​【Wevox】エンゲージメントと考課に統計的有意な相関関係

〜株式会社ノーリツのパフォーマンス考課を分析〜

株式会社アトラエ

People Tech (テクノロジーによって人の可能性を拡げる) 事業を展開する株式会社アトラエ(本社:東京都港区、 代表:新居佳英、東京証券取引所プライム市場:6194)は、組織力向上プラットフォーム「Wevox(ウィボックス)」にて、湯まわり設備メーカーの株式会社ノーリツ(本社:兵庫県神戸市、代表:腹巻知、東京証券取引所プライム市場:5943)協力のもと、エンゲージメントと考課の相関関係に関する分析を行った結果、統計的に有意な相関関係があったことをお知らせいたします。

 

■サマリー

《分析対象》
・株式会社ノーリツのパフォーマンス考課結果(以降「考課」)
・組織力向上プラットフォーム「Wevox(ウィボックス)」における各部署のエンゲージメント

《結果》
考課とエンゲージメントには統計的に有意な相関関係がある(r = .121, p = .03)ことが分かった。
当考課基準の中心には、各部署・職種ごとの目標達成度合いが含まれているため、生産性との関連が非常に強い指標であり、エンゲージメントが生産性と統計的に有意に相関することが示唆される。
株式会社ノーリツでは、Wevoxの質問の中で「意欲的であれば会社はチャンスを提供してくれる」と感じている場合に、特に考課が良い傾向にあった。
これは、同社 中期経営計画「Vプラン23」の基本方針の1つとして掲げている「挑戦しつづける組織への変革」とも符合しており、現場社員が、経営メッセージを正しく受け取り実行できているほど、 高い評価と生産性につながっている事例と考えられる。

※相関係数の大きさについて
相関係数が「0.121」というのは、一般的にはとても弱い相関を意味する。
しかし、本調査においては、十分に意味のある値だと考える。なぜならば、エンゲージメントが高いとき、生産性や評価が高いことが期待されるが、実際には生産性は外部要因によって非常に大きく変化するからである。そのため、むしろ相関係数が0.3、0.5という大きな数値を取ることは考えがたい。
エンゲージメントと考課の間の0.1程度の(統計的に有意な)相関係数は、エンゲージメントと生産性の関連性において妥当な水準であると思われる。

 
■分析概要
 対象者
・株式会社ノーリツ所属のWevox回答者 約2,000名
・考課結果:管理者 数百名分(n>100)

分析期間
・2021年5月実施のエンゲージメントサーベイ
・2021年6月30日時点の各組織の管理者の考課結果(考課対象期間2021年1月1日〜2021年6月30日)

データ数
・エンゲージメントサーベイの回答データ83,458件
・考課結果 数百部署分(n>100)

※参考:考課の詳細
・考課結果は、期初に設定した目標を達成すれば基準点となり、目標の達成度合いに応じてプラス考課、マイナス考課となる。
・考課結果は、部署ごとに適切に設定された目標の達成度合いを示す指標であり、生産性と強く関連する。このパフォーマンス考課結果の存在によって、本来比較が難しい他部門や他職種の生産性を比較することが可能となった。


《導入》
ワーク・エンゲイジメントと生産性の関係性は多様な学術研究で示されており、また、Wevoxのデータを用いた共同研究でもエンゲージメントが生産性を高める事例をいくつか発表してきたが、受注率や売上などの指標は、外部環境の影響が極めて大きく、エンゲージメントとの関係を見出すのは極めて困難であった。
そこで今回は、外部要因に左右されづらいが生産性に直結する指標として、管理者の考課結果とエンゲージメントの関係性についての分析を実施した。

 調査結果1 - 考課とエンゲージメントのクロス集計
表1は、考課結果とエンゲージメントのクロス集計表である。考課結果は、目標に対する成果を基準につけられており、業績とも連動する指標である。
これを見ると、考課が高いと、ほぼ全てのエンゲージメントスコアが高いことがわかる。したがって、エンゲージメントと考課結果に相関関係があることがわかる。一部項目では、スコアの高低関係が逆転している。特に健康のスコアについては、のちの分析でこの理由が判明する。 

※表1 考課結果とエンゲージメントのクロス集計表(平均値との差分)
考課ごとに、チームのエンゲージメントスコアや、キードライバーのスコアの平均を計算してある。最も左がエンゲージメントの総合スコアであり、右の9つは、その各要素ごとのスコアである。健康のスコア以外は、考課が良いほどスコアが高いことが分かる。


分析結果2 - 考課とエンゲージメントの相関係数
表2には、考課とエンゲージメントの相関係数のトップ5を掲載した。この表では省略したが、エンゲージメント、キードライバー、小項目全てで正の相関が観測された。再び、考課とエンゲージメントは統計的有意な相関関係があることが分かった。

トップ5のうち、「達成感」「自己成長」については、考課との相関関係はあるものの、因果関係があるかどうかはわからない。これは、いい仕事をしたから達成感と自己成長を感じていて、いい仕事をしたから考課が良かったという交絡(※1)が起こっている可能性があり、必ずしもこの相関係数が示す強さの因果関係があるとは言い切れない。

人間関係、職務上の支援、上司との関係についても交絡の可能性を排除することはできない一方、実際の現場に対する洞察や、その他事情を勘案すると、これら3項目を高めることによって実際に生産性が高まる可能性があると考えることが妥当であると結論した。
項目(※2) 相関 備考
達成感 0.163 (p=.004**) 成功したから達成感 & 好評価?
人間関係 0.147 (p = .009**) 達成に重要と思われる
職務上の支援 0.144 (p=.011*) 達成に重要と思われる
自己成長 0.140 (p=.014*) 成功したから成長 & 好評価?
上司との関係 0.140 (p=.014*) 達成に重要と思われる
表2. 考課結果とエンゲージメントの相関係数

※1交絡とは
2つの変数に対する共通の原因によって、見かけ上の相関関係が生じる現象のこと。例えば、小学生の握力と算数のテスト結果は非常に強く相関するが、これは握力と算数のテストに因果関係があるわけではなく、単に高学年のほうが低学年より握力が強く、テスト結果も良いだけであり、このように、年齢という共通の原因によって、見かけ上の相関関係が生まれることを「交絡」という。

※2項目について
ここに並べられている項目は、Wevoxにおける「小項目」と「キードライバー」である。
小項目とは、Wevoxでの分析項目の対象単位で全26個。「達成感」「職務上の支援」「上司との関係」が該当する。キードライバーとは、26個の小項目を9つに分類・集計したもので、ここでは「人間関係」「自己成長」が該当する。Wevoxでは、26の小項目でエンゲージメントやそれに影響する要素を網羅的に把握しつつ、9つのキードライバーにまとめることで、鳥の眼的理解を行う項目設計になっている。

 
分析結果3 - 考課結果に強い影響を与える要素の抽出
最後に考課結果に強い影響を与える要素の抽出を行った。プラス側の考課を高評価、マイナス側の考課を低評価と定義し、これを予測する決定木を学習させることによって実施した。
その結果、次の2チームで「高評価率」が高かった。
  • 「意欲的であれば会社はチャンスを提供してくれる」と感じていて、ワーク・ライフ・バランスのスコアが低いチーム
  • 「意欲的であれば会社はチャンスを提供してくれる」と感じていて、ワーク・ライフ・バランスのスコアが高く、達成感を感じているチーム
どちらにおいても、「意欲的であれば会社はチャンスを提供してくれる」と感じていることが重要であることが分かった。株式会社ノーリツでは、既存事業の深化のみならず、新しいことへの挑戦(探索)をすることが推奨されている。中期経営計画「Vプラン23」の基本方針にある「挑戦しつづける組織への変革」がこれに当たる。

現場が「意欲があればチャンスを提供してくれる」と感じているということは、まさに経営層が発信している中期経営計画の戦略がうまく浸透していることの証拠であり、経営の発信が正しく伝わり、現場で実践されることで、実際に生産性が高まっている事例であるとも言える。

また、そのようなチームにおいては、ワーク・ライフ・バランスのスコアが低いほど高評価率が高いことが分かった。これは、仕事に熱中して取り組んでいる結果として、ワーク・ライフ・バランスが偏るチームもあることを示唆している。逆に、人間関係のスコアが低く、人間関係が良くない状況が続くと、実際の評価にも影響がある可能性が分かった。ここでは、人間関係を良好に保つための施策や、チームにしっかりと向き合い続けることが、会社の成果にも直結する可能性があることが示唆される。

図3. エンゲージメントから高評価を予測する決定木の可視化
 

図4. エンゲージメントから低評価を予測する決定木の可視化

補足分析 - 評価者によるバイアスの可能性の検討
考課は、評価者によってバイアスがある可能性がある。(例:◯◯さんは評価が甘くプラス評価が増える)この可能性についても検証し、必要に応じてマルチレベル分析の利用も検討した。調査対象の部署に対する評価者のうち、5部署以上を評価している人による考課データのICCを計算したところ、0.0806と十分小さい数値となった。(全データ対象の場合は0.0827)ICCが充分小さいため、部署の考課が評価者によって系統的に影響を受けているとは考え難いと結論した。

結論
以上により、考課とエンゲージメントには統計的に有意な相関関係があることが分かった。
考課の基準の中心に目標の達成度合いが入っているため、これは生産性との関連が非常に強い指標であり、エンゲージメントが生産性と統計的に有意な相関することが示唆される。

株式会社ノーリツの場合では、「意欲的であれば会社はチャンスを提供してくれる」と感じている場合に特に考課が良い傾向にある。これは、経営の方針として、新しいことへの挑戦を推奨していることとも符合しており、現場が実際に新しいことへ挑戦できていると感じているほど成果につながっている事と言える。

(補足)相関関係と因果関係について
今回は、2021年5月時点のエンゲージメントスコアと2021年6月時点の考課を比較しているため、エンゲージメントの測定が考課に先行しており、基本的にはエンゲージメントが考課の原因となると考えられそうに見える。
一方、2021年6月時点の評価は、2021年1月から6月のパフォーマンスの総合であり、5月時点ではある程度自身の評価を予測することができると考えるのが妥当であろう。
そのため、項目によっては、上で挙げた交絡が起こっていることはほぼ間違いないと思われる。

今回の場合、項目によって、
交絡:成果が出たから楽しい(高エンゲージメントスコア)し評価される
因果:エンゲージメントが高いから成果につながり評価される
逆向きの因果:評価されそうと感じているから楽しい(高エンゲージメントスコア)
の全てが起こっていると考えるのが妥当であろう。

統計的な分析のみでこれらの影響を評価することは不可能であったが、中期経営計画との整合性や、実際の現場に対する洞察を加味することで、経営に資するレベルでエンゲージメントと生産性の間の洞察を得ることができた。

組織で平時から運用されているサーベイを用いて、学術研究レベルの因果関係の探求を行うことは一般に困難であるが、Wevoxのサーベイを用いることで経営の意思決定に資する情報を得ることは十分に可能であることがわかる事例であるといえる。


■Wevox 学術顧問:慶應義塾大学 島津 明人教授より
今回,Wevoxで測定された従業員個人の結果と客観的な生産性との関連が統計的に明らかにされたことは,画期的な結果と言えます。今後,より長期的な生産性とどのような関連があるのか,興味があるところです。

 
■株式会社ノーリツとは
ノーリツは1951年に神戸で創業。戦後復興期に「日本の生活水準を向上させたい」という情熱からスタートしました。創業の原点である『お風呂は人を幸せにする』に込められた思いを持ち続け、給湯器を中心に豊かな暮しを提供する湯まわり設備メーカーです。国内の給湯器の市場シェアは約4割、ガスビルトインコンロの市場シェアは約3割に達しています。独自の技術力を活かし、環境に配慮した高効率給湯器の開発はもちろん、おふろの「見まもり機能」や「除菌機能」などで社会課題の解決に貢献しています。1993年には海外へ進出。世界で高まる環境・省エネ気運を背景に中国・北米・豪州を中心にグローバルに展開しています。

 
■Wevox(ウィボックス)とは
エンゲージメント研究の国内第一人者である慶應義塾大学 島津明人教授にアドバイザーとして参画いただき開発されたエンゲージメントサーベイを軸とした組織力向上プラットフォーム。
組織に属する一人ひとりの心の状態を可視化するWevox Engagementは、PCやスマートフォンから簡単に回答でき、極めて負担の少ないUI設計とご評価いただく。サーベイ結果は自動集計され、蓄積されたビッグデータからAIが解析。組織ごとの特徴や傾向、課題などを特定し、その後の改善までを支援する。他にも、自由に質問を設計できるWevox Customや互いに活力を高め学び合えるWevox Academyなど、組織が常に進化し続ける”きっかけ”になれるよう多角的なサービスを展開中。

現在ビジネス領域のみならず、スポーツや教育の領域でも広く導入が進んでおり、導入組織数は2,350以上、回答データは累計1億250万件を超える。2019 年度グッドデザイン賞を受賞。(2022年5月現在)
Wevox公式サイト:https://get.wevox.io
Wevox Twitter:https://twitter.com/wevox_io


■会社概要
社   名:株式会社アトラエ(東京証券取引所プライム市場:6194)
所 在 地:東京都港区麻布十番1-10-10 ジュールA 8F
代 表 者:代表取締役CEO 新居 佳英
URL:https://atrae.co.jp/
事業内容:People Tech事業(Green・Yenta・Wevox・Inow)、Sports Tech事業(Altiri)
※People Tech事業:“テクノロジーによって人の可能性を拡げる事業を創造していく” という想いを込めてアトラエを再定義した造語
Green https://www.green-japan.com/
Yenta https://page.yenta-app.com/jp
Wevox https://get.wevox.io/
Inow https://get.inow.jp
Atrae Design https://atrae.design/
Altiri https://altiri.jp/

採用情報:https://www.green-japan.com/company/172



 

 

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設立
2003年10月