【HR総研】「社内コミュニケーション」に関する調査レポートを公開
~課題の関係性は「部門間」が1位、「イノベーション創出」のカギは?~
社内コミュニケーションの手段の一つとして、オンラインツールにも慣れたものの、対面よりコミュニケーションの難しさを感じるとともに、社内コミュニケーションの活性化がどれだけ組織改革や企業としての生産性向上に繋がっているのか分かりづらい、などといった課題を持っている企業も少なくないのではないでしょうか。
本レポートでは、社内コミュニケーションの実態を明らかにし、コミュニケーション活性化のために効果がある施策について、フリーコメントも含め結果をご報告いたします。
【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】「社内コミュニケーション」に関するアンケート2024
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2024年2月2~9日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・ご担当者様
有効回答:285件
【調査結果サマリー】
●社内コミュニケーションに課題がない企業ほど、従業員エンゲージメントが顕著に高い
●社内コミュニケーションに課題がある関係間は、今年も「部門間」が1位
●社内コミュニケーション不全の原因に「管理職のコミュニケーション力不足」が最多
●中堅・中小企業では「対面コミュニケーション」が主流
●社内コミュニケーションの課題の有無で、取り組み期間の差が顕著
●社内コミュニケーションが活性化している企業は3割、実施している施策は?
●「社内の情報共有」が向上している企業が4割、「イノベーション創出」のカギは?
●社内コミュニケーションが「活性化/悪化している理由」
<<<調査データより一部抜粋してご紹介いたします>>>
▼社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になると思うか
社内コミュニケーションに課題がない企業ほど、従業員エンゲージメントが顕著
まず、自社において「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になると思うか」について確認してみたところ、53%が「大いにそう思う」として圧倒的に多く、次いで「ややそう思う」が33%で、これらを合計した「そう思う」とする割合は86%となり、9割近くの企業において「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と捉えていることがわかる。
▼企業規模別 自社の社内コミュニケーションに関する課題の認識
自社の社内コミュニケーションに関する課題について、どのように認識しているかを確認してみる。企業規模別にみると、「大いにあると思う」と「ややあると思う」を合計した「課題がある」(以下同じ)の割合は、従業員数1,001名以上の大企業では70%、301~1,000名の中堅企業では67%、300名以下の中小企業では60%で、いずれの企業規模でも6割以上が自社に課題があると認識している。また、企業規模が大きいほど、「課題がある」と認識する割合がやや高い傾向にある。一方、「あまりないと思う」と「全くないと思う」を合計した「課題がない」(以下同じ)の割合は、企業規模に関わらず1割程度にとどまり、自社の社内コミュニケーションに課題がないと認識する企業は、非常に少ないことがうかがえる。
▼社内コミュニケーション課題の有無別 従業員エンゲージメントの状態
社内コミュニケーションの課題感別に従業員エンゲージメントの状態を見ると、社内コミュニケーションに「課題がない」企業群では従業員エンゲージメントが「非常に高い」(9%)と「やや高い」(41%)を合計した「高い」の割合が50%と半数に上る。同様に、社内コミュニケーションの課題感が「どちらとも言えない」企業群では32%、「課題感がある」企業群では22%と2割にとどまり、逆に「非常に低い」と「やや低い」を合計した「低い」の割合が36%と、「高い」を大きく上回っている。社内コミュニケーションに課題感がない企業ほど従業員エンゲージメントが顕著に高い傾向が見られている。
▼自社における社内コミュニケーション不全の原因
社内コミュニケーション不全の原因に「管理職のコミュニケーション力不足」が最多
業務に支障をきたす社内コミュニケーション不全の原因については、すべての企業規模で「管理職のコミュニケーション力」が最多で、大企業から順に41%、43%、41%といずれも4割以上に上っている。大企業では、次いで「対面コミュニケーションの減少」が35%、「社員のコミュニケーション力」が32%などとなっている。中堅・中小企業では、次いで「社員のコミュニケーション力」(36%、38%)、「組織風土・社風」(31%、34%)などとなっている。
いずれの企業規模でも、管理職と一般社員それぞれのコミュニケーション力不足により円滑な意思疎通に支障をきたしているとともに、特に大企業においては、コロナ禍以降で業務のオンライン化が進んだことで、これまでは対面での会話で感じ取れた心の機微をオンラインでは表現しづらくなっている。また、会話の頻度自体が減少するなどにより、コミュニケーションに求められる能力も少なからず変化してきている部分もあるだろう。
▼一年前からの社内コミュニケーションの変化
社内コミュニケーションが活性化している企業は3割、実施している施策は?
自社における社内コミュニケーション状況について、一年前からの変化を確認してみる。
「変化なし」が圧倒的に多く58%と6割近くで、次いで「やや活性化している」が30%となっている。「活性化している」(「非常に活性化している」と「やや活性化している」の合計、以下同じ)の割合は32%と3割で、一方、「悪化している」(「やや悪化している」と「非常に悪化している」の合計、以下同じ)は10%と1割にとどまっている。「変化なし」が多数派ではあるものの、活性化と悪化の割合を比較すると「活性化している」企業の方が多い傾向となっている。
▼企業規模別 社内コミュニケーション活性化のために実施している取組み
企業規模別に社内コミュニケーション活性化のために実施している取組みの内容を確認すると、いずれの企業規模でも最も多いのは「1on1(個人面談)」で、大企業から順に65%、46%、39%となっている。大企業では、次いで「従業員アンケート」が61%、「社内公募制度・社内FA制度」が39%などとなっており、社員個人の主体性を引き出すコミュニケーションの仕組み化に取り組んでいることがうかがえる。一方、中堅企業では「社内報」が44%、「従業員アンケート」が41%と続いており、社員の意見を収集するとともに会社からも社内に関する情報共有を積極的に行っている企業が多い傾向となっている。中小企業では「1on1(個人面談)」以外には3割以上の取組みはなく、「管理職対象のコミュニケーション研修」が25%、「従業員アンケート」が21%など2割程度にとどまっている。
▼社内コミュニケーション活性状況別 社内コミュニケーション活性化のために実施している取組み
「一年前からの社内コミュニケーションの変化」で示した社内コミュニケーション活性状況別に見てみると、「活性化している」企業群では「1on1(個人面談)」が最多で63%と6割以上に上り、「変化なし」や「悪化している」企業群と20ポイント以上の顕著な差異が見られる。また、「従業員アンケート」(48%)や「メンター制度」(33%)、「社内公募制度・社内FA制度」(29%)も、「変化なし」や「悪化している」企業群と比較的顕著な差異がある(図表6-3)。個人の価値観が多様化する現代社会においては、社員個人の意見や主体性を尊重するコミュニケーションを取り、心理的安全性も高めながら社内コミュニケーションの活性化を目指すことが、望ましい形となっているようだ。
▼社内コミュニケーションが「活性化している理由」※一部抜粋
・ハイブリッドワークが定着している(1,001名以上・サービス)
・1on1の取り組み(1,001名以上・メーカー)
・コロナが明けて飲食が解放された(1,001名以上・サービス)
・社内で行っていた感染症対策が緩和され、物理的にも心理的にも壁が薄くなった。イベントも行われるようになった(1,001名以上・メーカー)
・部門をまたぐ施策へ参加する人が少しずつ増えてきていること、事業所や部門をまたぐ異動が少し増え新しい考えが共有されてきたこと(1,001名以上・メーカー)
・コロナが収束し、対面で対話する機会が増えたこと(1,001名以上・サービス)
・社内交流を目的とした取り組みやイベントが複数行われて、ある程度の参加者がいるから(ただし全体に行き届いていなかったり、拠点が限られたりはしている)(301~1,000名・メーカー)
・コロナが落ち着き、これまで中止していた社内イベント等を再開できているため(301~1,000名・商社・流通)
・当事者意識の醸成(301~1,000名・マスコミ・コンサル)
・現業トップの世代交代(300名以下・メーカー)
・中途入社比率がここ3年で高まり、自然と中途の若手社員の間でコミュニティが形成され、ベテランたちもそれに同調するものが少し表れてきた(300名以下・メーカー)
・同好会制度により業務外コミュニケーションの支援を強化したこと、一部マネージャーがコミュニケーション課題に対し具体的なアクションを起こし、それが成果につながり始めていること(300名以下・サービス)
▼社内コミュニケーションが「悪化している理由」※一部抜粋
・対面での交流が減ったから(1,001名以上・メーカー)
・労働時間管理強化で隙間時間がなく気分転換の会話や交流ができない。また、「業務過多、労働力不足」で心に余裕のない人が増加(1,001名以上・メーカー)
・DE&Iが難しいから(1,001名以上・サービス)
・ソーシャルディスタンス確保の徹底により、人間関係が希薄になった状態に慣れてしまっている(301~1,000名・メーカー)
・仕事の忙しさによる各人の負荷増大(301~1,000名・マスコミ・コンサル)
・何も努力していないため(300名以下・サービス)
・新人世代の理解不足とベテラン世代の説明不足。 コミュニケーションツールの違い(300名以下・メーカー)
・トップダウンの社風(300名以下・メーカー)
・経営からは数値実績以外を特に求められていない(300名以下・運輸・不動産・エネルギー)
【HR総研 客員研究員からの分析コメント】
『社内コミュニケーションの活性化は大切だが、
それは飲みニケーションではない』
曽和 利光氏
株式会社人材研究所 代表取締役社長 /日本採用力検定協会理事 /日本ビジネス心理学会理事 /情報経営イノベーション専門職大学 客員教授/HR総研 客員研究員
「社内コミュニケーションの活性化」という言葉は何十年もの間、「疑う余地なく大事なもの」とされてきた。しかし、よくよく考えると「なぜ大事なのか」「活性化したらどんなメリットがあるのか」「どういうメカニズムでそのメリットが生じるのか」等については明確な説明はなかった。このため最近では、「対面でなくとも仕事は全部オンラインでできる」「仕事を進めるための最小限のコミュニケーションができればよい」という、コミュニケーションをむやみに活性化することの効果に疑義を投げかけるような言説もでてきている。
そんな中、本調査でわかった面白い結果の一つが「社内コミュニケーションに課題がない」(つまりうまくいっている)企業では、従業員エンゲージメント(≒組織や同僚に対する愛着やコミットメントの高さ)が高いということだ。従業員エンゲージメントは離職率などに深く関わるとされており、定着に悩む経営者や人事担当者は、「やはり、社内コミュニケーションは活性化しなければ」と思うことであろう。
ただ、「飲みニケーションを復活させよう」「運動会や合宿を実施しよう」「寮を作ろう」と以前の施策に回帰するのは早計である。調査によれば、規模の大小を問わず、社内コミュニケーションを活性化するための要は、管理職にあると4割程度の企業が考えており、手法論としては1on1での個人面談を実施している企業が最多であった。日本社会でも徐々に進んでいる価値観の多様化を考えれば、大勢で集まって縦横無尽に話し合うパーティ型よりも、1対1でそれぞれの個性に合わせて対話(ダイアローグ)型のコミュニケーションの方が適しているのであろう。「社内コミュニケーションの活性化」という言葉のイメージから酒席やイベントをイメージしてしまうと、この時代では効果を出すことはできなさそうだ。
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▶【HR総研】「社内コミュニケーション」に関する調査レポート
https://www.hrpro.co.jp/bc.php?id=68349
▶過去のHR総研のレポート一覧はこちら
https://www.hrpro.co.jp/bc.php?id=52994
▶HR総研の各調査のマンスリーレポートなどホワイトペーパーはこちら
https://www.hrpro.co.jp/bc.php?id=52995
※本レポート内容は、引用、参照いただけます。
下記要項にてお問合せ先までご連絡をお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
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・目的
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、下記までお問合せください。
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■お問い合わせ先
HR総研(ProFuture株式会社内)
担当 : HR総研 久木田・高槻
E-mail: souken@hrpro.co.jp
HR総研サイト:https://www.hrpro.co.jp/hr_research_institute.php
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■会社概要
企業名 : ProFuture株式会社
代表者 : 代表取締役社長CEO 寺澤 康介
所在地 : 〒100-0014東京都千代田区永田町2-14-2 山王グランドビル5階
設立 : 2007年7月
事業内容 : 人事ポータルサイト『HRプロ』、CMS・MA一体型ツール『Switch Plus』、
人事担当者・経営者向けイベント『HRサミット』の開催などメディア事業、
イベント事業、ソリューション事業、人事関連の研究
URL : https://profuture.co.jp/
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