<日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港の上場企業におけるジェンダー平等推進度ランキング発表>
各企業のジェンダー・パフォーマンス 拠点とする国によって顕著な差 日本は最下位
公益財団法人笹川平和財団(東京都港区、理事長・角南篤)は、世界中の企業からジェンダー関連のデータ取得と評価を行っている「エクイリープ/Equileap」(アムステルダム、共同創業者兼CEO・Diana van Maasdijk)に調査を委託し、日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港の上場企業における職場でのジェンダー平等評価の報告書を、2022年6月16日に共同発表致します。
この報告書では、アジア太平洋地域(APAC)の職場におけるジェンダー平等推進度について、日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港の5つの経済圏や特定の産業セクターごとに、報酬の平等性、企業の各レベルにおけるジェンダーバランス、有給育児休暇の取得、セクシュアルハラスメント防止策などの観点から分析しています。調査は、上記5経済圏における1,181の企業とその2,300万人の従業員を対象とし、エクイリープが設けている19項目の基準に基づいて検証されました。
報告書(英語)は6月16日(木)に笹川平和財団のウェブサイトで公開されます。また、報告書の日本語訳も追って公開いたします。
報告書掲載ページはこちら
→ https://www.spf.org/gender/publications/20220616.html
ベスト
・オーストラリアが最も高いジェンダー平等スコアを出した。APACで最も職場でのジェンダー平等推進度が進んでいる(オーストラリア平均46% APAC平均33%、グローバル平均37%)
・それぞれの経済圏で1位にランクインした企業は図1のとおり。これら企業が、各経済圏のジェンダー平等推進を押し上げている
・APACおよび世界的に見ても、香港の企業である「China Gas(チャイナ・ガス・ホールディングス)」のみが、企業内のすべてのレベルで男女間の賃金格差を解消した
ワースト
・APAC上場企業における最高経営責任者(CEO)の女性割合は4%、取締役会会長の女性割合は5%のみ
・当該地域で企業内のあらゆるレベルでジェンダーバランスを実現できているのは、2企業のみ
・91%の企業が男女間の賃金格差の情報を公開していない。APAC域内では、3企業が男女賃金格差を縮小(ジェンダー間の未調整賃金格差の平均が3%以下と公表した企業が2社、全賃金帯で3%以下になったと公表した企業が1社)
ジェンダーバランス
・経営トップ層で女性が少ない:アジア太平洋地域では企業のCEOにおける女性の割合は4%、取締役会会長では5%のみという結果になった。シンガポールでは、CEOの女性の割合が14%、最高財務責任者(CFO)では26%と、この地域では際立っている。日本では、女性CEOの割合は、1%以下となっている。
・リーダーシップおよび職場におけるジェンダーバランスの達成に程遠い:取締役会における女性の割合が17%、執行役員における女性の割合が13%、管理職における女性の割合が19%、一般従業員における女性の割合は35%となっている。
・上記4つのレベル(取締役、執行役員、管理職、一般従業員)でジェンダー平等を達成できたのは、キセロ(ニュージーランド)と恒生銀行(香港)の2社のみ
男女間の賃金格差とセクシュアルハラスメント
・91%の企業が男女間の賃金格差の情報を公開していない
・APACでは、オイル・サーチ(オーストラリア)およびリオ・ティント(オーストラリア)が平均で3%以下の賃金格差、チャイナ・ガス・ホールディングス(香港)は全賃金帯で3%以下の賃金格差があると公表している。男女間の賃金格差を埋める戦略がある企業は4%だった。
・「Me Too」ムーブメントから5年が経ったが、APACの57%の企業がセクシュアルハラスメント防止策を打ち出していない。公開率の上位は日本(52%)、オーストラリア(50%)、シンガポール(26%)、ニュージーランド(22%)、香港(19%)となっている。
日本企業に関する洞察
日本企業の平均スコアは28%となり、これはAPAC(33%)および世界平均(37%)と比較して低い。女性CEOが在籍する企業は1%未満(4社)。すべてのレベルにおいて、女性の割合は世界およびAPACの平均より低く、特に役員レベルではわずか4%との結果となった。取締役、執行役員、管理職、一般従業員の4つのレベルにおいてジェンダーバランスを実現している日本企業は、該当がなかった。また、日本企業の96%は、賃金格差のデータを公表していない。
一方で、日本は、52%の企業がセクシュアルハラスメント防止方針を公開しており、地域内で最も高いパフォーマンスを示している。また、日本の育児休業制度は、アジア太平洋地域では最も寛大であり、世界的に見ても最も寛大な国の一つである。ただ、2020年度の男性の育児休業取得者の割合は12.65%であり、こうした権利は男性労働者に十分活用されていないことが見受けられた。
【代表者コメント】
エクイリープCEO ダイアナ・ヴァン・マーアズディック
APACは多様性に富むこともあり、今回のようにはっきりと異なるジェンダー平等推進度結果は、それほど驚きを感じてはいません。調査対象の5経済圏では、職場のジェンダー平等平均スコアは33%(世界平均37%)でしたが、ジェンダー平等へ向けた取組は推進されていると感じています。世界で最も高いパフォーマンスを示したのはオーストラリアの企業(ミルバック、79%)ですし、香港にはAPACでも世界的にも珍しい、企業の全賃金帯で男女間の賃金格差を解消した企業があります(チャイナ・ガス・ホールディングス)。概してAPACのジェンダー平等の状況は決してよいものとは言えません。女性の割合は、CEOレベルでは4%、取締役会会長では5%を占めているに過ぎません。APACでは企業のあらゆるレベルでジェンダーバランスを達成した企業は2社、男女間の賃金格差を解消した企業は3社のみです。香港と日本の企業はジェンダー平等スコアが著しく低く、グローバルランキングでも下位層に集中しています。
マッキンゼーは、APACでのジェンダー間の格差改善による経済効果として、2025年までに4.5兆ドルのGDP増加につながると指摘しています。APAC企業と投資家は直ちに行動に移すべきであり、加えて、法律が極めて重要であることが示されている領域において、政府はすべての人に利益をもたらす、より公平な職場作りを率先して行うべきだと考えます。
笹川平和財団常務理事 安達一
各企業のジェンダー平等推進度は、投資家からも企業価値を見極める指標の1つとして注目されています。エクイリープは2017年よりUN Women(国連女性機関)の「Women Empowerment Principles (女性のエンパワーメント原則、WEPs) 」に基づいた独自の評価基準を用いて、企業のジェンダー平等推進度ランキングを発表しています。エクイリープの基準やデータは、ジェンダー投資(企業のジェンダー平等の状況を投資分析や投資判断に組み込んだ投資手法)のファンドでも採用されています。つまり、企業にとっては本調査報告書の結果を改善していくことが、投資家の理解と支持を得ていくうえで重要です。岸田文雄首相が表明した2022年6月に策定される「新しい資本主義」の実現に関する計画には、上場・非上場を問わず、301人以上を常時雇用する企業を対象に、男女の賃金格差の公表が義務化される方針が盛り込まれています。女性管理職の比率や男性の育児休業取得率などの開示を義務づける方針も示されています。本報告書がより多様で、男女共に働きやすい職場および社会を実現していく上で、企業および投資家にとって役立つことを期待しています。
(参考)
エクイリープの方法/評価基準
他の男女平等調査とは異なり、エクイリープは、世界初の詳細なクロスセクターランキングシステムを使用し、世界中の数千の企業を評価・モニターしています。本報告書では、日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港に拠点を置く1,181社の上場企業を対象に、役員から従業員までの男女比、男女間の賃金格差、育児休業やセクハラに関する方針など、19項目のジェンダー平等基準で調査しました。これらの企業は、アジア太平洋地域の2,300万人以上の従業員を代表しています。各企業は、時価総額が20億米ドル以上であるか、日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港のいずれかの主要な指数に上場している企業を対象としています。本報告書は、2021年(2021年1月から12月22日まで)に実施した調査結果を分析し作成しました。
【団体情報】
ウェブサイトはこちら:https://equileap.com/
ウェブサイトはこちら:https://www.spf.org/
報告書(英語)は6月16日(木)に笹川平和財団のウェブサイトで公開されます。また、報告書の日本語訳も追って公開いたします。
報告書掲載ページはこちら
→ https://www.spf.org/gender/publications/20220616.html
ベスト
・オーストラリアが最も高いジェンダー平等スコアを出した。APACで最も職場でのジェンダー平等推進度が進んでいる(オーストラリア平均46% APAC平均33%、グローバル平均37%)
・それぞれの経済圏で1位にランクインした企業は図1のとおり。これら企業が、各経済圏のジェンダー平等推進を押し上げている
・APACおよび世界的に見ても、香港の企業である「China Gas(チャイナ・ガス・ホールディングス)」のみが、企業内のすべてのレベルで男女間の賃金格差を解消した
ワースト
・APAC上場企業における最高経営責任者(CEO)の女性割合は4%、取締役会会長の女性割合は5%のみ
・当該地域で企業内のあらゆるレベルでジェンダーバランスを実現できているのは、2企業のみ
・91%の企業が男女間の賃金格差の情報を公開していない。APAC域内では、3企業が男女賃金格差を縮小(ジェンダー間の未調整賃金格差の平均が3%以下と公表した企業が2社、全賃金帯で3%以下になったと公表した企業が1社)
図1:各経済圏における1位の企業
図2:APACにおけるジェンダー平等スコア
ジェンダーバランス
・経営トップ層で女性が少ない:アジア太平洋地域では企業のCEOにおける女性の割合は4%、取締役会会長では5%のみという結果になった。シンガポールでは、CEOの女性の割合が14%、最高財務責任者(CFO)では26%と、この地域では際立っている。日本では、女性CEOの割合は、1%以下となっている。
・リーダーシップおよび職場におけるジェンダーバランスの達成に程遠い:取締役会における女性の割合が17%、執行役員における女性の割合が13%、管理職における女性の割合が19%、一般従業員における女性の割合は35%となっている。
・上記4つのレベル(取締役、執行役員、管理職、一般従業員)でジェンダー平等を達成できたのは、キセロ(ニュージーランド)と恒生銀行(香港)の2社のみ
男女間の賃金格差とセクシュアルハラスメント
・91%の企業が男女間の賃金格差の情報を公開していない
・APACでは、オイル・サーチ(オーストラリア)およびリオ・ティント(オーストラリア)が平均で3%以下の賃金格差、チャイナ・ガス・ホールディングス(香港)は全賃金帯で3%以下の賃金格差があると公表している。男女間の賃金格差を埋める戦略がある企業は4%だった。
・「Me Too」ムーブメントから5年が経ったが、APACの57%の企業がセクシュアルハラスメント防止策を打ち出していない。公開率の上位は日本(52%)、オーストラリア(50%)、シンガポール(26%)、ニュージーランド(22%)、香港(19%)となっている。
日本企業に関する洞察
日本企業の平均スコアは28%となり、これはAPAC(33%)および世界平均(37%)と比較して低い。女性CEOが在籍する企業は1%未満(4社)。すべてのレベルにおいて、女性の割合は世界およびAPACの平均より低く、特に役員レベルではわずか4%との結果となった。取締役、執行役員、管理職、一般従業員の4つのレベルにおいてジェンダーバランスを実現している日本企業は、該当がなかった。また、日本企業の96%は、賃金格差のデータを公表していない。
一方で、日本は、52%の企業がセクシュアルハラスメント防止方針を公開しており、地域内で最も高いパフォーマンスを示している。また、日本の育児休業制度は、アジア太平洋地域では最も寛大であり、世界的に見ても最も寛大な国の一つである。ただ、2020年度の男性の育児休業取得者の割合は12.65%であり、こうした権利は男性労働者に十分活用されていないことが見受けられた。
【代表者コメント】
エクイリープCEO ダイアナ・ヴァン・マーアズディック
APACは多様性に富むこともあり、今回のようにはっきりと異なるジェンダー平等推進度結果は、それほど驚きを感じてはいません。調査対象の5経済圏では、職場のジェンダー平等平均スコアは33%(世界平均37%)でしたが、ジェンダー平等へ向けた取組は推進されていると感じています。世界で最も高いパフォーマンスを示したのはオーストラリアの企業(ミルバック、79%)ですし、香港にはAPACでも世界的にも珍しい、企業の全賃金帯で男女間の賃金格差を解消した企業があります(チャイナ・ガス・ホールディングス)。概してAPACのジェンダー平等の状況は決してよいものとは言えません。女性の割合は、CEOレベルでは4%、取締役会会長では5%を占めているに過ぎません。APACでは企業のあらゆるレベルでジェンダーバランスを達成した企業は2社、男女間の賃金格差を解消した企業は3社のみです。香港と日本の企業はジェンダー平等スコアが著しく低く、グローバルランキングでも下位層に集中しています。
マッキンゼーは、APACでのジェンダー間の格差改善による経済効果として、2025年までに4.5兆ドルのGDP増加につながると指摘しています。APAC企業と投資家は直ちに行動に移すべきであり、加えて、法律が極めて重要であることが示されている領域において、政府はすべての人に利益をもたらす、より公平な職場作りを率先して行うべきだと考えます。
笹川平和財団常務理事 安達一
各企業のジェンダー平等推進度は、投資家からも企業価値を見極める指標の1つとして注目されています。エクイリープは2017年よりUN Women(国連女性機関)の「Women Empowerment Principles (女性のエンパワーメント原則、WEPs) 」に基づいた独自の評価基準を用いて、企業のジェンダー平等推進度ランキングを発表しています。エクイリープの基準やデータは、ジェンダー投資(企業のジェンダー平等の状況を投資分析や投資判断に組み込んだ投資手法)のファンドでも採用されています。つまり、企業にとっては本調査報告書の結果を改善していくことが、投資家の理解と支持を得ていくうえで重要です。岸田文雄首相が表明した2022年6月に策定される「新しい資本主義」の実現に関する計画には、上場・非上場を問わず、301人以上を常時雇用する企業を対象に、男女の賃金格差の公表が義務化される方針が盛り込まれています。女性管理職の比率や男性の育児休業取得率などの開示を義務づける方針も示されています。本報告書がより多様で、男女共に働きやすい職場および社会を実現していく上で、企業および投資家にとって役立つことを期待しています。
(参考)
エクイリープの方法/評価基準
他の男女平等調査とは異なり、エクイリープは、世界初の詳細なクロスセクターランキングシステムを使用し、世界中の数千の企業を評価・モニターしています。本報告書では、日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港に拠点を置く1,181社の上場企業を対象に、役員から従業員までの男女比、男女間の賃金格差、育児休業やセクハラに関する方針など、19項目のジェンダー平等基準で調査しました。これらの企業は、アジア太平洋地域の2,300万人以上の従業員を代表しています。各企業は、時価総額が20億米ドル以上であるか、日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港のいずれかの主要な指数に上場している企業を対象としています。本報告書は、2021年(2021年1月から12月22日まで)に実施した調査結果を分析し作成しました。
【団体情報】
エクイリープ(Equileap)
エクイリープは、企業のジェンダー関連のデータ取得と評価を行っている機関です。Gender Equality Scorecard™という独自の包括的な審査表を用いて4,000社を超える世界中の企業を調査し、ランク付けを行っています。Gender Equality Scorecard™には、取締役、執行役員、管理職、一般従業員における男女比率、男女賃金格差、育児休業制度、公正な採用と昇給制度、サプライチェーンにおける男女比や職場の安全性などの19項目の基準が設けられています。ウェブサイトはこちら:https://equileap.com/
公益財団法人笹川平和財団
笹川平和財団は1986年に国際理解、国際交流および国際協力の推進を目的として設立された民間財団です。2017年、笹川平和財団は、ジェンダー平等の推進と東南アジア地域の女性と女性起業家の支援を目的とする「アジア女性インパクト基金(AWIF)」を創設しました。運用資金は、数年以内に100億円規模への拡大を目指しています。ウェブサイトはこちら:https://www.spf.org/
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