【中古マンション】買取再販事業、新規参入に赤信号。現在の買取再販マンションの市場動向
中古マンション流通市場レポート 2023年9月号
新築住宅が高騰する中、まるで新築のように綺麗にリフォームされた状態で販売される買取再販物件の人気が高まっています。買取再販の仕組みは、不動産会社自らが売主から中古マンションを購入し、リフォーム・リノベーションや修繕を加えたうえで再販し、その差益を収益とするもの。国からの補助なども多いことから、新規参入を画策している不動産会社も少なくないのではないでしょうか?しかし、マンションリサーチの調査によれば、昨今の買取再販住宅市場には緩やかな需要減や販売価格の停滞が見られることがわかりました。今の時期の買取再販事業への新規参入は赤信号だといえるでしょう。
【要約】 |
コロナ禍を経て、社会情勢や経済状況は一変しました。2022年4月の日経平均株価は26,000〜27,000円ほどで推移していましたが、今や3万円台を突破し、32,000〜34,000円で推移しています。今年の5月には新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、インバウンドも戻り、9月に発表された基準地価ではコロナ禍からの回復が顕著に見られました。
それに伴い、資材や人件費の高騰、働き方改革や高齢化による人手不足も進んでいることに鑑みれば、在庫数が増加し、販売価格が高止まりしている買取再販市場への参入は赤信号だといえるでしょう。中古マンション価格も高騰していることから、仕入れとともにリフォームや販売に強みが無い限り、買取再販業への新規参入は賢明とはいえない状況です。
※本レポート詳細は以下動画でも解説しております。
https://www.youtube.com/watch?v=Xc9IMlbuVAM
【目次】 |
1|積みあがる在庫
2|減少し続ける在庫回転率
3|買取再販物件の販売価格は高止まり
4|まとめ
-
1|積みあがる在庫
マンションリサーチ調べ
【注意】 ・買取再販マンションの在庫数:灰色塗つぶし・右目盛り ・その他の中古マンションの在庫数:オレンジの棒線・左目盛り ・比較をわかりやすくするため、グラフサイズを同サイズに修正 |
上記グラフは、東京都23区の買取再販マンションとその他の中古マンションの在庫数の推移を表したものです。いずれもコロナ禍における1度目の緊急事態宣言が明けた2020年6月頃から徐々に在庫が減り始め、2020年末〜2021年を起点に在庫数が増加に転じていることがわかります。
一方、現在の在庫数に目を向けると、買取再販マンションはコロナ前と比較して著しく増えているのに対し、その他の中古マンションは在庫数が上昇傾向にあるものの、コロナ禍前には届きません。
コロナ禍前2019年12月の在庫数を「1」とした場合の「在庫数が減った2021年4月」「直近2023年8月」の数値は次のとおりです。
2019年12月 |
2021年4月 |
2023年8月 |
|
再販マンション |
1(2,326戸) |
0.87(2,017戸) |
1.34(3,109戸) |
その他の中古マンション |
1(9,917戸) |
0.65(6,406戸) |
0.84(8,366戸) |
コロナ禍で買取再販マンションの需要は高まったものの、その他の中古マンションのほうが一貫して在庫数は少なく、現時点においてはその差は歴然です。
-
2|減少し続ける在庫回転率
マンションリサーチ調べ
【用語の解説】 在庫回転率:その時の「売り手」の数からみて「買い手」がどのくらい多いかを示す指標。この数値が高ければ高い程、需要が高い。 |
コロナ禍前〜2021年は、買取再販マンションもその他の中古マンションも15~20%前後の在庫回転率(売れやすさ)で推移していました。
いずれも2021年始頃を起点に回転率が上がり、25〜30%前後で推移するようになりましたが、この頃から買取再販マンションと中古マンションに差が見られるようになっています。その差分は、5%程度。ここ2年ほどは、買取再販マンションのほうが回転率は悪化しているようです。
その他の中古マンションも回転率は低下しているためコロナ禍前の水準に戻りつつありますが、買取再販マンションについてはコロナ禍前を下回る月も目立ちます。
-
3|買取再販物件の販売価格は高止まり
マンションリサーチ調べ
再販マンションの価格は、コロナ禍前と比べて高騰しています。コロナ禍前は坪200万円~250万円ほどでしたが、直近の2023年8月の坪単価は約332万円です。しかし、現在の水準は2022年4月とほぼ同じ。つまり、1年以上、高止まりの状態が続いているのです。
昨今では、買取再販マンションだけでなく、中古マンション全体の価格が新築価格に引っ張られるように高騰しています。買取再販は、中古マンションを仕入れ、リフォームして再販する事業です。コロナ禍前と比べると確かに価格は大幅に上がっていますが、その分、仕入れ値も上がり、円安や人材不足から工事費も上がっているため、利益率を考えれば望ましい状況とはいえないでしょう。
-
4|まとめ
在庫が増えているというは、需要に対して供給が過剰であることを示唆しています。実際に在庫回転率は低下傾向にあり、売りづらくなっているということは数字で明確に示されています。
コロナ禍を経て、社会情勢や経済状況は一変しました。2022年4月の日経平均株価は26,000〜27,000円ほどで推移していましたが、今や3万円台を突破し、32,000〜34,000円で推移しています。今年の5月には新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、インバウンドも戻り、9月に発表された基準地価ではコロナ禍からの回復が顕著に見られました。
それに伴い、資材や人件費の高騰、働き方改革や高齢化による人手不足も進んでいることに鑑みれば、在庫数が増加し、販売価格が高止まりしている買取再販市場への参入は赤信号だといえるでしょう。中古マンション価格も高騰していることから、仕入れとともにリフォームや販売に強みが無い限り、買取再販業への新規参入は賢明とはいえない状況です。
※本レポート詳細は以下動画でも解説しております。
https://www.youtube.com/watch?v=Xc9IMlbuVAM
【マンションリサーチ株式会社その他サービスURL】
■不動産売却一括査定サービス『マンションナビ』
https://t23m-navi.jp/
■不動産データクラウド
https://fudosan-data.jp/
■ロボ査定
https://robosatei.jp/
■分譲マンションデータ販売
https://fudosan-data.jp/product/re-data/
■マンション購入サービス『MATSUDAKE』
https://matsudake.me/lp_company/
【不動産市場解説動画チャンネル】
https://www.youtube.com/@mansionresearch/videos
【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「2億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
会社名 : マンションリサーチ株式会社
所在地 : 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円
Web : https://mansionresearch.co.jp/
筆者プロフィール
福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
FUKUSHIMA RESEARCH INSTITUTE
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像