「正社員として20年以上勤務した60代の就労実態調査」を発表 60代の就業率は9割、4分の3以上がフルタイム勤務
大半が正社員などで働いているが、処遇改善と戦力化が大きな課題
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:萱野博行)は、「正社員として20年以上勤務した60代の就労実態調査」の結果を発表いたします。
高齢化が進む中、ポスト団塊世代とも言われる60代は約1843万人を数えます。2021年4月には改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業には70歳までの就業機会を確保する努力義務が課されました。少子高齢化と労働力不足が深刻化する中、多くの企業が60代の豊富な経験を持つ人材を雇用していますが、彼らを組織の中核的な戦力として位置づけ、その能力を十分に引き出す仕組みづくりが大きな課題となっています。
本調査では、職業キャリアの大半を正規雇用で勤務してきた60代のはたらき方と、その実態を明らかにしました。
■正社員として20年以上勤務した60代前半の就業率は95.8%、60代後半の就労率は89.3%であり、同年代全般を対象にした総務省「労働力調査」(2023年)の74.0%、52.0%よりも著しく高い。
就業者の男女構成比は、1986年施行の男女雇用機会均等法の一期生が2024年で60歳ということもあり、就業者に占める男性の割合は、60代前半では78.0%、60代後半では82.0%と男性が8割前後を占める。
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<本調査における雇用形態に関する定義>
・継続勤務者とは、55歳時点で勤めていた企業およびそのグループ企業に勤務する正社員、定年再雇用、契約・嘱託社員
・転職者とは、55歳時点で勤務していた企業から転職した企業に勤務する正社員、定年再雇用、契約・嘱託社員
・パート・アルバイトとして勤務する継続雇用者・転職者はパート・アルバイトとして集計している
■主なトピックス ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください
<60代の就労実態>
1. 60代の雇用形態は、60代前半の約9割、60代後半の3分の2が正社員、定年再雇用、契約・嘱託社員であり、パート・アルバイトは少数派。正社員等の9割前後はフルタイム勤務である。
2. 給与をみると、元々勤めていた企業での継続勤務者の収入が高く、60代前半・後半ともに「400~700万円未満」がボリュームゾーンである。転職者は「200~400万円未満」、パート・アルバイト「200万円未満」がボリュームゾーンになっている。
3. 60代は、正社員であっても、半数以上の人は人事評価もなければ、昇給・昇格も適用されない。役職登用機会がある人は、60代前半の継続勤務者の約4分の1。
<60代就業者のプロフィール>
4. 60代就業者の85%前後が「就労するにあたって配慮が必要な病気やケガはない」と回答しているが、就業者の約半数が自身の健康に不安を感じている。一方、非就業者は病気やケガがある人が就業者より10ポイント以上高く、60代前半で3割に達する。
5. 60代の就業者と非就業者の純金融資産保有額に大きな差はなく、6割以上の人が「2000万円未満」。
6. 60代前半・後半ともに、お金に対する不安を持つ人は就業者の方が約1割多い。お金に対する不安を純金融資産保有額別に比べても、非就業者より就業者のほうがお金に対する不安を持つ人が多い。
<仕事の満足度>
7. 60代前半の就業者の約5割、60代後半の5割以上が現在の仕事に満足している。60代前半・後半ともに「働けていること」「生計を維持できていること」に対する満足度が高い。
8. 60代前半の継続勤務者で「給与・賞与が下がった」人は6割、下がらなかった人も4割いる。
9. 給与・賞与が下がった人は、「自分の価値が低下した」「会社員としてのキャリアが終わった」「モチベーションが下がった」「忠誠心が下がった」との回答が、給与・賞与が下がらなかった人に比べて数倍多い。
10. 仕事の満足度との相関関係では、 給与ダウンなしの人は「働くことができている」との相関が高いのに対し、給与ダウンありの人は「やってみたかった仕事ができている」「これまでのキャリアやスキルが活かせている」との相関が高い。給与ダウンありの人は金銭処遇ではなく仕事内容に満足を見出している。
<職場の期待と本人の役割認識>
11. 職場での自分の役割を重要だと感じている人は半数前後に留まる。
12. 専門性がある正社員等でも自分の役割を重要だと感じる人は6割弱。
13. 「職場からの期待されている役割」、「自分が果たしたい役割」として、「担当者としてのパフォーマンス発揮」と「高い専門性の発揮」との回答が相対的に多いが、それでも回答率は5割前後以下に過ぎず、いずれの項目についても役割としての認識が低い。
■主なトピックス(詳細)
<60代の就労実態>
1. 60代の雇用形態は、60代前半は、65歳までの雇用義務の影響もあり、継続勤務者が73.3%を占める。転職者を含めると、パート・アルバイトではなく、正社員等での勤務が約9割。60代後半では、継続勤務者が44.7%まで減少するものの、正社員等が66.1%と3分の2を占める。
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正社員等の「フルタイム」就労率は、60代前半では継続勤務者で95.7%、転職者で88.2%を占める。60代後半でも、継続勤務者85.5%、転職者75.5%と4分の3以上の人がフルタイムで勤務している。
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2. 60代前半の収入は、継続勤務では「400~700万円未満」、転職は「200~400万円未満」、パート・アルバイトは「200万円未満」がボリュームゾーン。継続勤務者は、転職者よりも収入が高い傾向がある。
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60代後半の収入は、継続勤務者「400~700万円未満」、転職者「200~400万円未満」、パート・アルバイト「200万円未満」と、ボリュームゾーンは60代前半と同様の結果。継続勤務者・転職者ともに、60代前半と比べて収入が大きく下がっているわけではない。パート・アルバイトはむしろ高収入の人が増えている。
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3. 人事評価制度の適用率は、60代前半の継続勤務者でも約6割に過ぎず、60代後半では5割を下回る。転職者では60代前半・後半とも、人事評価制度が適用されている人は3分の1ほどに過ぎない。正社員等であっても、半数以上の人は人事評価制度が適用されていない。
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<60代就業者のプロフィール>
4. 60代前半・後半とも、「就労するにあたって配慮が必要な病気やケガ(後遺症を含む)はない」が85%前後。非就業者は、「病気・ケガがある人」が就業者よりも10ポイント以上多く、健康状態の悪さが非就業に繋がっている。「自分の健康」に対する不安を持つ人は、60代前半・後半ともに約半数で、就業者のほうが数ポイント多い。健康不安軽減・解消のために働く人がいると思われる。
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5. 本人の純金融資産保有額が「2000万円未満」の人は、60代前半は就業者・非就業者ともに約6割。60代後半の就業者も変わらず約6割、非就業者では7割弱。就業者、非就業者で純金融資産保有額は大きく異なるわけではない。
「お金」に対する不安を持つ人は、60代前半・後半ともに、就業者のほうが10ポイント前後多い。お金の不安があるがゆえに、不安軽減・解消のために働く人がいると思われる。
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6. お金と老後に対する不安感を見ると、60代前半で純金融資産保有額「2000万円未満」は、「2000万円~3000万円未満」にくらべて「不安がある」人が約15~20ポイント前後増える。「3000万円~5000万円未満」では、パート・アルバイトと非就業者では「不安がある人」がいないが、正社員等※では「不安がある人」が約4割。正社員等よりもパート・アルバイト、さらには非就業者のほうが、お金と仕事の関係については楽観的。
※ 正社員等とは、正社員、定年再雇用、契約・嘱託社員として勤務する継続勤務者と転職者の合計
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60代後半で純金融資産保有額「2000万円未満」は、「2000万円~3000万円未満」にくらべて「不安がある」人が約20~30ポイント前後増える。60代前半と異なり、60代後半では「3000万円~5000万円未満」であっても、正社員等とパート・アルバイトでは4分の1強、非就業者では約1割が「不安がある」と回答。60代前半以上に、60代後半は正社員よりもパート・アルバイト、さらには非就業者のほうが、お金と仕事の関係については楽観的。
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<仕事の満足度>
7. 60代前半で5割前後、60代後半で5割強が今の仕事に満足している。継続勤務者、転職者、パート・アルバイトのいずれも60代前半よりも60代後半のほうが満足している人が多い。いわゆる「エイジングパラドックス※」のほか、不満足な人はリタイアしていくためとも考えられる。
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8. 60代の処遇の変化を見ると、継続勤務者で「給与・賞与が下がった」人は60代前半で60.0%、60代後半で65.1%。裏返すと、60代前半の40%、60代後半の34.9%は給与・賞与が下がっていない。他の項目では、60代後半の「雇用区分が変わった」が51.7%と半数を超えているが、その他の項目はいずれも、60代前半・後半とも、処遇が変更された人は半数以下にとどまる。
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9. 給与・賞与が下がった人のうち、「自分の価値が低下したように感じた」では、「あてはまる」が60代前半では約半数、60代後半でも約4割。「会社員としてのキャリアが終わったように感じた」でも、同様の傾向があり、60代前半で4割超と最大割合を占め。60代後半で3割超。給与ダウンしていない人の数倍であり、給与ダウンの有無で自分の価値やキャリアの認識が大きく異なる。
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また、給与・賞与が下がった人のうち、 「仕事のモチベーションが下がった」では、60代前半が5割超、60代後半で4割超。「会社に対する忠誠心が下がった」では、60代前半が4割超、60代後半で3割超。前述の「自分の価値低下」「キャリアが終わった」と同じく、給与ダウンしていない人の数倍であり、給与ダウンの有無でモチベーションと忠誠心が大きく異なる。
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10. 給与ダウンの有無別に、現在の仕事に対する個別の満足度(17項目)と総合満足度の相関関係を見た。
60代前半・後半とも、「給与ダウンなし」の人は「働くことができていること」と総合満足度との相関が高いのに対し、「給与ダウンあり」の人は「やってみたかった仕事ができていること」「これまでのキャリアやスキルが活かせていること」と仕事内容と総合満足度との相関が高い。「給与ダウンあり」の人は金銭処遇以外に満足を見出している。
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<職場の期待と本人の役割認識>
11. 「自分の役割を重要だと感じている」人は、継続勤務者の60代前半では5割弱。転職者は60代前半・後半とも5割弱で、半数を下回る。パート・アルバイトでは、60代前半・後半とも、4割弱にとどまる。
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12. 専門性やスキルの有無によって、職場における自分の役割が重要だと感じるか否かに大きな差がある。一方で、専門性やスキルがあっても、自分の役割を重要だと感じる人は6割未満に留まる。
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13. 職場から期待されていると考えている役割として、「担当者としてのパフォーマンス発揮」「高い専門性発揮」を挙げる継続勤務者が多いが、5割前後にとどまる。「上司のサポート」「人脈の伝承」は4割未満であり、いずれの項目についても、職場から期待されているとの認識は低い。
転職者は「専門性発揮」の期待認識が継続勤務者より低い傾向にある。パート・アルバイトは全項目とも低め。
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本人が果たしたい役割も、職場から期待されていると考える役割と同じく、「担当者としてのパフォーマンス発揮」「高い専門性発揮」を挙げる継続勤務者が多いが、5割前後にとどまる。いずれの項目についても、役割認識は低い。
60代前半の転職者は、継続勤務者とほぼ同じ傾向。パート・アルバイトは全項目とも低め。
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■調査結果からの提言
60代が基幹戦力として機能しているかというと疑問が残る
正社員として20年以上勤務した60代は、企業に雇用義務がある65歳までの人だけでなく、60代後半の人も約9割が就業している。その大半は正社員や契約・嘱託社員としてフルタイムで勤務しており、60代前半の就業者の約5割、60代後半の5割以上が現在の仕事に満足している。60代の就業環境はそこそこ整っているように見える。
しかし、今回の調査では、企業側の視点として、60代が自社の中核業務を担う基幹戦力人材として機能しているかというと、疑問が残る結果になっている。
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役割認識の低さは企業側にも原因がある。位置づけの見直しと個々の役割の明確化を
第一に、役割認識が低い。「自分の役割が重要だ」と考える人は半数を下回る。「担当者としてのパフォーマンスの発揮」「高い専門性の発揮」が職場から期待されていると考える人の割合、また、自分が果たしたい役割だと考える人の割合も半数を下回る。数十年のキャリアを持つビジネスパーソンとして、役割認識に大きな問題があると言わざるを得ない。
一方で、人事評価の適用率が約6割、昇給・昇格、賞与査定の適用率が約5割、役職登用機会の適用率が2割強と、そもそも60代前半の継続勤務者を基幹戦力人材扱いしていない様子が見てとれる。従業員側に自覚を促す以前に、企業側が60代の位置づけを見直すこと、そして、個々人に対する期待役割を明確に定め、本人とすり合わせる枠組みが必要だ。
モチベーション低下リスクを回避するために役割に応じた個別の処遇見直しを
第二に、モチベーションが低い。給与ダウンで「モチベーションが下がった」が5割超、「自分の価値が低下したと感じた」「会社員としてのキャリアが終わった」「忠誠心が下がった」も4割超に及ぶ。給与ダウンしなかった人については、いずれの項目も2割未満である。雇用区分の切り替え時に給与ダウンを含む処遇の見直しを行うことは企業にとって一般的な施策であるが、年齢基準による一律の給与引き下げは、モチベーション面でのリスクが非常に大きい。安易に年齢基準へ逃げることなく、役割に応じて個別に是々非々の処遇見直しを行う必要がある。
若年層を含め、専門性を重視したキャリアデザインを
第三に、専門性が低い。「社外で通用する専門性やスキルがある」との回答は約6割に留まる。基幹戦力人材には相応の専門性やスキルが要求される。本人が転職するにしても専門性が武器になる。いわゆるリスキリングの重要性もさることながら、若年層からのキャリアデザインや人材育成を専門性重視の方向へ切り替える必要がある。
働く個人側の視点では、勤務日数や時間に着目した働き方の選択肢を
前述の通り、 60代前半の継続勤務者の95.7%、60代後半でも85.5%がフルタイム勤務である。
働く個人側の視点では、誰しも加齢に伴って時間の貴重性が増していく。役割や仕事内容、金銭処遇も重要な要素だが、同様に勤務日数や勤務時間が重要であることは想像に難くない。たとえば、「基幹戦力として週3日だけがっちりはたらく」など「よくはたらき、よく遊ぶ」スタイルは、ポスト団塊世代である60代の価値観にフィットするのではないだろうか。
●本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL: https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/60s-worker.html
●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
■調査概要
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■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。
■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について
パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。
人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。
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