経済的貧困・時間貧困・社会的孤立が浮き彫りに ―あしなが奨学生保護者の最新調査結果を発表
あしなが高校奨学金の採用状況も公表 採用率上昇も4割に奨学金届けられず
一般財団法人あしなが育英会(本部:東京都千代田区、会長:玉井義臣)は2025年3月26日(水)に会本部で記者発表をおこない、保護者生活実態アンケート調査の結果を公表しました。
この調査は2024年10月に、高校奨学生の保護者3536人を対象に実施したもので、2334人からの回答を得ました(回答率66.0%)。

調査結果から、あしなが育英会の高校奨学生の保護者(以下、保護者)が直面する「経済的貧困」、「時間貧困」、「社会的孤立」の3つの問題が浮き彫りになりました。また、「経済的貧困」が、「時間貧困」や「社会的孤立」という2つの問題の根幹となっていることも明らかになりました。
経済的貧困
調査対象となった高校奨学生家庭の平均可処分所得(*1) は187.8万円で、全世帯平均405.8万円(*2) の半分以下(46.3%)でした。また、全母子世帯平均251.4万円(*2)と比べても、63.6万円低い結果となりました。
*1 年収から社会保険料と税金を差し引いた自由に使えるお金。遺族年金や児童扶養手当なども含まれる
*2 『2023年 国民生活基礎調査』厚生労働省(2023年)

時間貧困
奨学生の保護者は仕事や家事に費やす時間が長く、自由時間や睡眠時間が短いことが分かりました。回答者全体の約82%が40代・50代であったことから、この年代の母親に焦点を絞り、仕事や家事などの「拘束行動時間」を同年代女性の全国平均(*3) と比較したところ、3時間以上も長いという結果が出ています。
*3 『2020年 国民生活時間調査』NHK放送文化研究所(2021年)
社会的孤立
「生活上の問題について相談できる相手がいない」と回答した遺児世帯の保護者は20.5%にのぼり、全国平均(*4) の8.7%を大きく上回りました。経済的貧困により仕事や家事などの「拘束行動時間」が長くなった保護者は、「時間貧困」にも直面し、「時間貧困」によって「社会的孤立」を深めていくという状況に陥っていました。「社会的孤立」の根幹にも、経済的貧困があることが示唆されました。
*4『人々のつながりに関する基礎調査』内閣府(2023年)
「子どもの貧困」の最大の理由は、「保護者が貧困状態」であり、日本の子どもの貧困対策は、保護者の就労や生活の安定といった家庭全体の課題には十分に対応できているとは言い難いです。
今回の調査で明らかにされた保護者の抱える問題によって、子どもたちの将来が閉ざされることのないよう、これからも本会は必要な支援を講じていきます。
詳細な調査結果は、調査レポートをご覧ください。またアンケートの自由記述欄の抜粋も、あわせてお読みください。
高校奨学生採用率は上昇も、さらなるご支援が必要です
記者発表では、高校奨学金(月額3万円給付)の採用状況についても発表しました。
高校奨学金が全額給付となった2023年度以降は奨学金希望者数に奨学資金が追いつかず、採用率が5割未満となっています。特に2024年度は申請者が過去最多の3487人にのぼり、1949人に奨学金を届けることができませんでした。
ありがたいことに、その後、報道等で状況を知った多くの方が温かいご支援を寄せてくださり、2025年度の採用枠は、500人分増やすことができました。
それでも奨学金を届けることができていない子どもは依然として多くいます。2025年度の予約採用(2025年4月高校入学予定者が対象)では、申請者の4割にあたる688人を採用することができませんでした。
一人でも多くの子どもに奨学金を届けることができるよう、4月に実施する「あしなが学生募金」などを通して、支援の必要性を訴えてまいります。温かいご支援とご協力をよろしくお願いします。

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