落とし込んでいる企業も5割程度と10p程度増加。
SDGs推進事項における調達/SC管理部門の役割明確化(Q4)は、全体で、「はい」(56.1%)が過半数をしめており、役割の明確性が高い結果となった。
調達方針やSC方針へのSDGs推進事項の明記(Q5)は、「はい」(60.1%)が「いいえ」(26.9%)を大きく上回っており、SDGsに関する自社方針の反映が浸透しつつある様子がうかがえる。
3.サプライチェーンリスクマネジメントに関する取組み状況
サプライチェーンリスクに関しては、「重大なリスク(早急に対策が必要)」という認識において、「大規模(自然、事故)災害」が6割、「エピデミック・パンデミック」「情報セキュリティ」がそれぞれ4割台半ばという結果が出た。
サプライチェーンリスクに対する対策状況は、いずれのリスク対象でも8割前後であり、かなり高い。一方で、「十分に対策できていると考えている」割合は、2割弱程度に留まっている。
製造業と非製造業を比較すると、総じて、非製造業の方が「対策はしていない」割合が高く、「環境(自然保護)変動」「貿易制限や関税の不確実性」「原材料や部品の安全性、品質の低下」「原材料や部品・サプライヤーの生産能力の不足」「ロジスティックスや輸送上の問題」などが10p程度高い。
4.コンプライアンスに関する取組み状況
コンプライアンスポリシーの策定に関しては、策定されている割合が9割を超えており、「いいえ」は、わずか4.8%で、コンプライアンスポリシーの策定は大多数の企業において策定されている。
経年変化では、策定している割合が3.2p増加し、「いいえ」が3.3p減少しており、下図の資本金規模別の結果からも策定が進んでいる様子がうかがえる。
コンプライアンスを担保する取組みとしては、コンプライアンス委員会形式が6割強と前回から20p以上増加し、次いで、監査部門による内部監査が6割程度となっている。また、業務部門による自主監査も4割程度みられる。
7割強の企業が、サプライヤーのコンプライアンス(CSR・取引指針遵守を含む)の取組み状況に関して、定期的にアンケートやヒアリングなどの手法により把握しており、アンケートが前回から20p以上、ヒアリングが10pほど増加している。また、「把握していない」割合は、前回から15p減少しており、VOS(ボイスオブサプライヤー)に関する取組みが進んでいる様子がうかがえる。製造業と非製造業の差異としては、製造業の方が定期的なアンケート調査を実施の割合が5割程度と非製造業よりも1割以上高い。
5.人権DDに向けた取組み状況
人権方針の策定と公開に関しては、5割強が方針は策定し、ホームページ等で公開している。また、対外的には公開していないものの方針を策定している割合を合わせると7割以上が策定済という状況である。(「方針は策定していない」は2割弱)
人権方針をサプライヤーに周知する取組み及びサプライヤーにおける対応状況の確認について、全体では、「ヒアリングを実施」(41.7%)が最も高く、次いで「アンケートを実施」(40.9%)となっている。製造業計・非製造業計では、製造業が非製造業に比べて、各取組み、対応状況が総じて1割程度高い。製造業での取組みでは、「ヒアリングを実施」が47.7%と最も高く、次いで、「アンケートを実施」が45.9%となっている。
6.グリーン調達に関する取組み状況
グリーン調達方針の策定と管理については、「方針を策定し、具体的な指標とその目標値を決めている」が前回から10p以上増加して、4割超となり、より具体的な取組みが進んでいる。方針を策定していない割合は、2割程度であり、前回から10p以上改善している。
7.BCPに関する取組み状況
調達BCPの策定については、策定済が5割強と前回から10p程度増加している。また、策定していない割合は3割程度と前回から10p程度減少している。
調達BCPにおけるリスク対象は、「天災」が9割程度、「サプライヤーの後継者/事業継続」が5割程度、「カントリーリスク」が5割弱となっており、「倒産」が4割程度と前回から10p程度減少している。
直接取引がない2次以降のサプライヤー情報の把握については、「2次以降のサプライヤーの社名や所在地は把握できていない」が3割程度と前回よりも10p程度減少し、把握状況が進んでいる様子がうかがえる。
8.情報セキュリティへの対応
情報セキュリティへの対応方針の策定と公開は、5割弱が方針を策定し、「ホームページ等で公開」しており、「対外的に公開はしていないが策定している」と合わせると8割程度が策定している。
自社の情報セキュリティ対応方針をサプライヤーに周知する取組み及びサプライヤーにおける対策状況の確認では、総じて3割から4割程度の対応状況となっている。
9.コロナ禍における対応
コロナ禍におけるサプライチェーンにおけるリスクマネジメントの課題としては、「代替品への切り替え」が5割程度と最も高い。一方で、「サプライヤー訪問と新規サプライヤーの探索」が5割弱であるがいずれも前回から10p程度減少している。
調達/SC管理部門におけるテレワーク推奨では、普及はしているが、定着とは言い切れない状況がうかがえる。
10.地政学や疫病リスクを踏まえたサプライチェーンに対する考え方での変化
22年度における調達環境の変化がきっかけで変更したSCの考え方については、変化させていない事柄として、「確定発注の見込み発注への切り替え」、「サプライチェーンの再編」が5割を下回る。
一方で、「在庫の積み増し(60.5%)」、「新規サプライヤーの追加」(52.8%)、「今後のリスク予防に向けたSCの再構築(52.0%)」は他のテーマと比べて過半数以上の変化がみられた。
【調査概要】
調査方法:WEBアンケート調査
調査期間:2023年2~3月末
有効回答数:271社(前回:161社)
調査対象:購買調達部ならびに経営企画部、CSR推進部、サスティナブル推進部などESG/SDGsあるいはSCMを所管する企業担当者様
お問い合わせ先(担当研究員):小阪(JMAR):HRM@jmar.co.jp
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