「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」を発表 企業理念や人事制度の浸透にはトップダウンの「暗室-伝達型」から現場の巻き込みとリアリティ重視の「共創-拡散型」への変化が鍵

浸透度の実態は企業理念が40%、人事制度が30%程度

株式会社パーソル総合研究所

株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、 「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」の結果を発表いたします。

労働力不足や成長の鈍化、価値観の多様化、テレワークの普及・定着といった社会や企業、働き方の変化を背景に、企業理念や人事制度の重要性は増しています。本調査は、企業理念と人事制度に関する社内コミュニケーションや浸透施策を下記の5つの次元―「組織」「情報」「プロセス」「人」「媒体」次元―に分けて定量的な検証を行い、浸透の効果やその要因、課題を明らかにすることを目的に実施しました。



 ■主なトピックス ※トピックスの詳細についてはP4以降の「主なトピックス(詳細)」をご確認ください


1.    企業理念と人事制度の浸透実態


①     企業理念について、「内容を十分理解している」は41.8%、「内容について同意できる」は44.5%。人事制度は、「内容を十分に理解している」は36.1%、「内容について同意できる」は33.8%。


②     理念・制度の浸透度は、企業の設立年数が古くなるほど低く、企業の規模が大きくなるほど高い。


③     企業の業績別には、業績の悪い企業のほうが、理念・制度ともに浸透度が低い。


④     企業理念の浸透は、個人のパフォーマンス、就業継続意向、ワーク・エンゲイジメントとのプラスの関係が見られる。


2.    企業理念と人事制度の浸透要因


<組織次元・情報次元(どんな企業がどんなことを)>

⑤     人事制度については、主たる人事制度(処遇・等級など)の変更は浸透しにくく、働き方関連の制度は浸透しやすい傾向。


⑥     理念・制度へのネガティブな印象を見ると、「内容が綺麗ごとばかりだ」などの「綺麗ごと感」が強く感じられている。


⑦     理念・制度の浸透には、「明確さ」「詳細さ」が共にプラスの影響。理念はさらに「課題の直視」や「脱・綺麗ごと」などが浸透につながっている。制度は「ビジュアル性」、「現場でのリアリティ」など現場からの視点が浸透に影響する。


<プロセス次元(どのように)>

⑧     理念や制度の浸透には、策定・浸透プロセスにおける従業員のインボルブメント(関与・参画・共感)の度合いが大きくプラスの関係にある。策定・浸透プロセスにおける対話機会、意見の吸い上げ、プロセスの透明性がインボルブメントを上昇させる傾向が見られた。


⑨     業種別には教育、学習支援業、サービス業がやや対話機会や意見の吸い上げ機会が多く、プロセスの透明性も高い。また、設立から15年以上の企業ではそうした機会が創れておらず、プロセスの透明性も低い傾向が見られた。


<人次元(誰が・誰に)>

⑩     浸透施策に登場する人物を見ると、「社長・代表取締役会長・CEO」「部長・本部長クラスの管理職」が多く、メンバー層の従業員や取引先・顧客は登場が少ない。


⑪     理念については、施策に「課長・リーダー」、「従業員の家族」が登場している場合、理念浸透にプラスの影響が見られる。人事制度の浸透については、「メンバー層の従業員」も浸透プロセスの多くにプラスの影響。社長・会長・CEOといった組織トップは浸透にプラスの影響は確認されなかった。


⑫     理念や制度について「誰と話すか」を聴取すると、従業員の5割が「同僚」「上司」「先輩」と話しており、「同僚」は「5回以上話した」も2割を超える。うわさの内容の好意度を見ると、制度は、理念よりも好意的なうわさが少なく、批判的なうわさ行動が見られる。


⑬     浸透施策に抱いた感情を測定すると、「時代が変わったと感じた」などの「危機感」が高く、「冷静に評価した」などの「客観視」が高い。うわさの内容として話されやすいのは、「危機感」「共感」「ワクワク」「新規性」「驚き」といった感情。


⑭     「驚き」「危機感」「ワクワク」といった感情を抱いた従業員は、うわさ行動の頻度が多く、多くシェアされている。


⑮     理念、制度の策定・浸透プロセスにおける「対話機会」「意見の吸い上げ」「プロセスの透明性」が高いと、うわさ行動のポジティブさが上昇している傾向。


<媒体次元(何によって伝えるか)>

⑯     理念、制度ともに、全体説明会、社内イントラ、社内報などの「一方通行型」のコミュニケーション施策が突出して多い。


⑰     理念・制度ともに、ロールプレイを含む研修、車座・ワークショップなどの双方型のメディア・イベントが共通してプラスの影響。


⑱     理念は目標やアワードなどへ反映する評価反映型、制度はアンケートや相談窓口などの吸い上げ型の媒体がプラスに関連。双方向型の施策は、ポジティブ感情を喚起しネガティブ感情を抑制する傾向にある。



 ■調査結果からの提言

企業にとって、その理念や制度を従業員が理解し、行動へとつながっていることは組織マネジメント上の重要な意味を持つ。しかし、現状の日本企業の理念・制度は、従業員の関与が足りないまま策定され、解像度が低い状態で上から伝達されるものになっている。これでは、いくら精緻に構築したパーパスや制度も意味が無いものになりかねない。


 また、今回の調査で明らかになったのは、理念や制度は従業員にただ伝達されるだけでなく従業員同士のうわさ行動によって「シェア」されており、その頻度やポジティブさもまた、浸透施策のあり方に大きく左右されているということである。


本調査から見えてきたことは、理念も制度も、経営や管理部門が決めたものを下に伝達する「暗室-伝達型」から、現場の巻き込みとリアリティを重視する「共創-拡散型」へと大きく変化する必要があるということだ。
 就業価値観の多様化と労働力不足が同時に進行する中、企業の「大方針」としての理念やパーパス、組織の「基盤」としての人事制度の浸透は、これからも重要性を増し続ける。 




 ■主なトピックス(詳細)

 

1.     企業理念と人事制度の浸透実態


①    企業理念について、「内容を十分理解している」は41.8%、「内容について同意できる」は44.5%。人事制度は、「内容を十分に理解している」は36.1%、「内容について同意できる」は33.8%。


②    理念・制度の浸透度は、企業の設立年数が古くなるほど低く、企業の規模が大きくなるほど高い。


③    企業の業績別には、業績の悪い企業のほうが、理念・制度ともに浸透度が低い。


④    理念の浸透は、個人のパフォーマンス・就業継続意向・ワーク・エンゲイジメントとのプラスの関係が見られる。



2.     企業理念と人事制度の浸透要因

 

<組織次元・情報次元>

⑤    人事制度については、主たる人事制度(処遇・等級など)の変更は浸透しにくく、働き方関連の制度浸透は浸透しやすい傾向


⑥     理念・制度へのネガティブな印象詳細については、「内容が綺麗ごとばかりだ」などの「綺麗ごと感」が強く感じられている。

「現場の現実がかみ合っていない」などの「現場との一貫性欠如」も高め。全体的に制度の方が印象が悪い。


⑦    理念・制度の浸透には、「明確さ」「詳細さ」が共にプラスの影響。また、理念は「課題の直視」や「脱・綺麗ごと」などが浸透につながっている。制度は、「ビジュアル性」「現場でのリアリティ」などが浸透に影響している。


<プロセス次元>

⑧    理念や制度の浸透には、策定・浸透プロセスにおける従業員のインボルブメント(関与・参画・共感の実感)の度合いが大きくプラスの関係にある。対話機会、意見の吸い上げ、プロセスの透明性がインボルブメントを上昇させる傾向が見られた。


⑨     業種別には教育、学習支援業、サービス業がやや対話機会や意見の吸い上げ機会が多く、プロセスの透明性も高い。

15年以上の企業ではそうした機会が創れておらず、プロセスの透明性も低い傾向が見られた。

 


※本トピックの図表については下記ページをご参照下さい。

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/corporate-identity.html

 

 

<人次元>

⑩     浸透施策に登場する人物を見た。「社長・代表取締役会長・CEO」「部長・本部長クラスの管理職」が多い。

メンバー層の従業員や取引先・顧客は登場が少ない。



※本トピックの図表については下記ページをご参照下さい。

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/corporate-identity.html



⑪    理念については、施策に「課長・リーダー」、「従業員の家族」が登場している場合、理念浸透にプラスの影響が見られる。人事制度の浸透については、「メンバー層の従業員」も浸透プロセスの多くにプラスの影響。社長・会長・CEOといった組織トップは浸透にプラスの影響は確認されなかった。


⑫    「誰と話すか」を聴取したところ、従業員の5割が「同僚」「上司」「先輩」と話しており、「同僚」は「5回以上話した」も2割を超える。うわさの内容の好意度を見ると、制度は、理念よりも好意的なうわさが少ない。


⑬    浸透施策に抱いた感情を測定すると、「時代が変わったと感じた」などの「危機感」が高く、「冷静に評価した」などの「客観視」が高い。うわさの内容として話されやすいのは、「危機感」「共感」「ワクワク」「新規性」「驚き」といった感情。


⑭    「驚き」「危機感」「ワクワク」といった感情を抱いた従業員は、うわさ行動の頻度が多く、多くシェアされていることがうかがえる。また、理念・制度の内容として、「課題の直視」、「ビジュアル性の高さ」もうわさ行動の頻度を上げている。



⑮    理念、制度の策定・浸透プロセスにおける「対話機会」「意見の吸い上げ」「プロセスの透明性」が高いと、うわさ行動のポジティブさが上昇している傾向。


<媒体次元>

⑯    理念、制度ともに、全体説明会、社内イントラ、社内報などの「一方通行型」のコミュニケーション施策が突出して多い。

※コミュニケーション施策(手段)の詳細は報告書P65参照



⑰    理念・制度ともに、ロールプレイを含む研修、車座・ワークショップなどの双方型のメディア・イベントが共通してプラスの影響。また、理念は目標やアワードなどへ反映する評価反映型、制度はアンケートや相談窓口などの吸い上げ型の媒体がプラスに関連。



⑱     理念浸透の媒体・イベントと従業員感情の関係を見ると、双方向型の施策は、ポジティブ感情を喚起しネガティブ感情を抑制する傾向にある。アウターコミュニケーションや個人フォーカス、評価反映型もポジティブ感情を喚起する傾向が全体的に見られる。


※本トピックの図表については下記ページをご参照下さい。

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/corporate-identity.html



●  本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。


●  調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。

   URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/corporate-identity.html


●  報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。



 ■調査概要



■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について

パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。


■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開しています。グループの経営理念・サステナビリティ方針に沿って事業活動を推進することで、持続可能な社会の実現とSDGsの達成に貢献していきます。また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも積極的に取り組み、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX組織構築支援を行う「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。

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業種
情報通信
本社所在地
東京都港区南青山一丁目15番5号 パーソル南青山ビル
電話番号
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代表者名
萱野博行
上場
未上場
資本金
1億円
設立
1989年09月