コザ高等学校と株式会社Libry、学習データを活用した観点別評価によって生徒の主体的な学びを促進できることを実証〜約85%の生徒が主体性の評価に対して納得感を示した〜
【取り組みの内容と運用方法】
■調査の対象者と期間
調査対象:コザ高等学校の1〜3年生(226名)
対象科目:生物
調査対象期間:2023年4月〜2024年3月
■観点別評価の評価方法
コザ高等学校では、生物の観点別学習状況の評価(観点別評価)において、評価の3観点のうち、「知識・技能」と「主体的に学習に取り組む態度」の2観点について、リブリーの学習履歴データを活用しています。
主体的に学習に取り組む態度については、国立教育政策研究所の『学習評価の在り方ハンドブック』(※1)に基づき、評価の2軸となる一方の「粘り強い取り組みを行おうとする側面」を、問題を演習した量、問題を演習した時間で、もう一方の「自らの学習を調整しようとする側面」を、取り組んだ問題の最終的な正答率、間違えた問題を解き直した回数、1問あたりの平均演習回数でそれぞれ捉え、あらかじめ設定した評価規準をもとに数値化して、最終的な評価を決定しました。
■ 主体的な学びの促進を意識した運用方法
生徒に対しては、評価規準を年度初めに明示した上で、定期的にフィードバックや個人面談などを行いました。2023年度の2学期以降は、月に1回、生徒が自身の学習進度や取り組み状況がわかる詳細なデータを確認できる機会を設け、暫定的な評価をリアルタイムで把握できるようにしました。こうしたサポートを行うことによって、生徒が自身の現状や課題を認識し、何をすべきかを考え、主体的に学習に取り組むよう促しました。
【取り組みの成果】
■ 多くの生徒が学習評価に対して納得し、評価方法を意識した主体的な学習が促進された
調査対象者に対するアンケートにおいて、「今の評価の計算方法は、あなたの主体的に学ぶ態度を適切に表現できていると思いますか?」という質問に対する5段階評価で、57.1%が「とてもそう思う」、28.3%が「そう思う」と、合わせて85.4%が肯定的に回答。8割以上の生徒が、学習データを活用した主体的に学習に取り組む態度の評価が適切だと感じていることがわかりました。
また、「評価方法を意識して学習に取り組みましたか?」という質問に対して、56.6%が「とてもそう思う」、22.6%が「そう思う」と、合わせて79.2%が肯定的に回答。約8割の生徒が、評価方法を意識して主体的に学習に取り組んでいたと捉えることができます。
■ 生徒の評価に対する納得度や意識が一年間で著しく向上した
上記のアンケートは、2023年度の1学期末(2023年7月)と学年末(2024年3月)に、同じ質問項目を設けて実施しました。その2時点を比較したところ、継続的な定量評価や教員のサポートの工夫によって、生徒の学習評価に対する納得度や、学習に対する意欲が調査期間内で明確に高まったことがわかりました。
「今の評価の計算方法は、あなたの主体的に学ぶ態度を適切に表現できていると思いますか?」という質問に対して、「とてもそう思う」もしくは「そう思う」と肯定的な回答をした生徒の割合は、1学期末には63.5%だったところ、学年末には85.4%と上昇。そのうち、「とてもそう思う」と回答した生徒は、1学期末には28.9%でしたが、学期末には57.1%と大きく増加しました。
また、「評価方法を意識して学習に取り組みましたか?」という質問に対して、「とてもそう思う」もしくは「そう思う」と肯定的な回答をした生徒の割合は、1学期末に40.4%だったところ、学年末には79.2%と上昇。そのうち、「とてもそう思う」と回答した生徒は、1学期には19.3%でしたが、学期末には56.6%と飛躍的に増加しました。
【本取り組みに関する教員・生徒のコメントと今回の成果が得られた理由の考察】
■ 與那嶺創教諭(2023年度に本取り組みを主導。2024年度より沖縄県立具志川高等学校)のコメント
4月の授業オリエンテーションでの評価規準の説明に始まり、複数回にわたって「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法について生徒に説明しました。その際に主体的評価のグラフと該当クラスのプロット(*)を見せて、それぞれのプロットが評価点であることや、リブリーをどう使えば評価が上がるかを生徒自身に考えさせました。評価方法を認識させる取り組みを続けたことが、評価を意識し、満足している生徒を増加させたと考えられます。
学期ごとに主体性の評価が変化してくるので、その生徒の学習行動の変様を、学習ログから確認、想像することができます。授業前や授業終了後のちょっとした時間に、リブリーでの問題演習に取り組んでいる生徒が、1学期と比べて3学期にはかなり増えた印象です。教員からの呼びかけがなくてもクラス全体で自主的に学習に取り組む良い雰囲気を感じることができました。
■ 田港朝仁教諭(コザ高等学校)のコメント
評価に満足している生徒と、評価を意識する生徒が増えたのは、1、2学期の学期末にリブリーの取り組み状況をクラスで確認することによって、自分がやればやるだけ評価につながることを実感した生徒が徐々に増えていったからではないかと思います。実際に、学期途中に自分の成績(達成度)を聞きにくる生徒や、リブリー内の取り組み状況のグラフを気にしながら、学習のペース配分を考えている生徒も見られました。
評価の仕組み自体を理解するまでに時間を要するかもしれませんが、時間が経つにつれて取り組み状況を気にする生徒が増えたことによって、この評価システムが良い影響を与えていると実感しました。
■ 生徒のコメント(アンケートより抜粋)
(学習データを活用した学習評価の公正性について)
データは自分の頑張ったものが反映されてるから公正だと思います。成績の付け方を明確にすることで意欲も高まるのでいいと思います。
学習したことが成績に反映されるなら、テストで点を取れなくても挽回できるチャンスがあると思います。
(学習において意識したことについて)
テストやレポートだけを頑張るのではなく、リブリーなどの学習の積み重ねも意識して頑張りました。
間違ったところをそのままにしないで、何回も解き直しました。
これらの結果から、主体的に学習に取り組む態度を定量的に評価することの有効性が確認できました。
また、ヒアリング結果や調査期間内のスコアの変化から、「定量的な評価規準を採用すること」「評価方法やその評価方法に対する教員の想いを生徒に明確に伝えること」「評価規準を継続的に伝えること」「定期的に現在の評価の暫定値を生徒に示すこと」は、生徒の主体的に学習に取り組む態度の育成に有効であると推察されます。
【今後について】
2024年度以降も本取り組みを継続し、効果検証を実施します。
よりよい学習評価のあり方や、さらに効果的な手法を模索しながら、改善を図ります。
【学習データ活用セミナー開催のご案内】
Libryは、学習データの効果的な活用方法を紹介するオンラインセミナーを6月12日(水)に開催します。既にリブリーをご利用の先生に限らず、これから導入を検討している先生も歓迎します。Libryが新たに開発・リリースした「学習データレポート」機能の具体的な使用方法を説明するほか、本プレスリリースの取り組みを2023年度に主導した與那嶺創教諭をゲスト講師としてお招きして、教育現場の実態を踏まえた学習データの活用事例を紹介し、学習データを評価に活用することの効果や有用性について考えます。特に、観点別評価に不安や課題を感じていらっしゃる先生にぜひご参加いただきたい内容となっています。
●お申し込みフォームはこちら
https://share.hsforms.com/1s_H-muEwSQmz__SIrkXdzgnpg4n
【参考情報】
※1:国立教育政策研究所『学習評価の在り方ハンドブック 高等学校編』https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/gakushuhyouka_R010613-02.pdf
《補足資料》
【観点別評価の背景と現状】
■ 全国で多くの教員が観点別評価に対して課題を感じている
2018年3月に告示、2022年4月に全面実施された高等学校学習指導要領において、育成すべき資質・能力が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱で整理されました。これを踏まえ、指導と評価の一体化を図ることを目的として、学習評価についても「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点から生徒の学習状況を評価することが求められ、指導要録にも「観点別学習状況」を記入する欄が設けられています。
しかしながら、観点別学習状況の評価(観点別評価)、とりわけ「主体的に学習に取り組む態度」の評価については、全国の多くの教員が課題や不安を感じていることがさまざまな調査からわかっています。Libryがユーザー向けに実施したアンケートでも、回答した教員(135名)の7割以上が自信を持った学習評価が実施できていない様子。その中で、課題に感じている要素として37.1%が「評価の公平性」、24.2%が「評価手法の困難さ」を挙げています。また、評価方法を工夫して実施している教員でも「評価指標を得るために業務負担が大きくなってしまう」と感じる場合があるようです。
今回のコザ高等学校での実証結果は、観点別評価の実施にあたって学習データを活用することの有用性と、教育現場の課題解決の一助となりうる手法であることを示す成果だといえます。
【本件に関するお知らせ】
■ ICT活用セミナーのアーカイブ動画を公開中
2023年8月23日、Libry主催のオンラインセミナーにおいて、コザ高等学校の與那嶺創教諭が今回の取り組み内容に関して発表しました(沖縄県・興南高等学校の玉那覇允教諭と2名登壇)。
本セミナーのアーカイブ動画は、Libryの公式YouTubeチャンネルより閲覧できます。
下記URLからご覧ください。
●【教員向けICT活用セミナー】学習データを活用した観点別評価の価値と実施の手立て
https://youtu.be/SHKdF4DUfnY
■ 「学習データレポート」機能を新たにリリース
Libryでは、「学習データレポート」機能を2024年4月1日に提供開始しました。生徒の学習履歴に基づく多種多様なデータを可視化することで、生徒とのコミュニケーションや指導、評価の改善に役立ち、主体的に学習に取り組む態度を定量的に評価する手段としても大いに活用できます。
詳細は下記URLのプレスリリースをご確認ください。
●Libryから、日々の学習状況を可視化する「学習データレポート」機能が新登場
https://about.libry.jp/news/datareport20240415
【Libryについて】
リブリーは、中学生・高校生向けに特化したデジタル教科書・教材プラットフォームで、19社の出版社と提携して、全国約600の中学校・高等学校にサービスを提供しています。教科書や問題集をデジタル化し、個別最適化されたAIドリル機能で、生徒一人ひとりの学習状況や理解度に合わせたサポートを行います。また、指導者向けには宿題管理や学習履歴データに基づく指導・評価のための管理ツールを提供し、教育現場の業務負担を軽減します。
【コザ高等学校について】
1945年創立。校訓「自由・平和・叡智」と学校教育目標「公共と志を高くして夢を描き、その実現のため自ら意欲をもって学ぶ、『知・徳・体』の調和のとれた人間育成」を学校教育の礎として、多様な取り組みを通して生徒の主体性や協調性、創造性等を育んでいます。生徒の「学習意欲」の向上と「真の文武両道」の具現化を図り、生徒同士が切磋琢磨できる学習環境を提供しており、卒業生、在校生が多分野で活躍しています。
ホームページ:http://www.koza-h.open.ed.jp/zennichi/index.html
■株式会社Libry
所在地:東京都港区芝浦3-3-6 東工大田町CIC409
代表者:後藤 匠
コーポレートサイト:https://about.libry.jp/
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