2024年紅麹事件「プベルル酸が原因」という行政発表、その根拠は最初から存在しなかった
―― 厚生労働省・国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)・大阪市の開示決定が示す説明の崩壊 ――
株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町、代表取締役・薬剤師 森雅昭)は、2024年に発生したいわゆる「紅麹関連製品事案」について、厚生労働省・国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)・大阪市の3機関に対して行った一連の情報公開請求の結果を、このたび総括する。その結果、当該事案において行政が「紅麹にプベルル酸が含まれており、それが健康被害の原因である可能性が高い」と説明する際の根拠となる行政文書は、3機関のいずれからも「不存在」と回答され、確認できないことが判明した。
■ 2024年当時の行政発表
2024年3月29日、厚生労働省は小林製薬からの報告を受け、紅麹関連製品の健康被害について「未知の成分」が青カビ由来の「プベルル酸」である可能性が高いと発表した。同年9月18日には、厚生労働省・NIHSが共同で、紅麹原料及び製品からプベルル酸を検出・同定したとする分析結果を公表し、これが腎障害を引き起こすことをラットの投与試験で確認したとする資料を公開した。
以降、「プベルル酸」は本事案における原因物質として、行政・報道の双方で確定した事実であるかのように扱われてきた。
■ 開示請求で判明した事実
当社が令和7年から令和8年にかけて行った情報公開請求に対し、厚生労働省・NIHS・大阪市はそれぞれ次のとおり回答した。
・厚生労働省(開第1175号/厚生労働省発健生0919第2号、令和7年9月19日決定):「プベルル酸の同定に用いた分析データの原本」「2024年3月28日までに『プベルル酸を同定済み』と判断した根拠文書」「プベルル酸と同定した際に、異性体との比較検討を行ったかどうかに関する記録」について、「事務処理上作成又は取得した事実はなく、実際に保有していない」として不開示
・厚生労働省(開第691号の2/厚生労働省発健生0805第2号、令和7年8月5日決定):「プベルル酸に関して厚生労働省が毒性を検討・評価した資料、参考文献、行政的分類」について、同じく「作成又は取得した事実はなく、実際に保有していない」として不開示
・NIHS(衛研発第0306002号、令和8年3月6日決定):NIHSにおける該当文書への関与状況、作成・検討・助言・照会等の実態が分かる一切の行政文書について、「作成・取得をしておらず不存在」
・NIHS(衛研発第0926001号、令和7年9月26日決定):制度設計・行政判断の意思決定に関する文書、及び2024年9月18日前後に開催されたプベルル酸関連会議に関する文書について、いずれも「不存在」
・大阪市(大大保第8202号、令和8年7月22日決定):貴市保有文書として開示された5点のうち4点は小林製薬提出資料であり、大阪市自身が独自に紅麹からプベルル酸を検出・同定した文書は開示決定書上確認できなかった
・大阪市(大大保第8220号、令和8年7月24日決定):令和6年3月27日前後に小林製薬から提出された「プベルル酸」関連資料について、大阪市と厚生労働省との間で協議・連絡・確認及び情報共有が行われた事実はなく、当該公文書はそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないと回答
すなわち、厚生労働省・NIHS・大阪市の3機関いずれについても、「紅麹にプベルル酸が含まれている」と確定的に同定した根拠(分析データの原本、異性体比較検討記録、同定済みと判断した根拠文書、意思決定過程の記録)を、各機関自身がいずれも保有していないと回答した。
ここで区別すべきは、「行政発表」と「行政文書」は別物であるという点である。2024年に厚生労働省・大阪市が「プベルル酸が原因である」と発表した事実そのものは存在する。しかし、その発表の裏付けとなるはずの行政文書は、情報公開請求によって開示されなかった。発表という行為があったことと、その発表を根拠づける文書が確認できることとは、別の問題である。
■ 明らかになったこと・明らかになっていないこと
今回の開示決定によって明らかになったのは、「行政が2024年に公表した『プベルル酸が原因』という説明について、それを裏付ける行政文書上の根拠が確認できない」という事実である。これは、紅麹に実際にプベルル酸が含まれていなかったこと、あるいは健康被害と無関係であったことを意味するものではない。当社が指摘するのは、あくまで行政による説明・処分(回収命令、企業名公表等)の根拠が、行政文書上検証できないという点である。
なお、NIHSが作成した令和6年度報告書には、紅麹原料・製品に係る検体について、標準品との質量分析(UHPLC/HRMS)上のピーク一致を「予備検討」として確認したとする記載がある。しかし、この予備的な確認をもって「同定済み」と判断した経緯・根拠文書は、前記のとおり「不存在」と回答されている。
■ 当社の見解
紅麹関連製品事案は、小林製薬一社の問題にとどまらず、機能性表示食品制度全体、および紅麹を扱う業界全体の信頼に関わる重大な事案として扱われてきた。しかし、その根幹をなす「プベルル酸が原因物質である」という説明を裏付ける行政文書が確認できないという事実は、本事案における行政の対応の正当性そのものに関わる重要な論点である。
当社が問題としているのは、プベルル酸の有無そのものではない。行政が企業名公表や回収命令等の重大な行政判断を行うにあたり、その判断を裏付ける行政文書が、情報公開請求によって確認できなかったという点である。
当社は、紅麹を用いた食品を製造する事業者として、本事案の全容が科学的根拠に基づいて明らかにされることを強く求めるものである。
■ 会社概要
会社名:株式会社薫製倶楽部
代表者:代表取締役 森 雅昭(薬剤師)
所在地:〒701-0303 岡山県都窪郡早島町前潟611-1
事業内容:薫製食品の製造・販売(倉敷ソーセージ 他)
TEL:086-483-0602 E-mail:sales@kunsei.co.jp
https://kunsei.com/archives/category/benikoji
以上

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