2月1日の「フレイルの日」 に先駆け、全国シニア「噛む力」調査を実施。「噛む力」が高い都道府県の第1位は高知県!第2位は埼玉県、兵庫県、福岡県
オーラルフレイルの症状を持つ人のうち、78.2%が何らかの「身体の衰え」も感じていることが判明。専門家が高齢者の口腔問題に警鐘!ガムを噛むことがオーラルフレイル対策の一助に
口の機能が衰えた状態であるオーラルフレイルに陥ると、介護リスクや死亡リスクが高まりますが、「噛むこと」はオーラルフレイルの予防の一助になると報告されています。本調査の発表にあたり、オーラルフレイル予防に寄与する噛む力の重要性について高齢者歯科専門家の東京医科歯科大学水口俊介教授の解説と県民性を分析する、岩中 祥史氏に見解をいただきました。
※フレイルの日:フレイルの概念、予防の重要性を知っていただき、健康長寿社会の実現を図ることを目的に、一般社団法人日本老年医学会、一般社団法人スマートウェルネスコミュニティ協議会、日本老年学会、一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会の4団体が共同制定。
<シニア「噛む力」調査における「噛む力(かむりょく)」とは> 本調査における「噛む力」とは、高齢者の①「よく噛むこと」に対する意識、②夕食時一口あたりの咀嚼回数や食事時間等に関する行動、③オーラルフレイル状態のチェック、主にこの3要素で構成された質問の回答結果を集計し、ロッテ「噛むこと研究部」が健康面において好ましいとされる順序に点数を割り振り、偏差値で算出した結果です。 |
<「オーラルフレイル」とは> 「オーラルフレイル」は、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰え(フレイル)の一つです。健康と機能障害との中間にあり、可逆的であることが大きな特徴の一つです。「オーラルフレイル」の始まりは、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、噛めない食品が増える、口の乾燥等ほんの些細な症状であり、見逃しやすく、気が付きにくい特徴があるため注意が必要です。 参考:日本歯科医師会https://www.jda.or.jp/enlightenment/oral/about.html |
■調査サマリー
全国シニア「噛む力」第1位は高知県。続いて同率第2位が埼玉県、兵庫県、福岡県、同率第5位が新潟県、富山県、静岡県といった結果に。
60.8%は食事の際に「よく噛むこと」を意識していない。
87.7%もの高齢者が「夕食時に一口あたり噛む回数は20回未満」と回答。
約3人に1人が「半年前に比べて硬いものが食べにくくなった(36.3%)」。
約48.2%が「オーラルフレイル」の症状があり、そのうち78.7%が何らかの「身体の衰え」も感じている。
【調査概要】※ロッテ調べ ■調査方法:WEBアンケート調査 ■有効回答数:2,350名(性年代居住地均等割付) ■調査対象:全国47都道府県別の65-80歳男女 ■調査実施日:2023年12月5日~2023年12月11日 |
全国47都道府県 シニア「噛む力」ランキング 第1位は 「高知県」
全国シニア「噛む力」調査ランキングで1位に高知県(偏差値:77)、同率2位に埼玉県、兵庫県、福岡県(偏差値:69) 、同率5位に新潟県、富山県、静岡県(偏差値:62)がランクインしました。1位の高知県は、オーラルフレイル状態のチェックにおいて口腔機能が良好である傾向にあり、同率5位の静岡県は食事の際によく噛むことを意識している割合が52.0%と高い結果になりました。一方で、シニア「噛む力」ランキングが最も低かったのは栃木県。つづいて同率45位に千葉県、広島県といった結果となりました。
【①意識面・②行動面における調査結果】
高齢者の60.8%は食事の際に「よく噛むこと」を意識していない
専門家が推奨する一口あたりの噛む回数である「30回以上」噛んでいる人は、たったの3.2%という結果に
「食事の際に『よく噛むこと』を意識していますか」という質問に対して、60.8%が「あまり意識していない(55.3%)」、「まったく意識していない(5.5%)」と回答。一方、「滋賀県(58.0%)」、「宮崎県(54.0%)」、「静岡県(52.0%)」、「福井県(52.0%)」は2人に1人以上はよく噛むことを意識していることが分かりました。加えて、「夕食時の一口あたりの噛む回数」を問う質問では、専門家が推奨する30回以上噛んでいると回答した人は3.2%しかおらず、87.7%もの高齢者が一口あたり噛んでいる回数は20回未満と回答したことが判明しました。よく噛むことへの意識の低さ、噛む回数が減少する「噛む離れ」問題も顕著に現れる結果となりました。ロッテ噛むこと研究室Webサイトでは食品毎の咀嚼回数ランク表を公開しています。ランク表を参考にして咀嚼回数の多い食べ物を取り入れるのもおすすめです。
参考:咀嚼回数ランク表 https://www.lotte.co.jp/kamukoto/body/1641
「噛むこと」による影響について知っている項目としては、「噛むことで脳が活性化される(68.2%)」が1番多く、続いて「噛むことで唾液が分泌され口の中を洗浄・清潔に保つことができる(むし歯、口臭、歯周病予防に繋がる)(52.0%)」、「よく噛むことが歯や顎の健全な発達につながる(51.2%)」が順に多い結果に。一方、「よく噛むことで噛む(咀嚼)機能の衰えを防ぎ、ひいては全身の筋力維持にもつながる(26.6%)」ことを知っている人は少ない傾向に。
高齢者の口腔機能低下予防が、健康寿命延伸に大きく寄与することが明らかになっています。人生100年時代と言われる現在、心身共に長く健康に生活するために、「噛むこと」への理解を深め、実践することが重要です。
【③オーラルフレイルチェックリストにおける調査結果】
口腔機能の衰えは全身のフレイル(虚弱)のリスクに・・・
「オーラルフレイル」の症状を持つ人のうち、78.2%が何らかの「身体の衰え」も感じていることが判明
オーラルフレイルチェックリスト(※)に基づいた設問では、48.2%の方がオーラルフレイルの危険性があることが判明。オーラルフレイルのあらわれである各症状についての質問によると、約3人に1人に「半年前に比べて硬いものが食べにくくなった(36.3%)」、「口の渇きが気になる(33.4%)」の症状が見られることが分かりました。
また、オーラルフレイルの症状を持つ人のうち、78.2%が身体の衰えを感じていることが明らかになりました。特に「最近物忘れが増えたと感じる(58.1%)」が一番多く、次に「握力の低下を感じる(ふたやペットボトルを開けるときなど)(47.6%)」、「最近、わけもなく疲れたような感じがする(31.2%)」と回答した人が多い結果になりました。オーラルフレイルの危険性がある人ほど身体の衰えを感じ、口腔機能が衰えると全身のフレイル(虚弱)につながることが予想されます。このような現状に対し、加齢による高齢者の口腔の変化やその機能改善に関する研究を行う水口教授は「調査結果からわかる通り、口と身体の健康は密接に関係しています。しっかりと噛めることは、食生活を豊かにすると同時に、健康の維持・増進、病気の予防など全身的な健康状態の維持につながるため、とても重要です」とコメントしています。
※オーラルフレイルチェックリスト
参考:Geriatr Gerontol Int 2023;23(9):651-659.
Geriatr Gerontol Int 2023;23(10):729–735.
▼オーラルフレイルチェックリストに基づいた設問
安価で容易に入手できる「ガム」がオーラルフレイル対策の一助に!
専門家が徹底解説!「ガムを噛むこと」とオーラルフレイルの関係性について
要介護認定や死亡リスク増加につながるオーラルフレイルですが、ガムを噛むことが対策になる可能性があることが分かっています。噛む力(咬合力)の衰えを自覚する高齢者211名を対象に、ガム咀嚼トレーニングを1日3セット、2か月間を行ったところ「咬合力(※1) 」が改善されることが確認されました。また、別のガム咀嚼研究でも「舌の力」の改善が報告されています(※2) 。また、高齢者1,000人以上を対象に、週に30分以上ガムを噛む習慣のある高齢者とガムを噛む習慣のない高齢者の2グループに分けて健康状態を比較したところ、「ガム噛み習慣」のある高齢者は、オーラルフレイルになる割合が4割ほど少ないことが判明。加えて、身体の衰え、握力、バランス能力等身体機能に加えて認知機能に関してもスコアが良く、高齢者の「ガム噛み習慣」は、オーラルフレイル・身体的フレイル両方に良い影響がある可能性が分かりました(※3)。調査(右図)では、以上の研究結果を知ると、60.8%の人が「ガムを噛みたい」と回答。高齢者歯科の水口教授も「ガム咀嚼トレーニングが高齢者の噛む力(最大咬合力)を向上することが研究で明らかになっており、オーラルフレイル対策に繋がることが期待されます。手軽に取り入れやすいガムは、毎日続けることが重要なオーラルフレイル対策におすすめです。オーラルフレイル対策に効果的な「ガムトレ」のポイントを参考にして日ごろより取り入れてみてください」とコメントしています。
※1:ロッテ「ガム咀嚼トレーニングが高齢者の噛む力(最大咬合力)を向上する」に関する研究リリース: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000110734.html
※2:Journal of Dental Sciences. 2023(in press):https://doi.org/10.1016/j.jds.2023.06.029
※3:ロッテ「ガム咀嚼習慣」に関する研究リリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000110734.html
水口 俊介 教授
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 教授
加齢による高齢者の口腔の変化に関する研究、摂食嚥下リハビリテーション研究、口腔機能と栄養状態に関する研究、噛むことによる咬合・咀嚼機能回復に関する研究など、健康長寿社会の実現に向けた研究を幅広く推進している。
歳を重ねると口周りの状態が変化し、ものを噛んだり飲み込んだりする力が弱ってしまうことで、食事が摂りにくくなり、心身の機能低下にまで繋がってしまいます。このことをオーラルフレイルといい、防ぐには日ごろからの口腔ケアに加え、「噛むこと」を意識することが大切です。今回ロッテと実施した研究から、2か月間のガム咀嚼トレーニングにより高齢者の噛む力(咬合力)が改善する結果が得られました。ガム咀嚼は他にもストレスを軽減し、気分を改善することや認知機能の改善効果が示されています。したがって、ガムは非常に効果的なトレーニングツールとして期待できると考えます。是非、簡単にできる「ガムトレ」を生活に取り入れ、オーラルフレイル対策をすることで、健康長寿を目指しましょう!
【専門家監修】 オーラルフレイル対策に効果的な 「ガムトレ」
県民性の専門家が高知県の噛む力を解説!
“おしゃべりでよく口を動かす性格”と“噛めば噛むほど美味しい郷土料理”が高知県民の噛む力に寄与?
本調査結果を受けて、県民性の専門家である岩中 祥史氏に見解をいただきました。
<県民性に詳しい専門家コメント>
岩中 祥史氏
<プロフィール>
ノンフィクション作家。出版・編集企画会社エディットハウス代表。県民性、都市生態学の第一人者として活躍。著書は『新出身県でわかる人の性格』『県民性仕事術』『新不思議の国の信州人』『名古屋学』『博多学』『札幌学』『広島学』『鹿児島学』など多数。
1位の高知県の人はとにかく社交的な傾向。とくに「おきゃく」と呼ばれる宴席では、初対面の相手とおしゃべりに興じるのも珍しくありません。根が議論好きなので、大きな声を出すことも。とにかく、口をよく動かす人たちなのです。 「おきゃく」の場でよく提供されるのが郷土料理。その筆頭が高知県民のソウルフードともいえる「田舎寿司」。寿司といっても主役はイモ類の茎、タケノコなどで、魚は一切用いません。山村部ではそれらを煮るなどして日常的に食してきました。その特徴は、よく噛まないとおいしさが感じられないこと。ほかにも、地鶏「土佐ジロー」、山あいに自生するイタドリ、ハス芋、これは海産物ですがウツボなど、噛めば噛むほどうまみが出てくる食材が目につきます。シニア世代の人たちは子どもの頃からそうした食習慣が身についており、知らず知らずのうちに「噛む力」がつちかわれてきたのでしょう。同率2位の埼玉県もコシの強い武蔵野うどん、兵庫県は明石のタコ、福岡県はもつ鍋と、いずれもよく噛んで食べる郷土食メニューがあります。
オーラルフレイルチェックリスト
自分の口の健康状態を知って、オーラルフレイル対策をしましょう。2つ以上当てはまるとオーラルフレイルの危険性が高いです。
参考:Geriatr Gerontol Int 2023;23(9):651-659.
Geriatr Gerontol Int 2023;23(10):729–735.
「噛むこと研究部」とは
株式会社ロッテでは、様々な自治体や研究機関・企業と連携し、最適な“噛む”を提供することで、皆さまの力になりたいと考え、『噛むこと研究部』を設立しています。噛むことが、脳や心、身体にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的に活動を行っております。「お口の恋人」として今後も皆さまに寄り添い、噛むことの研究を進め、有効性を広く啓発してまいります。
また今後、その研究成果を本リリースのような形で発信し、噛むことが生きる活力となりえる情報をご提供してまいります。ぜひご期待ください。
▶噛むこと研究室ホームページ https://www.lotte.co.jp/kamukoto/
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