「コロナ移住」は中古マンション価格に影響しなかった。【移住者が多いエリアで検証!】
~中古マンション流通レポート2021年6月vol2~
昨今「コロナ移住」という言葉をよく耳にします。コロナ移住とは、新型コロナウイルス蔓延をきっかけに都心部から郊外エリアに転居すること。東京新聞によれば、東京23区からの転出者が急増しているといいます。『総務省の人口移動報告(外国人含む)によると、20年に23区から転出した人は36万5507人で、19年より2万1088人増えた。都からの転出増が最多の藤沢市には2975人が移り、19年比で713人(31.5%)増えた。同県鎌倉市、茅ケ崎市も約30%増。東京都三鷹市など23区西への転出者も多かった。(2021/4/19東京新聞)』そこでマンションナビを運営するマンションリサーチ株式会社は、コロナ禍で東京23区からの流入が多かった東京都三鷹市、小金井市、府中市、そして神奈川県藤沢市の中古マンション成約価格を調査。コロナ移住が中古マンションの価格高騰に寄与しているのか検証します。記事詳細は以下URLhttps://t23m-navi.jp/magazine/news/corona-emigration/
【調査方法】
1:「調査エリア」と「その周辺エリアの平均」の売出件数前年同月比増減率の推移を比較
2:推移に大きな違いがないかを確認。ある場合は補正を行う。(←当該リリースでは補正はなかった。)
※「コロナ移住」の効果をはかる為、物件供給量の影響は排除する為。
3:エリア毎の前年同月比平均成約坪単価を比較し、「コロナ移住」の効果を明らかにする。
【調査結果】
コロナ移住が中古マンションの価格高騰に寄与しているとは言えない。
【調査詳細】
<<三鷹市・小金井市・府中市……コロナ移住が多かった東京都下のマンション価格は?>>
まずは、コロナ移住者が多かった東京三鷹市・小金井市・府中市の中古マンション成約数と成約価格をその他東京都下のエリアと比較します。
基準エリア:三鷹市、小金井市、府中市、武蔵野市、西東京、調布市、小平市、町田市、立川市※基準エリア
ランクインエリア:三鷹市、小金井市、府中市
※基準エリア:調査対象エリアを含む、当該エリアの周辺エリア
※ランクインエリア:調査対象エリアで以下「2021/4/19東京新聞」記事上位にランクインしていたエリア
https://www.tokyo-np.co.jp/article/98995
【東京都下エリア別】中古マンション前年度同月比売出数
マンションリサーチ株式会社調べ
小金井市のみ2020年8月の急増が目立ちますが、三鷹市・府中市においては他の東京都下エリアと大差はありません。小金井市も一時的な増加であり、その他の月は周辺エリアと同様に前年比マイナスの時期も多かったようです。従って各エリア、売出環境については同様という前提で検証を進めます。
【東京都下エリア別】中古マンション前年度同月比成約坪単価
マンションリサーチ株式会社調べ
小金井市は、1982年築~2000年築、2001年以降築、いずれにおいても前年同月比成約坪単価の大幅な上昇が見られました。
その一方で、三鷹市、府中市の1982年築~2000年築の中古マンション価格は、前年同月比でマイナス。2001年以降築もほぼ横ばいです。
小金井市の価格高騰は大きいものの、武蔵野市や小平市、立川市等も築年帯によっては10%前後の高騰が見られるため、移住者が多かった地域だけの高騰が際立っているとはいえません。
<<コロナ移住者が最も多かった神奈川県藤沢市の中古マンション価格は?>>
さて続いては、コロナ移住者が最も多かった神奈川県藤沢市を見ていきましょう。
基準エリア:鎌倉市・逗子市
ランクインエリア:藤沢市
【神奈川県湘南エリア別】中古マンション前年度同月比売出数
マンションリサーチ株式会社調べ
前年同月比の中古マンション売出数については、藤沢市とその他湘南エリアで増減率に大きな差はないようです。従って、エリアによる売出環境は同様だといえます。
【神奈川県湘南エリア別】中古マンション前年度同月比成約坪単価
マンションリサーチ株式会社調べ
価格において藤沢市は、2001年以降築の中古マンションについては、2020年の成約価格に「6%以上」の前年比増が見られました。しかし、それ以前のマンションは逆にマイナス。一方で、逗子市の2001年以降築の中古マンションの2020年成約価格は、藤沢市を大きく上回る前年比「17%以上」です。
東京都下同様、湘南エリアでも、東京23区からの流入者数と価格の高騰が比例したわけではないといえるでしょう。
<<【検証結果】コロナ移住が中古マンションの価格高騰の要因になっているとは考えにくい>>
「コロナ移住」は確かにみられている現象ですが、突発的かつ短期的な人の移動が中古マンション価格が高騰する要因になるとは考えにくいといえそうです。とはいえ、今後も長期的に東京23区からの郊外への人の移動が続けば、不動産価格に影響を与えないとも限りません。
【マンションリサーチ株式会社サービスURL】
■不動産売却一括査定サービス『マンションナビ』
https://t23m-navi.jp/
■不動産データクラウド
https://fudosan-data.jp/
■分譲マンションデータ販売
https://mansionresearch.co.jp/s/data_sale
【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「9000万件以上の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
会社名 : マンションリサーチ株式会社
所在地 : 東京都千代田区九段北1丁目2番11号 エイム東京九段ビル3階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円
Web : https://mansionresearch.co.jp/
筆者プロフィール
福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
FUKUSHIMA RESEARCH INSTITUTE
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。
すべての画像