購買時における脳波解析から感情による意思決定プロセスを評価する方法を新たに開発
脳波分析から、購買シーンにおける行動変容のプロセスを可視化
脳波計測による感性評価サービスを提供する、株式会社電通サイエンスジャム(東京都港区 代表取締役社長 志村 武彦、以下DSJ)は、立命館大学大学院 テクノロジー・マネジメント研究科 枝川義邦教授と共同で、直感と論理の思考プロセスを脳波計測で分析し可視化することで、購買行動における意思決定プロセスの理解を深める評価方法を確立しました。
これまで購買時における感情や欲求を評価し、思考プロセスを明らかにしようとする試みは行われておりませんでした。これは、実環境における消費者の心理変化を追跡することが困難だったことに起因します。感情や欲求は購買行動において重要な役割を果たしており、これを無視することはできません。購買行動中の心理変化を詳細に観察できるようになれば、消費者の意思決定プロセスをより深く理解することが可能になります。
この度、DSJは簡易脳波計を用いた評価方法を確立し、購買行動中の心理状態を追跡することで、購入に至る思考プロセスを明らかにすることを可能にしました。本手法では、消費者の脳波パターンを解析し、購買行動中の心理変化を可視化します。現時点で、購買に至る脳波パターンについて一定の洞察が得られており、消費者行動の評価に活用できる手法として確立しています。また、本リリースに至る研究成果は、複数の学会で発表済みです。[1]-[4]
今回、購買行動の手がかりとしたのが「二重過程理論」です。
二重過程理論は、心理学や行動経済学の分野で提唱され、人間の思考が「システム1(直感的思考)」と「システム2(論理的思考)」の2つの異なるタイプの処理システムによって行われるとする理論です。この理論は購買行動において重要な役割を果たします。
システム1(直感的思考)と購買行動の結びつき: 瞬時に反応し、努力なしに自動的に動作する思考プロセス。広告やパッケージデザインなど、視覚的・感覚的刺激に即座に反応し、商品に対する第一印象を形成します。
システム2(論理的思考)と購買行動の結びつき: より集中力を要し、意識的な努力で情報を処理する思考プロセス。商品の詳細情報を収集し、価格や品質、レビューなどを基に論理的に評価します。(※図1)
これまでも脳波計測を用いて消費者の感情を追跡しようと試みる研究はありましたが、それらは限定的な状況や一面的な反応に基づくものが多く、適用シーンが限られていました。消費者の行動は購買シーンによっても変化しますが、同じ購買シーンでも動機の背景やその日の気分など心理状態によっても行動が大きく変容します。こうした多様な消費者心理を追跡するには新たな脳波分析のアプローチが必要でした。
そこで、我々は購入に至るまでの消費者心理を多面的に理解できるように二重過程理論に基づき脳波を分析し、その評価方法を確立しました。
このアプローチを電通が実践しているデュアルファネルに適応し、購買シーンやターゲットとする消費者に応じた調査を行うことで、従来の手法では捉えきれなかった経時的な心理変化を詳細に把握することが可能になりました。これにより、デュアルファネルの新たな活用方法を通じて、より具体的かつ効果的なマーケティング施策を展開し、顧客体験価値を一層高めることが期待されます。(※図2)
活用イメージ
Case1.広告戦略の見直し
消費者の直感的な反応と論理的な検討のバランスをとることで、購入検討に進ませる広告戦略を設計することができます。特に、感覚的なインパクトと論理的な情報提供の両方を組み合わせた広告が重要です。(※図3)
Case2.ユーザーエクスペリエンスの改善
消費者のシステム2(論理的思考)が強く働く場面を特定し、その負担を軽減することで、消費者の継続的な行動を促進できます。ユーザーエクスペリエンスを改善することで、より多くの消費者がサービスを続けやすくなります。(※図3)
このように対象とする商品やサービスのマーケティング課題をカスタマージャーニーにマッピングしながら脳波計測を行うことで、心理評価に基づき具体的な課題が明らかにすることが可能になり、解決策の効果検証なども定量的に評価することができます。
今後、DSJでは脳波を活用した評価方法をニューロ・マーケティング・サービスとして提供予定です。これにより、企業は消費者の感情をより深く理解し、効果的なマーケティング戦略を立案することが可能になります。
電通サイエンスジャムは、購買行動における意思決定プロセスの理解を深める評価方法を確立することで、さらなる高度なマーケティング戦略に対応する、クライアントのMarketing for Growth(※電通が提唱する新しいマーケティング手法。企業の持続的成長を実現するための戦略)に貢献します。
電通、事業グロースのための次世代マーケティングモデル 「Marketing For Growth」を構築
■学会発表
[1] Y. EDAGAWA, S. AOKI, J. YAMAKAGE, Y. HIRABAYASHI, Y. KOHATA, T. SHIMURA, T. OHNO, "A quantitative approach to consumers' behavior accelerated by emotions", 北米神経科学学会, Neuroscience 2022 (2022)
[2] 青木駿介,木幡容子, 枝川義邦, "脳波分析による購買行動評価への二重過程理論の導入", 日本経営システム学会, 第71回 2023年秋季全国研究発表大会(2023)
[3] 青木駿介,木幡容子, 枝川義邦, "二重過程理論に基づく脳波分析による購買予測の検討", 経営情報学会, 2024年度年次大会(2024)
[4] Y. EDAGAWA, S. AOKI, Y. KOHATA, "Purchase Prediction by Prefrontal EEG Analysis Based on Dual Process Theory" 北米神経科学学会, Neuroscience 2024 (2024)
■監修
立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科
教授 枝川 義邦
博士(薬学)、経営学修士(専門職)
研究分野は、脳神経科学、人を中心とした経営システムなど。早稲田大学理工学術院教授などを経て、2024年より現職。一般向けの著書には、「『脳が若い人』と『脳が老ける人』の習慣」(明日香出版社)、「記憶のスイッチ、はいってますか~気ままな脳の生存戦略」(技術評論社)など。2015年度早稲田大学ティーチングアワード総長賞、2017年度ユーキャン新語・流行語大賞を「睡眠負債」にて受賞。
株式会社電通サイエンスジャム
本社: 東京都港区赤坂 4-2-28 TRES赤坂102
代表者:代表取締役社長 志村 武彦
事業内容:サイエンス領域における研究成果のビジネス化
当社は生体信号解析をベースに、複雑化している消費者の動向を探るお手伝いをしています。商品に対するエビデンス作り、PR、ヘルステック支援、共同研究、エンタメ領域や共同開発など、事業範囲は多岐にわたります。
■本リリースに関するお問い合わせ先
株式会社電通サイエンスジャム(担当:平林・青木)
E-mail: info@jam.dentsu.co.jp
Tel:03-6435-5316
■Official SiteおよびSNS
Official Site : https://www.dentsusciencejam.com/
X(旧Twitter): https://twitter.com/dentsu_jam
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