「離職の変化と退職代行に関する定量調査」を発表 退職代行、離職者の5.1%(20人に1人)が利用 一般的イメージとは異なり、退職代行利用者は“協調性”が高く、責任感が強い特徴も

離職者不満は「長時間労働」から「成果圧力」へ——働き方改革後の新たな離職構造

株式会社パーソル総合研究所

株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩田 亮)は、「離職の変化と退職代行に関する定量調査」の結果を発表いたします。

本調査では、正社員離職者のうち退職代行を利用した人は5.1%(約20人に1人)、若年層や在籍1年未満での利用が多いことが明らかになりました。利用者は一般的に考えられている無責任なイメージとは異なり「チームワーク重視」の志向が強い傾向がある一方で職場では孤立しており、上司への不満は約7割、上司からのハラスメント経験は約4割に達しています。

また、離職者の不満は従来の「労働時間が長い」「サービス残業が多い」といった負荷から、近年は上司による成長支援の低下や成果圧力の高まりへと変化している傾向も確認されました。

本調査は、近年の就業者の離職行動の変化や退職代行利用の実態とその要因を明らかにすることで、リテンション・マネジメント(離職を防ぎ、定着を促す人事戦略)に資する知見を提供することを目的に実施しました。

<主なトピックス> ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください

【退職代行の実態と利用者の意識】

1. 離職者のうち、退職代行を利用した人は5.1%(約20人に1人):正社員離職者のうち退職代行を利用した人は5.1%(約20人に1人)。利用者の約半数は20〜30代の若年層で、前職の在籍期間が「1年未満」の割合は約4割と、早期離職が目立つ。

2. 上司への不満7割、ハラスメント経験4割——関係悪化が退職代行利用の背景に:退職代行利用者の前職への不満で最も多いのは「直属上司との関係」(約7割)。また、「直属上司からのハラスメントを受けた」と回答した人も約4割に上る。職場における人間関係の悪化やハラスメントが、退職代行利用の大きな要因となっている。

3. 退職代行利用者は一般離職者より“協調性”が高く、責任感が高い特徴も:退職代行利用者は、一般離職者に比べチームワーク志向が強い傾向が見られ、前職に対して「申し訳なさ」を感じていたり、自分を「裏切りもの」だと感じている人も多く、通俗的に語られる“身勝手さ”とは異なる特徴が確認された。

4. 協調的だが孤立する現実——相談相手がいない人が多数:退職代行利用者は、協調的に働きたいという理想を持ちながら、実際の職場では孤立し、相談できる相手がいないというギャップが見られた。一般離職者・就業継続者に比べ孤立度が高く、職場や家庭、友人などに「相談できる相手がいない」傾向が見られる。また、離職していない正規雇用者全体でも、61.4%が「職場で相談できる人がいない」と回答している。

5. 退職代行利用後のトラブルは「金銭トラブル」が最多——一方で「トラブルなし」も5割:退職代行利用後に生じたトラブルでは、「金銭トラブル」が最も多く報告された。一方で「トラブルはなかった」と回答した人も約5割に上る。

【離職行動と就業意識の変化】

6. 離職者の不満は「長時間労働」から「成果圧力」へ——働き方改革後の新たな離職構造:離職者の不満は、「成果が重すぎる」「評価に納得できない」といった成果圧力に関する項目が上昇。

7. 若年層の“成長離れ”が離職リスクを高める——上司支援低下と連動した変化も:コロナ禍以前の2019年データと比較して、若年層を中心に「仕事を通じて成長したい」「成果で評価されたい」という意識が減少。一方で、上司による育成支援行動(責任ある役割付与や十分なフォロー)も減少傾向。

<主なトピックス(詳細)>

【退職代行の実態と利用者の意識】

1. 離職者のうち、退職代行を利用した人は5.1%(約20人に1人):離職者のうち「退職代行」利用者は5.1%、離職者全体の約20人に1人が利用している。利用した退職代行サービスの運営主体では、民間企業が約4割と最大割合を占めるが、労働組合も約3割となっている。

退職代行利用者は一般離職者よりも年齢層が若く、20~30代で約5割となっている。退職代行利用者の前職在籍期間は、「1年未満」が約4割で、一般離職者の約2倍となっている。

2. 上司への不満7割、ハラスメント経験4割——関係悪化が退職代行利用の背景に:退職代行利用者と一般離職者の不満を比較すると、前職への不満で最もギャップが大きいのは「直属上司との関係」である。また、「直属上司からのハラスメントを受けた」と回答した人も約4割に上る。職場における人間関係の悪化やハラスメントが、退職代行利用の大きな要因となっている。

3. 退職代行利用者は一般離職者より“協調性”が高く、責任感が高い特徴も: 退職代行利用者は一般離職者と比べて、「周りの人たちと密に力を合わせて働きたい」志向が強い。

また、退職代行利用者は一般離職者よりも前職の関係者に対して「申し訳なさ」を感じており、自分を「裏切りもの」であるとも感じている。一般に指摘されがちな「身勝手さ」や「無責任さ」は、退職代行利用者の特質としては全くあてはまらない。

4. 協調的だが孤立する現実——相談相手がいない人が多数:退職代行利用者は、協調的に働きたいという理想を持ちながら、実際の職場では孤立し、相談できる相手がいないというギャップが見られた。退職代行利用者、一般離職者、就業継続者の孤独を比較すると、退職代行利用者が最も孤立しており、孤独を感じている。退職代行利用者に相談相手を聞くと「直属の上司」が多く、「自部門の同僚」や「家族・親類」「友人」に相談相手がいない点が特徴。

社内の相談ネットワークと離職・満足度:離職していない正規雇用者全体でも、61.4%が自分のキャリアなどについて「職場で相談できる人がいない」と回答した。相談ネットワークの宛先が多い人ほど、離職意向は下がり、上司満足度/会社満足度とも大きく上昇する。

5. 退職代行利用後のトラブルは「金銭トラブル」が最多——一方で「トラブルなし」も5割:退職代行利用後に生じたトラブルは、「なかった」が約5割と最も多いが、トラブルの中では勤務先との金銭トラブルが最も多かった。

【離職行動と就業意識の変化】

6. 離職者の不満は「長時間労働」から「成果圧力」へ——働き方改革後の新たな離職構造:離職者の不満は、6年前と比べ「求められる成果が重すぎる」「受けている評価に納得できない」といった成果圧力に関する項目が上昇。一方で、「サービス残業が多い」「育成・教育の体制が十分でない」「労働時間が長い」は大きく減少した。   

※2019年の数値は、パーソル総合研究所・中原淳「転職行動に関する意識・実態調査」(n=6,000、2019年実施)の性年代を合わせて比較しています。

離職者と就業継続者のGAPから、「離職につながりやすい不満」を順位比較した。2025年は 「上司の指示や考えに納得できない」「求められる成果が重すぎる」「受けている評価に納得できない」が上昇した。一方で「サービス残業が多い」「労働時間が長い」が下降。

なお、離職者の残業時間はこの6年間で大幅に短くなり、特に月40時間以上の残業者は半減。サービス残業(手当なしの残業)も減少傾向が見られる。

7. 若年層の“成長離れ”が離職リスクを高める——上司支援低下と連動した変化も:別調査「働く10,000人の就業・成長定点調査2025」では、コロナ禍以前の2019年比で、仕事を通じた成長を重要だと思わない者が増加。特に20-30代で成長の重要性が減少した。また、管理職意向も減少。

「仕事の成果で評価してほしい」という志向性も減少した。特に20代・30代が大きく減少。これは他の志向性の変化と比べても最大の変化である。

上司の育成支援行動の減少:上司マネジメントがどう変化したかを分析した。「責任のある役割を任せてもらっている」「十分なフォローがある」「スキルや能力が身につくような仕事を任されている」といった、部下の成長重視度とプラスの関連があるマネジメント行動が減少している。

<調査結果からの提言>

コロナ禍を経て、働く人の「辞め方」の様相が大きく変化している。かつて主要な離職要因であった「長時間労働」や「低賃金」といった不満は、働き方改革や賃上げの進展により相対的に低下した。だがその一方で、若手の成長意欲は弱まり、組織から求められる成果に対して圧力を感じやすくなったことが、新たな離職リスクとして顕在化している。

現場のマネジャーも多忙やハラスメントへの恐れからか、部下への成長支援や権限移譲といった本来求められる育成支援を十分に行えなくなってきている。結果として、組織が求める成果に、若年層がついていけなくなっている状況だ。

一方、近年広がった退職代行利用の要因を分析すると、上司のハラスメントの問題以前に、職場の人間関係全体が希薄化し、上司一人に職場のコミュニケーションが依存している問題が示唆された

こうした中で企業に求められるのは、従業員は「網の目の中で育てる」という視点だ。それは、❶縮小している上司の育成支援を復活させることに加え、❷上司だけでなく、職場の対人ネットワークの中で育成支援を拡充させることである。短視眼化しがちな現場マネジメントを「成長」志向へ転換すると同時に、「上司任せ」ではなく、相談と教育を支援する人的ネットワークの輪を構築することである。人の網の目を細かくし、その中で挑戦できる環境こそが、これからの従業員の定着と成長を同時に実現できるだろう。

<退職代行普及からの示唆>

① 退職代行利用の普及という現象は、通俗的な若者論やハラスメントなどの要因に安易に単純化するべきではない。

② 背景には、職場の人間関係の希薄化による上司へのコミュニケーションの集中と従業員の志向性とのギャップがある。

③ 同様の状況はいずれの組織にも起こり得るものであり、以下のような対人ネットワーク施策が考え得る。

●本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。

●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。

 URL:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/resignation/ 

●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

■調査概要

■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について

パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。

■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。

人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。

はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。

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会社概要

株式会社パーソル総合研究所

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業種
情報通信
本社所在地
東京都江東区豊洲三丁目2番20号 豊洲フロント7階
電話番号
-
代表者名
岩田 亮
上場
未上場
資本金
1億円
設立
1989年09月