AI時代の半導体需要拡大を支える、薬液中不純物ナノ粒子の高感度分析サービス開始

~極微量の金属ナノ粒子を評価し、歩留まり向上に貢献~

株式会社東レリサーチセンター

【要旨】

株式会社東レリサーチセンター(所在地:東京都中央区日本橋本町一丁目7番2号、社長:真壁芳樹、以下、「TRC」)は、誘導結合プラズマ質量分析※1装置を用いた単一微小粒子分析法(spICP-MS※2)の試料調製方法や測定条件を高度に最適化することで、半導体製造工程で問題となっている不純物金属ナノ粒子の粒子濃度・粒径分布を国内最高レベルの感度で分析可能な技術を開発しました。本技術を活用し、半導体製造用薬液中のナノ粒子を対象とした受託分析サービスを開始します。

半導体の微細化が進む現在、ナノメートル※3サイズの微小な粒子(ナノ粒子)が、極微量であっても断線や短絡などの不良を引き起こす要因となります。そのため、製造工程で使用される薬液の純度管理は、歩留まり確保の観点からますます重要になっています。

spICP-MSは、液体中に存在する金属ナノ粒子を1粒子ずつ検出し、粒径と粒子数濃度を同時に測定できる高感度分析手法です。TRCでは、本手法の特長を最大限に引き出す独自の分析システムを構築することで、薬液中に含まれる極微量の不純物ナノ粒子の検出・定量評価を可能にしました。本サービスにより、薬液のさらなる高純度化や、先端半導体製造における歩留まり向上への貢献が期待されます。

【背景】

半導体の高性能化・省電力化が進む中、デバイスの微細化は一層加速しています。その一方で、集積回路の断線や短絡を引き起こす一因として、金属ナノ粒子による汚染が問題視されています。半導体製造工程では、フォトレジスト※4、酸、有機溶媒など多様な薬液が使用されており、これら薬液中に含まれる不純物金属ナノ粒子がデバイスの信頼性や歩留まりに与える影響は無視できるものではなく、薬液中の極微量な金属ナノ粒子を高感度かつ定量的に評価する技術が強く求められてきました。

spICP-MSは、液体中に分散した金属ナノ粒子を数ppt※5 (100億分の1%)という極めて低い濃度でも検出できる分析手法であり、薬液などの不純物金属ナノ粒子評価に有効です。しかし、試料調製に用いる試薬由来の不純物、試料中の金属イオンや夾雑物、測定装置内の汚染などに起因するノイズ信号の影響や、測定条件のわずかな違いによる感度変動により、微量・微小粒子の検出が困難になるという課題がありました。

【技術と分析例】

こうした課題に対してTRCは、試料調製に用いる溶媒の高純度化、装置内を清浄な状態に保つための運用管理、測定対象の薬液や粒子に応じた測定条件の最適化を組み合わせ、spICP-MSの特長を最大限に引き出す分析システムを構築しました。その結果、半導体製造用薬液中に存在する極めて微量の金属ナノ粒子を、高感度かつ安定的に検出・評価することが可能となりました。

本技術の有効性を示す一例として、半導体製造工程においてフォトレジストの溶剤や洗浄剤として使用されるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA※6)の不純物金属ナノ粒子量をspICP-MSで確認した結果を図1に示します。

市販の高純度PGMEAをそのまま測定した場合、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)などの金属ナノ粒子が多数検出されました。この結果は、一般に「高純度」とされる薬液中にも、金属ナノ粒子が不純物として存在することを示しています。このPGMEAを使用して試料調製した場合、検出された粒子が試料由来か、調整に用いたPGMEA由来かを判別することが困難です。一方、この溶媒を精製した後に同様の分析を行うと金属ナノ粒子はほぼ検出されなくなり、適切に精製した試薬を用いることでより高感度かつ信頼性の高い不純物評価が可能であることを示しています。なお、精製後のPGEMAから検出されたFe粒子は溶媒中濃度で0.04 pptに相当し、極めて高い検出感度を達成しています。

さらに本手法では、適切な溶媒に溶解することで樹脂中に含まれる金属ナノ粒子の評価も可能であり、固体樹脂を原料とする薬液における汚染源の推定にも有効です。樹脂中の極微量の金属ナノ粒子の分析は、精製により高純度化した溶媒を樹脂の溶解に用いることではじめて可能となりました。今後、さまざまな溶媒や材料へ適用範囲を拡大することで、さらに幅広い分析ニーズに対応します。

                 図1 PGEMA中の金属不純物金属ナノ粒子の分析結果

【今後の展望】

AIやデータセンター向け半導体をはじめとする製品の需要拡大を背景に、半導体製造技術の高度化は今後も継続すると見込まれます。本技術は、薬液中の不純物ナノ粒子を高感度に評価できる手段として、研究・技術開発から量産工程まで幅広い場面での活用が期待されます。

 TRCは、「高度な技術で社会に貢献する」という基本理念のもと、微小粒子検出技術のさらなる高度化と対応試料の拡充を進め、半導体をはじめとする多様な分析ニーズに応えることで、お客様の課題解決を支援してまいります。

【用語説明】

※1 誘導結合プラズマ質量分析

Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry。略称はICP-MS。試料溶液をプラズマでイオン化し、そこに含まれている金属元素の種類と量を質量分析計で測定する手法。現代の分析手法の中では最高レベルの感度を有し、極めて低い濃度の金属不純物の検出・測定を得意とする。

※2 spICP-MS

Single Particle ICP-MSの略。ICP-MS装置を用いて液体中の粒子1粒1粒に含まれる金属元素の種類と量を検出する。金属元素の量から個々の粒子の体積を求め、球状であると仮定して粒径を算出する。また、粒子が検出される頻度から試料液中の粒子濃度を算出する。

※3 ナノメートル

  長さの単位。nm。1nmは1mmの100万分の1に相当する。

※4フォトレジスト

高分子樹脂、感光材、溶剤からなる液状の薬剤。光に反応して化学的に変化する特性があり、半導体の製造工程では回路の形を作る際に使用される。

※5 ppt

濃度の単位。1兆分の1を意味するParts Per Trillionの略。1pptは1%の100億分の1に相当する。

※6 PGMEA

Propylene Glycol Methyl Ether Acetate。無色透明の溶剤で、半導体製造以外の分野ではインクや染料にも使われる。

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会社概要

URL
https://www.toray-research.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都中央区日本橋本町一丁目7番2号 KDX江戸橋ビル6階
電話番号
03-3245-5633
代表者名
真壁 芳樹
上場
未上場
資本金
2億5000万円
設立
1978年06月