FETの発熱低減とEMI抑制を両立する三相ブラシレスモータドライバICを開発
ローム株式会社(本社:京都市)は、中耐圧(12〜48Vシステム)向けの三相ブラシレスDCモータドライバIC「BD67871MWV-Z」を開発しました。独自の駆動ロジックを搭載することで、モータドライバICではトレードオフの関係にあるFETの発熱低減と低EMI(*1)を両立しました。
新製品は、FETからの電圧情報を高速センスし、リアルタイムにゲート制御する独自のアクティブゲートドライブ方式「TriC3™(トリックスリー)」を搭載しています。この制御方式を採用することで、スイッチング時のFET低消費電力化による発熱低減と同時に、リンギング(*2)の発生を抑制し低EMIも実現しました。

定電流駆動のローム従来品との比較において、同等のEMIレベルでFETの発熱を約35%低減(※)できることも実際のモータで実証しています。また、中耐圧の産業機器アプリケーション向けモータドライバICで多く用いられるパッケージ(UQFN28)とピン配列を採用しているため、回路変更や新規設計時の工数削減に貢献します。
※2025年10月9日 ローム調べ
新製品は2025年9月より量産を開始しています(サンプル価格800円/個:税抜)。さらに、アプリケーションの開発や設計に役立つ評価ボード(BD67871MWV-EVK-003)も準備いたしました。これらはインターネット販売にも対応しており、チップワンストップやコアスタッフオンラインなどから購入いただけます。

また、新製品と同パッケージかつ同ピン配置で定電圧駆動の汎用モータドライバ(BD67870MWV-Z、BD67872MWV-Z)もラインアップしています。汎用タイプから、今回のTriC3™を搭載した付加価値タイプまで、幅広い顧客ニーズに応える製品を取り揃え、モータの効率向上、アプリケーションの高機能化、そして消費電力の削減に貢献してまいります。

開発の背景
モータは全世界電力消費量の約60%を占めており、エネルギー効率の観点を含めた制御技術の高度化がますます重要視されています。特に12〜48Vクラスのアプリケーションにおけるモータ駆動においては、MCUで3個のゲートドライバを制御するシンプルな構成が主流でした。しかし近年では、高効率かつ精緻な制御への要求が高まっており、MCUと一体型三相モータドライバを組み合わせたソリューションの採用が加速しています。一方で、三相モータドライバにおける技術的課題として、「消費電力の抑制」と「ノイズの低減」がトレードオフの関係にあり、両立が困難とされてきました。
このような課題に対し、ロームはモータドライバを含む各種ゲートドライバICの開発で培ってきた高度な回路制御技術を活かし、「消費電力」と「ノイズ」の双方を同時に抑制可能な新技術「TriC3™」を開発しました。
アプリケーション例
・産業機器:
電動ドリル/ドライバー、産業用ファンなどの各種モータ
・民生機器:
掃除機、空気清浄機、エアコンディショナー、換気扇用ファンなどに搭載される各種モータ、Eバイク(電動アシスト付きスポーツ自転車)
TriC3™(トリックスリー)
ロームが開発した段階制御定電流駆動技術です。ゲート電流を3段階に制御することで、高速かつ高効率な動作を実現するとともに、リンギングの抑制によりノイズの低減と安定した動作に貢献します。
・「TriC3™」は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
用語説明
*1) EMI(Electromagnetic Interference:電磁妨害)
EMIは対象とする製品を動作させることにより、どれだけノイズを発生し周辺のICやシステムに不具合を及ぼすかという指標の意味で用いられる。「低EMI」ということは、ノイズの発生が少ないということを意味する。
*2) リンギング
スイッチング時に発生する高周波の振動やオーバーシュートのこと。これは、MOSFETのオン・オフ動作の際に、回路の寄生インダクタンスと寄生キャパシタンスが共振することで生じる。
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