「相模原市・人権施策審議会の答申を反映させた相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定」を求める声明を出しました
すべての人の尊厳と人権が守られる社会を構築するために
認定NPO法人DPI日本会議(所在地:東京都千代田区、議長:平野みどり)は、3月29日(水)に「相模原市・人権施策審議会の答申を反映させた相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定」を求める声明を出しました。
2023年3月29日
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
DPI(障害者インターナショナル)日本会議は全91の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越えて障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて運動を行っている。
相模原市では、本村賢太郎市長からの諮問を受けて、相模原市人権施策審議会が「(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について(答申)」を3月にまとめた。この答申には、以下5点の先進的で非常に重要な内容が盛り込まれている。
1.「津久井やまゆり園事件」をヘイトクライムと位置づけ、前文に盛り込むこと。
2.不当な差別的言動(悪質なヘイトスピーチ等)を禁止し、秩序罰又は行政刑罰を科すこと。
3.不当な差別的言動の対象に人種・民族・国籍だけでなく、障害も含めていること。「人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身を理由とする不当な差別的言動」
4.差別事案が発生した場合、それが許されないものであるとの立場を市が明確にし、なくしていくために市長は速やかに「声明」を出す仕組みを設けること。
5.救済の機能を持つ第三者機関として「相模原市人権委員会」を設置すること。「被害者の申出等(第三者による申出及び職権を含む。)を契機として、救済機関(相模原市人権委員会)において関係者等への調査や調整、加害者への説示などができる仕組みを設けること」
2022年8月に障害者権利条約の第1回目の日本の建設的対話が行われ、複数の委員から津久井やまゆり園事件を受けて優生思想をなくすために日本政府はどのような取り組みをしているか、といった質問が相次ぎ、総括所見にも「障害者、知的障害者及び精神障害者に対する差別的な優生思想に基づく態度、否定的な定型化された観念及び偏見。(19b)」が懸念事項として挙げられた。
これらを踏まえて、津久井やまゆり園事件を障害者へのヘイトクライムと明確に位置づけることは、優生思想の撲滅のためにも非常に重要である。
悪質なヘイトスピーチを不当な差別的言動と位置づけ、これを禁止し、さらに秩序罰を科すことにも踏み込んでいる。ヘイトスピーチというと人種や民族、国籍に限られて捉えられることが多かったが、障害者へのヘイトスピーチも存在することを認め、対象に含めている。
さらに、差別事案が発生した場合、速やかに市長が声明を出すことも非常に重要である。たとえばアメリカの大統領は、差別事案が起きた時に速やかに声明を発出し、差別を許さない姿勢を明確に示している。
2016年に津久井やまゆり園事件が起きた時も、当日にホワイトハウスとケリー国務長官の声明を出していた。日本では首相や首長が差別事案に対して声明を出す仕組みがない。差別を許さない、優生思想を許さないという姿勢を市民に伝えていくために、非常に重要な取り組みである。
現在の障害者差別解消法では、差別事案が起きた時に、救済する仕組みがない。これに関しては昨年の建設的対話でも権利委員会は重大な関心を寄せて、総括所見に「障害を理由とした差別の被害者のために、司法及び行政手続を含む、利用しやすい効果的な仕組みを設置すること、及び被害者に包括的救済を提供すること、加害者に制裁を課すこと(14c)」とし、救済機関を設けることを勧告している。
国に先駆けて相模原市で救済機関を設けることは画期的であり、差別からの救済の道が拓かれ、さらに全国への波及効果も期待できる。
このように答申には先進的で非常に重要な内容が含まれており、相模原市においては、ぜひともこの答申を真摯に受け止め、上記5点を盛り込んだ条例を制定するように強く求める。すべての人が共に生きるインクルーシブな社会を創るために、相模原市の先進的な条例制定を期待したい。
▽声明(ワード)は以下からダウンロードください。
https://www.dpi-japan.org/wp-content/uploads/2023/03/7c11d2d8ec372a45068a958bb25f0cd4.docx
- 団体概要
所在地:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5階
ホームぺージ:https://www.dpi-japan.org/
活動概要:1986年に発足。「障害者の権利の実現を目指す運動を通して、全ての人が希望と尊厳をもって、ともに育ち、学び、働き、暮らせるインクルーシブな社会を創る~障害者権利条約の完全実施へ~」というビジョンのもと、国への政策提言、権利擁護活動を中心に、身体障害、知的障害、精神障害、難病等の障害種別を超え、国内外で幅広く活動している。全国92の団体が加盟している。(2023年3月現在)
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