2024年の賃上げ「5%以上可能」9% --- 「据え置きか賃下げ」は4割超、物価高騰分を価格転嫁できず最多 ---
[KSI Web調査] 賃上げに関する経営者を対象にした意識調査
■調査の概要
デフレからの完全脱却と経済の好循環を実現するため、どのようにして持続的に賃金を引き上げていくかが日本経済の課題となっています。物価上昇を上回る賃上げは実現できるのか、全国の企業経営者1,000人を対象に賃上げに関するアンケートをオンラインで実施しました。調査日は11月28日で、Yahoo!クラウドソーシングを利用しています。
■調査結果サマリ
今回の調査はすべての質問を経営者に限定して尋ねた。自社の従業員に5%以上の賃上げをできる見込みだとした人は9%にとどまり、5%に届かないが賃上げできる見込みの人23%を合わせても全体の3分の1程度だった。余力はあるがベースアップもせず据え置く予定の人が12%で、ベースアップも含めて賃上げできない見込みの人は25%。賃下げせざるを得ない見込みの人は6%。5%以上の賃上げ可能とした人を地域別に見ると関東と近畿で共に1割を超し、それ以外は一桁かゼロ。
賃上げ原資の確保手段を複数回答で聞くと、徹底的なコストカット35%が最多で、価格転嫁を進め売り上げを伸ばすが28%。賃上げできないか、できてもしない見込みが18%と続いた。賃上げしなかったり賃金を下げたりする見込みである理由を複数回答で聞くと、物価高騰分を価格転嫁できないとした人が23%で最多。中小企業が労働生産性を上げる方法を複数回答で聞くと、コストカット徹底が36%でトップとなり、次いで価格転嫁を進めやすくするとした21%だった。
政府による中小企業支援施策で有効だと思うものを複数回答で聞くと、優遇税制拡充21%が1位で、2位は給付金や補助金、助成金、融資などの財政支援拡充21%になった。日本企業のほとんどが中小企業であることに関し「数が多い現状は悪くない」27%、「家族経営が多いので違和感はない」27%、「合併、事業継承、M&Aなどで規模を大きくし効率化すべきだ」が24%と割れた。全体的に年代が上がるにつれ「違和感はない」人が増え「規模を大きくすべき」人は減る傾向があった。
中小企業の経営課題を複数回答で聞くと、人手不足41%が最多で、従業員高齢化33%と続いた。人手不足を挙げた人は医療・福祉で6割台、運輸で5割台だった。財政制度等審議会の「令和6年度予算の編成等に関する建議」で企業の経常利益率が3%程度であることを肯定しているように受け取れる記述があることに関し、3%程度では足りないと思う人が36%を占め、3%程度で適切だと思う人は20%だった。
少子化対策の財源として政府が公的医療保険料に上乗せして徴収する「支援金」制度を検討していることに反対する人が54%を占めた。次の首相にふさわしい自民党国会議員を聞くと上位3人は石破茂元幹事長11%、小泉進次郎元環境相9.9%、河野太郎デジタル相9.8%となった。
自社の従業員に「5%以上の賃上げをできる見込みだ」は9.2%にとどまり、「5%には届かないが賃上げはできる見込みだ」23.7%を合わせても全体の3分の1程度だった。「賃上げ余力はあるがベースアップもせず据え置く予定」12.7%、「賃上げしようとしてもベースアップも含めてできない見込みだ」が25.6%、「賃金を下げざるを得ない見込み」も6.3%あった。
「5%以上の賃上げをできる見込みだ」と答えた人を地域別に見ると、関東と近畿で1割を超し、それ以外は一桁かゼロだった。業種別では鉱業、建設業、製造業、運輸業、金融・保険業、学術研究・専門・技術サービス業、サービス・娯楽業で二桁となった。会社の資本金の規模別では10億円以上が3割台とトップで、それ以外は1割台以下だった。従業員数別では1000人以上が2割台、300人以上1000人未満が1割台で、それ以外は一桁だった。(Q7)
賃上げ原資の確保手段を複数回答で聞くと「徹底的にコストカットする」35.8%が最多で「価格転嫁を進めて売り上げを伸ばす」28.1%、「賃上げできないか、できてもしない見込みだ」18.8%と続いた。「徹底的にコストカットする」とした人を業種別に見ると、鉱業と観光・宿泊業、飲食業が5割台で最多。製造業、運輸業、卸売・小売業、金融・保険業、医療・福祉が4割台だった(Q8)
賃上げしなかったり賃金を下げたりする見込みである理由を複数回答で聞くと多い順に「物価高騰分を価格に転嫁できない」23.7%、「物価高騰で利益が出ていないか減っている」21.7%、「これから賃上げする予定」18.8%だった。(Q9)
中小企業が労働生産性を上げにくいという調査結果があることに関し、中小企業が労働生産性を上げる方法を複数回答で聞くと「コストカットの徹底」36.4%が1位、「価格転嫁を進めやすくする」21.6%、「従業員の意識改革」19.0%と続いた。「コストカットの徹底」を挙げた人を業種別に見ると、鉱業と飲食業が5割台で最多。4割台が製造業、運輸業、卸売・小売業、不動産業、福祉・医療となった。(Q10)
政府による中小企業支援施策として有効だと思うものを複数回答で聞くと多い順に「優遇税制の拡充」21.6%、「給付金や補助金、助成金、融資など財政支援拡充」21.4%、「人手不足に対応する人材確保支援」19.8%となった。「優遇税制の拡充」を挙げた人を業種別に見ると、鉱業5割台で最多となり、続いて学術研究・専門・技術サービス業が3割台で、他は2割台以下。最も低かった一桁は農林水産業と電気・ガス・水道業だった。(Q11)
日本の企業のうち99.7%が中小企業に該当し、うち従業員4人以下が60%を占めることについて「大企業にはない利点もあるので数が多い現状は悪くない」27.5%、「日本は家族経営の業態が多いので違和感はない」27.2%、「合併、事業継承、M&Aなどで規模を大きくして効率化を進めるべきだ」24.1%と割れた。 「違和感はない」とした人を年代別に見ると、年代が上がるごとに増える傾向があった。「効率化を進めるべきだ」とした人を年代別に見ると、全体的に見て年代が上がるにつれ減る傾向があり、従業員別では従業員数が多い層ほど増える傾向にあった。(Q12)
中小企業の経営における課題を複数回答で聞くと「人手不足」41.7%が最多で「従業員の高齢化」33.3%、「優秀な人材を採用できない」29.1%と続いた。「人手不足」を挙げた人を業種別に見ると、医療・福祉が6割台で最多となり、運輸業が5割台、建設業、製造業、情報通信業、飲食業が4割台で続いた。(Q13)
財政制度等審議会の「令和6年度予算の編成等に関する建議」で全産業の利益率が3%程度であることを肯定しているようにも受け取れる記述があることに関し「3%程度では足りないと思う」36.7%、「3%程度で適切だと思う」20.1%だった。「足りない」とした人を業種別で見ると、鉱業、電気・ガス・水道業、運輸業、観光・宿泊業が5割台で最多だった。従業員別では50人以上の各層で4割を超えた。(Q14)
政府が4万円の所得減税を2024年に実施する見通しであることに関し「評価しない」が54.0%を占めた。(Q15)
岸田文雄首相に「増税派のイメージがある」「ある程度、増税派のイメージがある」が計71.1%となった。(Q16)
少子化対策の財源として政府が公的医療保険料に上乗せして徴収する「支援金」制度を検討していることに「反対」が54.0%を占めた。(Q17)
次の首相にふさわしい自民党国会議員を聞くと石破茂元幹事長11.1%がトップとなり、小泉進次郎元環境相9.9%、河野太郎デジタル相9.8%と続いた。(Q18)
回答者の経営者自身が関心のある政策を複数回答で聞くと1~3位は「物価高対策」56.3%、「景気や雇用」45.0%、「所得税や住民税の減税、低所得者世帯向けの給付」34.9%だった。(Q19)
調査レポートの詳細 https://ksi-corp.jp/topics/survey/2023/web-research-60.html
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【調査概要】
・調査期間: 2023年11月28日
・調査機関(調査主体): 紀尾井町戦略研究所株式会社
・調査対象: 全国の18歳以上の企業経営者1,000人
・有効回答数(サンプル数): 1,000人
・調査方法(集計方法、算出方法): インターネット上でのアンケート
※「Yahoo!クラウドソーシング」(https://crowdsourcing.yahoo.co.jp/)を活用
【紀尾井町戦略研究所株式会社(KSI:https://www.ksi-corp.jp/)について】
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