「働く場所」から「心を動かす場所」へ。経営戦略としてのオフィスと物流【株式会社SIGx 津谷佳成氏×STUDIO ZERO対談】

オフィスや物流から始める、企業の生産性を高めるための変革と、経営と現場を繋ぐ「つなぎ手」という視点。

STUDIO ZERO

株式会社プレイド(東京都中央区:代表取締役CEO 倉橋健太)の社内起業組織STUDIO ZERO(スタジオゼロ)は、株式会社SIGxの代表取締役 津谷佳成氏との対談記事を公開いたしました。

AIの台頭や人口減少、そして働き方の多様化が加速する今、オフィスや物流施設といった「働く場所」が、単なる機能的な空間から、企業文化や経営戦略を体現する「心を動かす場所」へと進化を遂げようとしています。

本対談では、経営戦略に基づくオフィス変革を支援する株式会社SIGx 代表取締役 津谷佳成氏をゲストに迎え、株式会社プレイドの社内起業組織STUDIO ZERO(スタジオゼロ)代表の仁科奏と、スタジオゼロにおいて物流を軸に次世代の空間戦略を提案する「.Logi」の事業責任者上田淳志の3名で、企業が「場所」への想いを込めるべき理由と、その実現に向けたヒントについて語り合いました。

(左から、STUDIO ZERO仁科、株式会社SIGx 津谷氏、STUDIO ZERO上田)

津谷 佳成:株式会社SIGx 代表取締役

阪急阪神ホールディングスにてオフィス賃貸運営事業に従事し、入居企業間ビジネスコミュニティ「阪急阪神ワーカーズサービス」の立ち上げを担当。外資系企業での役員経験を有し、日系及び外資系企業双方の組織文化や働き方に対する深い知見を有する 。企業と企業不動産の社会的価値向上を目指し、2024年12月に株式会社SIGxを起業。

仁科 奏:株式会社プレイド 執行役員 / スタジオゼロ代表

NTTドコモ、セールスフォース・ドットコムで営業/営業企画などに従事。当社のSaaS事業の営業活動全般をリードし、上場に貢献。その後、PR Table(現talentbook)にてCFO/CPOとして全社業績の大幅改善を実現。当社復帰後にスタジオゼロを立ち上げ、現在管掌中。三井物産と共同で立ち上げたドットミーの経営アドバイザーも兼務。

上田 淳志:株式会社プレイド スタジオゼロ .Logi事業責任者

佐川急便株式会社にて現場から本社管理職を経験し、大手企業との事業共創により環境負荷低減など次世代サスティナビリティな取り組み実績を有している。物流現場の最前線から経営視点までを繋ぐ稀有な経験を持つ。

なぜ、日本の「場所」は機能から脱却できないのか?

仁科: 本日は「働く場所から、心を動かす場所へ」というテーマで、オフィスや物流施設が経営戦略とどう結びつくかについてお話ししたいと思います。津谷さんの視点から、日本のオフィスや物流施設の現状はどのように映っていますか?

津谷: 多くの企業にとって、オフィスはこれまで「機能」でした。どういうことかというと、2000年代まで大半の企業では総務部が所管し、社員が働く場所を提供する基本的な役割をになっていました。

しかし、リーマンショック後のコスト削減の流れで経営企画部がオフィスを管理するようになると、賃料削減やオフィス統廃合といった「効率化」が最大の目的になりました。オフィスは、単なる「働く場所」として機能しており、そこにかかるコストをいかに抑えるかという限定的な側面ばかりに目が向けられていました。

2010年代に入ると、アメリカでGAFAMが台頭し、彼らが経営戦略に基づいた働き方や場所づくりをしていることが知られるようになりました。しかし、私の認識では、日本はその本質を捉えきれず、コミュニケーションを生む「空間デザイン」という一部の機能だけを取り入れてしまいました。本来、GAFAMはイノベーション創出という経営戦略のもと、組織設計、人事制度、各事業部の事業戦略をすべて一体的に考え、その上で働く場所を設計していました。ただ、残念ながら日本はその一部分だけを切り取って輸入し、2010年代のオフィス設計に入っていったのです。

仁科: その部分的な取り入れが、どのような問題を引き起こしたのでしょうか。

津谷: 経営戦略と働く場所が切り離されたまま、ただ「コミュニケーションができる空間」を導入しただけなので、限定的な効果しかありませんでした。そうした状況のなか、コロナ禍が訪れ、企業は働き方の根本的な見直しを迫られました。

そして、ポストコロナの時代には、コロナ禍によって大きく落ち込んだ生産性を取り戻すため、欧米が取り入れてきたように経営戦略や企業カルチャーに合ったオフィスや働き方に変革していく必要がある、という考えが広がり、経営戦略に基づいたオフィス設計が動き始めました。そうしないと、優秀な人材も確保できず、生産性も上がらない。今、日本はまさにオフィスを根本から見直す転換期にいるというのが、私の認識です。

「場所に込める想い」

仁科: 津谷さんは前職が世界展開する規模の投資会社で、その前は日系企業に長く勤められていたと伺っています。外資と日系、両方のシニアポジションをご経験されたなかで、この「場所に込める想い」の違いをどのように感じましたか?

津谷: あくまで私個人の認識ですが、外資系は、経営戦略から組織戦略、人事戦略、そして働く場所までが合理的でした。なぜなら、基本が成果主義なので、その制度の中で個人が最大のパフォーマンスを発揮できる働き方や場所づくりを、経営陣が真剣に考えているからです。一方で、日本の大企業はまだまだ働き方や働く場所が「機能」として捉えられています。個人や組織の多様性を活かすよりも、既存の仕組みに従って全体を動かそうという考え方が根強く残っているように思います。

誤解しないでいただきたいのですが、これはどちらが良い悪いという話ではなく、その会社がどういう考え方、どういう戦略で事業を育てようとしているかに起因するのだと思います。今一番の課題は、この二つがクロスしてしまっていることではないでしょうか。

つまり、既存の仕組みで全体を動かそうとしている企業が、働き方においては完全フリーアドレスにして個人の裁量に任せてしまう。それでは、本当にその仕組みで今の働き方や働く場所が機能するのか、という課題が出てきてしまいます。そういう意味では、やはり外資系の方が仕組み一つでカバーせず、一人ひとりの働き方や働く場所に向き合っていたので、「場所に込める想い」があったように思います。

物流業界に潜む「100年変わらない」負の側面

上田: 津谷さんのお話を聞いて、物流業界の「場所」に対する考え方は津谷さんのお話を聞き、オフィス業界がこの20年ほどで働く場所を経営戦略の一環として捉えるよう進化してきたのに対し、物流業界では今もなお施設を『ただの箱』と捉える考え方が根強く、そこから20年遅れていると感じました。

物流業界では、これまで荷主(企業)の期待を上回るサービスを無償で行うことが当たり前とされてきました。例えば、本来は別途費用がかかるはずの細かな作業を「やっておきます」と黙って引き受け、その価値を外部に積極的にアピールしてこなかったのです。こうした「良いことをしても見せない」文化が根強く、その場所に付加価値が生まれる機会を自らのがしていました。

物流業界にいた頃はそれが当たり前だと思っていましたが、スタジオゼロにジョインし、業界の垣根を越えた視点に触れるようになりました。まさに本日ご一緒している津谷さんのような方と議論を重ねるなかで、これまで当たり前とされてきた無償のサービスや、見過ごされてきた現場の創意工夫が「それは新しいビジネスになるかもしれない」と言われることが多く、自分たちの付加価値を当たり前にしすぎていたのだと気づきました。

当時当たり前に考えていたのは、日本には人が潤沢にいて、労働力を当たり前に確保できていた時代だったからだと思います。今これだけ人が減り、日本の物流を回すための絶対数が足りなくなってくると、物流業界で働く人たちの生産性をどう上げるか、その人たちの価値をもう一度再定義しないと、この国の物流は成り立たなくなります。AIやロボティクスが導入され、オートメーション化が進むなかで、人にしかできないことの価値を最大化する働き方や働く場所にしていくことが、次の物流施設づくりの鍵になるでしょう。物流施設で働くことが「かっこいいね」と子どもたちに言われるようなものを作っていくことが、非常に重要です。

経営と現場を繋げる「ビジネスプロデューサー」の役割

仁科: リーダーがビジョンを掲げても、それを実現するには自らの態度変容も含めた実践が不可欠です。場所づくりにおいても、「経営戦略に基づいた場所作り」を経営が掲げたとして、そのメッセージ性をいかに現場に浸透させるかが重要だと感じます。

津谷: その通りです。その実現を助ける「つなぎ手」の存在が不可欠です。オフィス移転のような大きなプロジェクトは頻繁に起こるものではなく、担当者が社内で育ちにくいのが現状です。

日本のオフィス業界には、空間デザインや機能設計の専門家はたくさんいますが、会社の経営戦略という「ソフト」と、働く場所・働き方を結びつける「つなぎ手」が不足しています。経営者が描く理想を、横断的に実現できる人材が社内にいないのです。だからこそ、私のように事業会社での経験とオペレーションの知見を持つ人間が、外部のパートナーとして支援する役割がこれから重要になります。部署や課が細分化され、それぞれが「村の正義」で動いてしまう組織に、横串を刺す役割が求められているのです。

上田: 津谷さんが仰る「つなぐ」という言葉には、縦のつながり(経営と現場)と横のつながり(企業同士)の両方があると思います。

スタジオゼロが手掛ける.Logi事業では、物流の専門用語や商慣習に精通していない経営者と、当たり前のことを言っているのになぜ理解されないのかと悩む現場の「通訳」として、両方の目線で話を進めることに価値を感じています。また、物流企業各社が自社の個社最適をやりきった今、次は企業同士が連携して物流業界の全体最適にどうつなげていくかが課題です。皆が「物流業界全体の生産性を上げよう」、「サプライチェーン全体を効率化しよう」といった大局的な目標に総論では賛成しても、各論では自社の利益を優先してしまう。こうした現状を変えるには、各論の壁を乗り超え、他社を巻き込みながら変革をリードする存在が必要です。

津谷: 私の役割は、単なるコンサルタントではなく、価値創造に伴走する「ビジネスプロデューサー」です。一般論ではない、その企業の課題やリソースに合わせたオーダーメイドの提案を、成果が出るまで共に見届けます。リーダーが何をしたいのか。それを体現する場所を作るには、デザインや機能を寄せ集めるのではなく、そこで何を成し遂げたいのかという本質を共に考える伴走パートナーが必要だと感じています。

挑戦なき場所に未来はない

仁科: 今日のキーワードは、「リーダーシップ」、そして「プロデューサー」視点での「つなぎ手」の重要性だと感じました。これらがオフィスや物流施設という環境デザインに新しい風を吹き込む鍵となりそうですね。

津谷: その通りです。そして、日本のリーダーにはオフィスも物流も、単なる「場所」として捉えるのではなく、経営戦略を実現するための挑戦の舞台として捉えてほしいと強く願っています。現場維持の思考から脱却し、もっと上の新しい挑戦を宣言することが、組織の閉塞感を打ち破る第一歩です。

仁科: 生成AIや人口減少など、リーダーはもはや変わらざるを得ない状況に直面しています。この記事が、リーダーの皆様の挑戦を後押しするメッセージになれば嬉しいです。本日はありがとうございました。

株式会社プレイドの社内起業組織STUDIO ZERO(スタジオゼロ)で提供する、伴走型物流価値創造サービス「.Logi(ドットロジ)」のその他の事例は、こちらでご紹介しています。

「.Logi」では、生活者目線を主軸に物流全体を最適化する伴走型コンサルティングを提供しています。20年間で1,000社以上の物流構築経験があるメンバーたちが効率的かつ持続可能なGX物流戦略を提案し、貴社の競争力を物流で加速させます。

「.Logi」へご興味をお持ちの皆様は、こちらより、お気軽にお問い合わせください。


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会社概要

URL
https://plaid.co.jp/
業種
情報通信
本社所在地
東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 10F
電話番号
-
代表者名
倉橋 健太
上場
東証グロース
資本金
-
設立
2011年10月