MSCのCoC認証を取得した水産企業の株価が上昇 「環境への配慮は利益を生む」ことが研究により明らかに
持続可能な水産物を取り扱うための認証を取得した企業の株価が上昇することから、「環境への配慮は利益を生む」ことを証明する論文が、この度Marine Resource Economics誌に掲載されました。
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/714519
この第三者機関による研究では、MSC(海洋管理協議会)のCoC 認証[1]取得による企業の株価への影響が分析されました。MSC CoC認証は、持続可能な水産物の証であるMSCエコラベルの付いた製品が、水揚げから店頭に並ぶまでのトレーサビリティを確保し、非認証水産物が混ざっていないことを消費者に保証するものです [2] 。
近年、持続可能な製品やエコラベルに対する消費者の需要が増していることから、持続可能な水産市場をリードするMSC CoC認証規格に代表される、より厳格に調達を保証する仕組みが求められています。
スペインのカンタブリア大学が行った研究によると、認証を取得した後、企業の株価は平均して2.64%上昇し、平均時価総額8億7,580万米ドル[3]の企業の場合、認証取得後わずか20日で2,312万米ドル上昇する(年率60.89%相当[4])結果となりました。この上昇率は、収益性や売上が低い企業ほど高く、認証取得による売上や利益の増加への投資家の期待を物語っています。
論文の共同執筆者であるスペイン、カンタブリア大学経済学部教授のホセ・L・フェルナンデス・サンチェス博士は、次のように述べています。「収益性を重視する生産者からは、より持続可能な漁業への転換に懐疑的な声が聞こえてくることがありますが、今回の研究結果は、経済か環境かという二者択一からの脱却を促すことになるでしょう。この研究によって、投資家が漁業における持続可能なスキームに肯定的であり、金融市場における企業の利益につながることが明らかになりました。これは、『環境への配慮は利益を生む』という私たちの仮説を裏付けるものです」
持続可能な漁業を支援する認証の導入に対する金融市場の反応を分析した研究は、今回が初めてとなります。
水産物は世界で最も取引されている商品の一つであり、砂糖、トウモロコシ、コーヒーの取引額の合計を上回っています[5]。2018年時点で、世界の上位150の水産企業(上場、非公開を問わず)の収益はおよそ1,200億米ドルに達しています[6]。
この研究では、企業がMSC CoC認証の取得を公表した後の株式市場の反応に着目し、認証を取得することのメリットがコストを上回るかどうかを分析しました。
研究者らは、2006年から2019年の間にMSC CoC認証を取得した58社について、認証取得の発表当日から20日間の株価を調査、比較しました。株主からはおおむね、明らかに肯定的な反応がありました。株価に対するプラスの異常リターン(予想よりも高い収益率)は、1週目の1.08%から20日目以降では2.64%に上昇しました。
過剰漁獲の傾向が続き、世界の水産資源の3分の1以上(34%)が過剰漁獲されていることから、論文の著者らは、より持続可能な漁業慣行の実施が急務であると強調しています。MSC漁業認証を取得した漁業は「水産資源の持続可能な管理と漁業の改善」によって過剰漁獲問題解決の一端を担っており、過去10年間で持続可能な漁業による漁獲量を増やすことに成功したとして国連も評価しています。
MSCのマーケット事業部長のトビー・ミドルトンは、次のように述べています。「投資コミュニティは、企業や産業の価値および将来のリターンの可能性を評価する際に、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連の要素を考慮するようになってきています。しかし、企業のESGパフォーマンスを評価する信頼性の高い方法を見つけ出すのは容易なことではありません。投資家たちは、真に持続可能な企業を識別するために、MSC CoC認証やMSC漁業認証のような独立した第三者機関による厳格で客観的な審査による認証制度に高い関心を寄せるようになりました。今回の研究は、水産企業と投資家双方に対し、サステナビリティに真剣に取り組むことで得られる実際の利益を明確に示しています」
MSCプログラムへの参加を通じて、サステナビリティを事業に取り入れる漁業や企業は、海の健全性に貢献するだけでなく、直接的かつ目に見える形で利益を得られるという事実が次々と確認されていますが、今回の調査はそのことをさらに裏付ける形となりました。
昨年6月、MSCは水産物業界への投資家向けに新しいガイダンス(英語)を公開し、海と事業の両方に利益をもたらす企業への投資を奨励しました。
https://www.msc.org/docs/default-source/default-document-library/for-business/fishery-improvement-tools/finance-guidance-for-investors-2020.pdf?sfvrsn=7bca8b29_6
注記:
1. MSC認証漁業で獲られた水産物は、MSC CoC認証を取得している企業にのみ取り扱われ、加工、包装されたものでなければ、MSCラベルを付けることができません。これらの企業は、独立した審査機関による定期的な監査を受けることによって、MSC CoC認証規格に適合していることが保証されています。
https://www.msc.org/jp/standards-and-certification/MSCstandardjp/traceableJP
2. CoC認証規格では、認証取得サプライヤーからのみMSC 認証水産物を購入することが求められます。認証水産物は常に識別可能であり、非認証水産物が混ざらないようにし、認証水産物であることを示す適切な書類を添付して販売しなければなりません。MSCは、CoC認証規格の要求事項が正しく順守されていることを確認するために、サプライチェーンと審査機関の規格への適用を定期的にモニタリングしています。最終的にMSCエコラベル付きの水産製品を販売するためには、「MSCエコラベル使用ライセンス契約」が締結されていなければならず、MSC認証を取得したサプライヤーが取り扱う認証水産物にのみエコラベルが使用されるようになっています。
3. 本調査(英語)で分析した企業の平均値。
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/714519
4. 推定年間収益率。
5. 以下を参照(英語)。
http://marcfbellemare.com/wordpress/wp-content/uploads/2014/09/Asche-et-al.-2014.pdf
6. 以下を参照(英語)。
https://www.intrafish.com/news/business-intelligence-report-the-worlds-150-largest-seafood-companies-now-account-for-120-billion-in-sales/2-1-655808
MSC(海洋管理協議会)について
将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20カ国に事務所をおき世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた水産品は世界約100カ国で47,000品目以上、日本では約900品目が承認・登録されており、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、西友、ライフ、マクドナルドなどで販売されています。
持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は、世界で広く認知されており、最新かつ確実な科学的根拠に基づき策定されたものです。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、独立した審査機関による審査を通じて実証することが求められます。
詳しくはMSCウェブサイトをご覧ください: https://www.msc.org/jp
MSC「海のエコラベル」について
MSCの厳格な規格に適合した漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それが「海のエコラベル」です。
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/714519
この第三者機関による研究では、MSC(海洋管理協議会)のCoC 認証[1]取得による企業の株価への影響が分析されました。MSC CoC認証は、持続可能な水産物の証であるMSCエコラベルの付いた製品が、水揚げから店頭に並ぶまでのトレーサビリティを確保し、非認証水産物が混ざっていないことを消費者に保証するものです [2] 。
近年、持続可能な製品やエコラベルに対する消費者の需要が増していることから、持続可能な水産市場をリードするMSC CoC認証規格に代表される、より厳格に調達を保証する仕組みが求められています。
スペインのカンタブリア大学が行った研究によると、認証を取得した後、企業の株価は平均して2.64%上昇し、平均時価総額8億7,580万米ドル[3]の企業の場合、認証取得後わずか20日で2,312万米ドル上昇する(年率60.89%相当[4])結果となりました。この上昇率は、収益性や売上が低い企業ほど高く、認証取得による売上や利益の増加への投資家の期待を物語っています。
論文の共同執筆者であるスペイン、カンタブリア大学経済学部教授のホセ・L・フェルナンデス・サンチェス博士は、次のように述べています。「収益性を重視する生産者からは、より持続可能な漁業への転換に懐疑的な声が聞こえてくることがありますが、今回の研究結果は、経済か環境かという二者択一からの脱却を促すことになるでしょう。この研究によって、投資家が漁業における持続可能なスキームに肯定的であり、金融市場における企業の利益につながることが明らかになりました。これは、『環境への配慮は利益を生む』という私たちの仮説を裏付けるものです」
持続可能な漁業を支援する認証の導入に対する金融市場の反応を分析した研究は、今回が初めてとなります。
水産物は世界で最も取引されている商品の一つであり、砂糖、トウモロコシ、コーヒーの取引額の合計を上回っています[5]。2018年時点で、世界の上位150の水産企業(上場、非公開を問わず)の収益はおよそ1,200億米ドルに達しています[6]。
この研究では、企業がMSC CoC認証の取得を公表した後の株式市場の反応に着目し、認証を取得することのメリットがコストを上回るかどうかを分析しました。
研究者らは、2006年から2019年の間にMSC CoC認証を取得した58社について、認証取得の発表当日から20日間の株価を調査、比較しました。株主からはおおむね、明らかに肯定的な反応がありました。株価に対するプラスの異常リターン(予想よりも高い収益率)は、1週目の1.08%から20日目以降では2.64%に上昇しました。
過剰漁獲の傾向が続き、世界の水産資源の3分の1以上(34%)が過剰漁獲されていることから、論文の著者らは、より持続可能な漁業慣行の実施が急務であると強調しています。MSC漁業認証を取得した漁業は「水産資源の持続可能な管理と漁業の改善」によって過剰漁獲問題解決の一端を担っており、過去10年間で持続可能な漁業による漁獲量を増やすことに成功したとして国連も評価しています。
MSCのマーケット事業部長のトビー・ミドルトンは、次のように述べています。「投資コミュニティは、企業や産業の価値および将来のリターンの可能性を評価する際に、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連の要素を考慮するようになってきています。しかし、企業のESGパフォーマンスを評価する信頼性の高い方法を見つけ出すのは容易なことではありません。投資家たちは、真に持続可能な企業を識別するために、MSC CoC認証やMSC漁業認証のような独立した第三者機関による厳格で客観的な審査による認証制度に高い関心を寄せるようになりました。今回の研究は、水産企業と投資家双方に対し、サステナビリティに真剣に取り組むことで得られる実際の利益を明確に示しています」
MSCプログラムへの参加を通じて、サステナビリティを事業に取り入れる漁業や企業は、海の健全性に貢献するだけでなく、直接的かつ目に見える形で利益を得られるという事実が次々と確認されていますが、今回の調査はそのことをさらに裏付ける形となりました。
昨年6月、MSCは水産物業界への投資家向けに新しいガイダンス(英語)を公開し、海と事業の両方に利益をもたらす企業への投資を奨励しました。
https://www.msc.org/docs/default-source/default-document-library/for-business/fishery-improvement-tools/finance-guidance-for-investors-2020.pdf?sfvrsn=7bca8b29_6
注記:
1. MSC認証漁業で獲られた水産物は、MSC CoC認証を取得している企業にのみ取り扱われ、加工、包装されたものでなければ、MSCラベルを付けることができません。これらの企業は、独立した審査機関による定期的な監査を受けることによって、MSC CoC認証規格に適合していることが保証されています。
https://www.msc.org/jp/standards-and-certification/MSCstandardjp/traceableJP
2. CoC認証規格では、認証取得サプライヤーからのみMSC 認証水産物を購入することが求められます。認証水産物は常に識別可能であり、非認証水産物が混ざらないようにし、認証水産物であることを示す適切な書類を添付して販売しなければなりません。MSCは、CoC認証規格の要求事項が正しく順守されていることを確認するために、サプライチェーンと審査機関の規格への適用を定期的にモニタリングしています。最終的にMSCエコラベル付きの水産製品を販売するためには、「MSCエコラベル使用ライセンス契約」が締結されていなければならず、MSC認証を取得したサプライヤーが取り扱う認証水産物にのみエコラベルが使用されるようになっています。
3. 本調査(英語)で分析した企業の平均値。
https://www.journals.uchicago.edu/doi/10.1086/714519
4. 推定年間収益率。
5. 以下を参照(英語)。
http://marcfbellemare.com/wordpress/wp-content/uploads/2014/09/Asche-et-al.-2014.pdf
6. 以下を参照(英語)。
https://www.intrafish.com/news/business-intelligence-report-the-worlds-150-largest-seafood-companies-now-account-for-120-billion-in-sales/2-1-655808
MSC(海洋管理協議会)について
将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20カ国に事務所をおき世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた水産品は世界約100カ国で47,000品目以上、日本では約900品目が承認・登録されており、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、西友、ライフ、マクドナルドなどで販売されています。
持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は、世界で広く認知されており、最新かつ確実な科学的根拠に基づき策定されたものです。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、独立した審査機関による審査を通じて実証することが求められます。
詳しくはMSCウェブサイトをご覧ください: https://www.msc.org/jp
MSC「海のエコラベル」について
MSCの厳格な規格に適合した漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それが「海のエコラベル」です。
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